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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』

今週の1本 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』
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3月のテーマ:卒業
 

「ハリー・ポッター」シリーズに、卒業式のシーンは一度も登場しない。不思議に思うのは私だけだろうか。世界一有名な学園モノで、主人公・ハリーたちの7年間の魔法学校での成長を追ったシリーズ作品なのに、ホグワーツ魔法魔術学校の卒業式に関する情報は一度も出てこないのだ。
 

それでも「卒業」と聞いて私が思い出すのはハリー・ポッターだ。それはおそらくメインキャストが全員、1作目から変わらず出演しているからだと思う。『ハリー・ポッターと賢者の石』から『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』に至るまでの約10年間、私たちは彼らの成長を目の当たりにし、その変貌ぶりに驚かされた。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』のワールドプレミアに晴れ晴れとした表情で現れた俳優陣を見た時、「この作品そのものが卒業式なのだな」と、私は思った。ほぼ同年代で同じ時期に学生時代を過ごした私にとって、ハリー・ポッターのラストは非常に感慨深いものだった。
 

そもそも私がハリー・ポッターを知るきっかけとなったのは、中学校の図書館だよりだった。「新着図書」の片隅に載っていたのを発見し、“魔法使い”という言葉に惹かれて読んだのが始まりだ。原作の大ファンになった私は1年後の映画公開初日、母親に映画館へ連れて行ってもらった。原作からそのまま飛び出してきたかのような想像通りのキャラクターたちに驚くと同時に、私が衝撃を受けたのは彼らが皆、英語を話していることだった。当たり前だが舞台はイギリスであり、キャストは全員イギリス人である。だが英語に全く興味がなかった14歳の私は、映画を見るまで彼らが英語を話すとは思わなかったのだ。初めて聞くイギリス英語の美しさに感動するとともに、彼らが話している内容を自分の力で理解したい、一言も漏らさず全部を知りたいと思い、英語を勉強することにした。
 

だが当時、私は英語が嫌いで赤点を取っていた。中学に入るまで全く英語に触れたことがなく、アルファベットの小文字さえ書けなかった。先生にあてられて黒板の前で立ち尽くす私を見て、クラスメートが大笑いしていたのを今でも覚えている。それでも私はハリー・ポッターを見たことがきっかけで、英語を勉強するようになった。というより、勉強とは思っていなかった。こんなにもハリー・ポッターのことが大好きなのに、世の中には英語が理解できるというだけで自分よりもハリー・ポッターのことを知っている人間がいるということが悔しく、許せなかったのだ。
 

アルファベットの小文字すら書けなかった私が今は翻訳関係の仕事をしているのだから、人生は本当に何があるか分からない。ハリー・ポッターの映画を見たことで、私の人生は大きく変わった。ひょっとしたら、あの時教室でバカにされた私を不憫に思ったハリーが、こっそり魔法をかけてくれたのかもしれない。
 

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』
監督:デヴィッド・イェーツ
脚本:スティーヴ・クローヴス
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソンほか
製作年:2011年
製作国:イギリス/アメリカ
 

Written by 岡田 真由子
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 3月のテーマ:卒業
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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