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Tipping Point Returns Vol.24 ■フリーランスの「ほんとうの適性」って何だろう?

Tipping Point Returns Vol.24 ■フリーランスの「ほんとうの適性」って何だろう?
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20年前、私はこの連載Tipping Pointで『がんばれ! フリーエージェント(※)』と題したコラムを書いた。その最後はこんな言葉で結ばれている。(※今のフリーランスと同じ意味で用いている)
 

フリーエージェントという生き方への関心は、日本でも年々高まりつつあります。将来的には国や自治体も支援に乗り出すことでしょう。しかし、そんなものを当てにするようではフリーエージェントの名が廃(すた)ります。
私は職業人としての人生の大半がそうであったように、フリーエージェントという生き方が大いに気に入っています。自分が気に入っているから、年齢も性別も性格も背景も超えたところで、この生き方を目指す人を応援したいのです。
がんばれ!フリーエージェント!

 
 

将来的には国や自治体も支援に乗り出すことでしょう――。この願いは現実となり、新聞やネット、テレビのニュースで「フリーランス」という言葉を目にするのは当たり前になった。フリーランスという働き方を巡る法制度の改革や企業が副業を認める動き、同時にフリーランスゆえの課題や諸問題も連日報じられている。
 

ならば今、20年前に私が願った社会が到来したのか? 
答えは半分イエスであり、半分ノーだ。
 

フリーランスの絶対数の増加はもちろん、メガバンクや日本を代表するメディア企業でも「副業」が認められたと聞く。フリーランス保険なる商品がテレビコマーシャルで流れ、国や団体による新たな支援策の検討も活発だ。20年前の「会社を辞めてフリーになるよと言ったら親が泣いた」なんて時代は過ぎ去ったように見える。だから半分イエス。
 

しかし、「そんなものを当てにするようではフリーエージェントの名が廃(すた)ります」という部分は悩ましい。近年の状況を見ると、フリーランスを目指している人、職を転じて間もない人たちからの「国はもっと守ってくれないのか」「優遇制度やセイフティネットが足りない」という声は、むしろ高まっているように見える。だから半分ノー。
 

もちろんフリーランスを守る制度や優遇措置はあるべきだ。私が問題だと感じているのはそれらを「当てにする」という部分である。フリーランスが制度や優遇措置を活用してリスクをヘッジし、より良い仕事を行うのはもちろん正しい。しかし「それらを当てにしなければフリーランスとしてはやっていけない(食べていけない)」という考え方はどうか。私ははっきり言って反対だ。万が一それがフリーランスを目指す人のデフォルト(初期設定)になれば、社会の中で「当てにする人の集団」たるフリーランスの位置づけはとても低いものになる。つまり報酬も上がらない。
 

そんな人は、そもそもフリーランスの適性がない。向いていないのだ。

ここで、米国などフリーランス先進国での定義をいま一度確認しておこう。
「一つの企業や団体と長期間にわたる被雇用契約を結ばずに『スキルに裏打ちされた独立自営の精神』に従って、自らの能力を最大限に活かせる職場を社会に広く求めることができる人材」。
 

独立自営の精神。他者と協力し協働はするが、守ってもらうことを渇望し、優遇されることを「当てにする」ことはない。独立自営の精神を表現するなら「自律し、自立できること」。それこそがフリーランスの唯一無二と言ってよい適性である。
 

例えば、2023年に導入予定のインボイス制度を巡る世論を見てほしい。ネットなどで調べればわかるが「インボイス制度はフリーランスが損をするひどい制度だ!」「弱い者いじめだ!」という声が大勢を占める。か弱いフリーランスから消費税をむしり取るのかという主張が正論として罷り通っている。
 

私はそうは思わない。むしろなぜ「フリーランスで稼ぎが1,000万円に満たない人は消費税を納めなくていいからポケットに入れときなさいよ」などという優遇措置が、今日まで維持されてきたのか不思議に思う。消費税未納を当てにした考え方だからだ。
 

繰り返すが、フリーランスを守る制度や優遇措置は存在するべきだ。ただし、社会的合理性を有し、本来フリーランスの適性がないような人が「当てにする」ことで居座ったり、うまい汁を吸ったりするような、ゆがんだ制度ではないことが絶対条件だ。
 

そういった意味で、「自律と自立」こそがフリーランスの真の適性でありプライドであると信じて疑わない私にとって、昨今のフリーランスブームには危険な側面があるように見える。
 

ではなぜ本来適性のない、あるいは努力してそれを身につけようとしない人がフリーランスを目指したり、フリーランスであり続けようとしたりするのか。
 

原因の一つは、入り口のところでのミスリードにあると思う。例えば、(自分にフリーランスの適性があるか?)と考える多くの人が、ネットで「フリーランスの適性」を検索し「フリーランス適性診断」を受けている現実がある。ちょっと調べただけで、そんなサイトが次から次へと出てきて、こんなふうに「適性」を説いている。
 

<あなたに向くのは、独りで実力を発揮できる自由型?協調性抜群の企業型?「フリーランサー適性チェック」>
Q1. フリーランスになる前の準備として、次のうち一番大事なことは?
・独立開業セミナーなどに通って知識をつける
・とりあえず会社員になって仕事に必要なスキルを身につける
・とにかく幅広く人脈をつくっておく
・仕事がなくても困らないくらいの貯金をしておく

 

はっきり言う。どれも単なる行動の選択肢にすぎず「適性」と呼べるものではない。書いてある通りにやった一流のプロもいるだろう。しかし、何一つ当てはまらない一流もいることを私は知っている。
さらにはこんな提案をするサイトもある。
 

<実は、フリーに向くのはこんな人>
向き不向きの見極めが大切!フリーに向くタイプとは? 独立してから実感する、ここが案外重要!というポイントをまとめてみました。“フリーでやっていけるかどうか…”“独立したものの自分はフリーに向いているのかどうか…”と迷っている方の参考にしていただければと思います。
・1人で居ることを寂しいとは思わない
・好奇心が旺盛で人に会うのが楽しい
・切り換えが早い
・人に頭が下げられる
・負けず嫌い
・・・・・

 

絶句…。特に「言葉のプロ」を目指す人にとっては、どうでもいい診断項目ばかりだ。自律、自立したフリーランスだって1人は寂しいよ。楽しくなくたって必要なら人に会うよ。切り換えがなかなかできなくて執着しちゃうプロは案外多いよ。むやみに人に頭を下げていると、逆に軽くみられちゃうよ…。これを「適性」とするミスリードによって、お上(かみ)の施しを「当てにする」ような人が出てくるのもいたしかたないのかな、とも思う。
 

ほとんどのサイトは人材会社が運営していたり、その先でリンクしたりするもので、ほんとうの目的は転職を促して自社サービスへの登録に導くものだ。それが悪いと言っているわけではない。そういう目的で「適性」と称し、提案しているだけなのだから、朝の情報番組の「今日の占い」程度にとらえて楽しめばいい。
 

このコラムを読んでいただいている皆さんには、ぜひ「自律、自立の人」であってほしい。ブームの中で花盛りのミスリードには耳を傾けないでほしい。真の適性を持つ人、身につけようとしている人であってほしい。
 

8月10日(水)、特別セミナー「フリーランスの新・常識 2022 夏 ~‘今まで通り’が生む大失敗!? 乗り越えるための10の知識」に登壇予定だ。インボイス制度への対処法やSNSの活用法など新しい事例について話すが、根底には、ここで論じた「適性の意味を正しくとらえたうえで、自身の今を見つめ直してみよう」という思いがある。自律と自立という真の適性についても触れる。
ぜひ一緒に考えてみたい。
 

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Tipping Point Returns by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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Tipping Point Returnsのバックナンバーはコチラ
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns/
2002-2012年「Tipping Point」のバックナンバーの一部はコチラで読めます↓
https://www.jvtacademy.com/blog/tippingpoint/

 

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