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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『文豪ストレイドッグス』

今週の1本 『文豪ストレイドッグス』
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6月のテーマ:雨

 
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ…

 
宮沢賢治の『雨ニモマケズ』。誰もが1度は聞いたことのあるフレーズだろう。
小中学生のときに授業で習ったせいか、それとも好きな作家のひとりだからか、私自身も雨の日にはこの詩を思い浮かべる。

 
アニメ『文豪ストレイドッグス』は、宮沢賢治をはじめ、芥川龍之介や中原中也など実在した文豪をモデルとしたキャラクターたちが、異能力で戦いを繰り広げる作品だ。架空の都市ヨコハマを舞台に「武装探偵社」と「ポートマフィア」の2つの組織がぶつかり合う。主人公・中島敦の異能力は「月下獣」というもので、巨大な虎に変化して超人的な身体能力と再生能力を得ることができる。これは中島敦の作品『山月記』から由来している。このように、登場人物の異能力が実在した文豪の作品にまつわるものになっているのも、このアニメの特徴である。(個人的には梶井基次郎の異能力名「檸檬爆弾」には驚きだったが)

 
さらに注目すべきはキャラクターの性格や嗜好を実在した文豪に寄せているということだ。例えば、心中を何度も試みたといわれている太宰治は、この作品では死に場所を求める自殺愛好家で美女と心中したいと願っているという設定である。また実際に確執があったとされている太宰治と中原中也の関係性もアニメでは犬猿の仲として描かれている。宮沢賢治もまた、かつては電気も通っていない田舎に暮らし、人を疑うことを知らない性格で、やはり実在の賢治と似ている。作中のキャラクターと実在の文豪を比較してみるというのも面白いと思う。

 
キャラクターの設定もさることながら、架空の都市ヨコハマも、文字どおり横浜市をモデルにしている。ちなみにオープニングのタイトルバックの夜景は、横浜ランドマークタワーから見下ろした「みなとみらい」だそう。

 
なかには文豪好き、文学好きからの否定的な意見もあるが、確かに文豪たちを知る一助になっていると個人的には思う。この作品をきっかけに、名だたる文豪たちの小説を読み返してみてはいかがだろうか。雨の音を聴きながら読書にふける休日なんていうのも、たまにはいいのかもしれない。

 
『文豪ストレイドッグス』
原作:朝霧カフカ
漫画:春河35(「ヤングエース」連載)
声の出演:上村祐翔、宮野真守、細谷佳正、神谷浩史ほか
製作国:日本

 
Written by 村西亜矢子

 

〔JVTA発] 今週の1本☆ 6月のテーマ:雨
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 

 
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