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「JVTAサマースクール 2024」!~1セッションごとに完結 無料講座多数 複数コマの申込も可~

開催期間:2024年7月17日(水)~2024年9月9日(月)


今年もやります!コトバのプロ、目指す人、語学学習者必見の
大人気セミナー・シリーズ!

「JVTAサマースクール 2024」開催!

~1セッションごとに完結 無料講座多数 複数コマの申込も可~


■昨夏はのべ約2,000人が参加!リスキリングのヒントが満載
売れっ子英日吹き替え翻訳者やあの『ゴジラ-1.0』の英語字幕翻訳者ら、<ことばの仕事>のキーパーソンが多数登壇!!
AI、フリーランスの働き方の最新事情からブロードウェイ・ミュージカルの翻訳秘話、ロサンゼルス留学の魅力まで、ここでしか聞けないセッションが集結!!


◆1つから選べる各セミナー
※以下のカレンダーをクリックするとPDF版が開きます。

 【イベントラインナップ】

◆2024年7月17日(水)19:30 – 20:30 ※日本時間 ※終了しました
映像翻訳者がロサンゼルス留学に踏み切ったワケ~帰国直後の留学生が実体験を語る~

7月に帰国したばかりの元留学生がゲスト!LA留学の最新情報を聞くことができます!
ゲスト:山本あかり氏( 映像翻訳者・JVTA ロサンゼルス校 元留学生)
進行:鈴木絵莉香(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年7月28日(日)9:00 – 13:05 ※日本時間 

映像翻訳の世界がわかる「リモート・オープンスクール」
業界ガイド、日本語・英語字幕体験レッスン、スクール説明を通して、映像翻訳について深く学びます。
料金:無料
対象者:翻訳未経験者

◆2024年7月30日(火)19:30 – 21:00 ※日本時間

キャリア40年の演出家に聞く!日本語吹き替え版制作のオモテとウラ

誰もが知る劇場公開作品の吹き替え版演出を手掛けてきた演出家に、制作秘話や吹き替え作品の魅力を伺います。


ゲスト:吉田啓介氏(吹き替えディレクター)
進行:石井清猛(JVTA)

料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月4日(日)11:00 – 12:00 ※日本時間/8月3日(土)19:00-20:00 ※LA時間

~「好き」を仕事に繋げる留学 第2弾!~ロサンゼルスが教えてくれた私のキャリアパス
好評企画の第2弾を開催!ロサンゼルスでの留学経験がその後のキャリアにどう繋がるのか?
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月5日(月)19:30-21:00 ※日本時間

「映像翻訳者×AI」の最新事情を公開!~カギは人間の“言語編集力”。「ポストエディット」の真意を理解しよう~

「映像翻訳とAIの関係」を探究する世界でも数少ない専門家が登壇!AIを使った演習パートもあります

登壇:石井清猛(JVTA)、松島朝子(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月8日(木)10:30 – 11:30 ※日本時間
~小学生・英語ボランティア体験~ 外国人観光客に道案内&インタビュー
夏休みだからできる体験を!「英語が通じた!」を体験できるワークショップです。
講師:タイラー・ジェイムズ(JVTA )
料金:無料
対象者:小学校1‐6年生

◆2024年8月9日(金)19:30 – 21:00 ※日本時間
難民映画祭のキーパーソンに聞く 増え続ける難民・国内避難民とUNHCRの人道援助活動

「難民」の現状を知り、言葉のプロとして私たちができる支援方法を考えましょう。
ゲスト:中村恵氏(国連UNHCR協会 事務局長特命/渉外担当)
進行:藤田奈緒(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月16日(金)YouTubeにて動画配信
翻訳AIの実力を字幕クイズで判定したら「やっぱり人間ってスゴい!」とわかった件
JVTAプラスの夏休み企画!人間が作った字幕とAIが作った字幕、どんな違いや特徴があるのでしょうか?
料金:無料

対象者:どなたでも視聴可能

◆2024年8月18日(日)9:00 – 13:05 ※日本時間 

映像翻訳の世界がわかる「リモート・オープンスクール」
業界ガイド、日本語・英語字幕体験レッスン、スクール説明を通して、映像翻訳について深く学びます。
料金:無料
対象者:翻訳未経験者

2024年8月21日(水)19:30 – 21:00

劇場公開作品を手掛ける翻訳者が解説~これだけは知っておきたい!吹き替え翻訳の常識~

多くの劇場公開作品を手掛ける吹き替え翻訳者・瀬尾友子氏が再登場!貴重な知っ得情報や裏話が満載です!
ゲスト:瀬尾友子氏(映像翻訳者)
進行:田中葵(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月26日(月)19:30 – 20:30 ※日本時間
『ゴジラ-1.0』英語字幕翻訳者に聞く!世界に認められた英語字幕とは?
大ヒット映画のワンシーンを取り上げ英語字幕を解説!ネタバレはありません!
ゲスト:トニー・キム氏(映像翻訳者・ビジネスコミュニケーショントレーナー)
進行:ジェシー・ナス(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月29日(木)19:30 – 21:00 ※日本時間
映像翻訳者必見!映画祭作品プログラマーが語る、映画祭の裏側!

「映画祭」という言葉はよく聞くけれど、そもそもどんなものなのか?知られざる映画祭の裏側をご紹介!
ゲスト:今井祥子氏(映像翻訳者/レインボー・リール東京プログラマー)
進行:藤田庸司(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年8月30日(金)19:30 – 21:00 ※日本時間
「クーリエ・ジャポン」流 翻訳上達につながるニュース英語の読み方、訳し方
世界中の記事を日本語に翻訳し発信する「クーリエ・ジャポン」流の翻訳とは?
登壇者:阿部啓氏(「クーリエ・ジャポン」翻訳者)
進行:丸山雄一郎(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年9月1日(日)9:00 – 13:05 ※日本時間
映像翻訳の世界がわかる「リモート・オープンスクール」
業界ガイド、日本語・英語字幕体験レッスン、スクール説明を通して、映像翻訳について深く学びます。
料金:無料
対象者:翻訳未経験者

◆2024年9月2日(月)19:30 – 20:30 ※日本時間
映画監督と考える! グッとくる日本語字幕ガイド・音声ガイド2
シーンの魅力をあらゆる人に伝える“グッとくる”表現を映画監督と考えます!
ゲスト:安井祥二氏(映画『紋の光』監督)
進行:小笠原尚軌(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年9月6日(金)19:30 – 21:00 ※日本時間
フリーランスの新・常識 2024 夏~働き方革命の波に乗れ!完全フリーランスか、兼業・副業か?自分にハマるキャリアパスの選び方

兼業・副業で知っておくべきことや、法令面や顧客対応などにおける事例・留意点などをJVTA代表が解説!
登壇者:新楽 直樹(JVTAグループ代表)
料金:1,000円
対象者:どなたでも参加可

◆2024年9月8日(日)10:30 – 12:00 ※日本時間 
「トニー賞」字幕翻訳チーム&米国在住のエンタメ通が深堀り 日本でもファン急増!「ミュージカル翻訳」に注目せよ!

あの歌唱シーンの字幕にはこんな苦労や工夫が!?ミュージカルの裏側をご紹介します!
ゲスト:葛谷祥子氏(映像翻訳者
コメンテーター:黒澤桂子(JVTAロサンゼルス校スタッフ)
進行:藤田奈緒(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可

◆2024年9月9日(月)19:30 – 20:30 ※日本時間
みんなで字幕翻訳~初心者歓迎!あなたのアイディアから名翻訳が生まれるかも?!

人気企画を今年も開催!アイディアを集結し、日本語字幕を完成させよう!
登壇者:桜井徹二(JVTA)、片柳伊佐(JVTA)
料金:無料
対象者:どなたでも参加可


この夏、「コトバのプロ」のための新講座・誕生!
◆2024年7月19日(金)~8月23日(金)19:00 – 21:20 ※日本時間
英語でScreenplay(シナリオ)書いてみよう ~作品理解力を高めて、英語脳を鍛える!~

大手制作会社で数多くの海外動画のローカライズを指揮した経歴をもち、Screenplay(英語脚本)の執筆をライフワークとするクリエーターである高城淳一氏が講師を務める特別講座を開講!
Screenplayの基本フォーマットを学び、英語の短編小説を題材にした演習を経て、最終授業までにオリジナルの脚本を完成させて発表します。
講師:高木淳一氏(スクリーンライター)
※こちらは全4回で1講座になります。詳細は下記よりご確認ください




代表からのメッセージ (2024年7月ver.)


AIの時代にこそ求められる「言葉の力」

JVTAのミッションは、言葉が持つ「社会に伝える力」を最大限発揮し、文化や言語の壁を越え、日本と世界をつなぐお手伝いをすることです。また、その担い手となる言葉のプロフェッショナルを育成することです。

「言葉のプロフェッショナル」を目指す人と出会い、共に学び、共に育つ

 JVTAのプロフェッショナルな「言葉づくり」の土台を支えるのが、職業訓練校「日本映像翻訳アカデミー」の運営です。2026年に東京校は開校30周年を迎えます。2008年に開校したロサンゼルス校は、米国カリフォルニア州教育局より正規の学校として認可を受け、留学生(M-1ビザ)を迎え入れることができる職業訓練校です。「動画の時代」への変化を予測し、字幕・吹き替え翻訳の最新技能を指導すると共に、我が国ではそれまで曖昧であった「映像翻訳技能の理論」を明文化して社会に広める努力を重ねてきました。

 当校で出会う方々の背景は様々です。しかし一つ、私たちには共通する強い思いがあります。「外国語の習得、母国語の研鑽に人生の一部を重ね、これまで多くの時間を費やしてきた。そしてこれからも費やしていく」。AIは人から学びます。このような意志を抱いた人が言葉を紡ぎ出すことで、はじめてAIは機能するのです。AIを恐れるのではなく、その力を知って賢く活用するための「クリエイティブ・ライティング力」や「言語編集力」といったヒューマンスキルを習得する――。それもまた、当校が掲げる目標の一つです。

 そのような考え方から、私たちJVTAは、今とこれからこそが「言葉のプロの力を社会が真に必要とする時代」であると確信しています。

技能習得者を実業に導くまでが、私たちの役割

 私たちと共に学び、力をつけた方々を実業の世界への導くのも当校の重要な役割です。フリーランス一本であれ、兼業でのスタートであれ、修了生を実業へのデビューへと切れ目なく導く仕組みを東京とロサンゼルスに構築。受講生・修了生にこうしたロードマップを示せることも、大きな強みです。「JVTAはコースを修了してからが本番だ」。修了生からそんな声が聴こえてくると、サポート体制のさらなる充実に向けての意欲が生まれます。

「言葉のプロ」が活躍できる新領域や新分野の開拓にも力を入れています。日本語から多言語への分野(日英映像翻訳)、バリアフリー字幕・音声ガイドの分野、動画に限らず、脚本や書籍、ホームページなどクリエイティブな翻訳を必要とする分野にも、多くの修了生を導いてきました。

 また、言葉のプロが持つノウハウを、国内外の小学校から大学まで、学校教育の分野に積極的に提供しているのも当校の大きな特長です。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など、健全な社会づくりのための活動に取り組む組織や団体に対し、修了生らと共に映像翻訳やバリアフリーの技能を提供する活動を大切にしています。長期的な視座に立てば、「言葉のプロ」への信頼を高め、修了生の地位向上や報酬の安定につながるからです。

「言葉のプロ」を目指そうと考えている方、リスキリングの機会を探している方は、オープンスクールや無料セミナー・相談会、メルマガ(要登録)などを通して、ぜひ気軽にJVTAの門をたたいてみてください。

Naoki Niira
1996年、日本映像翻訳アカデミーを創設し、映像翻訳者育成に特化した職業訓練プログラムを構築。同時に、「メディア・トランスレーション・センター」を設置してプロ化した修了生の就業支援を行う。2008年、米国にロサンゼルス校を開校。フリーランスの働き方に関する授業を26年担当し、企業や大学等での講演多数。2023年、JVTAは経済産業省・中小企業庁による『はばたく中小企業・小規模事業者300社』に選出。

【サマースクール2024】~「好き」を仕事に繋げる留学 第2弾!~ロサンゼルスが教えてくれた私のキャリアパス

【JVTAサマースクール2024】
JVTAが毎夏開催するオンラインセミナーシリーズ!

2024年8月4日(日)11:00-12:00 ※日本時間
2024年8月3日(土)19:00-20:00 ※LA時間 
オンライン開催/参加無料


留学を経験した、英日・日英の映像翻訳者が登壇!
JVTA ロサンゼルス校では映像翻訳だけではなく、通訳・実務翻訳を学ぶこともでき、これまで日本から多くの留学生が受講してきました。JVTAの留学プログラムでは、エンタメの本場であるロサンゼルスで実際に生活をしながら、日々、何を得ることができるのか? 留学の先には、どのようなキャリアパスがあるのか? ロサンゼルスで学び、帰国後は英日・日英で映像翻訳者として活躍する留学生に、渡米のきっかけや授業の様子、留学経験をキャリアに繋げた方法まで伺います。

【こんな方におススメ!】
・映像業界に興味がある方
・翻訳の勉強のため留学に興味がある方
・映像翻訳や通訳の技術を習得するため留学を検討中の方
・すでに映像翻訳者として活躍されている方

【内容】
・これがきっかけ!ロサンゼルス校への留学を決意した理由
・ロサンゼルス校ってどんな学校?どんなカリキュラム?
・帰国後のキャリアをどのように築いたのか?
・翻訳者としての1週間のスケジュールを大公開!
・留学によって広がったキャリア
・Q&A

【登壇者】

中村早希さん(英日・日英翻訳者)
日本語学校、英会話学校での勤務を経て、2019年にJVTAロサンゼルス校に留学。現地では英日・日英両方の映像翻訳、通訳、実務翻訳を学ぶ。実践クラスを修了後、プロの映像翻訳者としてJVTAの翻訳受発注部門に登録を目的としたトライアルに合格。帰国後は、プロの翻訳者としてのデビューを果たし、英日・日英で幅広いジャンルの作品を手掛けている。


日程:2024年8月4日(日)11:00~12:00 ※日本時間
2024年8月3日(土)19:00-20:00 ※LA時間

参加費:無料
参加方法:オンライン(Zoom使用)
対象者:どなたでも参加可(海外からの参加も可)
申込方法: 以下の申し込みフォームからお申込みください。送信後に届く自動返信メールに当日のご参加方法に関する詳細が記載されていますので、必ずご確認ください。
参加受付期限:2024年8月4日(日)10:00

その他のお問い合わせはこちらのアドレスにてメールで受け付けております。
   seminar(at)@jvta.net
   ※(at)は@に置き換えてください。




◆JVTAオンラインサマースクール2024◆
2024年7月17日~2024年9月9日 <1セッションごとに完結 無料講座多数>
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想像と対話から始まる「すべての人にやさしい世界」への第一歩「WATCH 2024」上映イベント開催レポート

「障害者差別解消法」により、2024 年4月から民間業者にも合理的配慮の提供が義務化された。合理的配慮とは、障害の有無に関係なく、すべての人々が平等に社会生活を送れるようにするために日常生活に存在する様々な障壁を取り除くための措置である。しかし一口に「障壁を取り除く」と言っても、実際にどのようなアクションを起こせばいいのか?

2024年7月4日(木)、このテーマについて映画上映と対談を通して参加者全体で考えるイベント「Leave No One Behind ~すべての人にやさしい世界を実現するために~」が行われた。本イベントは日本映像翻訳アカデミー(JVTA)が主催、東京外国語大学が共催で開催するイベント「WATCH 2024の一環である。

「WATCH 2024」は、語学や社会問題に興味を持つ学生が主体となって日本発のドキュメンタリー映画に英語字幕をつけ、さらに上映イベントを行うインターンシップである。今回のイベントでは、舞台演劇上の手話を目の見えない人に伝えるための音声ガイドづくりに挑戦した人々を追ったドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』(以下、『こころの通訳者たち』)を英語字幕つきで上映し、さらに字幕翻訳に携わった学生と有識者での対談を実施。さらに、『こころの通訳者たち』の山田礼於監督からのビデオメッセージも上映された。

『こころの通訳者たち What a Wonderful World』予告編
※本予告編の英語字幕もインターン生が制作しました。



インターン生と舞台手話通訳に関する有識者が対談「舞台手話通訳と映像翻訳は似ている」
対談のゲストは、舞台演劇に特化した手話通訳技術に関する調査を行っている、日本手話通訳学会の萩原彩子さん。「すべての人にとって住みやすい社会を実現するために、今を生きる私たちにできることは何か」をテーマに、『こころの通訳者たち』の英語字幕制作に携わった大江美羽さん(東京外国語大学4年)、平戸ゆりさん(東京外国語大学4年)、山口紗和さん(東京外国語大学大学院修士1年)、そして山信美咲さん(東京外国語大学2年)と共に意見交換を行った。

萩原さんは筑波技術大学障害者高等教育研究支援センターの助教で、手話通訳学会にも所属。演劇における手話通訳(舞台手話通訳)に関する研究を行っており、『こころの通訳者たち』の劇中に登場する舞台手話通訳者を追うドキュメンタリー『ようこそ舞台手話通訳の世界へ』の監修も担当している。

対談冒頭、学生から『こころの通訳者たち』の感想を問われた萩原さんは、「最初に舞台手話通訳に音声ガイドをつけたという話を聞いた時、だいぶ無謀なチャレンジだと思った」と答えた。しかし、萩原さんはそう思ったことを後に反省したという。

「実際に映画を見ると、チャレンジすることのポジティブさが伝わってきました。『できるかできないか』という考えではなく、『やってみないと分からないからやってみよう』というポジティブさです。無謀なチャレンジだと思った私は、最初から諦めていたのかもと反省をしました。分かろうとすること、そして伝えたいと思うことは、通訳や翻訳の原点です。完璧に伝えられないならやめたほうがいいと思わず、チャレンジすることが必要だと映画を見て改めて思いました」(萩原さん)

対談では舞台手話通訳の仕事や舞台手話通訳者になるための過程、国内外における舞台手話通訳の広がりについてなどを、学生が萩原さんに質問する形で進行。萩原さんによると、舞台手話通訳はまだ日本で公的に学べるところがなく、自助努力に頼っているのが現状だという。また、技術を磨くこと自体の難しさがあることや、多様な分野で活躍できる手話通訳者の養成が必要であることなど、現在舞台手話通訳の世界が抱えている問題を解説してくれた。

また、萩原さんは今回『こころの通訳者たち』に英語字幕翻訳がつけられたことを受けて、舞台手話通訳と映像翻訳の類似性にも言及した。

手話は「見る言語」であり、演劇も舞台を見て楽しむものであるため、舞台手話通訳には「手話を優先して見てほしいとき」と「舞台上の動きを優先して見てほしいとき」を判断し、手話を出すタイミングを計る必要がある。映像を楽しみながら内容の理解ができる字幕を作るということと、舞台の内容を手話に目を向けてもらえる範囲内で伝えるという点で、「映像翻訳と舞台手話通訳には共通点があると以前から感じていた」と萩原さんは語った。この萩原さんの話を受け、大江さんは「時間内に収めることや、誰が話しているのかを明確化することにおいて、舞台手話通訳と字幕翻訳は確かに似ていると感じた」とコメント。また山口さんも「単なる言語や意思疎通ではなく、中身まで伝えることが大切だと実感した」と語った。『こころの通訳者たち』の字幕翻訳を経験したからこそ、2つの類似性を実感している様子だった。

様々なケースを想像し、できることから取り組むことがやさしさの第一歩
そしてイベントのテーマである「すべての人にとってやさしい世界を実現するためには」について学生に問われると、萩原さんは次のように考えを述べた。

「『多様な人がいる』ということを、どれだけ想像できるかがやさしさの第一歩だと思います。音声だけではアクセスが難しい人がいるかもしれない。階段だけではアクセスしづらい人がいるかもしれない。そういった想像ができれば、そこに向けたアクションができるようになります。人は多様であるということを知っていることが、やさしさの第一歩だと思います。
そして想像するだけでなく、それを考えているということを表に出すことも必要。『この方法でアクセスが難しい人はいますか?』と、対話の姿勢を見せることも大切です」(萩原さん)

『こころの通訳者たち』でも、目の見えない人、耳の聞こえない人、舞台手話通訳者、音声ガイド制作者、そしてプロジェクトに関わるすべての人が、何度も対話を重ねる姿が映し出されていた。障がいがある人が「この方法だと私はアクセスしづらい」と意思を表明すること、そしてそれを受け「ではこういう方法はどうですか?」と一緒に考えること。すべての人にやさしい世界を目指すには、その両方が大切なのだと知る対談となった。

今回のイベントは東京外国語大学のプロメテウス・ホールで行い、さらにその様子がZoomでライブ配信された。また萩原さんのアドバイスにより、急遽UDトーク(音声認識技術を使って会話・スピーチをリアルアイムに文字化するツール)の使用も決定。日本語ネイティブではない参加者にも映画の内容を伝える英語字幕、遠方に住んでいて会場に来られない人のためのオンライン配信、そして聴覚障がいのある人のためのUDトークと、結果的に「様々な障壁を取り除くために、今の自分たちができること」を詰め込んだ形での開催となった。想像力を働かせ、できることがあるか対話を重ね、そして可能な限り取り組んでみること。それを体現した本イベントは、まさに「すべての人にとってやさしい世界の実現」に繋がる第一歩となったに違いない。

◆WATCH 2024: For a Sustainable Future公式サイトは▶コチラ

最後は企画担当者と萩原さんで記念写真!


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国内外の大学生インターンと共に作り上げる無料オンラインイベント「WATCH 2024: For a Sustainable Future」の進捗をレポート




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【自身の経験や語学力を生かして活躍】国際映画祭のボランティアに挑戦

6月17日(月)に、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2024(SSFF & ASIA 2024)」が閉幕した。映画祭代表の別所哲也さんやアンバサダーのLiLiCoさん、その他豪華ゲストが登場したアワード・セレモニーが開催され、各部門の受賞作品が発表された。映画祭のグランプリである「ジョージ・ルーカスアワード」は俳優の森崎ウィンさんが初監督を務めた『せん』が受賞し、大盛り上がりとなった。

JVTAは毎年、本映画祭を字幕でサポートしており、上映される約200作品のほとんどの字幕を修了生が担当している。またJVTAは映画祭のボランティア募集にも協力しており、修了生や受講生の中には、「ボランティアスタッフ」として映画祭に携わる人もいる。

SSFF & ASIA 2024には上映会の運営からPR活動などで複数のボランティア分野があり、映画ファンや国際的な事業に興味のある人々が参加している。今年もJVTAの修了生が複数人ボランティアに参加。今回は語学ボランティアの氏家利恵さんと、PRボランティアの町田真由子さんに、活動についてお話を聞いた。

念願のボランティア参加。「英語ができる人がいて助かった」の言葉がうれしかった
語学ボランティア参加―氏家利恵さん

SSFF & ASIA 2024のボランティアに応募しようと思ったきっかけを教えてください。
氏家利恵さん(以下、氏家):「映画祭」自体に興味があり、毎年SSFF & ASIAのボランティア案内を見て「参加したいなぁ」という気持ちと、「本業に支障が出るのは困る」という思いが同じようにありました。これまでは仕事を優先にして諦めていたのですが、今回は少し状況が変わったため、思い切って参加を決めました。映画祭がどのように運営されているのかということに興味があり何らかの形で携わってみたかったので、念願かなってのボランティア参加となりました。

語学ボランティアでは、具体的にどのような活動をされましたか?
氏家:語学ボランティアは、基本は会場運営に関する業務をしながら、必要に応じて外国語で対応するという内容でした。そのため業務はオープニングセレモニー、上映会場で来場されたお客様の受付、整理券のお渡し、入場対応、会場・上映プログラムの案内、グッズ販売、チラシ配り、呼び込み等々多岐にわたりました。海外から来日した映画関係者に応対する際は英語を使います。一緒にボランティアに入った方から「英語ができる人がいて助かった!」と言っていただけた時はうれしかったです。

ボランティア中に印象的な出来事はありましたか?
氏家:映画祭代表の別所哲也さんが、舞台挨拶のない日も上映会場に足を運び、会場の一番後ろで上映会の様子をご覧になっていたことが印象的でした。また、学生ボランティアの方々もいて、一緒に作業をするのがとても新鮮で刺激を受けました。

氏家さんはボランティア中にSSFF & ASIAのスタッフと話をした際、「JVTAの修了生である」ということを伝える機会があったそう。するとスタッフの方に、「今後、上映作品の字幕翻訳をしていただけるかもしれませんね」という言葉をもらった。翻訳とはまた違った形で映画祭に参加したことは、氏家さんにとってとても良い経験になったそうだ。


JVTAの授業で学んだことが、映画のレビューの作成に役立った
PRボランティア参加―町田真由子さん

PRボランティアでは、具体的にどのような活動をされましたか?
町田真由子さん(以下、町田):活動は多岐にわたりました。まず事前に映画祭で上映される作品を観て、レビューを作成し、Filmarksという映画・ドラマ・アニメレビューサービスサイトに投稿したり、メディアアプローチするためのメディアのリサーチを行ったりしました。

各種レポートの作成も活動のひとつです。SSFF & ASIAのプログラムである「戦争と生きる力プログラムsupported by 赤十字」は、表参道の「カフェ ル・ポミエ」とコラボしたチャリティプレートを提供しており、私は店内の様子やチャリティプレートの撮影、また実際にプレートを食べてレポートを作成しました。レポートは日本語と英語で作成しており、SSFF & ASIAのオフィシャルサイトに掲載されています。また映画のオフライン上映に参加し、その様子もレポートとして作成しました。

そして6月4日(火)に開催されたオープニングセレモニーでは、会場ロビーで行われた企業と制作側をつなぐマッチングイベントの様子や各企業ブースの紹介動画を撮影し、通りがかった監督に声をかけて映画祭のTikTokに投稿する動画も作成しました。オープニングセレモニーのレポートも作成しており、こちらもオフィシャルサイトに掲載されています。

※各種レポートはこちらからご覧になれます!(外部サイト)

★PRボランティアの様子を画像で紹介!(すべて町田さん撮影)

カフェ ル・ポミエ
チャリティープレート
オープニングセレモニー会場ロビー
ロビーでのイベントの様子

ボランティア中に「JVTAで学んだことが役立った」という出来事はありましたか?
町田:JVTAの授業の中で、自分の好きな映像作品をプレゼンする機会がありました。その際、作品の展開をどのように説明すべきか、何を紹介すべきか学びました。今回PRボランティアの一環として10本ほど作品のレビューを作成しましたが、ネタバレをせずに、作品のエッセンスや感じたことをうまく書けたのではないかと思っています。

町田さんはオープニングセレモニーや上映会で監督の話を聞けたことが印象に残っているという。作品の制作理由や制作時の苦労、フィルム制作への熱意などを聞くことができ、改めて映像のおもしろさを感じたそうだ。そしてその経験は、「監督の思いをきちんと汲んだ翻訳者になりたい」と改めて思う機会となった。


国際映画祭は海外のフィルムメーカーや関係者と関わる大きなチャンスだ。特にSSFF & ASIAはクリエイターとのつながる機会を大事にしている映画祭である。一般来場者として会場に足を運ぶだけでも刺激になるが、スタッフとして参加することでより一層深い経験ができるだろう。映像翻訳者を目指す人、語学力を生かした仕事をしたい人、国際的な事業に関わりたい人は、このような貴重な機会を利用して幅広い経験を積み、今後のキャリアに生かしてほしい。


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言葉遣いと言葉遊びへのこだわり SSFF&ASIA 2024字幕翻訳者にインタビュー!



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2024年10月からの留学生対象

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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #47ドイツ語、英語、日本語…私の語学遍歴●麻野祥子(翻訳事業推進部)

私は幼少期をドイツ、中学・高校時代をニュージーランド、大学時代を日本で過ごした。子供のころから日常的に複数の言語に触れて育ったので、自然に語学に興味を持つようになった。

「帰国子女」と聞くと、英語がペラペラで感覚や立ち居振る舞いが日本人離れしているような人を想像するかもしれない。しかし、住んでいた国や年数、何歳の時に住んでいたか、どんな学校に通っていたかなど、様々な要素があり、人によって全く異なる体験をしている。私は3歳の時に家族とドイツに引っ越したのだが、現地校ではなく授業が全て英語で行われる学校に通った。しかしクラスメートはほとんどドイツ人だったため、授業中は英語、友達とはドイツ語、家では日本語で話していた。もちろん、実際はそれほどきれいに使い分けられていたわけではない。学校から帰って、その日にあったことや勉強したことを親に話す時は、英語で話すほうが楽だったため、日本語にちょこちょこ英語が混ざってしまうことがあった。兄と家でケンカするときは、日本語や英語の悪い言葉を知らなかったため、ドイツ語で罵り合っていた。また、家であった出来事を友達に話す時には、日本語の表現しか思いつかず言葉に詰まっていた記憶もある。

そしてドイツから日本に帰国して帰国子女の多い学校に入学すると、周りの英語力についていけず、自分の英語力がコンプレックスになっていった。アメリカやイギリスに住んでいたクラスメートは英語がペラペラで日ごろから英語で会話をしていたのだが、私はそこに入っていけず日本語で受け答えをしていた。友達と英語で話すことに慣れていなかったため、理解はできても日常的なフレーズがパッと出てこなかったのだ。

その後、再びニュージーランドに引っ越した時には、また違う壁にぶつかった。それはニュージーランドのアクセントや方言だ。ニュージーランドのアクセントを聞いたことがない方は、ぜひ一度検索して聞いてみてほしい。ニュージーランドの現地校に転入して間もない頃、英語の授業でスペリングテストがあり、先生が読み上げた言葉を紙に書かなければいけなかったのだが、eとiを見事にすべて書き間違えた。他にも、アメリカ英語にはない表現などに戸惑ったのを覚えている。

高校卒業後、大学進学のために帰国すると、今度は日本語の表現が分からなすぎて驚いた。当時の大学生に特有の表現だったのかもしれないが、「ワンチャン」や「楽単」「エグい授業」など、聞いたことがないフレーズが飛び交っており、数週間は話についていくのに苦労した。

最近では、ドイツ語をもう一度勉強しようと、ドイツ語のポッドキャストなどを聞いている。しかし自分の中のドイツ語が小学生時代に聞いていた表現しかないため、やはり大人同士の会話や最近のスラングを聞き取ることはなかなか難しい。

JVTAで映像翻訳の学習を開始される方の中には、様々なバックグラウンドの方がいると思う。日本で英語を勉強してきた人、留学して英語力を磨いた人、今海外に暮らしている人、子供時代に海外に住んでいた人、または日本語をずっと勉強してきた外国の人など…。それぞれ英語や日本語や多言語のレベルは違うかもしれない。人・地域・分野などによっても使われる表現は違うし、特にネットスラングなどは時代とともに急速に変化していく。私もなかなか成長を実感できなかったり、周りと比べてしまったりすることもあるが、それを自分の伸びしろととらえて、これからも楽しく語学に向き合っていきたいと思う。

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Written by 麻野祥子

あさの・しょうこ●日本映像翻訳アカデミー・翻訳事業推進部スタッフ。日英映像翻訳科修了生。

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JVTAが15年にわたり「ニッポン・コネクション」アワード・スポンサーを務めているワケとは?

2024年6月、第24回ニッポン・コネクション(以下、ニチコネ)がドイツで開催された。世界最大級の日本映画祭であるニチコネでは毎年100作品を超える短長編の日本映画が上映され、日本はもちろん世界中から多くの映画関係者が来場。幅広い日本文化に触れることのできるカルチャープログラムも多数あり、期間中はドイツのフランクフルト市に日本映画ファン、日本文化ファンが集結する。本映画祭によってその才能を見いだされる若手監督も多く、例えば2011年に『親密さ』という作品がニチコネで上映された濱口竜介監督は、その後世界的に大きく注目を集めるようになり、今年までに米アカデミー賞と世界三大映画祭のすべてを受賞するという快挙を成し遂げた。山下敦弘監督、豊田利晃監督やタナダユキ監督なども、ニチコネの常連である。

ニチコネの始まりは1990年後半。大学で映画学を参考し、アジア文化にも強い関心を持っていたマリオン・クロムファス氏とホルガー・ツィーグラー氏が「フランクフルト大学で日本映画を上映しよう!」と考えたことがきっかけである。当時大学生だった2人の呼びかけにより企画がスタート。様々な協力を得て企画は徐々に形になり、2000年4月、大学キャンパスの一部を借りる形で第1回日本映画祭「ニッポン・コネクション」が開催された。その後映画祭は年々成長を続け、2024年まで毎年開催されている。

JVTAだからこそできる、映画祭のサポートの形
今や世界で最大級の日本映画祭となったニチコネ。そんなニチコネとJVTAの関わり合いは、映画祭がスタートしてから10年後の2010年から始まった。JVTAが若手映画監督をサポートするニッポン・ヴィジョンズ審査員賞(2010年当時は「ニッポン・デジタル賞」)のアワード・スポンサーとなったのだ。アワード受賞の特典として、JVTAは受賞者の次回作に英語字幕を無償で提供している。

2010年は経済産業省に「クール・ジャパン海外戦略室」が設置された年であり、日本のソフトパワーを海外に発信する機運が高まっていた時期だ。日本のコンテンツの海外展開が広がり日英映像翻訳の需要が高まると考えたJVTAは、同年、東京校で日英映像翻訳のコースを開講した。

日英映像翻訳コースを開講した当時、JVTAには様々な声が届いた。その多くは、「日英翻訳の講座を日本でやってどうするの?」「英語ネイティブを集めた講座なのか?」というものだった。「日本語ネイティブが日本のコンテンツを英語に翻訳する」ことに対する違和感がまだまだ根強く残っていた時期だ。JVTAで日英・英日映像翻訳の両方を教え、日英映像翻訳コースの立ち上げにも大きく関わった石井清猛講師はコース開講に至った背景を次のように振り返る。

「将来的に『日本語ネイティブが日本のコンテンツを英語に翻訳する』ことが当たり前になるだろうという確信がありました。グローバルに見て非ネイティブの翻訳者が英語をターゲット言語とした翻訳の仕事をしているケースはいくらでもありましたし、日本のコンテンツに親しみ、愛着を持った日本の翻訳者が数多くいることもわかっていましたから。日英映像翻訳のニーズが爆発的に増えようとしているときに、そのような高い英語表現力を持った日本の翻訳者の皆さんが、日本コンテンツの英訳の仕事で活躍して悪いわけがない」(石井講師)

日本語コンテンツの英語翻訳の需要増を見越し、日英映像翻訳者を育成するべきだと考えていたJVTA。そんな時にニチコネの存在を知ったJVTAスタッフはドイツへ足を運び、実際に映画祭に参加した。そこからニチコネの運営チームとのつながりが始まった。やがて「映像翻訳に特化した翻訳者育成スクールであり翻訳会社であるJVTAならではの協力ができないか」と考え、英語字幕の無償提供を副賞とし「ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞」のスポンサーになることを決定した。

活躍の場が広がっていく歴代受賞監督
これまでにニッポン・ヴィジョンズ審査員賞を受賞した監督は、現在も多方面で活躍している。2015年に『The Cockpit』で受賞した三宅唱監督は、今年のニチコネでも上映された『夜明けのすべて』や、第46回日本アカデミー賞で主演女優賞を受賞した『ケイコ 目を澄ませて』などを制作。また2016年に『ディア―ディア―』で受賞した菊地健雄監督は、2022年に配信ドラマとして話題になった斎藤工氏主演のドラマ『ヒヤマケンタロウの妊娠』などを手掛けている。

日本の映画や文化をドイツで発信したいと始まったニチコネと、日本のコンテンツを世界に送り出すために日英映像翻訳者の育成を始めたJVTA。共通するのは、「日本の映像コンテンツを海外で多くの人に見てもらいたい」という強い思いだ。ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞を通して、JVTAはこれからも日本映画の海外進出の応援と、日英映像翻訳者の活躍の場を広げることに注力していく。

ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞 歴代受賞リスト
2010 『ライブテープ 』監督: 松江哲明 ※当時はニッポン・デジタル賞
2011 『堀川中立売』 監督: 柴田剛
2012 『ひかりのおと』 監督: 山崎樹一郎
2013 『A2-B-C 』監督: Ian Thomas Ash
2014 『螺旋銀河』監督: 草野なつか
2015『 The Cockpit』 監督: 三宅唱
2016 『ディアーディアー』 監督: 菊地健雄
2017 『プールサイドマン』 監督: 渡辺紘文
2018 『息の跡 』監督: 小森はるか
2019 『海抜』 監督: 高橋賢成
2020 『アリ地獄天国』監督:土屋トカチ ※第1回ニッポン・オンライン賞として受賞
2021 『海辺の彼女たち』 監督: 藤元明緒
2022 『ひらいて 』監督: 首藤凜
2023 『あなたの微笑み』 監督: リム・カーワイ ※関連記事はコチラ
2024 『LONESOME VACATION』 監督: 下社敦郎


特別篇:第24回ニッポン・コネクション 現地レポート!
今年のニッポン・コネクションに、昨年JVTAでインターンを行ったドイツ在住のゾーダー美亜さんが参加!来場者にインタビューを行い、現地の様子をレポートしてくれた。

ドイツで暮らすゾーダーさんは、JVTAでのインターンより以前からニチコネに何度も個人的に参加していたという。初めて参加したのは2016年とのこと。その時から考えると、ドイツ人の来場者はもちろん、他の国からの来場者も増えているように感じるという。年配の参加者もいるが、主な参加者は20~30代。今年の会場では日本食や、日本の服や小物も販売されていた。

ゾーダーさんは会場で計18名の参加者に突撃インタビューを実施。ニチコネの印象を聞いてみると、「友達や家族と一緒に楽しめる」「感銘を受ける」「日本の文化に触れられる」「参加者が国際色豊か」「普段と違う体験ができる」などの声があったという。日本映画が好きな人はもちろん、日本に旅行する予定の人や、日本の文化・言語に興味があるという人もいた。




またニチコネでは、JVTAと海外の大学生が日本の短編映画を世界に発信するプロジェクト「海外大学字幕プロジェクト(GUSP)」でベルギーのゲント大学とドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の学生が英語字幕を制作した短編映画2本も上映された。会場には実際にGUSPに参加した大学生も3名来場。ゾーダーさんはこの3名に、GUSPの活動について話を聞いた。

実際に英語字幕を作るうえで、難しかったことは?
・英語ネイティブではないので、どのフレーズがナチュラルに聞こえるか迷ったりしました
・グループに分かれて翻訳作業を進めたのですが、グループ内での意見の違いがあり、全員が満足する字幕を作るのに時間がかかりました
・字数制限などのルールを守るのが難しかったです

では、字幕を作るうえで楽しかったことは?
・映画を今までとは違う目で見るようになりました
・字幕を付けるというプロセスで日本語、また英語という言語をさらに良く知りました
・限られた字数でよりストーリーが伝わる用に字幕を組み立てていく作業が楽しかったです

最後に「また機会があったら字幕翻訳をやってみたいか?」とゾーダーさんが尋ねると、3人はそろって「はい」と答えた。そのうちの一人は、「将来、映像翻訳の仕事に就きたいと考えている」とも言っていたという。

日本映画の上映はもちろん、日本文化に触れられる様々なイベントが行われるニッポン・コネクション。ゾーダーさんは改めて、幅広い年代の人が楽しめる映画祭だと感じたそうだ。今回のレポートで興味を持った方は、ぜひいつか現地に足を運んでみてほしい。


第24回ニッポン・コネクションの様子(ゾーダーさん撮影)



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社会をより良くする方法を大学生と考えませんか?WATCH 2024にて、上映会+トークイベントを開催します!

JVTAの学生インターンが中心となって作り上げるオンラインイベント「WATCH 2024: For a Sustainable Future(以下、WATCH 2024)」は、国内外の大学生がSDGsをテーマにしたドキュメンタリー作品の字幕翻訳を手掛け、その上映とトークセッションなどを行うイベントだ。3回目の実施となる今回は、初めて日本発のドキュメンタリー映画に英語字幕を付けて上映する。4月から始まった翻訳作業も佳境に入り、学生たちは翻訳作業に加えて、ゲストを招いたトークイベントやインタビュー動画の制作にも取り掛かっている。

上映作品のひとつ、『こころの通訳者たち What a Wonderful World』は、舞台手話通訳を目の見えない人に伝えるための音声ガイドづくりに挑戦した人々を追ったドキュメンタリーである。インターン生は字幕制作過程でただ言葉を翻訳するだけでなく、目が見えない・見えづらい人や耳が聞こえない・聞こえづらい人とのコミュニケーションに対する理解を深めてきた。

その経験を生かし、作品上映に加えてトークイベントの開催もする。「Leave No One Behind ~すべての人にやさしい世界を実現するために~」と題した本イベントは、SDGsにおける国際目標の一つである「すべての人に健康と福祉を」に焦点を当てたイベントだ。『こころの通訳者たち What a Wonderful World』の英語字幕付き上映に加え、舞台演劇に特化した手話通訳技術に関する調査を行っている日本手話通訳学会の萩原彩子氏とインターン生の対談を実施。映画上映と対談を通して、舞台手話通訳の現場での工夫や困難、そして手話通訳者とろう者双方の視点から考えられる課題について深掘りし、すべての人が住みやすい社会を実現するための一助となる取り組みを考えていく。

本イベントは、インターン生の中から有志で集まったイベント企画チームが中心となって開催される。イベント企画チームでは企画の提案からゲストへの打診、大学内での告知準備などを自分達で進行。翻訳作業と並行して準備を進めている。今回、イベント企画チームの一人である東京外国語大学の山口紗和さん(修士1年)にイベントについて話を聞いた。

イベント企画チームに参加を決めた理由を教えてください。

私がイベント企画チームに参加を決めた理由は、WATCH 2024インターン生が一丸となって字幕翻訳に取り組んだ『こころの通訳者たち』を、より多くの人に届けたいと思ったからです。恥ずかしながら、本インターンに参加するまで、作品の内容はおろか、ユニバーサルシアターのような取り組みがあることについても知りませんでした。しかし、作品を何度も見返し、翻訳作業にあたるうちに、見えない人、聞こえない人、車いすの人から小さな子どもまで、“すべての人”に演劇を届けようとする舞台手話通訳者の方々の熱意に惹き込まれ、この物語をできるだけたくさんの人に見てもらいたいと思うようになりました。

「Leave No One Behind ~すべての人にやさしい世界を実現するために~」の開催が決まるまで、イベント企画チームではどのような話し合いがありましたか?

『こころの通訳者たち』のプロデューサー、平塚千穂子さんをはじめ、作品に出演されていた方にお話を伺ってはどうかという意見がありました。あるいは、大学の手話通訳サークルの学生や、手話に関する授業をされている先生に登壇を依頼してみてはどうかという提案もありました。しかしながら、作品そのものに焦点を当てるだけでなく、外部から専門家の方をお招きして普遍的なお話を伺うことで、WATCH 2024の重要なトピックであるSDGsをより身近に感じることができるのではないかという結論に至り、今回のイベント内容に決まりました。

翻訳作業と並行してのイベント準備はいかがですか?

とにかく今自分にできるベストを尽くそうという思いで、WATCH 2024に取り組んできました。そのため、『こころの通訳者たち』の翻訳に加え、短編上映作品『映画のヒカリ』の翻訳チームリーダー、PRチーム、イベント企画チームと、ほぼ全ての活動に携わっていて、慌ただしい日々が続いています。しかしながら、忙しさの分得られる達成感は大きく、1つのプロジェクトがまとまるたび、嬉しい気持ちでいっぱいになります。イベント企画チームでは現在、「Leave No One Behind ~すべての人にやさしい世界を実現するために~」の詳細を詰めているところです。チームメンバーと協力し合って、東京外国語大学内での広報依頼、イベントポスターの作成、ゲストスピーカーとのやり取りなど、着々と準備を進めています。それぞれ忙しい中、7月4日の開催に向けて一緒に動いてくれているメンバーのみんなに、心から感謝しています。


本イベントに興味を持っている方々に向け、ぜひ注目してほしいポイントを教えてください。

『こころの通訳者たち』のタイトルの英語訳、『Interpreters Beyond Boundaries』は、実は私が提案したものです。本作品を最後までご覧いただくと、どのような思いからこの訳出が生まれたかが伝わるのではないかと思います。また、作品上映の後には、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター助教の萩原彩子さんとインターン生の対談を予定しています。萩原さんは、日本手話通訳学会に所属されている手話通訳者で、『こころの通訳者たち』の劇中ドキュメンタリー、『ようこそ舞台手話通訳の世界へ』の監修を務めた方でもあります。研究者・手話通訳者として現場で活躍されている萩原さんにお話を伺いつつ、「すべての人にやさしい社会」とはどういった場であるべきか、またその実現のために、私たちには具体的に何ができるか、会場全体で考える機会とすべく奮闘しています。たくさんの方のご来場を、心よりお待ちしています。


WATCH 2024では上記イベントに加え、短編上映作品に関連したインタビュー動画も配信する。インタビュー「映画がつなぐ人と人〜移動映画館の活動に光を当てて〜」は、短編の上映作品である『映画のヒカリ』(2021)の主人公であるNPO法人World Theater Project理事の教来石小織さん、教来石さんによるカンボジアでの移動映画館で作品を見たことで人生が変わったニウ・サンデーさん、そして『映画のヒカリ』の監督である内田英恵さんにインターン生がインタビューし、『映画のヒカリ』撮影裏話やドキュメンタリー映画の魅力、映画がもたらす社会への影響などについて聞く。企画に携わる東京外国語大学の新妻みなもさん(4年)は、本インタビューについて次のように話す。

「私は『映画のヒカリ』を見て、映画は人と人を繋いでくれるのだということを強く実感しました。WATCH 2024はSDGsに焦点を当てたイベントであり、『誰ひとり取り残されない社会をつくる』というSDGsの目標を考えた時、映画も人と人を繋げるという点でこの目標達成に貢献できると感じました。そうした映画の魅力を知ってもらいたいと思い、映画がもたらす繋がりに焦点を当てたインタビューを企画しました。また、映画の持つそのような魅力について、映画にメインで登場するお二人や監督に直接お話を伺いたいと思い、ご登壇いただく運びとなりました。
『映画のヒカリ』や今回のインタビューには、映画を楽しむ子どもたちや映画を愛する方々が登場します。映画を見るという体験の魅力を皆様に再発見して頂けたら幸いです。」(新妻さん)


『映画のヒカリ』インタビュー「映画がつなぐ人と人〜移動映画館の活動に光を当てて〜」は、WATCH 2024のオンライン上映申込者は誰でも無料で視聴可能。また、もうひとつの短編上映作品『KIMONOルネッサンス』のプロデューサーへのインタビューも公開予定だ。

WATCH 2024の上映作品は、長編ドキュメンタリー『こころの通訳者たち What a Wonderful World』、短編ドキュメンタリー『映画のヒカリ』(2021)と『KIMONOルネッサンス』(2023年)の3作品。インターン参加の学生たちは翻訳前の下調べや作品解釈から始まり、実際の翻訳から字幕としての推敲まで、約2ヶ月を費やして字幕の完成を目指している。この字幕制作の様子は、インターン生による活動レポートでも紹介されている。学生レポートはWATCH 2024の公式ウェブサイトで読むことができる。

身体的な違いや国の違いを乗り越え、すべての人にとってやさしい世界を実現するために、私たち一人ひとりがどんなことをできるのか?これからの社会を担う学生たちと一緒に、ぜひこの機会に一緒に考えてみてはいかがだろうか?上映会やイベントの詳細と共にぜひチェックを。


■イベント情報
「Leave No One Behind ~すべての人にやさしい世界を実現するために~」

開催日時:2024年7月4日(木)17:20~19:45(16:50開場)
会場:東京外国語大学 プロメテウス・ホール(東京都府中市)
※同時にZoomでのライブ配信も実施。
参加費:会場・オンライン共に無料
その他:要事前申し込み(2024年7月3日締切 ※日本時間)

【当日の内容】

『こころの通訳者たち What a Wonderful World』上映(上映時間94分)
※ライブ配信参加者にはZoomの画面共有機能を使用して上映
『こころの通訳者たち What a Wonderful World』監督・山田礼於氏からのビデオメッセージ
「すべての人にやさしい世界を実現するためには?」~萩原彩子氏×「WATCH 2024」インターン生対談~



【ゲスト】萩原彩子

筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター 助教/手話通訳士

舞台鑑賞好きが高じて、演劇における手話通訳(舞台手話通訳)に関する研究をはじめる。映画『こころの通訳者たち』劇中ドキュメンタリー『ようこそ舞台手話通訳の世界へ』監修。日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局。


■『映画のヒカリ』インタビュー「映画がつなぐ人と人〜移動映画館の活動に光を当てて〜」
出演者:教来石小織(NPO法人World Theater Project理事)、内田英恵(『映画のヒカリ』監督)、ニウ・サンデー(『映画のヒカリ』出演者)
SDGsが目指す「誰一人取り残されない社会」の実現に向けて、映画はその力をどのように発揮することができるのか。映画がもたらす人と人の繋がりに焦点を当てた『映画のヒカリ』を通じて考える。


各詳細は▶WATCH 2024公式ウェブサイトから
本件に関するプレスリリースは▶こちらから


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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #46 誰が為にハチは鳴る●石原彩(日本語字幕ガイド制作ディレクター)

決して褒められたものではないが、カフェで一服しているとき、道を歩いているときに聞こえてくる他人の会話をひそかに聞くことを趣味としている。台本がなく、行き当たりばったりな会話は予想もしなかった方向に展開し、思いもしなかった言葉や文脈を教えてくれるからだ。

昨年、おばあちゃんの原宿と呼ばれる巣鴨のマクドナルドにいた時のこと。隣に座っている2人(おじいさんとおばあさん)の会話を聞いていた。

おじいさん「あんた、いくつなの?」
おばあさん「ハチよ、ハチ」
おじいさん「なら、年上か」

どういうこと?? もっと詳しく! …と気が気でなかったのだが、次のおじいさんの一言で謎が解けた。

「わし、今年で88よ」

私はすぐにGoogle検索をした。「2023年 年齢 昭和8年」。なるほど、このおばあさんは90歳、昭和8年生まれだったわけだ。
昭和1桁生まれの人は「昭和」を省略することがある。思いもしなかったタイミングで新しいサンプルを手に入れたのだった。

音がない状態で映像を楽しむことを目的とする字幕ガイドでは、聞こえたままの日本語を文字起こしし、字幕にする簡単な仕事だと思われている。
この見方は9割がた合っていて、私たち制作者は聞こえたままの日本語を字幕に置き換える。しかし、文字に置き換えるというのは、実際にやってみると案外難しい。

巣鴨のマクドナルドのおばさんの「8よ、8」は、音としては「ハチよ、ハチ」になる。
これを「8よ、8」と結論づけるには、多くの「読み」が必要だ。おじいさんの「なら、年上か」「わし、今年で88よ」から、「ハチ」が数字を意味すると仮説を立て、調査し、結論を出していかなければならない。
字幕ガイドでは、これの一連の作業を、文脈を読む、と呼ぶ。

①おじいさんは歳下なので、おばあさんは同年齢の88歳ではない。
②「ハチ」を数字の「8」と仮定して、おばあさんの容姿から推測すると98歳や108歳とは考えづらい。
③では、数字に関係し、おばあさんに関係ありそうな「ハチ」とは?

私には2000年代生まれの若者がSNS上で自分の生まれ年を下1~2桁で表す、という文脈のサンプルがあった。そこで、「ハチ」が昭和1桁年ではないか、とさらに仮説を立て、生まれ年を調査し、「8」という結論にたどり着くことできた。
これが、字幕ガイド制作者の仕事なのである。
ベテランの字幕ガイド制作者ほど音を深読みする。

あるいは、おばあさんは年齢を隠しておきたくて「蜂よ、蜂」ととぼけているのかもしれない。
また、これがフィクション作品であれば、正解は「蜂」であり、「蜂」に裏の意味が隠されている可能性もある。そうなれば、「8」は誤った情報となり、字幕ガイドの利用者がストーリーを理解できない。

「蜂」の意味が登場人物にも視聴者にも開示されていないのであれば正解の「蜂」とするのは不適当。わざわざ字幕で正解を出してしまうのは、最終回の最後の1秒までストーリーがどう展開するのか分からない、作劇を楽しむ権利を奪ってしまうことになる。
深読みに深読みを重ね、形のない音を文字という一種の図形に置き換えていく。それが「聞こえたままの日本語を文字起こしする」という仕事だ。

他人の何気ない会話は言葉の省略が多く、当事者間でしか通じないスラングや符丁も連発される。会話を理解し、豊かな言葉の世界に入って楽しむためには、文脈を読み、サンプルを集め続けなければならない。
やはり決して褒められた趣味ではないのだが、「すみません!自己研鑽の一環なんです!」と内心言い訳をしつつ、私は今日も密かに他人の会話を聞いている。


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Written by 石原彩
いしはら・あや●日本語字幕ガイド制作ディレクター・講師
日本映像翻訳アカデミー(JVTA)「バリアフリー講座」修了生。10年以上にわたり、劇場公開映画・アニメ・ドラマ作品の日本語字幕ガイド制作に携わる。
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2024年10月期ご希望クラス仮予約フォーム

このたびは、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)東京校の講座・コースへのお申し込みをご検討いただき、ありがとうございます。

こちらはご希望クラスの仮予約フォームになります。
「実際のお申し込みの前に、ひとまずクラスの席を押さえておきたい」という方はぜひお気軽にご予約ください。


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※仮予約はメールでのキャンセルが可能です。また10月18日(日)までに本申込のお手続きが完了されない場合は、自動的に仮予約が解除されます。

※仮予約ではなく、コース申し込みに進みたい方は▶こちらよりお手続きをお願いします。

※ご入学に際し、ご不明点やご不安点がございましたらお気軽にメールまたは個別相談にてお知らせください。


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