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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第104回“THE NIGHT AGENT”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第104回“THE NIGHT AGENT”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第104回“THE NIGHT AGENT”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

スパイドラマ、怒涛のラインアップ!!

この1年の間に、スパイドラマの傑作・快作が怒涛のごとく配信されているのをご存知か?
昨年後半に始まったのが、ジェフ・ブリッジスが老境の元スパイを演じる“The Old Man”(Disney+)と、ゲイリー・オールドマンが落ちぶれたスパイマスターに扮する“Slow Horses: Season 2”(Apple+)。また“Andor”(Disney+)は、『スター・ウォーズ』シリーズとしては物足りなかったが、スパイスリラーとしては見応えがあった。
 

今年に入って、CIAの新米弁護士が大活躍する“The Recruit”(本ブログ第100回参照)、今回紹介する“The Night Agent”、ケリー・ラッセル(!)主演の政治スリラー“The Diplomat”、A・シュワルツェネッガー主演のアクション・コメディ“FUBAR”と、Netflix作品が並ぶ。そして、『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟によるアクション巨編“Citadel”(Amazon Prime)が続いた。
 

今月末からは、サミュエル・L・ジャクソン主演のマーベルSci-Fiスリラー“Secret Invasion”(Disney+)、これが最終シーズンとなる軍事スリラー“Tom Clancy’s Jack Ryan”(Amazon Prime、本ブログ第55回参照)が始まる。ついでに、キーファー・サザーランド主演の“Rabbit / Hole”(Paramount+)の早期配信をU-NEXTにお願いしたい。

以上本格モノからSci-Fi、コメディまで、バラエティに富んだスパイドラマが出揃った!
 

“ノンストップ・ハイオクタン・アクション・スパイスリラーを見逃すな!!”
お待たせしました!
“The Night Agent”はアドレナリンが駆け巡り、ドーパミンが溢れるNetflixオリジナル。
電話番の下級FBI捜査官と、一文無しの女性元CEOが政府の巨大な陰謀に翻弄される、迫真のノンストップ・ハイオクタン・アクション・スパイスリラーを見逃すな!
 

“すべてはホワイトハウスの地下室にかかってきた、一本の電話で始まった!”
—ワシントンD.C.
1年前、FBI捜査官のピーター・サザーランド(ガブリエル・バッソ)は、満員の地下鉄で爆発物を発見した。彼は車両を緊急停止させ、乗客を避難させた。爆発は起きたが、ピーターの迅速な対応で多くの人命が救われた。
 

ピーターの父親もFBI捜査官だった。だが国家反逆罪で起訴された後、裁判開始前に交通事故で死んだ。ピーターは今も父親の無実を信じている。
 

大統領首席補佐官ダイアン・ファー(ホン・チャウ)は、ピーターを「ナイト・アクション」の連絡係に据えた。「ナイト・アクション」は、FBIと政府による最高機密に関する合同捜査プログラムだ。と言ってもピーターは下級捜査官なので、仕事はホワイトハウスの地下室で電話番をすること。その電話が何のためにあるのかさえ知らされていない。夜勤のピーターは鳴ることのない電話の前で、毎晩報告書の分析をして暇をつぶす。
 

ローズ・ラーキン(ルシアン・ブキャナン)は、サイバーセキュリティ企業を立ち上げた才女。だが友人の裏切りで会社を失い、自己破産寸前だ。傷心のローズは、伯母のエマ・キャンベルの家に居候している。
 

ある晩、出張から帰ってきたキャンベル夫婦は、2人組の暗殺者に襲われる。驚くべきことに、夫婦は殺気立ち、ローズが見たこともない身のこなしで機敏に行動する。ローズは電話番号と暗号が書かれたメモを渡され、言われるままに2階から脱出した。
夫妻は果敢に戦うが、惨殺された。
 

さらに、暗殺者のひとりがローズに迫る。
ローズは隣人の留守宅へ逃げ込み、渡された番号に電話した。
 

ホワイトハウスの地下室で電話が鳴った—
 

原作よりずっと魅力的な主役2人!

ピーター役のガブリエル・バッソは、ひと昔前にドラメディの佳作”The Big C”で長男アダムを演じていた。アメリカのどこにでもいる兄ちゃん的キャラで、本作の「巻き込まれ型ヒーロー」にぴったり。次回作はC・イーストウッド監督の“Juror #2”だ。
 

ルシアン・ブキャナンはニュージーランド出身。突然目撃する暴力に怯えながらも、芯の強さと知性で真相に迫っていくローズを自然体で好演する。
 

ピーターが堅物なので2人の距離がなかなか縮まらない。もどかしいが、ケミストリーは強い。このぬるいロマンスは新鮮でリアリティがある。マシュー・クワークによる原作より、本作のピーター&ローズの方がずっと魅力的だ。
 

脇役陣は隅々まで血が通っている。タフな首席補佐官ダイアン・ファー役のホン・チャウ、敏腕シークレットサービスのチェルシーを熱演するフォーラ・エヴァンス=アキンボラ、ピーターの親友で警官のシスコを演じたカーティス・ラムが光る。そして極めつけが、サイコパスの殺し屋エレン&デイルを演じたイヴ・ハーロウとフェニックス・ライだ。
 

「スパイスリラーの面白ファクター」がてんこ盛り!

ショーランナー(兼共同脚本)のショーン・ライアンは、悪徳刑事物の決定打“The Shield”で一躍名をはせた。その後もデルタフォース(米陸軍特殊部隊)の活躍を描く”The Unit”、痛快なSci-fiドラマ“Timeless”(本ブログ第38回参照)、最近では”S.W.A.T.”のリブート版を手掛けた。
 

アメリカン・ドラマの世界では、男が「白馬の騎士」だった時代は終わっている。本作の後半でも、ピーターはローズの「守護者」から「パートナー兼ボディガード」となり、ローズがストーリーの牽引役となる。彼女が元サイバーセキュリティ会社のリーダーで、ハッキングも得意という設定が効いている。
 

また、原作にはないカラフルなサイドストーリーも大きな見どころ。
父親のスパイ行為をめぐるピーターと彼の名付け親グレッグの対立、キーパーソンとなる副大統領とその娘マディの愛憎、野心家シークレットサービスのチェルシーとベテラン捜査官エリックの確執、ピーターと親友の警官シスコの友情、さらに凄腕の殺し屋エレン&デイルの歪んだ愛情と、盛りだくさん。これらが基本ストーリーと干渉しないように、実に巧みにブレンドされている。
 

本作は超大作ではないし、人気アクターは不在、取り立てて革新性もない。だが、ドラマの面白さを決定づける「脚本」と「キャラクターアーク」のレベルは高い。加えて、暗殺、裏切り、ロマンス、カーチェイス、銃撃戦、二転三転するプロット、政府の陰謀、意外な真相と、「スパイスリラーの面白ファクター」がてんこ盛りだ。
 

“The Night Agent”は人間ドラマを絶妙に散りばめた、迫真のノンストップ・ハイオクタン・アクション・スパイスリラーなのだ!
 

本作はNetflix史上トップクラスの大ヒットを記録し、シーズン2の制作も決まった。
 

原題:The Night Agent
配信:Netflix
配信日:2023年3月23日
話数:10(1話 44-56分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #77
Title: “(I’m Gonna) Love Me again”
Artist: Elton John & Taron Egerton
Movie: “Rocketman” (2019)

エルトン・ジョンによる、映画用オリジナルソング!
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



 

※※特報
同コラム執筆の土橋秀一郎さんがJVTAのYouTubeチャンネルに登壇しました!
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