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修了生・岡崎秀さんが執筆に協力「消滅遺産 もう見られない世界の偉大な建造物」

修了生・岡崎秀さんが執筆に協力「消滅遺産 もう見られない世界の偉大な建造物」
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2月末に発売された書籍「消滅遺産 もう見られない世界の偉大な建造物」 (日経ナショナル ジオグラフィック社)の執筆に、JVTA修了生の岡崎秀さんが携わっています。この書籍は、紛争や自然災害、都市計画化などさまざまな理由で現在は姿を変えてしまった建造物をかつての写真と共に紹介するフォトブック。世界中に点在する約30の“消滅遺産”が収められています。そこで今回は、岡崎さんに作品のみどころと執筆の様子をうかがいました。

 
JVTA この本を手にしてまず感じたのは、「調べものが大変そう!」という点です。この作品は翻訳本ではなく、一から日本語で執筆されたそうですが、岡崎さんはどのように作業を進められたのでしょうか?

 
岡崎秀さん(以下岡崎さん) この本の執筆に関わるにあたって、まずは、それぞれの建築物についてのリサーチから始めました。どのような時代に、何の目的で建てられたのか。背景にはどのような出来事があったのか。当時の権力者はどのような人物だったのか。どのような経緯があって失われてしまったのか。このような質問を設定して調べものを進めました。なるべく背景をリアルに捉えることが大切だと思いました。

 
バーミヤーン
アフガニスタン バーミヤーン

 
バーミヤーンなど知名度の高いものに関しては多くの情報があります。ユネスコの世界遺産に登録されていたり、国の公式観光サイトで紹介されていたりする場合も情報が得やすいですね。

 
既存の書籍を読むのはもちろんですが、それほど有名でないものに関しては、地元の新聞や放送局、研究者のホームページ、信頼できるウェブニュースなどあらゆる情報源を探しました。その遺産の雰囲気を実感するため、旅行ブログを読むこともありました(もちろん確実な情報として取り上げたわけではありませんが)。

 
JVTA 岡崎さんのご苦労が偲ばれます。そうしたリサーチは英語と日本語、どちらで行うのでしょうか?

 
岡崎秀さん 日本語で書かれた論文などを参照することも多々ありますが、場所によっては、日本にあまり文献がないものもあります。そういう場合は英語で調べることでより多くの情報に辿り着けます。したがって英語でリサーチして、それを日本語に訳していくわけですが、日本語での正しい用語や表現も確認しながら作業を進めました。建築に関する専門用語や定訳を調べることも必須でしたね。

 
リサーチに関してはJVTAで培った技術が大きな助けになっています。仕事の依頼先から調べものを評価していただくことが度々あります。

 
ペンシルべニア駅1
ニューヨーク ペンシルベニア駅 旧駅舎

 
JVTA それは嬉しいですね。調べものは映像翻訳でも重要なスキルの一つで、特にこうしたドキュメンタリーや歴史ものでは、受講生・修了生の皆さんもとても苦労していると思います。丁寧な調べものは、やはり大きな信頼に繋がるんですね。

 
岡崎さん そうですね。でも十分な資料が揃ってもそれを並べただけでは面白い読み物にはなりません。ナショナルジオグラフィックの担当編集者の方からは「ストーリー性のある語りにしたい」と要望がありました。

 
そこで私は、集めた情報を頭に入れ「この建築物の何がすごいんだろう、どこが興味深い点なんだろう」と距離を置いて眺める時間を設けました。膨大な資源、財源、エネルギーを注ぎ込んだ建築物の背景には、それに相応する想い入れがあるはずです。「こんなにすごい建物があったんだ」と読む人が実感できるものに仕上げることを目標としました。

 
JVTA 翻訳者やライターはさまざまなジャンルに取り組むので、毎回学びの連続ですよね。

 
岡崎さん この仕事を通して学んだことも多々ありました。そのひとつは、唐の僧侶、玄奘三蔵(西遊記に登場する三蔵法師)も630年ごろ、バーミヤーンを訪れていたということです。「それなら三蔵法師の家来だった孫悟空もあの大仏を見たはずだ!」。 原稿を書きながらそんな閃きがありました。でも今後、あの大仏を目にするのは不可能に近い。残念なばかりです。

 
JVTA 岡崎さんが特に印象に残っている建造物を教えてください。

 
岡崎さん サハラ砂漠の奥深くへ旅立たせてくれるトンブクトゥ。三千年前にタイムスリップするニムルド。どんなに美しかっただろうと想像力を沸き立たせるニューヨーク、ペンシルベニア駅の旧駅舎。建物も道も塀もすべてが日干しレンガでできた中世の要塞都市アルゲ・バムなどでしょうか。アルゲ・バムは、2003年の大地震で七割が崩壊してしまったのですが、幸い修復が進んでいるようです。

 
JVTA 写真と解説から、どの建物にも壮大な浪漫を感じますね。最後に読者の皆さんへメッセージをお願いします。
アレッポ1
シリア アレッポ

 
岡崎さん 最近、ニュースで報道されているシリアやイエメンにも危機にさらされた遺産があります。豊かな歴史を語るシリアの古都アレッポや、チョコレート菓子のように愛らしくも千年の歴史を誇るイエメンの首都サナアの旧市街にある高層住宅群も、爆撃や爆破で一部が破壊されてしまいました。私も執筆中、かつての美しい姿と現在の様子を改めて写真で比べてみて、やりきれない想いになりました。

 

 
人間は偉大なものをつくる能力を授かっています。それらの遺産を大切にする心を忘れないようにと願いながら執筆しました。皆さんもぜひ、お手にとってご覧ください。

 
JVTA 東京校のロビーにも展示します。ありがとうございました。

 

表紙1

「消滅遺産 もう見られない世界の偉大な建造物」
発行:日経ナショナル ジオグラフィック社
発売:日経BPマーケティング
http://www.nikkeibp.co.jp/atclpubmkt/book/18/G13460/

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