News
NEWS
明けの明星が輝く空にinCO

明けの明星が輝く空に 第85回:特撮俳優列伝1 石橋正次

明けの明星が輝く空に  第85回:特撮俳優列伝1 石橋正次
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

【最近の私】今回の記事の書いていて、やはり孤独なヒーローが主人公の『木枯らし紋次郎』を思い出した。放送開始は『木枯らし~』の方が数カ月早い。弦太郎のキャラ設定は、紋次郎に影響を受けたのだろうか。
 

古いところでは藤岡弘、、最近では松坂桃李や福士蒼汰など、特撮作品で主演を務めたあとスターに上り詰めた俳優は珍しくない。だけど、その順序が逆となると話は別だ。おそらく、1970年代の青春スター、石橋正次ぐらいしかいないのでないだろうか。
 

石橋氏は1972年、人気学園ドラマ『飛び出せ!青春』に不良少年役で出演する一方、同作の挿入歌『夜明けの停車場』をヒットさせ、第23回NHK紅白歌合戦にも出演している。また、僕の記憶にはないが、1970年には実写映画『あしたのジョー』で主人公の矢吹丈を、翌1971年にはNHKの連続テレビ小説『繭子ひとり』で主人公の弟を演じていた。
 

そんな彼が最初に出演した特撮作品は、『帰ってきたウルトラマン』(1971年)だ。2話だけのゲスト出演で、若さゆえに暴走、破滅へと突き進んでしまう男を熱演した。そしてその翌年、変身ヒーロー番組『アイアンキング』で主役を演じることとなる。青春スターが特撮番組で主人公を演じるのは異例であったが、以前から親交があった佐々木守氏が全脚本を書くことを条件に、出演を引き受けたそうである。ちなみに佐々木氏は、『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』で数話のシナリオを担当しており、ウルトラファンにはおなじみの脚本家だ。当ブログの第77回『まぼろしの一作』(http://www.jvta.net/co/akenomyojo77/)で取り上げた、『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」も、彼の作品である。
 

ただし、アイアンキングは、ウルトラシリーズで有名な円谷プロではなく、『月光仮面』(1958年)や『快傑ハリマオ』(1960年)を制作した宣弘社が生んだ巨大変身ヒーローだ。最大の特徴は、アイアンキングに変身するのが石橋氏演じる主人公の静(しずか)弦太郎ではなく、相棒の霧島五郎(演じたのは、日活映画で吉永小百合の相手役だった浜田光夫!)だったことだ。つまり『アイアンキング』は、「主人公=変身ヒーロー」ではないという点でも、異色の特撮番組だった。
 

弦太郎は国家警備機構という組織の一員で、旅をしながら悪の組織と戦っていた。体術と格闘術に優れ、武器は鞭や剣に変形する特殊なアイテムのみ。これで敵の巨大ロボットと、対等以上に渡り合う。実際、敵を倒すのは弦太郎だったことが多い。アイアンキングはというと、まるで“やられ役”のような扱いだった。これは弦太郎の強さを際立たせるための演出だったと考えられるが、おかげでアイアンキングは後年になって、「史上最弱ヒーロー」というありがたくない称号を、与えられてしまうことになる。
 

石橋氏が演じた弦太郎は、非常に人間味あふれる男だった。普段は能天気で、五郎との軽妙な掛け合いを楽しみ、少年のような顔で笑う。また、敵との交戦中に「へへーんだ!」などと言ったりして、人を食ったような態度を取ることもしばしばだ。ただし、五郎とふざけ合っている最中でも、異変を察知するとサッと厳しい表情に変わる。少年のあどけなさを残した顔がキリッと引き締まるさまは、女性ファンにはたまらなかったことだろう。
 

そして弦太郎は、女性の登場人物たちにやたらとモテた。彼女たちに対しては突き放した言い方が多かったが、冷たいのは表面上だけで、助けが必要なときはしっかり助けていた。わかりやすくたとえるなら、女性を危険から遠ざける際に、「足手まといなんだよ。女はすっ込んでろ」というような物言いしかできない、不器用な男だ。ただ、意図的にそうしていた可能性もある。なぜなら、危険な任務に就いている以上命の保証はなく、自分に好意を寄せてくれた女性を悲しませることになるかもしれないからだ。
 

弦太郎が表に出さなかったのは、女性への優しさだけではない。彼は明るい笑顔の下に、孤独を抱えていた。脚本の佐々木氏が書いたエンディングテーマ『ひとり旅』の歌詞が、弦太郎という男のイメージを端的に示している。4番まである歌詞の内容からは、幸せや喜びというものを知らず、故郷を捨て、雲や花を友とし、風のようにひとり荒野を進んでいく弦太郎の姿が浮かんでくる。彼がときおり見せる、思い詰めたような表情には、そんな孤独がにじみ出ていたように思える。
 

実を言うと子どもの頃、僕は弦太郎のことを特にカッコいいとは感じていなかった。だけど今回、記事を書くためにDVDで何話か見直しているうちに、すっかり彼にハマってしまった。もしかしたら、特撮番組の中でも、一、二を争うカッコ良さかもしれない。もちろん、石橋正次という俳優の好演がなければ、そうはならなかっただろう。青春スターとして知られる石橋氏だが、特撮番組史にも大きな足跡を残した。僕はそう思っている。
 

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
—————————————————————————————–
 

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page