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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
第2回「ハウス・オブ・カード 野望の階段」

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“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

 第2回 『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(“House of Cards”) 

“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

 
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。


政治がエンターテインメントに!
正に今が旬――。アメリカでオンライン配信されて話題になった政治ドラマの傑作が「ハウス・オブ・カード 野望の階段」だ。腐敗した政治でさえエンターテインメントとして見せてしまう、これがアメリカン・ドラマの底力だろう。本作が日本における海外テレビドラマの覇権争いに参戦するとは、実に嬉しい。どこかに目利きがいるんだね。

 
主人公は、目的のためには手段を選ばない狡知にたけた合衆国下院議長フランシス(フランク)・アンダーウッド。ライバルや邪魔者を次々と排除しながら、陰謀と欺瞞に満ちた政界でのし上がって行くフランクを、ケヴィン・スペイシーが見事に体現する。
シーズン1は、約束されていた国務長官のポストを反故にされたフランクの復讐で始まる。「なんだ、アメリカ版半沢直樹か」などと短絡的に考えないこと。フランクが繰り出す知略、策略は、腹心の部下ダグ・スタンパー(マイケル・ケリー)によって確実に実行され、野心家の美人ジャーナリスト、ゾーイ(ケイト・マーラ)や、アル中の下院議員ルッソ(コリー・ストールのダメ男演技が絶品)らも容赦なく利用される。
権力に取り憑かれ、倫理観を失って一線を越えた男がどこまで突き進むのか?待っているのは世界一の権力の座か、それとも壮絶な破滅か?そのプロセスの一つ一つがスリリングで、目が離せない。この心地良い虚無感、疾走感は、「ブレイキング・バッド」(“Breaking Bad”)に通じるものがある。

 
良くも悪くもアメリカの政治はエンターテインメントそのもの。大統領選挙前であれば、CMによる中傷合戦、暴かれるスキャンダル、公開ディベート、それらを痛烈なギャグのネタにする“SNL”(“Saturday Night Live”)や“Mad TV”と、まったく飽きさせない。「ハウス・オブ・カード」も2年後の大統領選に向けて、今後一層注目を浴びてさらに面白くなるはずだ。

 
Mr. Spacey Goes to Washington
主演のケヴィン・スペイシーは「ユージュアル・サスペクツ」、「セブン」、「L.A.コンフィデンシャル」など、切れ者で狡猾な悪役を演らせると真価を発揮する(顔立ちからして正義の側ではない)。「アメリカン・ビューティー」で2度目のオスカーを取った後は、ヌルい演技でファンをイライラさせていた。だが今回は違う。「セブン」を監督したデヴィッド・フィンチャーと再度タッグを組み、本作で完全復活した(蛇足だが、フィンチャーの監督最新作「ゴーン・ガール」も必見)。

 
さらに、NPOを運営するフランクの妻クレアを演じるロビン・ライトがまたいい(彼女はショーン・ペンと別れてから美貌と演技力が一段と際立った)。オーラを放ちながらフランクを叱咤激励するクレアの姿は、美しくも近寄りがたい‘現代の菩薩’だ。

 
原作はマイケル・ドブス(英)の小説で、BBCによって90年代にドラマ化されている。アメリカ版(本作)は、ナスダックに上場されていて資金も潤沢なNetflixが制作、今年のエミー賞では13部門にノミネートされた。現在シーズン2まで26話が終了し、待望のシーズン3は米国で来年スタートだ(日本ではシーズン2までDVD/ブルーレイで発売済み)。

 
「ザ・ホワイトハウス」 vs. 「ハウス・オブ・カード」
このジャンルに先鞭をつけたのは、アーロン・ソーキンが脚本を書いた「ザ・ホワイトハウス」(“The West Wing”)だった(ソーキンは「ソーシャル・ネットワーク」、「マネー・ボール」の脚本も書いた。拍手!)。合衆国大統領バートレットを演じたマーティン・シーンは、あまり頭が良くは見えないが、博識で胆力がある大統領を熱演し、米国民の絶賛を受けた。

 
つまり、政治を性善説で描いたのが「ザ・ホワイトハウス」であり、一方「ハウス・オブ・カード」は間違いなく性悪説に基づいている。どちらも骨太で、地に足がついた、見応え十分の、どちらかと言うと玄人好みのドラマだ。いわば表裏一体の関係だが、「悪の魅力」は「善の魅力」に勝る(名作漫画『愛と誠』を読んだ人ならわかるだろう。だからヒロインの早乙女愛は、岩清水弘でなく太賀誠を愛したのだ!)。「ハウス・オブ・カード」には、「ザ・ホワイトハウス」にはない高尚な胡散くささと強烈な中毒性がある。

 
「ハウス・オブ・カード中毒」に対する処方箋
フランク・キャプラ監督の「スミス都へ行く」を観ましょう。ジェームズ・ステュアートの純朴で感動的な演技が、皆さんの汚れた心を洗い流してくれるでしょう(効かない人は「デーブ」を試してみること)。

 
<今月のおまけ>「心に残るテレビドラマのテーマ」① “Taxi” (1978-1983)


 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。

 

 
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