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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第138回 “ANIMAL KINGDOM”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第138回 “ANIMAL KINGDOM”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第138回“ANIMAL KINGDOM”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 
予告編:『アニマル・キングダム』 本予告

 
エレン・バーキン率いるアウトロー家族の“heist”ドラマ!
本作はドラマの老舗TNTによるクライムドラマの傑作で、2022年にシーズン6をもって完結している。ようやくNetflixのラインアップに加わり、筆者は全75話を12日で完走した。
 
“Animal Kingdom”は、エレン・バーキン率いる機能不全のアウトロー家族を鮮烈に描く、必見の“heist”(強奪)ドラマなのだ!
 
“May we all get what we want…and never what we deserve” (“Smurf”)
—カリフォルニア州の海辺の街オーシャンサイド
ジョシュア・‘ジェイ’・コディ(フィン・コール)が目を覚ますと、母親のジュリアがカウチで死んでいた。ヘロインの過剰摂取だった。17歳のジェイはまったく感情を見せずに、祖母のジャニーン・‘スマーフ’・コディ(エレン・バーキン)に連絡を取った。
 
スマーフはジェイを家族として温かく迎え入れた。家は豪奢ではないが、ゲートとプール付きで大きい。
スマーフには娘のジュリア以外に4人の息子がいる。
リーダー格の養子‘バズ’(スコット・スピードマン)には、同棲相手との間に幼い娘がいる。次男クレイグ(ベン・ロブソン)はアルコールとドラッグに溺れている。元プロ級サーファーの三男デラン(ジェイク・ウィアリー)は、ゲイであることを母親に隠していた。長男の‘ポープ’(ショーン・ハトシー)は服役中だ。
 
コディ一家は強盗で生計を立てている。
支配的な家長スマーフが、子供の頃から息子4人に戦い方、嘘のつき方、騙し方、そして盗み方を教えてきたのだ。この機能不全の家族は一枚岩ではないが、‘犯罪’という大義の元では見事に結束する。
 
突然ポープが仮出所してきた。3年前、バズとポープは銀行強盗を試みるも失敗。ポープが一人で罪をかぶって懲役6年の実刑判決を受けた。
ポープはメンタルが不安定なために、家族の面々は彼の不意の出現にとまどった。
 
次のヤマは宝石商の襲撃だった。
ポープが加わり、ジェイも逃走車の調達で強盗デビューを果たした。
 
ジェイは家族を失ったが、代わりに犯罪者の家族ができた。
彼は若くて聡明で腹が据わっている…。
 
“Some people just aren’t meant to be parents” (“Smurf”)
エレン・バーキンは、ニューオーリンズが舞台の『ビッグ・イージー』(1986)、アル・パチーノと共演した『シー・オブ・ラブ』(1989)など、いわゆるネオ・ノワール作品で忘れがたい演技を残した。本作では、絶対的なカリスマを持つ妖艶なスマーフを貫禄で演じ、ドラマをも支配する。
 
破天荒でセクシーな若き日のスマーフを演じたのがレイラ・ジョージ。ヴィンセント・ドノフリオ(“Law & Order: Criminal Intent”)とグレタ・スカッキの娘で、シリーズ後半では準主役級の活躍ぶりで目が離せない。
 
(※)ニックネーム“Smurf”の由来は、’80年代の人気アニメキャラからきている。(「資金洗浄者」を意味する“smurf”からではない。)
 
ロンドン生まれのフィン・コールは、兄のジョーと共演したギャングドラマの金字塔“Peaky Blinders”のマイケル・グレイ役でブレークした。冷徹で抜け目のない‘ジェイ’役は本作のキー・ロールで、熱しやすい4人兄弟とのコントラストが鮮やかだ。
 
スタイリッシュなバズ役のスコット・スピードマンは、社会現象となった“Felicity”が懐かしい。最新作は、タイトルロールを演じたチャーミングな私立探偵ドラマ“R.J. Decker”(Disney+)。バズとスマーフの確執は、シリーズ前半のハイライトだ。
 
長男ポープを演じたショーン・ハトシーは、硬派の警察ドラマ“Southland”でブレーク。最近では、大ヒット中の医療ドラマ“The Pitt”(本ブログ第127回参照)で元軍医のER医師アボットを演じ、エミー賞ゲストアクター賞に輝いた。ハトシーは、地雷のような‘キモやばい’ポープ役に見事にハマった。
 
これに怖いもの知らずの次男クレイグを演じたベン・ロブソン、ナイーブな三男デラン役のジェイク・ウィアリー、さらにジェイの奔放なガールフレンドのニッキーを演じたモリー・ゴードンが加わり、見事なアンサンブルキャストを形成する。
 
“Everything is fine. Bring your gun” (“Smurf”)
原作は実話ベースの同名オーストラリア映画(2010)。映画版で監督・脚本を務めたデヴィッド・ミショッドが、本作の製作総指揮に名を連ねる。
オリジナルのショーランナー(兼共同脚本)は、高評価のサバイバル・スリラー“Yellowjackets”を手掛けたジョナサン・リスコ。また“ER”、“The West Wing”(本ブログ第33回参照)、“Shameless”、“The Pitt”等のヒット作を生んだジョン・ウェルズが、製作総指揮・共同監督・共同脚本を務めた。
 
眩しい太陽、白くきらめく波頭—オーシャンサイドの舞台効果は絶大だ。強盗がメインディッシュ、セックス、ドラッグ、殴り合いがアペタイザー、サーフィンがデザートという構成。
 
ハイテクとは無縁のクラシックで多種多様な強盗・強奪シーンは新鮮で爽快。最大の見どころは、マインドゲームで一家を支配し続けるスマーフと、母親への愛憎が複雑に絡み合うクセのある息子たちとの対立だ。さらに、触媒的なジェイの存在が、緊張感を高める。
 
マフィアでもギャングでもない、自由を謳歌する歪んだ絆で結ばれた犯罪一家。彼らが奏でる物語には抗いがたい強烈な中毒性がある。キャラクターアークは強固で深堀りされ、兄弟間のヒューマンドラマとしても見ごたえ十分。キャラたちの行動は粗暴だがアクターたちの演技は繊細で、本作を荒っぽいだけのアクション/バイオレンスドラマと差別化している。
 
暴走し仲間割れする息子たち、敵も味方も手玉に取るスマーフ、母親に挑むバズ、犯罪の才能を開花させていくジェイ。より大胆により洗練されていく強奪計画、裏切りと試される兄弟愛、積みあがる死体。そして、『俺たちに明日はない』を髣髴させるスマーフの回想シーンが、見事に現実と交錯していく。
常に動き続けるストーリーはシーズン2から指数関数的に面白くなり、アドレナリン全開、凄絶で宿命的なエンディングに向かって疾走し続ける。
 
本作が、エミー賞・ゴールデングローブ賞にノミネートすらされたことがないという事実はちょっと受け入れがたい。
(映画データサイトIMDbの評価は8.2だ。)
“Animal Kingdom”は機能不全のアウトロー家族を鮮烈に描く、必見の“heist”(強奪)ドラマ。
生き残るのは誰だ!
 
原題:Animal Kingdom
配信:Netflix
配信開始日:2026年2月3日
話数:75(全6シーズン、1話 43-60分)
 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。