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今週の1本 『ビバリーヒルズ・ニンジャ』 

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4月のテーマ: 重さ
 

ジョン・ベル―シ、ジョン・キャンディ、クリス・ファーレイの共通点は何でしょう?
 

(1)全員、人気のコメディアンです。(2)全員、太っています。そして(3)全員、早死にしました。
 

人間の潜在意識の中には、丸いものや柔らかいものに安心感を覚えるというものがあるそうです。まだ人間としての経験値が少ない幼児を対象にした実験でも、そうした事実は認められているようです。
 

同じハリウッド映画の俳優の中でも、コメディ映画ほど主役の肥満度が高いような気がします。太っているだけで人気があるかといえば、そういうわけはないのですが、太っちょはバカにされ、笑いものにされ、そして愛され、それが商業ベースに乗っているという事実はあるでしょう。
 

肥満大国アメリカの映画館では、ダイエットと名のついたソーダを飲み、バケツのような巨大カップに入ったバターたっぷりのポップコーンを食べながら、こうした“大きい人”たちが繰り広げるコメディを観て、他人事のように大笑いしているのです。
 

日本でも、漫才コンビの片方が太っちょというケースは多いし、ゆるキャラにおいては人気のキャラほど“まるい”気がしませんか。
 

アメリカンコメディ大好きの私が紹介するのは、今回ももちろんコメディ映画です。タイトルは『ビバリーヒルズ・ニンジャ』。1990年代にアメリカの人気テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のレギュラーとして活躍した巨漢コメディアン、クリス・ファーレイ主演の作品です。
 

ファーレイが演じるのは、赤ちゃんのときに日本の忍者組織に拾われて、そのままそこで育てられた白人ダメ忍者。ある事件をきっかけに、アメリカのビバリーヒルズに向かい、悪の巨大犯罪組織に立ち向かうというストーリーです。荒唐無稽。はい、そのとおり。それが何か?
 

主人公の名前はハル。スペルは日本人の名前らしく「HARU」です。同じ発音で「HAL」という名前に覚えがありますか? 『2001年宇宙の旅』に出てくる、史上最高の人工知能「HAL9000」というコンピューターです。この名前は、IBMのひとつずつ上のアルファベットをとって付けられたとか。そんなHALと対比してHARUと名付けたのか、というのは私の深読みです。
 

日本での知名度は、まったくもって低い映画ですが、アメリカでは映画賞にだってノミネートされています。1997年のMTVムービー・アワードで最優秀コメディ・パフォーマンスにね。『ケーブルガイ』のジム・キャリーに負けちゃいましたけど。ほかのノミネートは、『ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合』のエディ・マーフィ、『バードケージ』のロビン・ウィリアムズ、『好きと言えなくて』のジャニーン・ガロファローですから。
 

日本ではもちろん劇場未公開で、VHS時代にはレンタル店などでも目に触れることがありましたが、DVD時代の今は入手困難なようです。クリス・ファーレイの知名度も低く、そもそもコメディタッチのニンジャ映画を観て笑おうという文化的背景がないため、残念ながら再販されることはないでしょう。
 

太っちょキャラで多くの人に愛されたクリス・ファーレイですが、意外なことに自身のその容姿に悩んでいたそうです。『サタデー・ナイト・ライブ』のスケッチ・コメディー(寸劇)で映画『ダーティ・ダンシング』のパロディがあり、黒いスパッツ一枚に上半身裸のスタイルで、パトリック・スウェイジと一緒に踊るというシーンがありました。視聴者は鍛え抜かれたスウェイジのセクシーボディとお腹にたっぷり脂の乗ったファーレイの差を笑います。これが太っちょキャラコメディアンの宿命なのですが、当のクリスはこういったことで笑いを取ることと、それゆえの人気に違和感を持っていたようです。
 

そのことが原因かは分かりませんが、ファーレイは薬物の多量摂取により33才という若さで他界しました。
 

「重さ」とは一般的には質量や密度のことを意味しますが、「愛の重さ」や「命の重さ」など概念的なものにも使いますよね。クリス・ファーレイの映画やテレビ番組を観るたびに、この「重さ」について考えてしまうのです。
 

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『ビバリーヒルズ・ニンジャ』
監督:デニス・ドゥーガン
出演:クリス・ファーレイ、ロビン・ショウ、ニコレット・シェリダン
製作国:アメリカ
製作年:1997年
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Written by 小笠原ヒトシ
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[JVTA発] 今週の1本☆
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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