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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の一本  『ルーム』

今週の一本  『ルーム』
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4月のテーマ:始まり
 

ジョイは7年もの間、小さな「部屋」に監禁されている。監禁生活が始まってから生まれた5歳の息子、ジャックも一緒だ。「部屋」の中にはキッチン、浴槽、洗面台、ベッド、トイレ、テレビという生きていくのに必要最低限の物しかない。ジャックは夜になるとクローゼットの中で寝る。そしてジャックが寝た後に、ジョイを閉じ込めた犯人でジャックの父親でもあるオールド・ニックが食料や日用品などを持ってくる。2人はそれだけを頼りに暮らし、狭い部屋の中で生活が全て完結するのだ。
 

だからジョイは「部屋」の中が世界の全てで、テレビに映っているものは全て“偽物”だとジャックに信じこませていた。しかし、ジャックが5歳の誕生日を迎えた時、ジョイは息子に真実を告げる。「この部屋の外には“本当の世界”がある。テレビで見る人や物は、全て本物だ」と。そして2人はついに「部屋」を脱出する…。
 

部屋から出たジャックは5歳にして初めて本当の世界を知る。紆余曲折を経てやっと「部屋」を脱出し、幸せになったように見える2人だが、物語はここで終わらない。「本当の世界」では、2人を様々な試練が待ち受けていた。ジョイは環境がまるで変わってしまった実家に戸惑い、マスコミの取材では、インタビュアーの心無い一言に悩まされる。そして、今までママ以外の人間に接したことがないジャックは、会う人や見る物にどうしていいか分からない。しかし、あらゆる困難を乗り越えながら、2人は次第に普通の生活を手に入れていく。
 

母親のジョイを演じたブリー・ラーソンは役作りのために、厳しい食事制限をしながら電話もネットもない状態で1カ月の間引きこもり生活をしたそうだ。「家にいるのが好き」というブリーでさえ、最後の一週間はとても憂鬱になり、一日中泣いていたという。さらに、彼女は監禁された人の精神状態をトラウマ治療の専門医に聞いてリサーチし、役に臨んだ。その甲斐あってか、ブリーはアカデミー賞をはじめ、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞、SAG賞(全米映画俳優組合賞)、インディペンデント・スピリット賞などの主演女優賞を受賞した。ジャック役のジェイコブ・トレンブレイの演技もまた素晴らしい。撮影当時8歳だった彼が作品の内容をしっかりと理解できていたというから驚きだ。
 

もし、私たちが7年間も部屋の中から出られないとしたら…。愛する子供と一緒にいられれば耐えられるのだろうか? 子供のためには何が一番幸せなのか? この作品で最も描きたかったのは、監禁によって長い間社会から隔てられてきた親子がトラウマを克服するために家族や社会はどうあるべきなのか? というテーマではないかと思う。 クライマックスは脱走ではなく、むしろその後の2人の軌跡なのだ。親子の絆というよくあるテーマでも、繊細な心理描写が素晴らしく、感動する。ぜひじっくり見てほしい映画だ。
 

※余談ですが、ロサンゼルス校の講師と修了生は、『ルーム』のQ&A付き特別スクリーニングに参加し、なんと生でブリーに会っているのです! アルバムとレポートは以下のリンクから
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.10153387627692513.1073741918.130659927512&type=3
 

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『ルーム』
監督: レニー・アブラハムソン
原作: エマ・ドナヒュー
主演: ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ
制作国: カナダ、アイルランド
公開: 2016年(日本)
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Written by 當麻 さやか
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 4月のテーマ:始まり
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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