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世界最大級の日本映画祭「ニッポン・コネクション」にて、JVTAが翻訳に携わった作品が多数上映!

世界最大級の日本映画祭「第24回ニッポン・コネクション」が2024年5月28日~6月2日にドイツのフランクフルトで開催される。多数のプレミア上映を含む約100本の短編・長編映画が上映され、日本の多様性に特化したワークショップやコンサート、屋台など様々なカルチャープログラムも実施。伝統から現代に至るまで、日本の多彩な面を紹介する映画祭だ。今年も、『首』(北野武監督)や『カラオケ行こ!』(山下敦弘監督)、『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』(武内英樹監督)、『BLUE GIANT』(立川譲監督)など話題作も数多く上映される。JVTAは毎年「Nippon Visions Jury Award(以下、ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞)」のアワード・スポンサーとして参加するほか、日英字幕翻訳のワークショップなどを通じて本映画祭をサポートしている。

JVTAが英語字幕に携わった作品が多数上映!大注目の濱口竜介監督作品も!
日本映画界の優れた若い才能を称える賞であるニッポン・ライジングスター賞に今年選ばれたのは、古川琴音さん。古川さんは、2021年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した濱口竜介監督の映画『偶然と想像』で国際的に知られるようになった。同作品の英語字幕はJVTAが担当しており、今年ニチコネでも英語字幕つきで上映される。この他、『世界の終わりから』(紀里谷和明監督)、そして『地球星人(エイリアン)は空想する』(松本佳樹監督)もJVTAが英語字幕を担当した上映作品だ。

『偶然と想像』



JVTAがアワード・スポンサーとなっている「ニッポン・ヴィジョンズ審査員賞」では、受賞監督に特典として次回作の英語字幕をJVTAが制作し、提供している。昨年『あなたの微笑み』で同賞を受賞したリム・カーワイ監督の新作『ディス・マジック・モーメント』は今年の映画祭で英語字幕つきで上映。カーワイ監督初のドキュメンタリー作品であり、現地では上映時に監督の登壇も予定されている。

『ディス・マジック・モーメント』



また、JVTAの指導の下で海外の大学で日本語を学ぶ学生が英語字幕をつけた日本の短編映画も上映される。JVTA Meets PIA Film Festival: Shortsで上映されるのは、『また来週』(ハインズ麻里子監督)と『うらぼんえ』(寺西 涼監督)の2作品。両作品は、JVTAと海外の大学生が日本の短編映画を世界に発信するプロジェクト「海外大学字幕プロジェクト(GUSP)」の一環で、ベルギーのゲント大学とドイツのハインリッヒ・ハイネ大学の学生が英語字幕を制作した。


さらに今年は、ショートショートフィルムフェスティバル&ASIA 2024(SSFF&ASIA 2024)の特別プログラム上映が初開催。昨年のSSFF&ASIA 2023でジョージ・ルーカスアワード(グランプリ)に輝き、英語字幕をJVTAが手がけた『希望のかけ橋』(監督:吉田和泉)の上映にも注目したい。

毎年恒例 JVTAのワークショップも開催!
ニッポン・コネクションの見どころは映画上映だけではない。「ニッポン・カルチャー(NIPPON CULTURE)」部門では、日本文化に触れることができる様々なプログラムが開催される。JVTAは「JLMI Online – Interactive Course For Japanese Learners」と「Online Workshop: Subtitling」を実施。「JLMI Online – Interactive Course For Japanese Learners」は、JVTAが運営するJLMI(Japanese Languages and Media Institute)のワークショップで、講師のビル・ライリーが映画、マンガ、アニメを題材に日本語学習者に向けたレクチャーを行う。また「Online Workshop: Subtitling」もビル・ライリーが講師となり、実際の日本映画のシーンを取り上げながら字幕制作について解説する。オンラインで開催されるワークショップなので、日本を含む世界中から参加可能だ。


■オンライン・ワークショップ JLMI Online – Interactive Course For Japanese Learners

※日本では5月30日(木) 20時スタート

■オンライン・ワークショップ Subtitling-Workshop

※日本では6月1日(土)20時半スタート


上映作品の詳細やワークショップ、その他イベント情報については公式サイトからチェックを。
「ニッポン・コネクション」公式サイト

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【イベントレポート】「プロを目指す人」同士の絆は長く続く 2024年4月期ウェルカムパーティーをリモート開催!

日本映像翻訳アカデミー(JVTA)は毎期、新しく映像翻訳を学び始めた方を迎えたウェルカムパーティーを開催している。

2024年4月期のウェルカムパーティーには「英日映像翻訳総合コース・Ⅰ」「日英映像翻訳総合コース」、バリアフリー字幕や音声ガイド制作のスキルを学ぶ「メディア・アクセシビリティ科 音声ガイドコース」、そして英文解釈力の向上を目指す「English Clock ロジカルリーディング力強化コース」 の受講生・スタッフ合わせて約40名がオンラインで参加した。



今回のパーティーはJVTAが新たに制作したオープニング動画からスタート。映像翻訳ディレクターであり、英日映像翻訳、日英映像翻訳両方で教える石井講師が登場し、パーティーの開幕を告げた。

ウェルカムパーティーでは各自自由に飲食をしながら参加しており、パーティー冒頭の乾杯の音頭はJVTA代表の新楽が担当。乾杯の前に、新楽代表は次のように参加者へ向けて言葉を贈った。

「JVTAはプロの映像翻訳者になることを目指す職業訓練校です。そのため、学習中に横のつながりを作ることや、クラスメートがいるということを重要だとイメージしない方もいるかもしれません。しかし、私が30年近く受講生の皆さんをサポートして思うのは、『プロを目指す』という明確な目標を持って進む中で築かれるネットワークや仲間は、小学校や中学校の同級生とは全く違うということ。ここで築かれた絆は、非常に長く続く特別なものになると実感しています」

今日この日の縁が、今後長く続くものになるかもしれない。ウェルカムパーティーがお互いを知るための良い機会になってほしいという思いを語った。

今回のウェルカムパーティーは受講生同士や講師・スタッフとの交流会と、ゲームアクティビティで構成。交流会は前半がクラス毎にブレイクアウトルームに分かれて、後半はコースもクラスもミックスになったルームで行われた。交流会では「翻訳や学習に役立つグッズは?」というトークテーマを設定。「『てにをは辞典』を使うことで、日本語表現の思い込みに気づく」「PCに直接イヤホンを挿すのではなく、スピーカーをかませると映像音声の聞こえ方が変わる」など実用的な情報交換をするルームもあれば、話が広がり「翻訳がうまいと思った映画は?」という話題で盛り上がるルームも。また新楽をはじめJVTAスタッフも各トークに参加していたため、「映像翻訳業界における翻訳人材は不足しているのか、それとも飽和状態なのか?」のような業界動向に関する話題や、スタッフ自身の受講生時代の経験談とそれに基づく学習アドバイスというアカデミックな話を繰り広げるルームもあった。

そして今回のゲームアクティビティは「Movie Quiz」。JVTAスタッフが選んだ映画の一部の画像を見せ、参加者がその映画タイトルをチャットに入力して答えるというゲームだ。「コトバのプロ」を目指す学校らしく、正確な表記で入力することも正解の条件。「劇場版」の枕詞が必要だったり、サブタイトルの記載も求められたりと、映画そのものは多くの人が分かっても、細かい点で正解・不正解が分かれた。

各問、正解発表の際にはJVTAスタッフがその作品を選んだ理由を解説。『幸福の黄色いハンカチ』(1977)を出題した藤田庸司講師(映像翻訳ディレクター、英日翻訳科講師)は、「子どもの頃に見て、大人になって見返しても素晴らしいと感じた作品。特に高倉健さんがビールを飲むシーンが素晴らしいのでぜひ見てほしい」と熱弁。藤田奈緒講師(映像翻訳ディレクター、英日映像翻訳科講師)は『ザリガニの鳴くところ』(2022)を取り上げ、「推理要素もドラマ要素もあり、エンタメが詰まった作品。またエンドロールで流れるテイラー・スウィフトの主題歌にも字幕がついており、その字幕もとても良かった」と、映像翻訳者らしい視点でのおすすめポイントもつけ加えて解説した。ちなみに『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)を出題問題にした新楽代表からは、本作が現在の映画界に与えた影響に関する解説と共に、「過去にジュリー・アンドリュースのファンクラブに入っていた」という秘話も明かされた。

クイズ終了後、藤田奈緒講師は「これまであまり興味がなかったジャンルの作品や、新しく知った作品も見てみると映像翻訳の勉強になる。ぜひクイズで取り上げた作品をはじめ、色々な映像作品を見てほしい」と締めくくった。

ゲームアクティビティや交流会を通し、1時間半のパーティーはあっという間に終了。参加者からは「他のクラスの人から課題やクラスの様子などを聞けて参考になった」「クイズを通して世代もジャンルも違う映画作品に触れることができて良い刺激になった」などの感想が届いた。

JVTAは今後も皆さんの学習を全力でサポートしていきます。

最後はみんなで記念撮影!




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フェスティバル・ディレクターへインタビュー!「SSFF&ASIA 2024は世界中のフィルムメイカーと交流できるチャンス」

ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(以下、SSFF & ASIA)2024が6月4日(火)から開催となる。今年も世界中から選りすぐりのショートフィルムが集まり、幻のジョン・レノン出演作品から新進気鋭のクリエイターによる作品まで約270作品が上映。一部作品のオンライン上映はすでにスタートしている。

日本映像翻訳アカデミー(JVTA)は十数年、本映画祭を字幕翻訳でサポート。この度、ショートショート実行委員会フェスティバル・ディレクターの武笠祥子さんに、今年の映画祭に関するインタビューを実施。映画祭の見どころや、字幕に対する感想などを伺った。

●第26回目となるSSFF & ASIAについて、今年の注目ポイントを教えてください。
続く紛争や災害のニュースで始まった今年、 映画祭は、『Illuminate Your Life ~いのち 照らせ セカイ照らせ』をテーマに、「いのち」や「人生」、「生活」と、それを取り巻く「セカイ」を照らし出す各作品を発信し、作品を通じて観る人自身の生活や人生にもライトをあて、共感や発見、感動が生まれる場、そして世界へと目を向けるきっかけを作りたいと考えています。コンペティション作品の上映のほか、AIを活用したショートフィルムのセレクション、視覚障碍者向け音声ガイド+聴覚障碍者向け字幕ガイドを付けたユニバーサル上映イベント、海外の映画祭で活躍するプログラマーをゲストに迎えるトークイベント、仏五輪にちなんでスポーツがテーマの作品上映なども行います。
短い時間で描かれる作品だからこそフットワーク軽く、「今」を映し出し、フィルムメイカー一人一人の想いが率直に表現されるのがショートフィルムです。戦争や災害、移民、ジェンダーといったフィルムメイカーが目の当たりにしている世界の「今」が集結しているイベントになると思います。

●JVTAが制作している英語字幕・日本語字幕はいかがですか?
SSFF & ASIAでは例年200作品を超える作品を上映、そのほとんどの字幕をJVTAにて作成頂いています。ストーリーの分かりやすいものから実験的なものまで幅広いジャンル、かつ様々な国や文化を扱った作品が集まっていますが、その1つ1つにとても丁寧で監督の気持ちに寄り添った字幕をつけていただいていると感じています。

●AIによる自動翻訳も注目されていますが、AI翻訳と人間による翻訳の関係性について、どのように思われますか?
AI生成は字幕翻訳だけでなくすべての分野においてここ数年注目が高まっており、SSFF & ASIAでもこれまでにAIに関するイベントやAIを活用した作品を取り上げてきました。誰もが動画を撮れ、その動画を個人の力で世界に紹介することができる時代において自動翻訳のニーズは高く、その精度は今後ますます高まると思います。ただ、個人的には作品の背景にある社会や文化そして言葉そのものも日々変化するものであり、作り手である人の想いに最も適した言葉を選ぶことができるのはまた人であると考えます。特に映画は映像作品だけではない複数の要素で構成された総合芸術ですので、翻訳者の皆さんには、文字面だけの翻訳ではない作品全体の世界観を反映した字幕づくりを期待します。

●映像翻訳学習者、また映像翻訳者の皆さんに向け、メッセージをお願いします。
映像字幕は作品をより多くの観客に届けるために不可欠な要素であると思います。翻訳者の方々には作品単体だけでなく、監督をはじめ作品に携わった方々と一緒に観客に作品を届ける気持ちで字幕制作に取り組んで頂けたら、と思います。

SSFF & ASIAでは毎年国内外から多くのクリエイターが集まります。上映前後には直接話せる機会も多いので、ぜひ足を運んで作り手や観客の人々と交流してみてください。

世界中から集まった映像作品を見ることができるSSFF&ASIAは、映像翻訳者にとっても多彩なジャンルの映像作品に触れられる貴重な機会である。「戦争と生きる力プログラム supported by 赤十字」「Women in Cinema Project」「レインボープログラム」など、ショートフィルムを通じて社会課題への知見を深めることができる点も本映画祭の特徴だ。また、武笠さんが言及している「視覚障碍者向け音声ガイド+聴覚障碍者向け字幕ガイドを付けたユニバーサル上映イベント」も、実は上映作品のバリアフリー字幕ガイドと音声ガイドの制作をJVTAのメディア・アクセシビリティ部門が担当している。

世界中のフィルムメイカーがそれぞれの視点で作ったショートフィルムが一同に会するSSFF&ASIA 2024。作品上映だけでなく各種トークイベントも開催されるので、この期間に映像作品の持つ力を色々な面で実感してもらいたい。イベントの映画祭に関する最新情報は公式サイトでチェックを。

ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2024 公式サイトは▶こちら

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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #45 風に吹かれて/Blowin’ in the Kaze●石井清猛(翻訳室)

ある日YouTubeのおすすめ動画リストに見つけた「丸の内サディスティック(弾き語り)」を、セピア色のサムネに映る少々時代錯誤的なくわえタバコ姿に引かれて再生してみると、いかにも自由闊達な演奏が終わったところでタバコと見えたものが実はじゃがりこだったと分かり、そのスリリングな音楽とは対照的なとぼけたユーモアに意表を突かれはしたものの、初めてその動画を見た私の記憶に不敵な笑みを浮かべたこの演奏者の名前は残りませんでした。しばらくたって今度はSpotifyのレコメンデーションに促されるまま、「何なんw」と題され歌詞のそこかしこに“わし”“はさがった”“何じゃったん”といった方言の言い回しが絶妙かつグルーヴィーな感じで混ぜ込まれた曲を聞いたときに、ようやくその歌手の名前が藤井風であること、そして彼がデビュー前から「丸ノ内サディスティック」だけでなく他にも大量のカバー演奏(サックスの「Donna Lee」まで!)をYouTubeにアップしていたことを知るに至ります。

それ以来、ご多分に漏れずあっさり彼のファンとなった私は多くの“風民”の皆さんと共に彼の活動を見守っていくことになるわけですが、とはいえさまざまな意味で破格の存在である藤井風の数々の音楽的偉業について書くことは私の手に余るため、今回は彼の歌詞、それも英訳詞について考えてみたいと思います。

藤井風(「呼び捨てにするな。“風さん”と呼べ」というVaundy氏の発言へのリスペクトからこれ以降“風さん”と表記します)はアルバムの歌詞カードに自ら手がけた全曲の対訳(英訳)を載せています。さらにYouTubeで公開されている公式ミュージックビデオのほとんど全てに英語字幕データがアップされていて、字幕表示のオプションを選ぶことで視聴が可能です。これはつまり、風さんが映像翻訳をやっている(!)ということ。そう分かったとき、私の鼓動がBPMにして20ほど速まったことは言うまでもありません。実際、風さんの英語字幕には私たちを“映像翻訳的”な興奮へと誘う表現が散りばめられていて、彼のミュージックビデオを字幕つきで見る者の視聴体験をさらに豊かなものにしています。(風さんのMVの字幕は多言語ですが、ここでは話をひとまず英語に限って進めます)

例えば先ほど触れた「何なんw」の次のような箇所。引用は上の日本語が歌われる歌詞で、下の英語が対応する字幕です。


近すぎて 見えなくて
You can’t see me, you ignore me,

ムシされて
because I’m too close to you

ここでは連続した字幕が②のbecauseによって繋がれることによって、すでに読み終えて画面から消えてしまっている①の字幕の情感が呼び戻され強調される構造が見て取れます。単純に日本語と英語の語順の問題に還元することができない、映像翻訳ならではの効果を狙った表現ですね。

また次の箇所ではどうでしょう。


勢いにまかせて
Nobody can stop you

肥溜めへとダイブ
from diving into a honey bucket

インパクト強めの④での解放感へ向けて期待を煽る流れの中、③でテンションを高めていけるように周到にセンテンスが構成されていることに加え、表現の観点から見ても楽曲と歌詞の展開にマッチした見事なチョイスだと思います。

風さんの英訳について考える際に見逃せない要素として、映像翻訳ともう一つ挙げられるのが、自己翻訳(自作翻訳、self-translation)の側面です。通常の翻訳では一方(ソース言語)をオリジナルとして、もう一方(ターゲット言語)を二次制作物として位置づけて議論を始めることが多いのですが、自己翻訳では、何しろどちらも作者自身の手によるものなので、オリジナルと二次制作(コピー)の間に引かれた境界線は曖昧なものにならざるを得ません。もちろん風さんの場合、日本語で歌っているので日本語詞をオリジナルと考えるのが妥当であることは百も承知ですが、それでも、次のような字幕を見ると、日本語と英語が一つの世界を共有しながらお互いを補完し合っているようで、もはやどちらがオリジナルかを決めることは大して重要ではないという気にさせられます。

「帰ろう」

あなたは弱音を吐いて
You are worried about the future

わたしは未練こぼして
I am still attached to the past

「青春病」

切れど切れど纏わりつく泥の渦に生きてる
I’m living in an inescapable whirlpool of muddy water

この体は先も見えぬ熱を持て余してる
This body has more destructive heat than it can handle

日本語詞の“真意”を説明しようとしているのではなく、まして英訳の等価性や忠実性にこだわって逐語訳的になっているのでもない。また英語表現の座りのよさを優先するために拡大解釈による意訳をしているのとも違う。風さんの翻訳には、言ってみればもともと日本語でも英語でもなかった(あるいはその両方だった)“何か”にたまたま音楽と言葉のかたちが与えられるような、そんな稀有な現象に私たちを立ち会わせてくれる瞬間がたしかにあり、そのような印象は歌詞の半分が英詞である「Workin’ Hard」を聞くとさらに強まります(そして私たちは英詞部分にも日本語字幕をつけたい衝動に駆られたりします)。


みんなほんまよーやるわ
Y’all are doing really great

めっちゃがんばっとるわ
Working your asses off

わしかて負けんよーにな
I will do my best, too

ひそかに何かと努めるわ
Do whatever I could

ときに文学作品における自己翻訳には、その“正統性”から他人による新たな翻訳に対する抑圧として作用する面が指摘されることがありますが、風さんの英訳の場合はどうでしょうか。どうやらその指摘は当てはまらなそうだということが、独自の英詞で風さんの曲をカバーしてYouTubeに日々上げられているさまざまな国の人たちによる「歌ってみた」動画を見れば分かります。風さんの英語字幕つきMVは、何語を母国語としているかにかかわらず、これからも国内外の多くの視聴者にインスピレーションを与え続けるのでしょう。そして私たちをそうとは知らず、映像翻訳の、翻訳の持つ本質的な力に触れさせ続けるのでしょう。


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Written by 石井清猛
いしい・きよたけ●JVTA映像翻訳ディレクター
Media Translation and Accessibility Lab(翻訳室)リーダー。日本映像翻訳アカデミーで映像翻訳を学び、プロの映像翻訳者として活躍。その後、同校にて日英・他言語翻訳プロジェクトのチーフディレクターとして、エンタメ、PR、観光など多様な分野の翻訳や映像制作を手掛ける。映像翻訳者の育成にも従事し、同校本科で講師を務める他、企業や国内外の学校教育機関で映像翻訳、海外PR、グローバル教育の講義を多数実施している。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
 
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映画『あこがれの色彩』の海外映画祭出品用字幕をJVTAが担当

映画『あこがれの色彩』が5月より順次日本全国で公開される。本作は資生堂のCMを長年にわたって手がけ、<女性美の魔術師>とも呼ばれた小島淳二監督による長編作品だ。監督自身の地元である焼き物の街・佐賀県西部を舞台に、14歳の少女・結衣の葛藤を描く。手の込んだものより合理的でシンプルな焼き物に需要が移る陶芸の街のいまを通して、“美しさとは何か”を問いかける作品である。

本作は日本での公開に先駆け、ポートランド国際映画祭、AVIFF カンヌ・アート・フィルム・フェスティバル、ミドルベリー・ニュー・フィルムメーカーズ映画祭で上映されている。これらの上映における英語字幕を、JVTA修了生の麻野祥子さんと幡野珮蘭さんが担当した。

作品の重要なモチーフになっているのは、日本の「陶芸」である。英語字幕制作にあたっては、海外の観客にこのモチーフを正確に伝えるため、さまざまな点に気を配って翻訳作業が進められた。麻野さんは「佐賀県の窯元について、有田焼が作られる過程についてなどを調べて題材への理解を深めた」と、念入りな調べものを実施。また幡野さんは「陶芸の弟子という文化的な要素は、異なる文化圏では異なる象徴や意味を持つ場合がある」と考え、適切な言葉や表現を選ぶよう注意を払った。

この陶芸というモチーフは、小島監督が国際映画祭へ出品を決めた動機にも関係する。小島監督は国際映画祭へ本作を出品した理由として、「日本の伝統工芸である有田焼の作家の苦境を物語のベースにしていたので、海外の人にどう受け止められるのかと思って出品を決めた」と説明。小島監督は映画祭のため、アメリカのポートランドとフランスのマルセイユに足を運んだそうだが、特にマルセイユでの観客の反応が印象的だったという。

「マルセイユの観客は有田焼の認知も高く、手の込んだ工芸品よりもシンプルな量産品ばかりが好まれていることに対して共感している声がありました。ファストファッションへの危惧も語られていました」(小島監督)

フランスでは「ファストファッション罰則法」が可決されるなど、大量生産・大量消費に対して敏感な動きを見せている。有田焼をモチーフに「職人の手による凝った絵柄より、無地でシンプルな無個性のものが売れる」という現代の傾向に疑問を投げかける本作の表現が、字幕と共にフランスの観客に届いたのだろう。

字幕の表現に関しては、14歳の結衣が主人公ということでティーンエイジャーらしい言葉遣いに難しさがあったと麻野さんは話す。中学生らしく「やば」「ダサ」など、字数制限が厳しい短いセリフも多かったそうで、麻野さんは中学生らしさを英語字幕でも表現できるように意識。また結衣が通う絵画教室の先生のセリフについては、英語で書かれた絵画教室のブログやサイトを調べ、絵の先生らしい用語を調べて翻訳に生かしたそうだ。

一方、幡野さんはシーンによって「原文を大胆に意訳した」という。例えば、結衣が裏切られたと感じるシーンでのセリフは、次のように意訳をした。

「死ねばいいのに」 → Go to hell.
「みんな死ねばいい」 → I wish they’d all die.

幡野さんは翻訳にあたり、「作品全編を視聴者として鑑賞してから、翻訳に入ること」を非常に大切にしているという。字幕翻訳ではセリフの文面の意味だけでなく、その文脈や場面での機能や意図を理解することが重要だからだ。登場人物が何を伝えようとしているのか、その場面や物語の流れを考慮することで、直訳では伝わらない字幕表現に書き換えることができる。幡野さんは「小島監督が大胆な翻訳案を受け入れてくださり、より作品の良さが世界に伝わる英語字幕が実現できたと思う」と語った。

日本映画の海外での躍進が目覚ましい近年だが、海外進出のための最初のステップとして英語字幕は重要な役割を担っている。幡野さんはそんな英語字幕制作について、「翻訳の過程で作品の解釈が左右される可能性もあるため、字幕翻訳は非常にやりがいのある仕事」だという。麻野さんも「監督のメッセージを世界に広めるために力になれていると実感できる」と、その役割に誇らしさを感じているようだ。

最後に、小島監督に本作の見どころとJVTAの翻訳学習者に向けたメッセージをいただいた。

「本作の主人公・結衣(中島セナ)は、日本の伝 統工芸である有田焼の街に生まれ 、折り合いがつかない家族のことや器用に立ち回る大人の振る舞いに葛藤しながら、言葉にできない思いを絵に描き続けます。大人の社会の業や矛盾に、もがき苦しむ14歳の純粋さが何を語っているのか、映画を見て感じていただければと思います。
曖昧な表現の多い日本語を的確に英語に置き換える翻訳者は、映画制作者にとってなくてはならない存在です。沢山の邦画が海外に出て行けるように応援よろしくお願いします」

『あこがれの色彩』は5月10日より全国で順次公開となる。
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SSFF&ASIA 2024開催!JVTAは今年も字幕翻訳で映画祭をサポート

6月4日(火)より、世界最大級の短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2024 (SSFF & ASIA 2024)」が開催される。都内複数の会場で上映会を行うほか、4月25日(木)からはオンライン会場で一部プログラムが先行配信となる。第26回目の開催となる今年のテーマは、『IlluminateYourLife~いのち照らせセカイ照らせ』。「いのち」や「人生」、「生活」と、それを取り巻く「セカイ」を照らし出す各作品を発信し、作品を通じて観る人自身の生活や人生にもライトをあて、共感や発見、感動が生まれる場、そして世界へと目を向けるきっかけを作りたいという思いが込められている。

今年の映画祭では世界114の国と地域から4936本の作品が集まり、厳選された約270作品が上映される。注目はジョン・レノンが登場する『Now and Then: The Last Beatles Song』やベン・ウィショー主演『自慢の息子』などの日本プレミア上映。また、千葉雄大さん、仲里依紗さん、福士蒼汰さん、森崎ウィンさんが監督に挑戦したショートフィルム作品がライブアクション部門のジャパンカテゴリーにノミネートされている。ライブアクション部門は米アカデミー賞にもつながる部門であり、賞レースの行方にも注目だ。

『Now and Then: The Last Beatles Song』(SSFF&ASIA 2024 プレスリリースより)


『自慢の息子』(SSFF&ASIA 2024 プレスリリースより)


JVTAでは十数年に渡り、本映画祭を字幕翻訳でサポートしている。今年も上映作品のほとんどについて、100名以上のJVTAの翻訳者が字幕翻訳を担当した。

SSFF & ASIAは「ショートフィルムの祭典」というだけあって、数ある映画祭の中でも特に上映作品が多い映画祭だ。JVTAがこの本数の字幕制作に対応できる理由の一つとして、「スクールで育成したプロの映像翻訳者に翻訳を依頼する」というルートが確立されていることがある。JVTAは映像翻訳スクールを運営し、英日・日英の映像翻訳者を育成。受発注部門の映像翻訳ディレクターやプロの映像翻訳者が講師を務め、実務を想定した講義を行っている。コース修了後にはプロの映像翻訳者として活動できるかを判定するトライアル試験も実施。スクールでプロの映像翻訳者になるためのスキルや心構えを学んだ翻訳者を育成し、確実に実力を身につけた人に翻訳を依頼するというルートが出来上がっている。

「英日映像翻訳は25年以上、日英映像翻訳は15年以上にわたり、翻訳者の育成をしています。その中でプロにとして羽ばたいた映像翻訳者は1000名を越えます。それだけの翻訳者ネットワークがあるからこそ、短い期間で多くの上映作品に対する字幕制作を請け負うことができます」と、映像翻訳講師も務める受発注部門ディレクター・藤田庸司は語る。

SSFF & ASIAは世界中から上映作品が集められる。アメリカ、日本、中国、フランス、イギリスからの応募はもちろん、今年はモーリターニア、ウガンダ、セネガル、ルワンダ、コソボなど珍しい国からの応募もあったそうだ。制作国も様々なら、言語も様々。他言語翻訳の場合は基本的には英語のスクリプトがついており、それを基に日本語字幕を制作する。しかし時には、元の言語を把握できる翻訳者が求められるケースもある。

「SSFF & ASIAでは英語以外の言語の作品でも、基本的に英語スクリプトがあるので、英→日翻訳者でも他言語作品を担当できます。ただ、中には、原語から英語に訳した段階で情報やニュアンスが欠落していたり、過度の意訳により、原文よりも意味が離れてしまっているということもあります。そのような場合、オリジナルの音を聞き取って理解できれば、より元のニュアンスに近づけることができます。JVTAのスクールでは日英・英日のみを教えていますが、実は修了生には他言語ができる人が多数おり、日英・英日の映像翻訳コースで培ったスキルを、別の言語に置き換えて多言語翻訳者として活躍しています。JVTAではこうした翻訳者のバックグラウンドや得意分野を把握しており、SSFF & ASIAでも多言語の知識が必要になった際には、該当の言語に通じている翻訳者を修了生の中から探し相談しています。」(藤田)

SSFF & ASIAに限らず、インターネット上で配信されるストリーミング動画でも多言語作品の需要は高まっている。特に日本で人気の韓国コンテンツでは「韓国語から直接日本語にしてほしい」というケースが増加。今回のSSFF & ASIAでも韓国語作品は韓国語ができる映像翻訳者に依頼した。

SSFF & ASIAの上映作品は、ショートフィルムだからこそ「今」を映し出し、作り手の想いが率直に表現されている。戦争や災害、移⺠、ジェンダーなど、作り手が⽬の当たりにしている世界の「今」が集結しており、普段の生活ではなかなか手が届かない世界中の出来事に触れることができる。ぜひこの機会に、ショートフィルムを通じて世界中を旅してもらいたい。

SSFF & ASIA 2024の会場上映は6月4日(火)~17日(月)まで。オンライン上映は4月25日(木)~6月30日(日)で開催される。詳細は公式サイトでぜひチェックを。

■ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2024 公式サイトは▶こちら

■オンライン会場は▶こちら
配信期間:2024年4月25日(木)~6月30日(日)


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学生インターンが英語字幕をつけ、SDGsをテーマにした映画上映イベントを開催

【プレスリリース】
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学生インターンが英語字幕をつけ、SDGsをテーマにした映画上映イベントを開催
~プロの映像翻訳者を育てる日本映像翻訳アカデミーと東京外国語大学による産学協働プロジェクト~


大学生が翻訳して、考えて、語る。ことばと映像で知るSDGs
~「映像」というメディアを通して社会問題に対する新たな気づきを与える~

映像翻訳者を育成する日本映像翻訳アカデミー株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:新楽直樹、以下「JVTA」)は、「ことばの力で社会を豊かにする」という企業理念のもと、インターンシップ・プログラムをベースとした無料オンラインイベント「WATCH 2024 : For a Sustainable Future(以下、WATCH 2024)」を開催します。本イベントは東京外国語大学(所在地:東京都府中市、学長:林佳世子)が共催となる産学協働プロジェクトです。2022年のスタート以来3回目となる今回は、初の試みとして英語字幕を制作。SDGsをテーマにした日本制作のドキュメンタリー作品に学生が英語字幕をつけ、オンライン上映を行います。さらに上映作品に関連した発表や、トークセッションの開催も予定しています。

■学生が主体となって翻訳から上映イベントまでを行う実践型インターンシップ・プログラム
JVTAはプロの映像翻訳者を育成するスクールとしてのノウハウを生かし、学校教育機関において映像翻訳や英語を教えたりするなどの活動を行ってきました。そんな中、コロナ禍で大学生がさまざまな機会を喪失してきた姿を目にしたことをきっかけに、彼らの活動を支援するための企画として、「WATCH 2022: For a Sustainable Future」を2022年2月26日(土)~3月13日(日)に、「WATCH 2022 WINTER」を2022年12月9日(金)~12月18日(日)に開催しました。本プロジェクトはその第3弾です。

本イベントのベースとなるインターンシップ・プログラムの大きな特徴は、全員がJVTAのインターン生としてスタッフの指導・サポートを受けながら、イベントの成功に向けて主体となって活動する点にあります。今回は国内外の学生約50名が参加。イベント開催に向け、プロの映像翻訳者の指導のもとで字幕翻訳実務に取り組みます。さらに作品翻訳の過程で得た社会問題へ理解や知識をもとにトークセッションなどの企画、HPやSNSを使った情報発信などを主体となって担います。業務を通して、学生たちは「チャレンジ精神」「チームワーク力」「コミュニケーション力」「リーダーシップ力」「主体的行動力」「グローバル素養」といったスキルを身につけていきます。さらに、自らがSDGsの重要性を発信する側に立つことで、世界を取り巻く社会・環境問題についての新たな視点・気づきを得ることにもつながるでしょう。

■翻訳過程で作品のテーマや社会課題について理解を深め、その学びを社会に発信していく
今回英語字幕をつけて上映する作品のひとつは、日本制作のドキュメンタリー作品『こころの通訳者たち~What a Wonderful World~』(2021年)です。本作は、手話を目の見えない人に伝えるための音声ガイドづくりに挑戦した人々を追ったドキュメンタリー。耳の聴こえない人にも演劇を楽しんでもらおうと舞台手話通訳者たちが奮闘する姿を映した映像に対し、目の見えない人に伝える音声ガイドを作ろうと試行錯誤する姿を記録した作品です。

2024年4月1日より経済産業省が定めた「改正障害者差別解消法」が実施され、映像に字幕・音声ガイドを付けることが義務化されました。それに伴い、日本語字幕ガイド・音声ガイド制作に関する社会的な興味関心が高まっています。字幕ガイド・音声ガイドがより身近な存在になっていく中、インターン生たちは本作の翻訳を通して語学力を磨くだけではなく、目が見えない・見えづらい人や耳が聞こえない・聞こえづらい人に対する理解を深め、より良い社会を作る方法を考えていきます。また、上映イベントではこのほかに短編ドキュメンタリー作品2本を上映予定です。

■「WATCH 2024 For a Sustainable Future」実施概要
公式ウェブサイト:http://www.watch-sdgs.com
インターンシップ概要
・インターンシップ期間: 2024年4月~2024年7月
・上映イベント開催期間:2024年6月27日~2024年7月7日(日)
・開催方式:ラーニングプラットフォーム「JVTA Online」にて視聴
(映像はオンデマンド方式で配信。トークイベントはZoomでライブ配信を予定)
・参加費:すべて無料・要事前申し込み
(申込詳細は決定次第、公式ウェブサイトで発表)
・共催:東京外国語大学

■課題作品概要
『こころの通訳者たち~What a Wonderful World~』
2021年/上映時間94分/監督:山田礼於

手話を目の見えない人に伝えるための音声ガイドづくりに挑戦した人々を追ったドキュメンタリー。耳の聴こえない人にも演劇を楽しんでもらうために挑んだ舞台手話通訳者たちの映像を、目の見えない人に伝える音声ガイドをつくろうと試行錯誤する姿を記録している。

公式サイト:https://cocorono-movie.com/


『映画のヒカリ』
2021年/上映時間11分/監督:内田英恵

©️内田英恵/Yahoo!ニュース ドキュメンタリー

世界の子どもたちに移動映画館で映画を届ける活動をするWorld Theater Project代表の教来石小織さんは、コロナをきっかけにその活動の一時休止に直面する。活動自体続けていいのか悩むようになった彼女は、ある再会をきっかけに答えを出す。

『KIMONOルネッサンス』
2023年/上映時間10分/監督:太田信吾

©️太田信吾/Yahoo!ニュース ドキュメンタリー

広瀬嶺さんは京都で舞妓として活動をした後、和裁の仕事など着物に関わる仕事をしてきた。その仕事の過程で古い着物が大量に捨てられたり、古物市で乱雑に扱われている事を知り、胸を痛める。彼女は廃棄される着物を集め、アップサイクルに挑戦する。

【本リリースに関するお問い合わせ先】
日本映像翻訳アカデミー株式会社
watch(アット)jvtacademy.com
※(アット)を@に置き換えてください。

リモートセミナー・シリーズWinter 2024レポート~言葉で遊ぶ!クリエイティブな映像翻訳の世界~

JVTAでは受講生や修了生、映像翻訳に興味がある人、エンタメ業界に興味がある人に向け、様々なイベントを開催している。

2024年冬のセミナーテーマは「言葉で遊ぶ!クリエイティブな映像翻訳の世界 」。日本のお笑い番組やバラエティ番組の英語字幕を考えるセミナーや、映像翻訳のスキルを生かして洋楽の翻訳でも活躍しているゲストを招いたセミナー、また映画の本場・ロサンゼルスで活動する映画監督がハリウッドの現状を語るセミナーなど、映像翻訳や言葉の可能性を深掘りするラインナップで開催した。またJVTA初となるSNSクリエイターとのコラボ企画も実施。英語系YouTuberとして大人気のみっちゃんと共に、日本語字幕制作にトライする企画も行った。

ここではリモートセミナー・シリーズ Winter 2024で開催したセミナーの取材記事を紹介する。(青字のタイトルをクリック)


★リモートセミナー・シリーズ Winter 2024のラインナップ詳細はコチラ


◆2024年2月3日(土)開催
~「好き」を仕事に繋げる留学~エンタメの本場 ロサンゼルスで得たものとは?」

【冬セミレポート】「映像業界で働きたい」夢を現実にした留学


◆2024年2月9日(金)開催
\スペシャルコラボ企画/ 英語系YouTuber みっちゃんとリアルタイムで一緒に字幕!

【冬セミレポート】人気の英語系YouTuberみっちゃんと字幕翻訳に挑戦!」


◆2024年2月16日(金)開催
多くの歌詞翻訳を手掛ける翻訳者に聞く!洋楽はこうして訳されている

【冬セミレポート】経験豊富なプロの翻訳者が語る歌詞対訳の極意


◆2024年2月22日(木)開催
映画監督と考える!グッとくる日本語字幕ガイド・音声ガイド

【冬セミレポート】制作者の意図をくみ取り、ガイドするポイントを見極める



◆2024年2月26日(月)開催
「面白い」をどう引き出す?!日本のバラエティ・お笑い番組のローカライゼーションの世界

【冬セミレポート】お笑い番組でおなじみのツッコミ「やかましいわ!」を英語にすると?


◆2024年3月1日(金)開催
21年に大好評だったあのセミナーが3年ぶりに復活!続・翻訳の“入口”と“出口”を学ぶ特別講座

【冬セミレポート】「伝わる翻訳」ができるまで ~文章を見つめ、適訳を探る~


◆2024年3月10日(日)開催
ハリウッドを知る映画監督に聞く!ポストコロナのエンタメ業界とは?

冬セミレポート【監督インタビュー】変わりゆく映画業界 ~人の手で映画を作っていくために~


JVTAでは今後も様々なセミナー・イベントを開催していきます。次回をお楽しみに!


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映像翻訳のスキルを生かして翻訳!ミュージカル『Without You』の舞台用字幕をJVTAが担当!

「舞台用字幕」というものを聞いたことがあるだろうか?映画やドラマのように映像につける字幕ではなく、生の舞台に合わせ、舞台上や舞台横などに設置されたスクリーンに表示される字幕のことだ。海外の演劇やミュージカル、オペラなどが原語のまま日本で上演される際に必要とされるものである。

2024年3月、ミュージカル『RENT』初演で主人公のマーク役を演じ映画版でも同役を演じたアンソニー・ラップによるワンマンミュージカル『Without You』の来日公演が行われた。アンソニー自身の半生を『RENT』の名曲も絡めつつ紡いでいく物語だ。すべて英語で上演される本作について、JVTAが舞台用字幕の翻訳を担当。修了生の野村佳子さんが翻訳、後藤美奈さんがチェッカーとして携わった。

翻訳を担当した野村さんは、JVTAの英日映像翻訳科で講師も務めているベテランの翻訳者だ。特に音楽翻訳への造詣が深く、洋楽の翻訳をテーマにしたJVTAのセミナーに登壇した経験もある。そんな経験豊富な野村さんだが、舞台用字幕の翻訳は今回が初めて。野村さんは舞台用字幕の翻訳についてはルールや作業の流れについては詳しくないと思い、一度は依頼を断ることを考えたそう。しかし「リハーサルの映像をもとに翻訳する」ということを聞き、映像翻訳と同じような要領で訳せばいいということが分かり引き受けることにした。

実際に翻訳作業に入ると、映像翻訳の知識は大いに生かされた。映像と生の舞台という違いはあるが、ストーリーを伝えるためにセリフを翻訳するという芯は同じだ。舞台鑑賞に影響しないように制限文字数や読みやすさを意識する点も映像翻訳と同様。様々なルールを加味しながら、ストーリーが伝わりやすいように流れを作って翻訳するという作業は映像翻訳と全く同じだった。チェックを担当した後藤さんも「映像翻訳の基礎はすべて舞台字幕の翻訳に生かせる」と感じたという。

『Without You』ではオリジナル曲に加え、『RENT』の有名ナンバーも多数使われている。『RENT』の曲には既存の訳が存在するが、今回の翻訳では既存曲もすべて翻訳し直すことになっていた。既存曲の翻訳にあたり、野村さんが気をつけた点やこだわった点はあったのだろうか?

「今回、『RENT』の曲はすべて訳し直しました。とは言え、本作を見に来るほとんどの方が『RENT』のファンのはずなので、すでに浸透している訳に手を加えることに正直ためらいはありました。そこで既訳を再度すべて見直し、ベースとなる解釈は残したまま、『私ならこう訳すかな』という基準のもと、翻訳を進めていきました。どう受け止められるか緊張しましたが、開幕後もSNS上では特に指摘も見受けられず、少しほっとしています」(野村さん)

すでにファンがついている作品に携わるのは、まったく新しい作品を担当するのとは違う緊張感がある。ファンに納得してもらえるよう、翻訳者は隅々まで気を配らなくてはならない。そんな『Without You』の翻訳作業において、チェッカーを担当した後藤美奈さんは元々『RENT』のファンだったという。NYのブロードウェイで2回、日本公演で2回観劇した経験がある、まさに大ファンだ。

「『RENT』は世界的に愛されている作品です。アンソニー・ラップだけでなく、『RENT』の生みの親であるジョナサン・ラーソンのファンが見ても違和感のない仕上がりになるよう気をつけてチェックを行いました」(後藤さん)

『RENT』の内容は完璧に頭に入っていた後藤さんだが、本作のチェックを担当するにあたっては、『RENT』のサントラを聞き直すことに加えてアンソニー・ラップの略歴やインタビューにも目を通した。特にタイトルにもなっている本作のオリジナル曲「Without You」はアンソニー自身の体験と重なるような楽曲であるため、曲を聴きこみ万全の準備をした。

本作はアンソニー・ラップの1人芝居。そのため、セリフの主語が抜けたりねじれたりすると、誰の話なのか流れが分かりにくくなってしまうことが難しい点だと後藤さんは感じた。しかし野村さんが綺麗に翻訳をしていたため、チェック段階で大幅な直しは必要なかったという。後藤さんは全体を通して見た時に観客が極力自然に読めるよう、日本語の自然な表現を意識してチェックを行った。

野村さんと後藤さんは、それぞれ本番のステージも鑑賞した。舞台用字幕はステージの両側に設置された縦長のスクリーンに映し出されるため、演者を見ながら両脇の字幕に目をやることについては、「映像作品を見るときよりも目を動かす範囲が大きくなる」と実感。そのため2人は上演中も字幕の読みやすさが気になったり、ステージを初見の観客がどれだけ内容に没頭できているか心配になったりと、翻訳者ならではの気持ちでステージを見ていたという。しかし終盤では客席のあちこちからすすり泣く声が聞こえ、ストーリーがきちんと伝わっていることを実感した。

「アンソニーの生の歌声は、全身に鳥肌が立つほど感動的でした。彼が演じる『RENT』は映画でしか観たことがないのですが、本人が目の前で歌っていて、しかもその作品にほんの少しでも関われたと考えると、感慨深いものがありました。目と頭はグッタリ疲れていたものの(笑)、清々しい気分で会場を後にできました。またチャンスを頂けるのなら、舞台字幕にも積極的にチャンレジしていければと思います」(野村さん)

「生の舞台が持つエネルギーは格別で、映像作品よりも『役者や他の観客と同じ時間を共有する体験』だと感じました。そこで生まれる感動を届ける役割の一旦を担えたことに、とても光栄な思いでした」(後藤さん)

JVTA受講生の中でも、「音楽作品が好き」「いつかミュージカル翻訳に携わりたい」という人は多い。今回の舞台用字幕の翻訳では、映像翻訳のスキルが幅広いエンターテインメントのコンテンツに応用ができると改めて感じる機会となった。

『Without You』に関する詳細は▶こちら



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【冬セミレポート】お笑い番組でおなじみのツッコミ「やかましいわ!」を英語にすると?

開催日時:2月26日(月)19:30~20:30

登壇者プロフィール

ジェシー・ナス(日英映像翻訳科講師・日英講座開発プロデューサー)
アメリカ、カリフォルニア州出身。カリフォルニア大学ロサンゼルス校を卒業後、渡日。JVTAで日本映画、テレビ、マンガなどのコンテンツを翻訳し海外に発信するスキルを学ぶ日英映像翻訳の授業で講師を務めるほか、講師の育成やカリキュラムの開発なども手がける。

横山治奈(日英映像翻訳科講師、翻訳者)
カルフォルニア州出身の日系アメリカ人。JVTAロサンゼルス校にて字幕翻訳の勉強を始め、東京校に留学するため、2011年に来日。英語講師などのアルバイトをしながら2013年に日英コースを終了し、プロの字幕翻訳者デビュー。現在は、様々な分野の日英翻訳、通訳、ネイティブチェッカー、スクリプト起こしなどの仕事に従事している。


会話の裏に隠された「感情」を読み取って翻訳する
「映像翻訳=映画やドラマの字幕翻訳」と考える人は多い。しかし動画配信サービスの普及により、昨今では日本のお笑い番組・バラエティ番組が英語字幕つきで世界配信されるケースが急増している。しかしながら、日本と海外では笑いのツボや文化が異なり、言葉を単純に英訳するだけでは面白さが伝わりきらないことがある。「ボケとツッコミ」など、日本のコメディーにおける特徴的な表現を英語字幕で伝えるにはどうしたらいいのか?日本映像翻訳アカデミー(JVTA)で日英映像翻訳を教えるJessi Nuss講師と横山治奈講師がそのポイントを解説した。

セミナーでは実際のお笑い番組やバラエティ番組のワンシーンを題材とし、より適した英語表現を考えていった。例の一つとして取り上げられたのは、Netflix制作の『トークサバイバー』というバラエティ番組。お笑いコンビの千鳥をはじめ、様々な芸人やタレントが出演している人気番組だ。

まず注目したのは「やかましいわ!」というツッコミ表現。日本のテレビ番組で非常によく聞かれる。今回取り上げたシーンでは、千鳥の大悟さんが気取って発する決めセリフに対して、相方のノブさんが突っ込み入れるという形で使われている。

実際に「やかましいわ!」につけられていた英語字幕を確認すると、“Shut up!”となっていた。この字幕について、Jessi講師は「これを見て少し違和感を抱く英語ネイティブもいるかもしれない」という。

「“Shut up”という言葉は、基本的にはとても騒々しい人や状況に向けて使われる言葉です。ですがこのシーンでは、大悟さんは気取ってセリフを言っているだけで、うるさく騒いでいるわけではありません」(Jessi講師)

では、よりシーンに寄り添った字幕にするにはどうしたらいいのか?Jessi講師と横山講師は、「なぜこの人はこの言葉を言ったのか?」を考えるようにアドバイス。該当シーンでの「やかましいわ!」は大悟に対して「静かにしてほしい」と思っているのではなく、「バカなことを言っている」「くだらない」というような感情を込めての発言だと考えられる。それを加味した上で、最終的に両講師は次のような表現を提案した。

Jessi講師案:Oh, that’s lame. / So cheesy.
横山講師案:Give me a break!

両講師は、「会話の裏にある感情を読み取って翻訳することが大切。感情を読み取るには、話し手のトーンや表情をしっかり観察し、また受け手側のリアクションも参考にすると良い」と解説。また、日本と海外では笑いのポイントが変わるので、異文化に関する知識を増やすことも字幕を作る際のヒントになると語った。


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