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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第82回 “The Mighty Ducks: Game Changers”(『飛べないアヒル -ゲームチェンジャー-』)

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第82回  “The Mighty Ducks: Game Changers”(『飛べないアヒル -ゲームチェンジャー-』)
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第82回“The Mighty Ducks: Game Changers”(『飛べないアヒル -ゲームチェンジャー-』)
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     

     

    あの伝説的スポーツコメディがドラマになった!(”quack, quack, quack”)
    本作のベースは、1992年の大ヒットスポーツコメディ『飛べないアヒル』(以下”D1”)。エミリオ・エステベスが主演し、全3作から成るこのカルトクラシックは、「評論家からは総スカン、一般大衆からは拍手喝さい」の典型的な作品だった。
    “The Mighty Ducks: Game Changers”はD1の29年後を描く続編で、エステベスも同役で出演する。
    今、あの感動が蘇るのだ!
     
    “Don’t bother”
    ―ミネソタ州南東地区
    “Ducks”は、今では州チャンピオン10回を誇る少年アイスホッケーの名門チームだ。メンバーは学校では特権階級で、将来は大学の奨学金への道も開ける。
     

    アレックス・モロー(ローレン・グレアム)は、弁護士事務所で働くシングルマザー。弁護士になるキャリアをあきらめて、12歳の息子エヴァン(ブレイディ・ヌーン)を育てている。エヴァンは“Ducks”のメンバーだが、アイスホッケーは費用がかさむ。生活は苦しいが、アレックスは持ち前の楽天主義と粘り強さで何とか日々を凌いでいる。
     

    ある日エヴァンは、“Ducks”のコーチTから戦力外通知を受ける。小柄で平凡なプレーヤーのエヴァンには、この先見込みがないという。チームメイトや父兄の面前で、意地悪なコーチから投げられた最後のセリフは、“Don’t bother”(字幕では「やめとけ」)だった。
     

    その場にいたアレックスはキレた。「スポーツは楽しむもの!」とコーチTにかみつく。さらに富裕層の父兄が子供に高額な用具を買い与えるばかりか、個人トレーナーやスポーツ心理学者までつけるアホらしさをあざ笑った。
     

    アレックスのブチ切れ動画はネットで拡散し、おかげでエヴァンは学校一の笑い者だ。だがアレックスは怯まない。アイスホッケーを楽しむための新チームを作るとブチ上げ、困惑するエヴァンを説得する。
     

    エヴァンは友人でポッドキャスターのニックの協力を得て、新チームのメンバー探しに奔走する。だが集まったのは、運動神経ゼロのイケメン転校生ローガン、ホッケーゲームでは無敵のクーブ、コスプレ狂いのローレンなど、絵に描いたような落ちこぼればかり。
     

    アレックスは新チームを(皮肉を込めて)“Don’t Bothers”と命名し、自らコーチに就任した。しかしこのチームには用具を買うお金も練習場もない。
     

    アレックスは、町はずれにある廃墟のようなスケートリンク「アイス・パレス」を見つけて、新チームの練習所にする。
    「アイス・パレス」のオーナーの名はゴードン・ボンベイ(エミリオ・エステベス)。子供もホッケーも嫌いな隠遁者だった。
     

    “Don’t Bothers”に明日はあるのか???
     

    柱はグレアム、ハートはヌーン
    アレックス役のローレン・グレアムは、7シーズン続いた大ヒットコメディ“Gilmore Girls”で主役のローレライを演じた。著作3作がニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに入っている作家でもある。本作が十分大人の鑑賞にも耐えうるのは、地に足の着いたグレアムの演技と存在感に負うところが大きい。
    アレックスとゴードンの淡いロマンスの行方も気になるところだ。
     

    エヴァン役のブレイディ・ヌーンは、R指定コメディ『グッド・ボーイズ』(2019)で、クールになれずに悩む12歳児を好演した。本作の柱がグレアムなら、ヌーンはハートだ。心優しく勇気あるエヴァンは、世界中の親にとって理想の息子像だろう。ヌーンはそんなエヴァンを体現した。
     

    エミリオ・エステベスは父親のマーティン・シーンや弟のチャーリー・シーンと違って、品があって押しが強くないのがいい。名前もラテン系の本名にこだわるなど昔から覇気がある。彼の主演作では、D1、『張り込み』(1987)、『ヤングガン』(1988)がお勧めだ。本作では矜持ある引きこもり者のゴードンを淡々と控えめに演じて、59歳の滋味を醸し出す。
     

    “We are the Ducks, or what?”
    ショーランナーは映画版3部作の脚本を担当したスティーヴン・ブリル。このドラマ版では、「落ちこぼれチーム対エリートチーム」という王道のストーリーに、「引きこもった昔のヒーローを振り回す能天気なシングルマザー」というサイドストーリーを組み合わせ、絶妙の効果を出している。
     

    “Don’t Bothers”が強くなるにつれて、アレックスが「勝利至上主義」に陥る展開もうまい。“Ducks”と同じ問題を抱えてしまうというジレンマだ。(昔読んだ寺田ヒロオの野球漫画『背番号0』に、全く同じエピソードがあったことを思い出した。いくら何でも古過ぎるか。)
     

    オリジナルメンバーが集結する第6話 “Spirit of the Ducks”は感動的だ。「子供には夢を、大人にはノスタルジアを」という仕掛けで、大人は、笑う子供を尻目に涙を隠す羽目になる。
     

    “The Mighty Ducks: Game Changers”は、観終わると人に優しくしたくなるような、素朴でキュートで心温まるスポーツコメディ。子供は「友情と団結」を学び、大人は「『人生で勝つ』とは本当はどういうことなのか」を知る。これは“Disney Magic”か?
     

    本作はDisney+オリジナルで、1話30-38分の全10話。シーズン2の制作も決定した。
    『飛べないアヒル』未体験の人は、ドラマを観てから映画版を観るのもアリだ!
     

    補足1)DisneyはD1公開の翌年1993年に、“Mighty Ducks of Anaheim”を設立してNHLへ参戦した。現在は売却しているが、チームは“Anaheim Ducks”として存続している。
     

    補足2)日本語の副題は、「ゲームチェンジャーズ」と複数形にして欲しかった。それぞれの思いを胸にゲームに臨む、“Don’t Bothers”の一人ひとりを表しているのだから。
     

    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」#58
    Title: “We Are the Champions”
    Artist: Queen (and kids)
    Movie: “D2: The Mighty Ducks” (1994)

    これがD2のベストシーン!

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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    同コラム執筆の土橋秀一郎さんがJVTAのYouTubeチャンネルに登壇しました!
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