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学生インターンが英語字幕をつけ、SDGsをテーマにした映画上映イベントを開催

【プレスリリース】
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学生インターンが英語字幕をつけ、SDGsをテーマにした映画上映イベントを開催
~プロの映像翻訳者を育てる日本映像翻訳アカデミーと東京外国語大学による産学協働プロジェクト~


大学生が翻訳して、考えて、語る。ことばと映像で知るSDGs
~「映像」というメディアを通して社会問題に対する新たな気づきを与える~

映像翻訳者を育成する日本映像翻訳アカデミー株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:新楽直樹、以下「JVTA」)は、「ことばの力で社会を豊かにする」という企業理念のもと、インターンシップ・プログラムをベースとした無料オンラインイベント「WATCH 2024 : For a Sustainable Future(以下、WATCH 2024)」を開催します。本イベントは東京外国語大学(所在地:東京都府中市、学長:林佳世子)が共催となる産学協働プロジェクトです。2022年のスタート以来3回目となる今回は、初の試みとして英語字幕を制作。SDGsをテーマにした日本制作のドキュメンタリー作品に学生が英語字幕をつけ、オンライン上映を行います。さらに上映作品に関連した発表や、トークセッションの開催も予定しています。

■学生が主体となって翻訳から上映イベントまでを行う実践型インターンシップ・プログラム
JVTAはプロの映像翻訳者を育成するスクールとしてのノウハウを生かし、学校教育機関において映像翻訳や英語を教えたりするなどの活動を行ってきました。そんな中、コロナ禍で大学生がさまざまな機会を喪失してきた姿を目にしたことをきっかけに、彼らの活動を支援するための企画として、「WATCH 2022: For a Sustainable Future」を2022年2月26日(土)~3月13日(日)に、「WATCH 2022 WINTER」を2022年12月9日(金)~12月18日(日)に開催しました。本プロジェクトはその第3弾です。

本イベントのベースとなるインターンシップ・プログラムの大きな特徴は、全員がJVTAのインターン生としてスタッフの指導・サポートを受けながら、イベントの成功に向けて主体となって活動する点にあります。今回は国内外の学生約50名が参加。イベント開催に向け、プロの映像翻訳者の指導のもとで字幕翻訳実務に取り組みます。さらに作品翻訳の過程で得た社会問題へ理解や知識をもとにトークセッションなどの企画、HPやSNSを使った情報発信などを主体となって担います。業務を通して、学生たちは「チャレンジ精神」「チームワーク力」「コミュニケーション力」「リーダーシップ力」「主体的行動力」「グローバル素養」といったスキルを身につけていきます。さらに、自らがSDGsの重要性を発信する側に立つことで、世界を取り巻く社会・環境問題についての新たな視点・気づきを得ることにもつながるでしょう。

■翻訳過程で作品のテーマや社会課題について理解を深め、その学びを社会に発信していく
今回英語字幕をつけて上映する作品のひとつは、日本制作のドキュメンタリー作品『こころの通訳者たち~What a Wonderful World~』(2021年)です。本作は、手話を目の見えない人に伝えるための音声ガイドづくりに挑戦した人々を追ったドキュメンタリー。耳の聴こえない人にも演劇を楽しんでもらおうと舞台手話通訳者たちが奮闘する姿を映した映像に対し、目の見えない人に伝える音声ガイドを作ろうと試行錯誤する姿を記録した作品です。

2024年4月1日より経済産業省が定めた「改正障害者差別解消法」が実施され、映像に字幕・音声ガイドを付けることが義務化されました。それに伴い、日本語字幕ガイド・音声ガイド制作に関する社会的な興味関心が高まっています。字幕ガイド・音声ガイドがより身近な存在になっていく中、インターン生たちは本作の翻訳を通して語学力を磨くだけではなく、目が見えない・見えづらい人や耳が聞こえない・聞こえづらい人に対する理解を深め、より良い社会を作る方法を考えていきます。また、上映イベントではこのほかに短編ドキュメンタリー作品2本を上映予定です。

■「WATCH 2024 For a Sustainable Future」実施概要
公式ウェブサイト:http://www.watch-sdgs.com
インターンシップ概要
・インターンシップ期間: 2024年4月~2024年7月
・上映イベント開催期間:2024年6月27日~2024年7月7日(日)
・開催方式:ラーニングプラットフォーム「JVTA Online」にて視聴
(映像はオンデマンド方式で配信。トークイベントはZoomでライブ配信を予定)
・参加費:すべて無料・要事前申し込み
(申込詳細は決定次第、公式ウェブサイトで発表)
・共催:東京外国語大学

■課題作品概要
『こころの通訳者たち~What a Wonderful World~』
2021年/上映時間94分/監督:山田礼於

手話を目の見えない人に伝えるための音声ガイドづくりに挑戦した人々を追ったドキュメンタリー。耳の聴こえない人にも演劇を楽しんでもらうために挑んだ舞台手話通訳者たちの映像を、目の見えない人に伝える音声ガイドをつくろうと試行錯誤する姿を記録している。

公式サイト:https://cocorono-movie.com/


『映画のヒカリ』
2021年/上映時間11分/監督:内田英恵

©️内田英恵/Yahoo!ニュース ドキュメンタリー

世界の子どもたちに移動映画館で映画を届ける活動をするWorld Theater Project代表の教来石小織さんは、コロナをきっかけにその活動の一時休止に直面する。活動自体続けていいのか悩むようになった彼女は、ある再会をきっかけに答えを出す。

『KIMONOルネッサンス』
2023年/上映時間10分/監督:太田信吾

©️太田信吾/Yahoo!ニュース ドキュメンタリー

広瀬嶺さんは京都で舞妓として活動をした後、和裁の仕事など着物に関わる仕事をしてきた。その仕事の過程で古い着物が大量に捨てられたり、古物市で乱雑に扱われている事を知り、胸を痛める。彼女は廃棄される着物を集め、アップサイクルに挑戦する。

【本リリースに関するお問い合わせ先】
日本映像翻訳アカデミー株式会社
watch(アット)jvtacademy.com
※(アット)を@に置き換えてください。

リモートセミナー・シリーズWinter 2024レポート~言葉で遊ぶ!クリエイティブな映像翻訳の世界~

JVTAでは受講生や修了生、映像翻訳に興味がある人、エンタメ業界に興味がある人に向け、様々なイベントを開催している。

2024年冬のセミナーテーマは「言葉で遊ぶ!クリエイティブな映像翻訳の世界 」。日本のお笑い番組やバラエティ番組の英語字幕を考えるセミナーや、映像翻訳のスキルを生かして洋楽の翻訳でも活躍しているゲストを招いたセミナー、また映画の本場・ロサンゼルスで活動する映画監督がハリウッドの現状を語るセミナーなど、映像翻訳や言葉の可能性を深掘りするラインナップで開催した。またJVTA初となるSNSクリエイターとのコラボ企画も実施。英語系YouTuberとして大人気のみっちゃんと共に、日本語字幕制作にトライする企画も行った。

ここではリモートセミナー・シリーズ Winter 2024で開催したセミナーの取材記事を紹介する。(青字のタイトルをクリック)


★リモートセミナー・シリーズ Winter 2024のラインナップ詳細はコチラ


◆2024年2月3日(土)開催
~「好き」を仕事に繋げる留学~エンタメの本場 ロサンゼルスで得たものとは?」

【冬セミレポート】「映像業界で働きたい」夢を現実にした留学


◆2024年2月9日(金)開催
\スペシャルコラボ企画/ 英語系YouTuber みっちゃんとリアルタイムで一緒に字幕!

【冬セミレポート】人気の英語系YouTuberみっちゃんと字幕翻訳に挑戦!」


◆2024年2月16日(金)開催
多くの歌詞翻訳を手掛ける翻訳者に聞く!洋楽はこうして訳されている

【冬セミレポート】経験豊富なプロの翻訳者が語る歌詞対訳の極意


◆2024年2月22日(木)開催
映画監督と考える!グッとくる日本語字幕ガイド・音声ガイド

【冬セミレポート】制作者の意図をくみ取り、ガイドするポイントを見極める



◆2024年2月26日(月)開催
「面白い」をどう引き出す?!日本のバラエティ・お笑い番組のローカライゼーションの世界

【冬セミレポート】お笑い番組でおなじみのツッコミ「やかましいわ!」を英語にすると?


◆2024年3月1日(金)開催
21年に大好評だったあのセミナーが3年ぶりに復活!続・翻訳の“入口”と“出口”を学ぶ特別講座

【冬セミレポート】「伝わる翻訳」ができるまで ~文章を見つめ、適訳を探る~


◆2024年3月10日(日)開催
ハリウッドを知る映画監督に聞く!ポストコロナのエンタメ業界とは?

冬セミレポート【監督インタビュー】変わりゆく映画業界 ~人の手で映画を作っていくために~


JVTAでは今後も様々なセミナー・イベントを開催していきます。次回をお楽しみに!


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映像翻訳のスキルを生かして翻訳!ミュージカル『Without You』の舞台用字幕をJVTAが担当!

「舞台用字幕」というものを聞いたことがあるだろうか?映画やドラマのように映像につける字幕ではなく、生の舞台に合わせ、舞台上や舞台横などに設置されたスクリーンに表示される字幕のことだ。海外の演劇やミュージカル、オペラなどが原語のまま日本で上演される際に必要とされるものである。

2024年3月、ミュージカル『RENT』初演で主人公のマーク役を演じ映画版でも同役を演じたアンソニー・ラップによるワンマンミュージカル『Without You』の来日公演が行われた。アンソニー自身の半生を『RENT』の名曲も絡めつつ紡いでいく物語だ。すべて英語で上演される本作について、JVTAが舞台用字幕の翻訳を担当。修了生の野村佳子さんが翻訳、後藤美奈さんがチェッカーとして携わった。

翻訳を担当した野村さんは、JVTAの英日映像翻訳科で講師も務めているベテランの翻訳者だ。特に音楽翻訳への造詣が深く、洋楽の翻訳をテーマにしたJVTAのセミナーに登壇した経験もある。そんな経験豊富な野村さんだが、舞台用字幕の翻訳は今回が初めて。野村さんは舞台用字幕の翻訳についてはルールや作業の流れについては詳しくないと思い、一度は依頼を断ることを考えたそう。しかし「リハーサルの映像をもとに翻訳する」ということを聞き、映像翻訳と同じような要領で訳せばいいということが分かり引き受けることにした。

実際に翻訳作業に入ると、映像翻訳の知識は大いに生かされた。映像と生の舞台という違いはあるが、ストーリーを伝えるためにセリフを翻訳するという芯は同じだ。舞台鑑賞に影響しないように制限文字数や読みやすさを意識する点も映像翻訳と同様。様々なルールを加味しながら、ストーリーが伝わりやすいように流れを作って翻訳するという作業は映像翻訳と全く同じだった。チェックを担当した後藤さんも「映像翻訳の基礎はすべて舞台字幕の翻訳に生かせる」と感じたという。

『Without You』ではオリジナル曲に加え、『RENT』の有名ナンバーも多数使われている。『RENT』の曲には既存の訳が存在するが、今回の翻訳では既存曲もすべて翻訳し直すことになっていた。既存曲の翻訳にあたり、野村さんが気をつけた点やこだわった点はあったのだろうか?

「今回、『RENT』の曲はすべて訳し直しました。とは言え、本作を見に来るほとんどの方が『RENT』のファンのはずなので、すでに浸透している訳に手を加えることに正直ためらいはありました。そこで既訳を再度すべて見直し、ベースとなる解釈は残したまま、『私ならこう訳すかな』という基準のもと、翻訳を進めていきました。どう受け止められるか緊張しましたが、開幕後もSNS上では特に指摘も見受けられず、少しほっとしています」(野村さん)

すでにファンがついている作品に携わるのは、まったく新しい作品を担当するのとは違う緊張感がある。ファンに納得してもらえるよう、翻訳者は隅々まで気を配らなくてはならない。そんな『Without You』の翻訳作業において、チェッカーを担当した後藤美奈さんは元々『RENT』のファンだったという。NYのブロードウェイで2回、日本公演で2回観劇した経験がある、まさに大ファンだ。

「『RENT』は世界的に愛されている作品です。アンソニー・ラップだけでなく、『RENT』の生みの親であるジョナサン・ラーソンのファンが見ても違和感のない仕上がりになるよう気をつけてチェックを行いました」(後藤さん)

『RENT』の内容は完璧に頭に入っていた後藤さんだが、本作のチェックを担当するにあたっては、『RENT』のサントラを聞き直すことに加えてアンソニー・ラップの略歴やインタビューにも目を通した。特にタイトルにもなっている本作のオリジナル曲「Without You」はアンソニー自身の体験と重なるような楽曲であるため、曲を聴きこみ万全の準備をした。

本作はアンソニー・ラップの1人芝居。そのため、セリフの主語が抜けたりねじれたりすると、誰の話なのか流れが分かりにくくなってしまうことが難しい点だと後藤さんは感じた。しかし野村さんが綺麗に翻訳をしていたため、チェック段階で大幅な直しは必要なかったという。後藤さんは全体を通して見た時に観客が極力自然に読めるよう、日本語の自然な表現を意識してチェックを行った。

野村さんと後藤さんは、それぞれ本番のステージも鑑賞した。舞台用字幕はステージの両側に設置された縦長のスクリーンに映し出されるため、演者を見ながら両脇の字幕に目をやることについては、「映像作品を見るときよりも目を動かす範囲が大きくなる」と実感。そのため2人は上演中も字幕の読みやすさが気になったり、ステージを初見の観客がどれだけ内容に没頭できているか心配になったりと、翻訳者ならではの気持ちでステージを見ていたという。しかし終盤では客席のあちこちからすすり泣く声が聞こえ、ストーリーがきちんと伝わっていることを実感した。

「アンソニーの生の歌声は、全身に鳥肌が立つほど感動的でした。彼が演じる『RENT』は映画でしか観たことがないのですが、本人が目の前で歌っていて、しかもその作品にほんの少しでも関われたと考えると、感慨深いものがありました。目と頭はグッタリ疲れていたものの(笑)、清々しい気分で会場を後にできました。またチャンスを頂けるのなら、舞台字幕にも積極的にチャンレジしていければと思います」(野村さん)

「生の舞台が持つエネルギーは格別で、映像作品よりも『役者や他の観客と同じ時間を共有する体験』だと感じました。そこで生まれる感動を届ける役割の一旦を担えたことに、とても光栄な思いでした」(後藤さん)

JVTA受講生の中でも、「音楽作品が好き」「いつかミュージカル翻訳に携わりたい」という人は多い。今回の舞台用字幕の翻訳では、映像翻訳のスキルが幅広いエンターテインメントのコンテンツに応用ができると改めて感じる機会となった。

『Without You』に関する詳細は▶こちら



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【冬セミレポート】お笑い番組でおなじみのツッコミ「やかましいわ!」を英語にすると?

開催日時:2月26日(月)19:30~20:30

登壇者プロフィール

ジェシー・ナス(日英映像翻訳科講師・日英講座開発プロデューサー)
アメリカ、カリフォルニア州出身。カリフォルニア大学ロサンゼルス校を卒業後、渡日。JVTAで日本映画、テレビ、マンガなどのコンテンツを翻訳し海外に発信するスキルを学ぶ日英映像翻訳の授業で講師を務めるほか、講師の育成やカリキュラムの開発なども手がける。

横山治奈(日英映像翻訳科講師、翻訳者)
カルフォルニア州出身の日系アメリカ人。JVTAロサンゼルス校にて字幕翻訳の勉強を始め、東京校に留学するため、2011年に来日。英語講師などのアルバイトをしながら2013年に日英コースを終了し、プロの字幕翻訳者デビュー。現在は、様々な分野の日英翻訳、通訳、ネイティブチェッカー、スクリプト起こしなどの仕事に従事している。


会話の裏に隠された「感情」を読み取って翻訳する
「映像翻訳=映画やドラマの字幕翻訳」と考える人は多い。しかし動画配信サービスの普及により、昨今では日本のお笑い番組・バラエティ番組が英語字幕つきで世界配信されるケースが急増している。しかしながら、日本と海外では笑いのツボや文化が異なり、言葉を単純に英訳するだけでは面白さが伝わりきらないことがある。「ボケとツッコミ」など、日本のコメディーにおける特徴的な表現を英語字幕で伝えるにはどうしたらいいのか?日本映像翻訳アカデミー(JVTA)で日英映像翻訳を教えるJessi Nuss講師と横山治奈講師がそのポイントを解説した。

セミナーでは実際のお笑い番組やバラエティ番組のワンシーンを題材とし、より適した英語表現を考えていった。例の一つとして取り上げられたのは、Netflix制作の『トークサバイバー』というバラエティ番組。お笑いコンビの千鳥をはじめ、様々な芸人やタレントが出演している人気番組だ。

まず注目したのは「やかましいわ!」というツッコミ表現。日本のテレビ番組で非常によく聞かれる。今回取り上げたシーンでは、千鳥の大悟さんが気取って発する決めセリフに対して、相方のノブさんが突っ込み入れるという形で使われている。

実際に「やかましいわ!」につけられていた英語字幕を確認すると、“Shut up!”となっていた。この字幕について、Jessi講師は「これを見て少し違和感を抱く英語ネイティブもいるかもしれない」という。

「“Shut up”という言葉は、基本的にはとても騒々しい人や状況に向けて使われる言葉です。ですがこのシーンでは、大悟さんは気取ってセリフを言っているだけで、うるさく騒いでいるわけではありません」(Jessi講師)

では、よりシーンに寄り添った字幕にするにはどうしたらいいのか?Jessi講師と横山講師は、「なぜこの人はこの言葉を言ったのか?」を考えるようにアドバイス。該当シーンでの「やかましいわ!」は大悟に対して「静かにしてほしい」と思っているのではなく、「バカなことを言っている」「くだらない」というような感情を込めての発言だと考えられる。それを加味した上で、最終的に両講師は次のような表現を提案した。

Jessi講師案:Oh, that’s lame. / So cheesy.
横山講師案:Give me a break!

両講師は、「会話の裏にある感情を読み取って翻訳することが大切。感情を読み取るには、話し手のトーンや表情をしっかり観察し、また受け手側のリアクションも参考にすると良い」と解説。また、日本と海外では笑いのポイントが変わるので、異文化に関する知識を増やすことも字幕を作る際のヒントになると語った。


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濱口竜介監督最新作『悪は存在しない』の映画祭出品用字幕をJVTAが担当!

濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』がいよいよ日本で公開される。

濱口監督と言えば、『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー国際長編映画賞とカンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞。『偶然と想像』ではベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)。そして本作『悪は存在しない』でベネチア国際映画祭の銀獅子賞(審査員大賞)を受賞し、世界三大映画祭のすべてで賞を獲得している、日本を代表する映画監督の一人だ。

JVTAでは濱口監督の作品を複数、英語字幕制作でサポートしてきた。『なみのおと』(2011年)、『親密さ』(2012年)、『不気味なものの肌に触れる』(2013年)、『ハッピーアワー』(2015年)、『偶然と想像』(2021年)などの英語字幕はJVTAで学んだ翻訳者が担当している。そして最新作『悪は存在しない』も、JVTA修了生の翻訳者が映画祭出品用の英語字幕と上映用のイタリア語字幕を制作した。今回は英語字幕を担当したサミハ・アンワーさんに、字幕制作の様子を聞いた。

『悪は存在しない』の舞台は自然豊かな高原に位置する長野県水挽町。代々その地に暮らす主人公・巧は、娘の花とともに自然のサイクルに合わせた慎ましい生活を送っていた。しかしある時、家の近くでグランピング場の設営計画が持ち上がって…というストーリー。自然豊かな町で暮らす人々の様子と、建設計画をめぐる人間模様が交錯しながら物語は進んでいく。

アンワーさんは本作の翻訳について、「沈黙のシーンが多いため、一つひとつのセリフがより重要だと思った」という。映像翻訳ではセリフのないシーンも注意深く映像を見て、セリフ以外の要素からシーンの意図を読み取るスキルが必要となる。JVTAが「映像翻訳者に必要な6つのスキル」の一つとして位置付けている、「作品解釈力」がより求められるということだ。作品の流れやシーンの役割をしっかり理解していないと、いざセリフが出てきたときに本来の意図とは異なるニュアンスで翻訳してしまう可能性がある。

「この映画では各セリフがとてもよく練られていて、それぞれに明確な目的があると感じました。そのためセリフの意図を深く考えるのはもちろん、映画全体の中でどのように結びついているかを考えることを大切にしました」(アンワーさん)

一方で、会話による情報量が多い場面もある。例えばグランピング場建設を計画する会社の従業員2人が車の中で話すシーンだ。そのシーンでは従業員2人の異なる性格を観客に見せる必要があり、必要な情報を含めつつ、コンパクトで読みやすい英語字幕になるよう心掛けた。

自然豊かな土地での暮らしを表す静かな描写と、グランピング場建設をめぐる人間模様。アンワーさんは「会話が本作の緊張感とユーモアの両方を効果的に生み出している」と言い、村人たちによる率直な会話や、グランピング場建設を進める会社の従業員による堅苦しい会話など、幅広い言葉や特徴的な話し方を様々なトーンの英語字幕で訳し分ける作業をとても楽しんだそうだ。

海外では「この年、もっとも静かに心を揺さぶる映画」(Vague Visages)とも評価されている本作。そんな作品の英語字幕を手掛けたことについて、アンワーさんは次のように感想を述べた。

「私自身も本作をとても好きになり、英語で理解する観客が日本語で理解する観客と同じような映画体験ができるようにと翻訳にベストを尽くしました。すでに様々な賞を受賞しているということで、私もとても嬉しく、本作はそれに値すると思います。このようなマスターピースとなる作品を世界に伝える役目を担うことができてとても光栄です」(アンワーさん)

日本での公開は4月26日(金)から始まる。ぜひ劇場で本作の世界観を堪能してほしい。
映画公式サイトは▶こちら 


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◆今、世界が注目! 濱口竜介監督をJVTAは英語字幕でサポート!
◆祝! 濱口竜介監督の『偶然と想像』がベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞! 英語字幕をJVTAが手がけました!



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【冬セミレポート】人気の英語系YouTuberみっちゃんと字幕翻訳に挑戦!

開催日時:2月9日(金)19:30~20:30

登壇者プロフィール

みっちゃん(英語系YouTubeクリエイター)
生後1カ月から5歳までをアメリカのロサンゼルスで過ごし、小・中学校時代は日本、高校はアメリカのサンディエゴで過ごす。日本の大学に在学中にもアメリカに1年間留学。日本とアメリカを行き来して生活し、アメリカ滞在期間は計10年間になる。2つの言語と2つの文化に精通している強みを生かし、英語の楽しさや海外の魅力を伝えるようなコンテンツをYouTube、Instagram、TikTok、Podcastで発信している。

桜井徹二(JVTA )
日本映像翻訳アカデミースタッフ・講師。映像翻訳ディレクターなどの業務を経て、現在は学校教育部門に所属。英日映像翻訳科の講師も務めるほか、大学や高校での翻訳指導やカリキュラム作成を行う。翻訳者として映画、ドキュメンタリー、リアリティ番組などの翻訳を手がけたほか、映像翻訳ディレクターとしてFOXインターナショナル・チャンネルズ、MTV Japanなどの番組の翻訳ディレクションを担当。明星大学非常勤講師。

進行役:伊原実希(JVTA)
日本映像翻訳アカデミー翻訳事業推進部ディレクター。

みっちゃんが選ぶ「異文化が分かる映画のワンシーン」
昨今、英語学習にSNSを活用しているという人は多いだろう。YouTubeで「英語学習」と検索すれば多種多様な学習動画が現れ、今や「英語系YouTuber」は1つのジャンルとなっている。JVTAでは今回、そんな英語系YouTuberと初のコレボレーションを実施。SNSクリエイターの中でも特に人気を集める一人、みっちゃんをゲストに迎え、一緒に字幕翻訳をおこなうセミナーを開催した。

みっちゃんが人気を集める理由の一つは、日本とアメリカを行き来して生活した経験があり、日米の文化に精通していること。そんな異文化に関する知識は、映像翻訳においても役に立つ要素だ。そこでみっちゃんから「文化背景を知っていることでより楽しめる映画」として、『ズートピア』のワンシーンが紹介された。

本作は動物たちが暮らす街「ズートピア」で、ウサギの新米警察官であるジュディが詐欺師であるキツネのリックと共に、ある陰謀を解き明かすという作品。この作品の中で、みっちゃんはジュディとリックがDMV(Department of Motor Vehicles/日本でいう自動車免許センター)を訪れるというシーンを取り上げた。みっちゃん曰く、「DMVはいつ行っても待たされるのでアメリカ人にとってはとにかく行きたくない場所。そんなDMVの職員が、この映画ではナマケモノになっていて、話し方も動きもとにかくゆっくり。DMV=遅いというアメリカの現状をキャラクターでも表現していることが、とてもクレバーでおもしろいし、アメリカの文化を知っていると、二重に楽しめると思います」(みっちゃん)

洋画や海外ドラマにおいて海外特有の文化や習慣がシーンに現れることは多々ある。異文化を理解したうえで翻訳することは、映像翻訳者にとって腕の見せどころであり苦労するポイントでもある。

字幕翻訳に挑戦!シーンの雰囲気を字幕でも表すためには?
セミナー後半では、実際にみっちゃんと共に字幕翻訳をおこなった。短編映画のワンシーンを取り上げ、みっちゃん、視聴者、JVTAの映像翻訳者の3者で協力して字幕を考えていく。

翻訳箇所として選ばれたのは、あるアパートの一室で男性2人が繰り広げる会話。会話の中に登場する“Look at us.”や“Here we are.”のような、ネイティブスピーカーがよく使うけれど日本語にしづらい表現については、みっちゃんがそのニュアンスを解説した。そしてその解説を踏まえ、視聴者から様々な字幕案を募集。視聴者の字幕案とみっちゃんのアイデア、そしてJVTAのプロの翻訳者の知見を組み合わせ、読みやすくシーンの雰囲気に合う字幕を作り上げた。

初めて字幕翻訳に挑戦したことについて、みっちゃんは「文字制限が難しいけど、とても楽しかった」と笑顔を見せた。日本語・英語が分かるバイリンガルとしては、映画を見ていて「今のセリフは少し違うのでは?」と思った経験もあったそう。しかし実際に字幕翻訳をやってみたことで、「シーンを読み解き葛藤しながら表現を考えるこの経験をしたら、翻訳者に尊敬しかないです」と、字幕に対する見方が変わったようだった。



セミナー後に登壇者・サポートスタッフで記念撮影!
みっちゃん、ご登壇ありがとうございました!



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ロサンゼルス校のマネージャーによる「リモート留学相談会」


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少しのミスも見逃さない!覚悟を持って挑んだ「エミー賞」字幕翻訳

映画好き・ドラマ好きの間で話題となるのが、海外の賞レースだ。3月開催の米アカデミー賞を筆頭に、多くの賞レースが開催される。その中の一つが、アメリカ合衆国で放送される優れたテレビドラマ、番組、テレビ業界の功績に与えられる「エミー賞」である。2024年は1月15日(現地時間/日本時間16日)に第75回エミー賞(プライムタイム・エミー賞)の授賞式が開催。日本映像翻訳アカデミー(JVTA)では総勢38名の翻訳者とともに、U-NEXT配信のレッドカーペット番組と授賞式の字幕翻訳を担当した。

時間勝負の賞レース翻訳。限られた時間でもリサーチには手を抜かない
当日は日本時間朝9時からレッドカーペットの様子が配信された。その後10時に授賞式が開催され14時に終了。翻訳作業はその後からスタートした。約5時間分の翻訳に与えられたのはおよそ2日間。そのため「聞きおこし担当」「レッドカーペット翻訳担当」「授賞式翻訳担当」「テロップ担当」「通しチェック担当」「表記チェック担当」「誤訳チェック担当」と大きく7つのセクションが用意された。通しチェック担当として参加した武富香子さん曰く「『少しのミスも見逃さない』というJVTAの覚悟を感じた」という徹底したチーム編成だ。

映像翻訳はただ言語を訳せばいいわけではない。翻訳作業と共に重要なのが「情報の裏どり」である。今回のような賞レース番組で言えば作品の日本語タイトル、人名の日本語表記、番組の詳細などなど…。エミー賞には様々な部門があり、関わる作品や関係者の数も膨大だ。自分が翻訳するパートにどの作品が関わっているか事前に分かれば、もしくは運よく担当箇所が自分のよく知っている作品番組関連のものだとすれば、裏取り作業の時間が短縮できる。しかしながら、そんなことは滅多にない。アメリカのリアリティ番組『サバイバー(SURVIVOR)』の司会者へのレッドカーペットでのインタビューを翻訳した武政涼子さんは、その裏取りの重要性を改めて認識した。

「インタビューの中で進行役が突如『What? 18, right?』と聞く場面があります。年齢の話なので、『18歳よね?』と訳出しても問題なさそうでしたが、ここは番組への応募条件の話をしていたのです。よって訳文は『条件は18歳?』と情報を補足する形で変更となりました。また調べると実際は16歳から応募が可能でした。交わされている会話が何の話題なのかを知るためにも、裏取りやリサーチが重要だと改めて認識しました」(武政さん)

裏取りの大切さは、授賞式の翻訳を担当した池田由香さんも同様に語っている。池田さんはドラマ・シリーズ部門の主演男優賞発表シーンを翻訳した。同シーンでプレゼンターを務めたのは、アメリカで5年に渡って放送された人気ドラマ・シリーズ『アリー my love(Ally McBeal)』の主演であるキャリスタ・フロックハート。『アリー my love』でおなじみの男女共用トイレを模したセットと共に登場し、同ドラマの共演者とダンスするシーンは授賞式のハイライトの一つだ。キャリスタのスピーチでは、同ドラマに関する小ネタや人名も登場。作品を知る人なら『あっ!』とうれしくなる要素が満載だった。池田さん自身は『アリー my love』の存在は知っていたものの、作品自体は未視聴だったという。そのためファンが同シーンを純粋に楽しむことができるよう、必死でドラマの情報を調べて翻訳を行った。

様々な視点で字幕のチェックを行う「チェッカー」とは?
映像翻訳は翻訳が終われば終了、とはならない。翻訳者が作った「初稿」には、第三者によってチェック・修正が加えられる。このチェックを行うのが「チェッカー」という存在だ。翻訳者に比べると一般的にはあまり耳なじみがないであろう「チェッカー」だが、一体どのような作業をしているのか?通しチェッカーとして参加した武富香子さんはその役割について、「通しチェッカーは表記・誤訳・スポッティング全般のチェックを担当します」と紹介してくれた。

「SST(字幕制作ソフト)のチェック機能やWordを活用した校正など、翻訳者として納品前に必ず行う確認作業に加え、今回のように複数の翻訳者さんが担当する場合は話者の口調がバラバラになることがあるので、それも統一します。また、今回はクライアントさんからノミネートリストが配布されたので、賞の名前、人名、作品名がリストと合っているかどうかも一つひとつチェックしました。さらにクライアントに送る申し送りの書式にも指示があったので、それが守られていない場合は修正。SSTの原文ウインドウ(元の英語セリフを入れるべき箇所)が空白だった場合や、スクリプトとセリフと合っていない時なども基本的には修正しました」(武富さん)

翻訳者がどれほど気を配って作業をしても、ミスを0にするのは難しい。特に賞レース番組のような時間との勝負になる翻訳作業においてはなおさらだ。通しチェッカーはまっさらな目で全体を見渡し、見落としを一つひとつ潰していく。チェック作業は初稿納品後に一晩で終える必要があったため、武富さんは事前に参考資料としてもらっていた前回授賞式の映像と字幕データを見て番組の流れを確認。そして今回の字幕制作のルールが記載された「指示書」にも丁寧に目を通し、チェックが発生しそうなポイントを頭に入れて準備をした。

また、今回は「誤訳チェッカー」という役割も用意された。武政さんと池田さんは翻訳作業に加えてこの誤訳チェッカーを担当。誤訳チェッカーの役割は、誤字脱字を確認するのはもちろんのこと、原文からの逸脱も確認することだ。

武政さんがチェックを担当した箇所では『ブラック・バード(Black Bird)』で助演男優賞を受賞したポール・ウォルター・ハウザーのスピーチがあった。スピーチはラップ調で韻を踏んでおり、テンポよくラップ特有のリズムでスピーチをしていたため情報の取捨選択が肝だと感じたという。また、チェック業務でも裏取りの大切さを感じた。

「『greatest gift』と話している箇所があったのですが、リサーチをすると息子さんの話だと分かりました。チェッカーとして原文把握はもちろんのこと、情報の確認もやっぱり大事だと思いましたね」(武政さん)

翻訳とチェッカー。2つの異なる役割を兼任するのは大変そうに思えるが、実は相互のメリットも多い。池田さんはチェッカーとして自分が担当していない翻訳パートを見たことで発見があったという。

「翻訳時は時間的に他のパートにまで気を配る余裕がなかったのですが、チェックで他のパートを拝見したことで細かいワードチョイスなど、『ああした方がよかった』というのが出てきました。やはり全体の流れを把握することが大切だと痛感しましたね。また翻訳を先にやっていたことで授賞式の構成や全体のトーンはつかめていたので、チェック業務にも非常に入りやすかったです」(池田さん)

作業スタートから2日後の夜、すべての翻訳&チェック作業終了!
約2日間をかけて、すべての作業が終了。無事にクライアントへの納品となった。「スピード感がお祭りのようだった」と池田さんが感じたように、大所帯・短時間での翻訳作業は一種のイベントのような雰囲気。一致団結して駆け抜けたことで、独特の達成感と翻訳者としての成長を感じられたに違いない。

JVTA映像翻訳ディレクター・岩崎悠理より
エミー賞のような短納期・長尺の翻訳は大所帯なチームでの作業となります。時間との戦いの中、一人ひとりの翻訳者さんにはスピーディーで柔軟な対応が求められます。今回チームの皆さんは自分の担当箇所をこなすだけでなく、パートを超えて知恵を出し合ったり連携を取ったりして進めてくださったのがすばらしかったです。緊張感のあるハードな作業ですが、こうして全員で作り上げた字幕が完成した時にはこの上ない達成感と感動が味わえます。


第75回エミー賞の字幕版はU-NEXTにて現在も独占配信中。詳細は▶こちらからご覧ください!


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2024年4月期以降のコース・講座の受講料金改定に関しまして


2024年4月期以降のコース・講座の受講料金改定

2024年1月25日 日本映像翻訳アカデミー株式会社 代表取締役 新楽直樹


この度、授業の質の向上、及び受講生の皆さまへのさらなるサービス・受講環境の向上を目的とし、カリキュラムの改編及び授業の追加等を行い、当校が運営するコース・講座の受講料を以下の通りに改定いたします。

なお、2024年1月24日までの郵送資料、広告、その他の掲示物等に旧料金が表示されている場合があります。コース・講座へのお申込時には最新の資料をご確認ください。

今度とも受講生の皆さまのサポートに全力で取り組んでまいります。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
 

=改定の主たる理由=
・既存カリキュラムの発展的な改編
・新たな職業訓練授業内容の追加
・授業数の追加(英日映像翻訳科 総合コース・Ⅰ)


 

=料金の変更が該当するコース・新料金(税込)=
◆英日映像翻訳科
総合コース・Ⅰ ¥209,000
総合コース・Ⅱ ¥229,790
実践コース   ¥245,960


◆日英映像翻訳
総合コース   ¥275,550
実践コース   ¥254,100


詳しくはこちら:https://www.jvta.net/images/price-list.pdf
 


 

以下のコースの新料金に関しては料金一覧をご覧ください。
◆English Clockロジカルリーディング力 強化コース
詳しくはこちら:https://www.jvta.net/images/price-list.pdf
◆English Clockロジカルリーディング・アディショナル5
詳しくはこちら:https://www.jvta.net/images/price-list.pdf
※2024年2月開講のロジカルリーディング・アディショナル5に関しては改定前の料金が適応されます。

※MASC×JVTA バリアフリー講座に関しては4月開講予定の音声ガイドディスクライバー養成講座より料金改定を行います。新料金及びカリキュラムに関しては2月下旬にウェブサイトにて発表します。
※上記はすべて税込価格です。
※入学金に変更はありません。


以上



ご不明な点等ございましたら、事務局<seminar(at)jvta.net>までお問い合わせください。※(at)は@に置き換えてください。


 


 

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日本映画の世界進出を後押し!英語字幕を担当した映画『莉の対』がロッテルダム国際映画祭の最優秀作品賞!

第35回ロッテルダム国際映画祭が先日開催され、田中稔彦氏が初監督を務めた『莉の対(れいのつい)』が、タイガーコンペティション部門の最優秀作品賞(タイガー・アワード)を受賞した。ロッテルダム国際映画祭はオランダのロッテルダムで開催される映画祭で、ヨーロッパではカンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭、ベルリン国際映画祭に次ぐ重要な映画祭のひとつとされている。ヨーロッパだけでなくアジアやアメリカ、中近東から作品が集まり、特に実験的な作品を紹介することで知られる映画祭だ。日本の作品による単独でのタイガー・アワード受賞は初の快挙である。

JVTAでは本作の英語字幕を制作。日英映像翻訳修了生のアシュトン・ヒューエット=ジョーンズさん、アネリース・ヴォルダースさん、田中美紗さん、新田ありささん、やまたま ひろさんが190分の長編映画に字幕をつけた。

『莉の対』は東京と北海道を舞台に、自分の存在の希薄さを感じながら生きている女性・光莉と失聴者である風景写真家・真斗の物語だ。葛藤しながら脆く汚く生きる人間の弱さが、大自然の美しさと対をなすように描かれている。

様々な「障がい」を英語字幕でどのように表現するか
本作では耳の聞こえない真斗をはじめ、様々な障がいのある人物が登場する。ヒューエット=ジョーンズさんは「ろう者や発達障がい者、そして日本社会がどのように障がいを捉えているかなど微妙なトピックを扱っているため、翻訳には気を配る必要があると感じた」という。そこで翻訳の下準備として、医学用語やろう者や発達障害者自身が使っている用語などを調べた。また新田さんも、英語字幕で観客に不愉快な印象を与えないよう、聴覚障がいと知的障がいについての情報を確認し、日本と英語圏での障がい者の違いなども調べておくべきだと考えて準備をおこなった。子供の時に耳が聞こえなくなった真斗については、「Deaf」(手話をコミュニケーション手段とする言語的少数派の「ろう者」)や「hearing-impaired」(聴覚力が大幅に減少した)ではなく「deaf」(耳が聞こえない)を使用するなど、翻訳者の念入りな下準備が英語字幕に生かされている。

また真斗という登場人物に関しては、やまたまさんの担当パートでも試行錯誤した場面がある。失聴者である真斗のセリフが聞き取りにくく、その言葉を聞いた光莉はなかなか彼の言いたいことが分からないというシーンだ。そのシーンでは真斗が言葉を何度も繰り返すことで、段々と彼の言いたいことが分かってくるようになる。

「このシーンで観客は、光莉と一緒に真斗のセリフに耳を澄ませ、『何を言っているのか分からない』から『少しずつ分かってきた』になり、最後にようやく彼の言葉を理解することになります。つまり字幕でも、『全く分からない』と『少し分かる』の2段階を経て、『分かる』の状態に持っていく必要があるのです」(やまたまさん)

英語圏の失聴者の人々が実際にどのように言葉を発するのか、はっきりとした調べはつかなかった。そのためやまたまさんは、該当のセリフを英語にしたものを自分で何度もゆっくりはっきり発音し、その口の動きを視覚だけで捉えた人がどのように発声するかを想像してみたという。そして音の表記も、例えば「sorry」という言葉であれば「sowee」「sow-ree」「sow-rry」などのように変化させるという工夫を凝らし、最終的な字幕を完成させた。

一番面白くて一番難しかった「日本語ならではの言葉遊び」
英語字幕の翻訳において、常に頭を悩ませるのは日本語ならではのセリフだ。本作にも日本語独特のセリフがある。「あの上を向いてる松は、『天まで届け』でトドマツ。あっちの松は下を向いてて、『もうええぞ』で、エゾ松」や「北海道はでっかいどう」など、日本語の音やニュアンスを生かしたセリフの翻訳について、該当箇所を担当した田中さんは「翻訳が一番面白くて一番難しかった」という。

「特に松の台詞は数日間悩みました。『トド松』『エゾ松』の英名を調べたところ、todo firとyezo spruceと出てきたので、それらと韻を踏む言葉を検索しました。その中でさらに『上を向いている』『下を向いている』と結びつく言葉を絞り込み、最終的に “dodo shooting fir(for) the sky”と”echoing the blues”に辿り着きました。『北海道はでっかいどう』はリズムの良いフレーズなので、なるべく寄せられるように、”Hokkaido”と同じくらいの長さで”h”から始まる”Humongous”を選びました」(田中さん)

日本語で見た時と同じインパクトを英語字幕でも伝えたい
作品が持つメッセージを、言葉も文化も異なる世界の観客にどう伝えるか。映像翻訳者が最も念頭においているこの点について、ヴォルダースさんはまず映画の一連の流れを把握し、一視聴者として味わい、その後国際的な視点で映画への理解を深めるように努めた。さらに監督や俳優のブログ記事などを調べ、伝えたいメッセージやキャラクター像が一致しているかどうかを確認する作業もおこなったという。
そんなヴォルダースさんが「特に印象に残った」と語るのは以下のセリフだ。

「色がない人生。白、じゃないの。透明。私一人がいなくなってもきっとこの世界には何の影響もなくて、だったら私何で生きてるんだろうって」

予告編でも一部使用されている、印象深いセリフである。このセリフは田中さんが担当するパートに登場するが、ヴォルダースさんが担当した回想シーンにも登場したためにお互いに確認しながら言葉選びをおこなった。ヴォルダースさんはこのセリフについて、日本語で見た時と同じようなインパクトを与えたいと考えて訳語を選択したという。また田中さんも後半の「私一人がいなくなっても…」の感情に一番しっくりくる言い回しを考えるため自らボイスオーバーをしたり、回想シーンでも字数に余裕があることを確認したりした上で、”at all”や”even”のような単語を使い感情を強調するようにした。チーム翻訳ならではの協力を経て出来上がった字幕を、ぜひ予告編でも確認してほしい。



映像翻訳は作品を世界へ届けるかけ橋である
『莉の対』がロッテルダム国際映画祭でタイガー・アワードを受賞したというニュースは、5人の翻訳者にとっても嬉しい知らせだった。「英語字幕によって作品を世界と繋げることができて、この仕事ではこれ以上うれしいことはありません」(新田さん)、「この作品の翻訳に関われたことを光栄に思うと同時に、作品を制作した監督、スタッフ、俳優たちのセリフ、メッセージとビジョンを翻訳者として忠実に伝える責任を改めて感じています」(ヒューエット=ジョーンズさん)など、喜びと共に改めて作品を世界に送り出す立場としての責任も感じている。

「字幕をつけることで映画を国際舞台に届けることができ、作品に注目が集まり、将来のプロジェクトへの支援に繋がるのは確か」とヴォルダースさんが言うように、映像翻訳は映像作品と世界を繋ぐかけ橋となる。映像翻訳者は表に出ることはないが、実はその橋を組み立てる重要な存在なのだ。今回『莉の対』で5人の翻訳者が作り上げたかけ橋は、しっかりと世界へと繋がった。英語字幕のニーズが高まる今、日英映像翻訳者の活躍の場は確実に拡がっている。


『莉の対』田中稔彦監督よりコメントをいただきました!

田中稔彦 監督
ロッテルダム国際映画祭で私達を担当して下さった通訳の方(オランダ人でありながら、日英蘭がネイティブ)が『莉の対』に惚れ込んで下さり、彼が真っ先に私に伝えて下さった事は『とにかく翻訳が素晴らしい!』でした。日本語独特の表現であったり、失聴者のキャラクターの表現方法だったりが特に翻訳の難しいところだと思います。そういった箇所が見事に翻訳されていたと絶賛されました。

私自身は、自分が演じたキャラクターのラストシーンの翻訳が特に印象的でした。失聴者が言葉を口にする難しい表現を見事に再現して下さいました。また、私自身英語を得意としており、自ら全てのセリフ全ての翻訳に目を通しました。一つ一つを確認しながら、「素晴らしい!」と何度も感嘆したのを覚えています。通常の映画よりセリフもかなり多い作品ですが、内容がしっかりと伝わった事がグランプリに繋がったのだと感じています。

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『莉の対』は​2024年5月31日(金)〜6月6日(木)にテアトル新宿で国内初上映決定!
以降、全国映画館にて順次公開予定です。お楽しみに!
『莉の対』公式サイトは▶こちら
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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #44 流行歌が教えてくれた●池田明子(広報)

子どもの頃から、歌番組が大好きだった。

令和の今、若い世代や海外で日本の昭和歌謡やシティ・ポップが人気だという。はたち(20歳)の手前まで昭和だった私は、多感な時代をその真っ只中で過ごしていたことになる。映像翻訳者を目指す皆さんには洋楽が好きで英語を学んだ人が多いが、私の場合は日本の流行歌が言葉の道標だったような気がする。まだボキャブラリーが少ない子どもにとって、大好きな歌手の歌には知らない言葉が数多くちりばめられていた。

「バーボン」「横須賀」「乃木坂」「津軽海峡」「ハリウッド」「ポルシェ」「心のこり」「サウスポー」「小春日和」「追憶」「摩天楼」「蜃気楼」「ジェラシー」「未練」「ストロベリーフィールズ」「ドン・ペリニヨン」「シャガール」「マティス」「カム・フラージュ」「ネオンテトラ」「ジョン・ル・カレ」「マンハッタン」「ノーサイド」「条件反射」「北ウイング」「スキャンダル」「カサブランカ」「カンパリ・ソーダ」「ジン」「Ray-ban」「カサノバ」「異邦人」「捜査一課」「鑑識課員」「イミテイション」「ウィドウ」「クリムゾン」「Femme Fatale」「ルビー」「アクアマリン」「鳶色」「ジャンヌ・ダーク」「タブー」「グッド・ラック」「オーデコロン」「エチュード」「カタストロフィ」「コンプレックス」「ブーメラン」「バルセロナ」…。それは外国語だったり、地名だったり、車やお酒の名前だったり、人名だったり、色の名前だったり、映画の題名だったりした。学生時代に使っていた辞書に蛍光ペンでハイライトしていたのは、ほとんどが歌のタイトルや歌詞の一部だったと言っても過言ではない。(※表記は当時聴いていた曲の歌詞より引用)

昭和の歌番組には、歌詞のテロップがないことが多かった。今のようにインターネットでパパっと歌詞を検索することもできず、耳で聴いたままを覚えて意味も分からずにいつも口ずさんでいたものだ。演歌もテレビ番組でよく聴いていたので、子どもなのに「北の宿から」や「長崎は今日も雨だった」、「あずさ2号」、「3年目の浮気」などを歌っているような時代だった。「しらふって何?」と親に聞いたり、「昔の名前で出ています」って何だろう?と、疑問に思ったりしていた。

「公衆電話」や「伝言板」「ダイヤル」「文通」「交換日記」などは、令和の若い世代にとってはある意味ファンタジーなのかもしれない。駅の構内や喫茶店で「〇〇からお越しの〇〇さま、〇〇さまからお電話です」などは、古い映画やドラマの中でしか見たことがないシーンなのだろう。インターネットも携帯電話も、ビデオデッキさえもなかった時代、待ち合わせてもすれ違って会えないことは珍しくなかった。そんなもどかしさが情緒に繋がって名曲が生まれていたのかもしれない。

私は令和の今でもメインに聴くのは、昭和から好きなアーティストの作品だ。ほとんどがファン歴40年以上。子どもの頃からずっと大好きな人のライブに50を超えた今でも行けるなんて、本当に幸せなことだとつくづく思う。CDラジカセも現役。いまだに配信で曲を購入したことはないし、音楽のサブスクも利用していない。歌詞カードやライナーノーツをじっくり読み、作詞、作曲、編曲、演奏者などチェックするのがまた醍醐味なのだ。タイムリーではない若い世代さえも夢中になる“エモい”音楽を物心がついたころから浴びて育ったのだから…。短編映画を観るような余韻に浸りながら、歌詞の世界を堪能する。大人になった今だからこそ、その深さにまたぐっとくる。そんな至福の時間をこれからも大切にしたい。

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Written by 池田明子
いけだ・あきこ●日本映像翻訳アカデミー・コーポレートコミュニケーション部門所属。English Clock、英日映像翻訳科を受講後、JVTAスタッフになる。“JVTA昭和歌謡部”のメンバーとして学校内で昭和の歌の魅力を密かに発信中。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
 
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