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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第25回 “11.22.63”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第25回 “11.22.63”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第25回 “11.22.63”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

原作はS・キングの壮大なホラ話&ラブストーリー!
Sadie: “Tell me one more thing about the future.”
Jake: “People walk around with their phones in their hands all day.”
Sadie: “Something real.”
Jake: “I love you. Now, and in the future.”
 

“11.22.63”とは1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領がテキサス州ダラスでリー・H・オズワルドに暗殺された日を意味する。スティーヴン・キングの原作「11/22/63」は、平凡な高校教師が過去に遡ってJFKの暗殺を阻止しようとする壮大なホラ話で、圧倒的に面白い。しかもこの作品、時空を超えた感動のラブストーリーでもあるのだ!
 

“Rabbit hole”の向こう側は冒険とロマンスの世界!
ジェイク・エッピング(ジェームズ・フランコ)はメイン州にある定時制高校の英語教師。妻に離婚されたばかりで、特に人生の目的もない平凡な男だ。一方、寂れたダイナーの店主アル(クリス・クーパー)はジェイクの長年の友人だが、末期ガンを患い余命いくばくもない。
 

ある日、ジェイクはアルからダイナーへ呼び出される。言われるままに奥のクロゼットへ入った瞬間、ジェイクの人生は一変する。そこは1960年10月の世界で、アルが“rabbit hole”と呼ぶそのクロゼットは、過去へのタイムトンネルなのだ!
 

アルは“rabbit hole”を偶然見つけて、現代と過去を何回も往復するうちに究極の目的を持つようになった。それは、‘オズワルドを殺害してJFKの暗殺を未然に防ぐこと’。達成できればベトナム戦争も起こらず、世の中はより良くなるはずなのだ。アルは周到に準備を進めていたが、もはや病魔から逃れるすべはない。計画の実行はジェイクに頼むしかなかった。
 

アルは息を引き取り、ジェイクはアルの意思を引き継ぐ。人生で何かひとつくらいやり遂げようと決意したジェイクは再び“rabbit hole”から1960年10月へタイムトラベルをする。まずテキサスへ渡り、元海兵隊員のオズワルド(ダニエル・ウェバー)が本当に狙撃犯なのかを確認しなければならない。だが、どうやって?
 

やがてアルの計画に大きな誤算が生じる。ジェイクが、図書館で働く人妻のセイディ(サラ・ガドン)と恋に落ちてしまったのだ。ジェイクは、目的を達したらセイディを連れて現代に戻るつもりだ。彼女は2016年の世界を見たらなんて言うだろう?
 

だが誰かが過去を大きく変えようとすると、過去は嫌がってそれを邪魔しようとする。ジェイクとセイディには次々と困難が降りかかるが、二人で乗り越えていかねばならない。
 

大感動のエンディングへ
ジェイク役のジェームズ・フランコは最近オフビートな役が多かったが、本作では自然な演技で好感が持てる。自ら映画化権を買い取ろうとしたほど原作にほれ込んだだけあって、手抜きがない。セイディ役のサラ・ガドンとの相性もよく、二人の間にはしっかりケミストリーが働いている。
 

ジェイクとセイディのラブストーリーは、よくある添えもの的な扱いではなく、ジェイクの暗殺阻止プロセスと同等に描かれる。計画が成功するか否かで二人の運命と世界の行く末が決まるので、相乗効果が生まれドラマに厚みを与えている。さらに、最後の2エピソードでは、残り2週間のカウントダウンが活写される。11月22日に向けてサスペンスが持続し、実際に暗殺が起きた12:30PMに最高潮に達する。
 

過去に戻るというストーリーは映画でも小説でも繰り返されてきたが、肝は結末だ。切なくて感動的、味わい深い余韻を残す本作のエンディングは文句なしで、キングの熟練の筆致が美しく映像化された!
 

製作総指揮はJ・J・エイブラムズとS・キング
“11.22.63”は、当初予定されていた映画化がポシャった後、J・J・エイブラムズがキング本人とミニシリーズ化(最近は“limited series”という)を企画し、Huluが配信することで実現した。キングの原作は日本語翻訳版で2段組み千ページを超える大作だ。時間的制約から映画化してもストーリーを追うだけになるので、ミニシリーズにしてくれてよかった。
全部で9エピソードから成る(45分×9本)至高の約6.5時間をどう楽しむか?
やはりキングの原作をドラマ化した“Under the Dome”と観比べてもいいし、もちろん原作から入るのは常に王道だ。しかもキングには続編を書く予定もあるようで、待ちきれないね。
 

80年代の大ヒット映画“Back to the Future”が予言した、‘シカゴ・カブスのワールドシリーズ優勝’と‘ドナルド・トランプの大統領当選’はみごとに的中した。主人公が過去にタイムスリップするというストーリーには、他にも“Somewhere in Time”、“The Terminator”、“Quantum Leap”(テレビドラマ)など名作が多いが、ここでは“Time After Time”(1979)をお勧めしておく。マルコム・マクダウェルが若き日のH・G・ウェルズに扮し、メアリー・スティーンバージェンと共演したSci-Fiロマコメの傑作だ。
 

<今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」 ⑤
Title: “Stay Gold”
Artist: Stevie Wonder
Movie: “The Outsiders” (1983)


S・ワンダーの隠れた名曲。映画は監督がフランシス・コッポラ、キャストはトム・クルーズを含めた当時の若手オールスターが総出演だった。
 

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
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