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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第28回 “American Crime Story: The People v. O.J. Simpson”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第28回 “American Crime Story: The People v. O.J. Simpson”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第28回“American Crime Story: The People v. O.J. Simpson”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

“The Trial of the Century”(世紀の裁判)
O・J・シンプソン(OJ)は実在する元NFLのスーパースター、映画俳優でもあり(『カサンドラ・クロス』などに出演)、LAでは有数の黒人セレブだった。1994年6月13日未明、LAの超高級住宅地で、OJの元妻ニコールと彼女のボーイフレンドの惨殺死体が見つかる。OJは二人の殺害容疑で逮捕されるが、容疑を否認した。
 

圧倒的に有利な証拠を握る検察と、「ドリームチーム」と呼ばれたエリート弁護士たちが繰り広げた法廷バトルは「世紀の裁判」と呼ばれ、全米を熱狂させ、分断した。この「O・J・シンプソン事件」を迫真の臨場感で再現したのが本作だ!
(この機会に、リーガルドラマの基本英単語も覚えてしまおう)

 
“The Prosecution v. the Defense” (検察側 対 弁護側)

担当検事(“head prosecutor”)のマーシャ・クラーク(“American Horror Story”のサラ・ポールソン)は、「セックスより裁判が好き」と豪語するやり手だ。彼女はありあまる有罪の証拠を手にして、この事件は楽勝(“slam dunk case”)だと考えていた。クラークと組むクリス・ダーデン(スターリング・K・ブラウン)は、「黒人のスーパースターを起訴する黒人検事補(“assistant district attorney, ADA”)」という微妙な立場にいた。

 

OJ(キューバ・グッディング・ジュニア)が助けを求めたのは、セレブご用達のスリックな弁護士ロバート・シャピロ(ジョン・トラボルタ)。シャピロが招集したのは、彼が師と仰ぐ著名弁護士のリー・ベイリー(ネイサン・レイン)、OJの親友で弁護士のロバート・カーダシアン(“Friends”のデヴィッド・シュワイマー)、さらにハーバード大学の法学教授、DNAのスペシャリスト、トップランクの捜査員などプロ中のプロたちだった。シャピロは不利な状況をいち早く察知して正攻法による弁護をあきらめ、戦略を180度転換する(この変わり身の早さが彼の真骨頂)。そのために雇われたのが、元検事補で黒人扇動家の弁護士ジョニー・コクラン(コートニー・B・ヴァンス)だ。こうして「ドリームチーム」は誕生した。
 

“The Trial” (公判)
犯行現場の血痕は、DNA鑑定でOJのものと確認された。検察にとってはこれだけでも有罪判決が勝ち取れる決定的な証拠(“hard evidence”)だ。その他の状況証拠(“circumstantial evidence”)もOJの犯行を裏づけた。
 

だがOJの主席弁護士(“lead attorney”)となったコクランは自信に満ちていた。
“Evidence doesn’t win the day. Jurors go with a narrative that makes sense.”
(証拠ではなく、よいストーリーが陪審員を納得させる)

 

当時は、2年前に黒人差別問題から巻き起こった「ロサンゼルス暴動」の余波がまだくすぶっていた。
コクランが法廷に爆弾を落とす。「本件は、人種差別的腐敗組織LAPD(ロサンゼルス市警)によるでっち上げだ。この街では、黒人が殺人事件で無罪になることはない」とぶち上げたのだ!

 

殺人事件を巧みに黒人差別とLAPDの組織的陰謀にすり替えようと目論む弁護団と、陪審員の注意を物的証拠に向けようと躍起になる検察。双方のせめぎ合いで公判は一進一退だった。
 

公判のテレビ中継が認められたためにメディアは世論を煽りまくり、全米は大騒ぎとなった。人々は勤め先、自宅、バー、空港でテレビの前にくぎ付けだ。ピザ屋は殺到する配達の注文に悲鳴をあげ、事件の生中継がNBAファイナルに割って入るという前代未聞の事態となった。
 

“The Verdict” (評決)
陪審員(“jury”)は公判の間8カ月以上もホテルに軟禁状態だったが、協議はわずか4時間で終わった。
この事件を知らない読者も多いと思うので、評決については書かない。ただ、OJのその後の人生は惨めなものだったとだけ言っておく。

 

事件そのものは派手だが、本作は「セレブのスキャンダルを題材にした低俗ドラマ」ではない。シャピロを怪演したトラボルタとコクランを熱演したコートニー・Bヴァンスを中心に、キャストは風化した事件に魂を吹きこんだ。主役は検察、弁護団、被告、判事、陪審、つまり裁判そのものだ。まるで現在進行中の事件を観ているような錯覚に襲われ、検察、弁護団双方による最終弁論(“closing statement”)の迫力と説得力は、感動的ですらある。結果を知っていても、評決が言い渡される瞬間は緊張してしまう。
驚異的な臨場感をもって、22年前の「O・J・シンプソン事件」はドラマとして蘇った!

 

製作は“Sons of Anarchy”、“The Americans”と快調にヒットを飛ばすFX。“American Crime Story”のシーズン2は、2005年にルイジアナ州を襲った巨大ハリケーン「カタリナ」に係わる犯罪を扱うとのことで、これも楽しみだ。
 

<今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」 ⑧
Title: “Change the World”
Artist: Eric Clapton
Movie: “Phenomenon” (1996)


トラボルタのベストは、『パルプ・フィクション』ではなくこの作品だと思う。

 

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
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