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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第107回 “ONE PIECE” 

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第107回“ONE PIECE”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『ONE PIECE』 本予告

 

実写版『ONE PIECE』は凄かった!!!

配信直後から世界を席巻している実写版『ONE PIECE』。このNetflixによる日米英共同大作は、原作の再現性が驚くほど高い。お馴染みのヒーローたち、愛すべきヴィラン(悪役)たちが、完璧なキャストを得て、ライブアクションで躍動する。
もちろん、原作未経験でも何ら問題なし。

 

“ONE PIECE”は、今年最高のサプライズ。自由を求める若きアウトローたちの夢と冒険、希望と成長、決意と覚悟、挑戦と挫折、友情と絆が活写される、底抜けに楽しい、クールで熱いファンタジー・海洋冒険活劇なのだ!

 

“This is a world of pirates”

—ローグタウン、22年前
海賊王ゴールド・ロジャーがついに海軍に捕らえられ、処刑された。それ以降、世界中の海賊たちが、ロジャーが隠した「ひとつなぎの大秘宝」(“One Piece”)を血眼になって探し始めた。

 

—東の海(“East Blue”)、現在
モンキー・D・ルフィ(イニャキ・ゴドイ)は、いつも麦わら帽をかぶっている超楽観的な駆け出しの海賊だ。彼の夢は、敬愛する海賊‘赤髪のシャンクス’(ピーター・ガジオット)のように自分の船とクルーを持つこと。そして“One Piece”を発見し、海賊の王になるのだ。

 

ルフィは昔「ゴムゴムの実」を知らずに食べたことから、体全体がゴムのように伸びるスーパーパワーを持つ。

ある日ルフィは、海賊の雑用係だったコビー(モーガン・ディヴィス)を自由の身にしてやった。コビーの夢は海軍に入って弱い者を守ることだ。

 

ルフィは“One Piece”発見のカギとなる’偉大なる航路’(“Grand Line”)の海図を盗むために、コビーと共にシェルズタウンの海軍基地へ向かった。

 

ルフィは基地内で磔にされていたロロノア・ゾロ(新田真剣佑)を助け出す。ゾロは世界一の剣士を目指す‘海賊狩り’(賞金稼ぎ)だ。だが酒場で海兵とトラブルを起こし、基地を牛耳る海軍大佐‘斧手のモーガン’に捕らえられたのだった。

その頃、オレンジ髪の泥棒ナミ(エミリー・ラッド)も、同じ海図を求めて基地に潜んでいた。彼女は棒術の使い手で、優れた航行士でもある。

 

鉢合わせしたルフィとナミは協力し、まんまと海図を盗み出した。

 

ルフィ、ゾロ、ナミの3人は、団結して手ごわい‘斧手のモーガン’とその部隊を制圧し、船で脱出する。
だがコビーは残り、憧れの海兵となる道を選んだ。

 

こうして偶然出会った3人は、“One Piece”を求めて冒険の旅に出る。だが彼らの行く手には、海軍のみならず、破天荒な異形の海賊たちが立ちはだかる!

 

イニャキ・ゴドイはルフィそのもの!!

イニャキ・ゴドイはメキシコ出身の20歳で、これが初の主役。原作者の尾田栄一郎が一目見て惚れ込んだだけあって、明るくエネルギッシュなゴドイはルフィそのもの。麦わら帽もよく似合う。

 

ゾロを演じた新田真剣佑は千葉真一の息子。演技力はあるしLA生まれの自然な英語なので、お父さんと違って安心感がある。彼の三刀流の殺陣とマーシャルアーツは、本作の見せ場の一つだ。

 

ナミ役のエミリー・ラッドは原作のイメージとは異なるが、見事にフィットした。華がある押し出しと高い演技力は、“Mad Men”のクリスティーナ・ヘンドリックスを髣髴させる。日本のアニメ好きでもある。

 

モーガン・ディヴィスは、ルフィへの恩と職業倫理との間で悩むコビーをヴィヴィッドに演じた。オーストラリア出身で、私生活ではトランスジェンダーであることをカミングアウトしている。

 

‘赤髪のシャンクス’役のピーター・ガジオットは、“Queen of the South”で演じたヒットマンのジェームズが超カッコよかった。クールなシャンクスにぴったりだ。

 

他にも、後に‘麦わらの一味’となる2人、パチンコの名手ほら吹きウソップ(ジェイコブ・ロメロ・ギブソン)と、女好きの戦う料理人サンジ(タズ・スカイラー)が登場。

 

さらに「海賊の部」からは、体を分離して戦う‘道化のバギー’(ジェフ・ウォード)、魚人の総帥‘ノコギリのアーロン’(マッキンリー・ベルチャー三世)、史上最強の剣士‘鷹の目のミホーク’(スティーヴン・ウォード)らが参戦する。
いずれも適材適所のアクターたちが、原作キャラの雰囲気を存分に味わせてくれる。

 

Netflixの輝く星となるがいい!

ショーランナー(兼共同脚本)は、Marvelの“Luke Cage”、“Agents of S.H.I.E.L.D”等の脚本家マット・オーウェンズと、“CSI: Miami”、“Lost”などを手掛けたスティーヴン・マエダ。完成まで7年、尾田栄一郎は製作総指揮として深く関与し、撮り直しもさせたという。

 

『ONE PIECE』は‘97年の連載開始以来すでに単行本106巻が出版され、現在も継続中。漫画・アニメともに1000話を突破している。世界で累計5億部以上を売り上げた、日本が誇る冒険漫画の傑作だ。

 

本作(シーズン1)は、原作の1~11巻を圧縮してカバーする。エピソード当たりの製作費は約26億円で、“Game of Thrones”より高い!

 

原作の壮大なスケールと確固たる世界観、ユニバーサルで魅力的な登場人物たちが、忠実に再現された。特撮のさじ加減が絶妙で、やり過ぎ感なくリアリティを維持している。ストーリーとキャラは巧みに変更・省略され、ギャグは抑え目、セットは贅沢で斬新なアクションがふんだんにある。

 

ルフィは能天気に、しかし不退転の決意をもって最高の仲間を集めていく。‘麦わらの一味’は強い絆で結ばれているが、各自のコード(行動規範)は全く違う。フラッシュバックで語られる一人ひとりの過去は、いずれも味わい深く、切なく、忘れがたい。海賊といっても、彼らはピュアな義賊なのだ。

 

パイロットで一気に惹きつけ、各エピソードは加速度的に面白くなり、全8話が息つく暇なく終わる(各話ごとに代わるタイトルロゴも楽しい)。シーズンフィナーレのクライマックスは圧巻の迫力で、大団円のエンディングには胸が熱くなる。

 

“ONE PIECE”は、メイド・イン・ジャパンの漫画から初めて生まれた、空前の面白さの、世界で勝負できる実写ドラマ。自由を求める若きアウトローたちの夢と冒険、希望と成長、決意と覚悟、挑戦と挫折、友情と絆が活写される、底抜けに楽しい、クールで熱いファンタジー・海洋冒険活劇なのだ!

 

“ONE PIECE”よ、“Stranger Things”(本ブログ第32回参照)に代わるNetflixの輝く星となるがいい。

 

原題:ONE PIECE
配信:Netflix
配信開始日:2023年8月31日
話数:8(1話 49-64分)

 

<今月のおまけ> 「心に残るテレビドラマのテーマ」⑰
Title: “I’m Gonna Be King of the Pirates / We Are!”
Artist: Sonya Belousova and Giona Ostinelli
Drama: “ONE PIECE” (2023)

『ウィーアー!』(”We Are!”)はアニメ版の初代オープニングテーマ。

 

※この作品の日本語字幕をJVTAの修了生が手がけています。
翻訳者のインタビューはこちら

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 


これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第106回 “WILL TRENT” 

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第106回“WILL TRENT”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『GBI特別捜査官ウィル・トレント』 本予告

 

「現代ミステリーの女王」の人気シリーズがドラマ化!

カリン・スローターは、今や「現代ミステリーの女王」として君臨する世界的ベストセラー作家。本作の原作となった「特別捜査官ウィル・トレント・シリーズ」(全14作)は、筆者も大ファンだ。

 

“Will Trent”はDisney傘下のABCが制作、スローター自らが製作総指揮を務める待望の一作。知的な推理ドラマ、爽快な刑事ドラマ、ハートフルな人間ドラマが混然一体となった、スーパー・クライムドラマなのだ!

 

“See crime through his eyes”

—ジョージア州アトランタ
ウィル・トレント(ラモン・ロドリゲス)は、ジョージア州捜査局(GBI)の特別捜査官だ。常に三つ揃いのスーツにネクタイ、スマホではなくケータイを好み、局内では変人と思われている。だが彼にはズバ抜けた観察力と分析力があり、断トツの検挙率を誇る。
ウィルの愛車は変な色の‘73年型ポルシェ、愛犬はチワワの保護犬ベティだ。

 

アンジー・ポラスキー(エリカ・クリステンセン)はアトランタ市警(APD)殺人課の刑事。おとり捜査官時代に薬物依存症になり、リハビリをしながら勤務する。

 

共に孤児だったウィルとアンジーは、同じ養護施設で育った。劣悪な環境で、里親による搾取と性的虐待が横行していた。ウィルは難読症のために仲間からイジメにあい、「ゴミ箱」(“Trashcan”)と呼ばれた。ウィルとアンジーは助け合い、憎み合い、その腐れ縁は今も続いている。

 

フェイス・ミッチェル(イアンサ・リチャードソン)は、APDからGBIへ移籍してきた若く優秀な刑事だ。フェイスはウィルの相棒となるが、ベテラン警官だった母親がウィルによってAPDを追放された因縁がある。
15歳のときに出産した息子は、現在は大学1年生だ。

 

アンジーとパートナーを組むマイケル・オームウッド(ジェイク・マクラフリン)は、有能だがPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされている。マイケルは家族持ちだが、酔った勢いで一度だけアンジーと浮気をしたことがある。

 

アマンダ・ワグナー(ソーニャ・ソーン)は野心家できつい性格だが、フェアで頼りがいのあるGBI副長官。ウィルの特異な能力とフェイスの高い潜在能力を見抜き、2人を引き抜いた。

 

郊外の高級住宅地でティーンエイジャーの娘エマが殺された。帰宅した母親はナイフを持った少年と鉢合わせ、格闘の末殺してしまう。だが殺された少女は実はエマの親友で、ナイフの少年も被害者だったことが判明する。エマは誘拐されたのだ。

 

アマンダはウィルとフェイス、アンジーとマイケルに合同捜査を命じた!

 

魅せるエリカ・クリステンセン!

ウィル・トレント役のラモン・ロドリゲスはプエルトリコ出身。HBOの傑作刑事ドラマ“The Wire”、『トランスフォーマー/リベンジ』(2009)で見た顔だ。今回はチャラ男のイメージを脱して、堅物で優しい変人捜査官を奥行きのある演技で演じる。

 

本作のハートはエリカ・クリステンセンだ。代表作は大ヒットコメディ“Parenthood”だが、筆者にとっては、『プール』(2002)で演じたサイコパスのティーンエイジャーのイメージが強い。本作では、奔放で正義感の強いアンジーを圧倒的な存在感と説得力で演じてみせた。
クリステンセンとロドリゲスとの間には、磁力のようなケミストリーが働く。

 

さらに、いつも不機嫌なアマンダ役のソーニャ・ソーン(“The Wire”の刑事キーマ)、承認欲求の強いフェイス役のイアンサ・リチャードソン、タフな仮面に素顔を隠すマイケル役のジェイク・マクラフリンの3人が、無双のアンサンブルキャストを形成する。

 

彼は彼女の良心、彼女は彼の守護天使だった…

ショーランナー(兼共同脚本)は、スポーツドラマの傑作“Friday Night Lights”を手掛けたリズ・ヘルデンスと、大ヒット・ファンタジー“Once Upon A Time”のダニエル・T・トムセン。

 

カリン・スローターは、あえて凶悪で残虐な犯行描写を前面に出して、被害にあった女性とその家族の心の闇を描いてきた。だがABCは民放ドラマなので、過激な表現は御法度だ。ヘルデンスとトムセンは、原作の骨太の骨格はそのままに、猟奇的で残酷な描写はトリミングした。(スローターのコアなファンは「ヌルい」と言うだろう。)
また、暗くて憂鬱なウィル・トレントのキャラも、深みと温厚さを残してリファインされている。

 

全13話のうち最初と最後のストーリーは2話完結で、それぞれ原作シリーズ第2作の『砕かれた少女』、第6作の『罪人のカルマ』がベースで見応え十分。残りの9話は1話完結で、ウィルとフェイス、アンジーとマイケルが別々の事件に挑む。
犯罪捜査を通してフラッシュバックで描かれる登場人物たちの内面と過去が実にヴィヴィッドで、他のクライムドラマとは一線を画する。

 

本作最大の魅力は、ウィルとアンジーとの危なっかしくも強い絆だ。養護施設での出会いから25年間、寛容なウィルはアンジーの良心、強靭なアンジーはウィルの守護天使だった。お互いがこの世界で唯一自分の理解者で、心の拠りどころなのだ。

 

ウィルとフェイス、アンジーとマイケルとの信頼関係の構築プロセスも見どころで、丁寧にときにユーモアを交えて語られる。もちろんウィルの名探偵ぶりと、ときどき見せる迷探偵ぶりも楽しい。

 

エピソードが進むに連れて欠点だらけの各キャラがいとおしくなり、イッキ観状態に陥る。怒涛のシーズンフィナーレで明かされるウィルの出生の秘密に驚愕し、胸を打たれる。
“Will Trent”は、知的な推理ドラマ、爽快な刑事ドラマ、ハートフルな人間ドラマが混然一体となった、スーパー・クライムドラマなのだ!

 

シーズン2の制作も決まっている。
尚、Netflixのリミテッドシリーズ“Pieces of Her”(『彼女のかけら』)もスローターの原作だが、こちらはお勧めしない。

 

原題:Will Trent
配信:Disney+
配信開始日:2023年7月5日
話数:13(1話 43-46分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #79
Title: “Somebody Up There Likes Me”
Artist: Perry Como
Movie: “Somebody Up There Likes Me” (1956)

ポール・ニューマン主演の『傷だらけの栄光』より。
タイトルはニューマンのセリフになっていて、これに恋人役のピア・アンジェリが“Somebody down here, too”と応える。粋なのだ。

 

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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第105回 “SILO”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第105回“SILO”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

あのネット発ディストピア小説が遂にドラマ化!

原作は10年前に日本でも話題となった、ヒュー・ハウイーの小説『ウール』。当時筆者も夢中で読んだ。
元々は2011年に発表された短編で、その後ネットで評判となり、大幅に加筆されて世界的なベストセラーとなった。続編(前日譚)の『シフト』、完結編の『ダスト』とあわせて、「サイロ3部作」と呼ばれる。

 

“Silo”は原作の圧倒的な緊迫感と閉塞感が蘇る、Apple TV+のイチ押し。奇想天外な舞台で展開する、驚愕のSci-Fiディストピア(反ユートピア)・スリラーなのだ!
 

Don’t say “I want to go out”
—近未来の地球
地表は有毒ガスに覆われている。
約1万人の生存者が、地下144階建ての古くて武骨なサイロで暮らす。内部は吹き抜けで、フロア間の移動はすべて螺旋階段を使う。住民はそこで穀物や果物を収穫し、家畜を育てる。生活は質素だが、上層階、中層階、下層階によって、文字通りの階層社会が形成されている。

 

カフェテリアの巨大なスクリーンを通して、外部の荒廃した世界が見える。
何が起こったのか誰も知らない。いつ誰がこんな巨大な施設を建てたのかも分からない。140年前の反乱で、史実を示す書類、データ、書物はすべて破棄されてしまったからだ。

 

サイロを統治するのは司法部(“Judicial”)と呼ばれる特権階級だ。住民の思想や行動指針は協定(“Pact”)で詳細に規定され、食料・道具類は配給制、交際・出産は許可制だ。

 

決して「外に出たい」と言ってはいけない。言えば犯罪者と同様に強制的に放り出される。一旦サイロの外に出たら数分内に有毒ガスで死ぬ。

 

ホルストン・ベッカー(デビッド・オイエロウォ)は、サイロの保安官だ。3年前、妻のアリソン(ラシダ・ジョーンズ)は、突然自分の意思で地表に出て息絶えた。理由は分からない。

 

ホルストンは最近、コンピューターおたくのジョージの不審死を調べている。捜査に協力しているのは、ジョージの恋人だった最下層階の機械工ジュリエット・ニコルズ(レベッカ・ファーガソン)だ。ホルストンは、ジョージの死が妻アリソンの奇行と関連していることを突き止めた。

そして今度は、ホルストン自身が「外に出たい」と宣言し、同僚や市長を驚かせる。

 

ホルストンは希望通り外に出て命を絶った。誰も理由を知らない。
彼は後任の保安官として、なぜかジュリエットを指名していた。

 

レベッカ・ファーガソンの魅力全開!!
レベッカ・ファーガソンはスウェーデン出身。日本では、『ミッション:インポッシブル』シリーズのイルサ役で顔馴染みだ(現在公開中のシリーズ第7作でも活躍中!)。製作総指揮も務める本作では、粗野でタフな機械工から鋭敏な新米保安官に転身するジュリエットをシャープに演じ、魅力満開だ。

 

堅物の保安官ホルストン・ベッカー役のデビッド・オイエロウォは、マーティン・ルーサー・キングを演じた『グローリー/明日への行進』(2014)が代表作。妻アリソン役のラシダ・ジョーンズは、大ヒットコメディ“Parks and Recreation”で準主役のアンを7シーズン演じた。

 

強面の司法部保安部長シムズを演じたコモンは、3度のグラミー賞に輝くラッパーでもある。『グローリー/明日への行進』の主題歌“Glory”で、ジョン・レジェンドと共にアカデミー賞歌曲賞を受賞している(<今月のおまけ>参照)。

 

副保安官サム・マーンズ役のウィル・パットンは、『アルマゲドン』(1998)で遅咲きブレークした渋いバイプレーヤー。最近では、現代西部劇の快作“Yellowstone”でいい味を出していた。

サイロの市長ルース・ジャンズを演じたジェラルディン・ジェームズは英国の名優。本作におけるウィル・パットンとの心温まる老境ロマンスは忘れ難い。

 

『ショーシャンクの空に』(1994)『ミスティック・リバー』(2003)のティム・ロビンスは、敵か味方か分からないIT部長兼新市長のバーナード・ホランドを貫禄で演じた。

 

ウィル・パットン、ジェラルディン・ジェームズ、ティム・ロビンスのベテラン3人が、いぶし銀の演技で奇想天外なストーリーにリアリティを与えている。

 

“The truth will surface”

ショーランナー(兼共同脚本)のグレアム・ヨストは、『スピード』(1994)『ブロークン・アロー』(1996)と大ヒットしたアクション映画の脚本で頭角を現した。2000年代になるとドラマ制作に軸足を移し、“The Pacific”、“Justified”、“Falling Skies”、“The Americans”(本ブログ第6回参照)、“Sneaky Pete” (本ブログ第31回参照)、“Slow Horses”などの傑作を連発している。まさに「ドラマの鉄人」だ。

 

ストーリーはかなり原作に忠実で、世界観と舞台設定はシンプルで分かりやすい。SF的ガジェットは登場しないし、技術用語も使われない。同じApple TV+のSci-Fiドラマでも、難解で冗長な“Foundation”とは対極にあるエンタメドラマだ。

 

最大の魅力はジュリエットのキャラクターアーク。機械いじりが好きだった少女が最下層階で見習いとしてスタートし、やがて最も腕のいい機械工となる。未経験の保安官職に任命されると、持ち前の聡明さと行動力で権力者を相手にサイロの謎に挑み、秘密を暴き、真相に迫っていく。その姿は眩しく凛々しく美しく、神々しいオーラをまとう。

 

薄暗いサイロでの生活には、常に息苦しさがつきまとう。巨大な発電機は住民にとってのライフラインで、不安の象徴でもある。ジュリエットとそのチームが、爆発寸前の発電機を命懸けで修理するシーンは圧巻で、本作屈指のエピソードとなった。

 

ミステリータッチの巧みな脚本により、緊迫感と閉塞感が加速度的に盛り上がる。そしてシーズンフィナーレで明かされる真相は、新たな謎の幕開けとなる。
“Silo”は奇想天外な舞台で、登場人物の魅力と巧みなストーリーテリングが絶妙にブレンドされた、驚愕のSci-Fiディストピア・スリラーなのだ!

 

シーズン2の制作も決まった。配信日の関係で、今年のエミー賞対象外なのが残念だ。

 

原題:Silo
配信:Apple TV+
配信日:配信開始日:2023年5月5日~6月30日
話数:10(1話 43-62分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #78
Title: “Glory”
Artist: John Legend & Common
Movie: “Selma” (2014)

アカデミー賞授賞式(2015)での2人のライブは圧巻だった。
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第104回“THE NIGHT AGENT”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第104回“THE NIGHT AGENT”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

スパイドラマ、怒涛のラインアップ!!

この1年の間に、スパイドラマの傑作・快作が怒涛のごとく配信されているのをご存知か?
昨年後半に始まったのが、ジェフ・ブリッジスが老境の元スパイを演じる“The Old Man”(Disney+)と、ゲイリー・オールドマンが落ちぶれたスパイマスターに扮する“Slow Horses: Season 2”(Apple+)。また“Andor”(Disney+)は、『スター・ウォーズ』シリーズとしては物足りなかったが、スパイスリラーとしては見応えがあった。
 

今年に入って、CIAの新米弁護士が大活躍する“The Recruit”(本ブログ第100回参照)、今回紹介する“The Night Agent”、ケリー・ラッセル(!)主演の政治スリラー“The Diplomat”、A・シュワルツェネッガー主演のアクション・コメディ“FUBAR”と、Netflix作品が並ぶ。そして、『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟によるアクション巨編“Citadel”(Amazon Prime)が続いた。
 

今月末からは、サミュエル・L・ジャクソン主演のマーベルSci-Fiスリラー“Secret Invasion”(Disney+)、これが最終シーズンとなる軍事スリラー“Tom Clancy’s Jack Ryan”(Amazon Prime、本ブログ第55回参照)が始まる。ついでに、キーファー・サザーランド主演の“Rabbit / Hole”(Paramount+)の早期配信をU-NEXTにお願いしたい。

以上本格モノからSci-Fi、コメディまで、バラエティに富んだスパイドラマが出揃った!
 

“ノンストップ・ハイオクタン・アクション・スパイスリラーを見逃すな!!”
お待たせしました!
“The Night Agent”はアドレナリンが駆け巡り、ドーパミンが溢れるNetflixオリジナル。
電話番の下級FBI捜査官と、一文無しの女性元CEOが政府の巨大な陰謀に翻弄される、迫真のノンストップ・ハイオクタン・アクション・スパイスリラーを見逃すな!
 

“すべてはホワイトハウスの地下室にかかってきた、一本の電話で始まった!”
—ワシントンD.C.
1年前、FBI捜査官のピーター・サザーランド(ガブリエル・バッソ)は、満員の地下鉄で爆発物を発見した。彼は車両を緊急停止させ、乗客を避難させた。爆発は起きたが、ピーターの迅速な対応で多くの人命が救われた。
 

ピーターの父親もFBI捜査官だった。だが国家反逆罪で起訴された後、裁判開始前に交通事故で死んだ。ピーターは今も父親の無実を信じている。
 

大統領首席補佐官ダイアン・ファー(ホン・チャウ)は、ピーターを「ナイト・アクション」の連絡係に据えた。「ナイト・アクション」は、FBIと政府による最高機密に関する合同捜査プログラムだ。と言ってもピーターは下級捜査官なので、仕事はホワイトハウスの地下室で電話番をすること。その電話が何のためにあるのかさえ知らされていない。夜勤のピーターは鳴ることのない電話の前で、毎晩報告書の分析をして暇をつぶす。
 

ローズ・ラーキン(ルシアン・ブキャナン)は、サイバーセキュリティ企業を立ち上げた才女。だが友人の裏切りで会社を失い、自己破産寸前だ。傷心のローズは、伯母のエマ・キャンベルの家に居候している。
 

ある晩、出張から帰ってきたキャンベル夫婦は、2人組の暗殺者に襲われる。驚くべきことに、夫婦は殺気立ち、ローズが見たこともない身のこなしで機敏に行動する。ローズは電話番号と暗号が書かれたメモを渡され、言われるままに2階から脱出した。
夫妻は果敢に戦うが、惨殺された。
 

さらに、暗殺者のひとりがローズに迫る。
ローズは隣人の留守宅へ逃げ込み、渡された番号に電話した。
 

ホワイトハウスの地下室で電話が鳴った—
 

原作よりずっと魅力的な主役2人!

ピーター役のガブリエル・バッソは、ひと昔前にドラメディの佳作”The Big C”で長男アダムを演じていた。アメリカのどこにでもいる兄ちゃん的キャラで、本作の「巻き込まれ型ヒーロー」にぴったり。次回作はC・イーストウッド監督の“Juror #2”だ。
 

ルシアン・ブキャナンはニュージーランド出身。突然目撃する暴力に怯えながらも、芯の強さと知性で真相に迫っていくローズを自然体で好演する。
 

ピーターが堅物なので2人の距離がなかなか縮まらない。もどかしいが、ケミストリーは強い。このぬるいロマンスは新鮮でリアリティがある。マシュー・クワークによる原作より、本作のピーター&ローズの方がずっと魅力的だ。
 

脇役陣は隅々まで血が通っている。タフな首席補佐官ダイアン・ファー役のホン・チャウ、敏腕シークレットサービスのチェルシーを熱演するフォーラ・エヴァンス=アキンボラ、ピーターの親友で警官のシスコを演じたカーティス・ラムが光る。そして極めつけが、サイコパスの殺し屋エレン&デイルを演じたイヴ・ハーロウとフェニックス・ライだ。
 

「スパイスリラーの面白ファクター」がてんこ盛り!

ショーランナー(兼共同脚本)のショーン・ライアンは、悪徳刑事物の決定打“The Shield”で一躍名をはせた。その後もデルタフォース(米陸軍特殊部隊)の活躍を描く”The Unit”、痛快なSci-fiドラマ“Timeless”(本ブログ第38回参照)、最近では”S.W.A.T.”のリブート版を手掛けた。
 

アメリカン・ドラマの世界では、男が「白馬の騎士」だった時代は終わっている。本作の後半でも、ピーターはローズの「守護者」から「パートナー兼ボディガード」となり、ローズがストーリーの牽引役となる。彼女が元サイバーセキュリティ会社のリーダーで、ハッキングも得意という設定が効いている。
 

また、原作にはないカラフルなサイドストーリーも大きな見どころ。
父親のスパイ行為をめぐるピーターと彼の名付け親グレッグの対立、キーパーソンとなる副大統領とその娘マディの愛憎、野心家シークレットサービスのチェルシーとベテラン捜査官エリックの確執、ピーターと親友の警官シスコの友情、さらに凄腕の殺し屋エレン&デイルの歪んだ愛情と、盛りだくさん。これらが基本ストーリーと干渉しないように、実に巧みにブレンドされている。
 

本作は超大作ではないし、人気アクターは不在、取り立てて革新性もない。だが、ドラマの面白さを決定づける「脚本」と「キャラクターアーク」のレベルは高い。加えて、暗殺、裏切り、ロマンス、カーチェイス、銃撃戦、二転三転するプロット、政府の陰謀、意外な真相と、「スパイスリラーの面白ファクター」がてんこ盛りだ。
 

“The Night Agent”は人間ドラマを絶妙に散りばめた、迫真のノンストップ・ハイオクタン・アクション・スパイスリラーなのだ!
 

本作はNetflix史上トップクラスの大ヒットを記録し、シーズン2の制作も決まった。
 

原題:The Night Agent
配信:Netflix
配信日:2023年3月23日
話数:10(1話 44-56分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #77
Title: “(I’m Gonna) Love Me again”
Artist: Elton John & Taron Egerton
Movie: “Rocketman” (2019)

エルトン・ジョンによる、映画用オリジナルソング!
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



 

※※特報
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第103回 “BEEF”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第103回“BEEF”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

韓国パワー、ついにアメリカン・ドラマで炸裂!
『イカゲーム』(2021)がNetflixで世界を制し、『パラサイト 半地下の家族』(2019)がアカデミー作品賞を取るなど、韓国製ドラマ・映画の勢いには凄まじいものがある。Netflixは、韓国のコンテンツへ今後4年間で25億ドル(約3300億円!)を投資すると発表したばかりだ。
そしてついに、韓国パワーはアメリカン・ドラマでも炸裂した!
 

“Beef”は、韓国人クリエーターによるユニークなNetflixオリジナル。イッキ観確実、“road rage”(あおり運転)が凄絶な復讐劇と化す、「エンタメⅹヒューマニティ」を極めた傑作ダーク・ドラメディなのだ!
 

“You got beef with me?”

—ロサンゼルス、オレンジカウンティ
ダニーはホームセンターの駐車場から、ピックアップ・トラックをバックで出すところだった。そこに白いベンツのSUVが鉢合わせ、2台は衝突寸前で急停止した。
SUVのドライバーはけたたましくクラクションを鳴らすと、窓から立てた中指を見せて走り去る。
ブチ切れたダニーはSUVを追う。2台の車は街中でカーチェイスを繰り広げ、ダニーはついにSUVを追い詰める。だがSUVのドライバーは、一瞬のスキをついて逃げ去った。
 

ダニー・チョウ(スティーヴン・ユァン)は独身のしがない「何でも屋」。懸命に働いても生活は苦しい。居候の弟ポール(ヤング・マジノ)は、オンラインゲームと仮想通貨投資に夢中だ。
従兄のアイザック(デヴィッド・チョー)は最近仮釈放されたばかり。彼の犯罪行為が原因で、ダニーの両親は経営していたモーテルを失った。夫婦は母国の韓国へ戻っている。
ダニーにとって、世の中のすべてが理不尽で不公平だ。彼は怒りを持て余し、ストレスは頂点に達していた。
—そこへ現れたのが、あのムカつくSUVだ。
 

エイミー・ラウ(アリ・ウォン)は、オシャレな観葉植物を売るスタートアップ企業のCEOだ。彼女はこの会社を育て、高値で売却するために心血を注いできた。夫のジョージ(ジョセフ・リー)は理想家のさえないアーティストで、2人には小さな娘がいる。一家3人は高級住宅地に住み、エイミーは白いベンツのSUVに乗っている。
彼女は働きすぎで精神が不安定な状態だった。仕事も家庭も、すべてが上手くいっていると自分をだまし続けている。
—そこへ現れたのが、あのムカつくピックアップ・トラックだ。
 

ダニーはSUVの所有者を突き止めた。
そして、エイミーの家を訪ねた。
 

燃え上がる「憎悪のケミストリー」!

本作の主要アクター5人の内、アリ・ウォン以外はすべて韓国系アメリカ人だ。
ダニー役のスティーヴン・ユァンは、史上最強のゾンビドラマ“The Walking Dead”(本ブログ第10回参照)の好漢グレン役でブレークした(グレンのショッキングな死は、今も脳裏に焼き付いている)。演技力抜群のユァンは、主演した『ミナリ』(2020)でオスカー候補になった。本作では、韓国系教会のバンドのヴォーカルとして得意の歌も披露している。
 

アリ・ウォンは、役柄同様に父親が中国系アメリカ人で母親はベトナム人。キュートなロマコメ『いつかはマイ・ベイビー』(2019)では、主演と共同脚本をつとめた(<今月のおまけ>も見てね)。ウォンはスタンダップ・コメディ界のスーパースターで、本作では得意の毒舌を控えめに、みごとエイミーになりきった。彼女のショーは下ネタ満載、思い切りエッジが効いていて滅茶苦茶笑える(Netflixで3本とも観よう!)。
 

実生活では長年の友人同士というユァンとウォンは息もピッタリで、2人の間には「憎悪のケミストリー」が燃え上がる。
 

デヴィッド・チョーは、ワイルドな従兄アイザックを圧倒的な存在感で演じた。本職はグラフィック・アーティストで、各エピソードのタイトル画は彼の作品だ。多才な半面、ポッドキャストでの過激な発言や日本での服役歴など、素顔もアイザックに近いか。
 

この3人に無責任な弟ポール役のヤング・マジノ、オフビートなジョージ役のジョセフ・リーを加えた5人が、絶妙なアンサンブルキャストとして右往左往する。彼らが生み出す「危うさ」は、作品にスリリングな魅力を与えている。
 

“Why is it so hard for us to be happy?”

初めてショーランナー(兼共同監督兼共同脚本)をつとめたイ・サンジンは韓国出身。“Silicon Valley”などの脚本家として長いキャリアを持つ。
「“road rage”の復讐を描く過激なコメディ」という発想だけなら凡庸だ。だが2人のキャラクターを発展させて、「仕返しを通じて互いの人生を知り、自分の生き方を振り返る」というアイディアは非凡だ。
 

貧乏なダニーと裕福なエイミーは、やり場のない怒りの矛先を相手に見つける。復讐はより巧妙に、悪質になり、2人は身内も巻き込んだ破壊的な負のスパイラルに陥る。だが憎しみを通じて、ある種の相互理解が生まれるのだ。
際限なくエスカレートしていく憎しみの連鎖で笑わせながら、怒りの背後にあるアジア系2世(3世)の生きづらさ、プレッシャー、心の闇を浮かび上がらせる。ダニーが教会へ救いを求めるシーンは、おかしくも哀しい。
 

終盤では各キャラの壮絶な破滅ぶりが描かれて目が点になる。そして予測不能の最終話は一転して、余韻の残るエンディングを迎える。上手いなあ、イ・サンジン。
 

本作は韓国パワーがアメリカン・ドラマで炸裂した記念碑的作品。主要キャストとスタッフがほとんどアジア系という意味では、今年のアカデミー賞を席巻した『エブエブ』よりずっとセンスが良くて、遥かに面白い。
“Beef”はイッキ観確実、「エンタメⅹヒューマニティ」を極めた傑作ダーク・ドラメディなのだ!
 

【悲報!】5月2日からWGA(全米脚本家組合)のストライキが始まった。ストリーミング・サービスが主流になった現在、報酬・待遇改善に関する脚本家の不満は大きい。AI導入も死活問題だ。簡単に収まるはずもなく、企画・制作中のドラマへの影響は計り知れない。アメリカン・ドラマのファンにはきついなあ…。
 

原題:Beef
配信:Netflix
配信日:2023年4月6日
話数:10(1話 31-39分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #76
Title: “I Punched Keanu Reeves”
Artist: Randall Park
Movie: “Always Be My Maybe” (2019)

この作品もNetflixで視聴可能。キアヌ・リーブスの登場シーンはバカ受け!
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



 

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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第102回 “REASONABLE DOUBT”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第102回“REASONABLE DOUBT”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

ファッショナブルでセクシーな本格リーガル・メロドラマ!
“Grey’s Anatomy”、“Private Practice”、“Scandal”(本ブログ第7回参照)、“How to Get Away with Murder”(本ブログ第12回参照)を生んだ名プロデューサーが、ションダ・ライムズだ(※)。本作はライムズの「弟子」による一作で、Huluが制作しDisney+が配信する。
 

“Reasonable Doubt”は、美貌と頭脳を兼ね揃えた黒人女性弁護士の野心と葛藤を活写する、ファッショナブルでセクシーな本格リーガル・メロドラマなのだ!
 

(※)ライムズの軽妙で真摯なエッセイ『Yes ダメな私が最高の人生を手に入れるまでの12カ月』(“Year of Yes”、2015)もお勧めだ。ドラマ制作の裏側をのぞき見できる。
 

“You’re built to win, Jax”
ジャクリーン(ジャックス)・スチュワート(エマヤツィ・コーリナルディ)は、ロサンゼルスの富裕層向け大手弁護士事務所のエースだ。彼女は美貌と頭脳と野心を武器に、唯一の黒人パートナー(共同所有権を持つ弁護士)となった。
ジャックスの夫ルイス(マッキンリー・フリーマン)はビデオゲーム・プログラマーで、2人の間にはティーンエージャーの息子と娘がいる。
 

ジャックスは郊外の大邸宅に住み、テスラに乗り、デザイナーズブランドの服で出社する。だがワーカホリックのジャックスと支配欲の強いルイスとは喧嘩が絶えず、今は別居中だ。反抗期の息子からは嫌われ、両親との関係もギクシャクしている。彼女は見た目ほど幸せではない。
 

ジャックスの事務所が、酒造大手クラウト社のCEOブレイデン・ミラー(ショーン・パトリック・トーマス)から訴訟対応の依頼を受けた。ブレイデンはある女性幹部から、レイプされたと脅されていた。事実無根だが、金で解決したいという。現在クラウト社の売却交渉が最終段階で、この時期のスキャンダルは避けたいのだ。
 

訴えた女性幹部は示談を断った。そしてテレビインタビューの前夜に、自宅で殺された。
 

警察はブレイデンを殺人容疑で逮捕した。証拠は山ほどあった。マスコミが喜ぶセレブの大事件だ。

刑事事件の専門家ジャックスが、ブレイデンの弁護を担当することになった。
 

一方、殺人罪で16年服役していたデイモン・クック(マイケル・イーリー)が仮釈放され、ジャックスの前に姿をあらわす。デイモンはジャックスの公選弁護人時代の依頼人だった。当時彼の無実を信じたジャックスは、司法取引を断って裁判に臨んだ。結果は有罪で、デイモンは25年の懲役となった。純粋で未熟だった彼女にとって、苦い経験だった。
2人は惹かれ合っていたが、デイモンは今でもジャックスを想っている。
 

ブレイデンの弁護に集中すべき大事なときに、ジャックスの心が乱れ始めた。
 

エマヤツィ・コーリナルディの一人舞台!
エマヤツィ・コーリナルディは長いキャリアを持つ実力派アクターで、代表作はリブート版“Roots”あたりか。こなれた中にケレン味たっぷりの演技を取り混ぜる技巧は、初の主演とは思えない。本作は、タフだがセクシー、ジコチューだが思いやりがあり、大胆だが繊細なジャックスを体現するコーリナルディの一人舞台だ。
 

ジャックスを取り巻く3人の男たち、—ルイス役のマッキンリー・フリーマン、ブレイデン役のショーン・パトリック・トーマス(“The District”)、デイモン役のマイケル・イーリー(“Almost Human”、“Stumptown”)が、それぞれクセのある演技でうさん臭さを競い合う。
 

またKYな調査員ダニエル役のティム・ジョー(“Pitch”)、有能だが鬱陶しいアシスタントのクリスタルを演じるアンジェラ・グローヴィーが、コミックリリーフとしてドラマのスパイスとなっている。
 

“soapy”で“seductive”な“guilty pleasure”!
ショーランナー(兼共同脚本)のラームラ・モハメッドはションダ・ライムズに師事し、“Grey’s Anatomy”の製作アシスタントを経て、“Scandal”の脚本に加わった。本作はまさにライムズ・テイストだが、法廷ドラマの側面にウェイトを置くことで独自色を出している。

尚、この作品は実在のセレブ弁護士ショーン・ホリーをモデルにしていて、同名の小説・映画とは無関係だ。
 

ジャックスはマイノリティである立場を最大限に利用し、法律を拡大解釈し、倫理的にも問題がある行動をとる。だが味方にするとこれほど頼りになる弁護士はいない。一方で、夫、息子、母親、義父、友人、元依頼人に振り回される悩める女性だ。ジャックスの複雑なキャラが、本作最大の魅力となっている。
 

舞台は嘘と欲望とマネーの渦巻く世界、描かれるのは泥沼の法廷劇と醜悪な恋愛劇。魅力的だが高慢な女性弁護士に、コントロールフリークの歪んだ性格の夫、暴力的だが臆病な前科者を絡めた湿った三角関係が展開する。そして迷走する大金持ちで節操のない殺人容疑者—
 
彼らが織りなす人間模様には程よい低俗性と強い中毒性があり、ついつい“binge-watch”してしまう。こぶしの効いた「ライムズ節」が唸っているからだ。
 

“Reasonable Doubt”は、高尚さはないが贅沢感はある、“soapy”で“seductive”な“guilty pleasure”(罪のない密かな楽しみ)。美貌と頭脳を兼ね揃えた弁護士ジャックスの野心と葛藤を活写する、ファッショナブルでセクシーな本格リーガル・メロドラマなのだ!
 

原題:Reasonable Doubt
配信:Disney+
配信開始日:2022年9月27日~11月15日
話数:9(1話 49-58分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #75
Title: “The Long Goodbye”
Artist: composed by John Williams and performed by Jack Sheldon
Movie: “The Long Goodbye” (1973)

映画・原作ともハードボイルドの名作。曲はジョン・ウィリアムズの隠れた佳作。
続編の『探偵マーロウ』(“Marlowe”)は、リーアム・ニーソン主演で6月16日に公開決定!
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



 

※※特報
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第101回 “THE LAST OF US”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第101回“THE LAST OF US”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

早くも今年度のベストワン確定! 戦慄と感動のディストピア・ドラマ!!
本作は、2人の疫病専門家によるテレビ討論で始まる。3分ほどのシーンだが、そのうちの一人、ニューマン博士の寄生菌についてのコメントに思わず凍りつく。
 

“The Last of Us”はU-NEXTほかが配信するHBOオリジナル。同名の名作ビデオゲーム(いわゆる『ラスアス』)が原作の超話題作だ。看板に偽りなし、今年度のベストワン、必見中の必見、ドラマの殿堂入り確実、喪失と希望が交錯する、戦慄と感動のディストピア(反ユートピア)・ドラマなのだ!
 

“When you’re lost in the darkness…”
—2003年9月26日、テキサス州オースティン
ジョエル・ミラー(ペドロ・パスカル)はこの日36歳になったシングルファーザー。14歳の娘サラ、元軍人の弟トミーと、郊外で3人暮らしだ。
この日、いつものようにサラは学校へ、ジョエルとトミーは建設の仕事に出かけた。

パンデミックは突然市内で始まり、夜には郊外にも広まった。いたるところで寄生菌の感染者たちが、人に襲いかかっている。その感染力、狂暴性、スピードはゾンビの比ではない。誰もがパニックになっていた。 警察と軍隊が都市を封鎖する。彼らは素性不明の市民に対して、発砲命令を受けていた。

感染を逃れたジョエル、サラ、トミーは、車で州外へ脱出を図ったが…。

—2023年、マサチューセッツ州ボストンの隔離地域
米国の主要都市が廃墟と化して久しい。今もうごめく無数の感染者と、私兵・無法者の世界だ。軍が統制する隔離地域では、生き延びた人々が細々と暮らす。脱走者は死刑になる。

ジョエルは日雇いの仕事をする一方で、パートナーのテス(アナ・トーヴ)と薬物等の密輸をしている。

ある晩ジョエルとテスは、反政府組織「ファイアフライ」の支部長マーリーンと鉢合わせた。彼女は2人に仕事を依頼する。軍の攻撃で負傷した自分に代わって、エリーという14歳の孤児(ベラ・ラムジー)を、隔離地域外の仲間のもとに届けて欲しいというのだ。

(一体この好戦的なティーンエージャーのどこが特別なんだ?)
ジョエルとテスは疑問を覚えつつも、軍用車・武器と引き換えにエリーの「運び屋」を引き受ける。危険だが、単純で実入りがいい仕事のはずだった。

だが、それが人類の存続をかけた、想像を絶する苦難の旅になることを知る由もない…。
 

“I’m scared of ending up alone”
ジョエル役のペドロ・パスカルは、“Game of Thrones”と“Narcos”で注目された。タイトルロールを演じたスター・ウォーズ・ドラマ“The Mandalorian”(本ブログ第65回参照)は大成功したが、彼の顔はヘルメットでほとんど隠れていた。本作でパスカルは、生まれながらのサバイバーであるジョエルを圧巻の存在感で体現する。

ベラ・ラムジーは英国出身の19歳。“Game of Thrones”でリアナ・モーモントを3シーズン演じて、強烈な印象を残した。シリアスドラマ、歴史もの、コメディ、声優、と何でもこなす憎らしいほど上手いアクターだ。今回の凄絶な演技はまた別格で、悲痛の叫びをこらえ気丈に振る舞うエリーに魂を吹き込んだ。

パスカルとラムジーの間に働く強烈なケミストリーが、無口なジョエルと皮肉屋エリーの深いキャラクターアーク(人物の成長や変化の軌跡)に圧倒的な説得力を与えた。

テス役のアナ・トーヴは、主演したSci-fiスリラーの傑作“Fringe”が代表作。ジョエルが頼るタフなパートナーを貫禄で演じている。

可憐なサラ役のニコ・パーカーと理想家トミー役のガブリエル・ルナに加えて、多彩な脇役が熱い演技で競演する。レジスタンスの非情な指導者キャスリン役のメラニー・リンスキー、ジョエルとアライアンスを組む聡明な若者ヘンリー役のラマー・ジョンソン、そして極めつけが、醜悪なカルトリーダーの牧師デビッドを怪演するスコット・シェパードだ。


 

“Look for the light”
ショーランナー(兼共同監督兼共同脚本)はクレイグ・メイジンとニール・ドラックマン。メイジンはHBOの傑作“Chernobyl”(『チェルノブイリ』、本ブログ第69回参照)が代表作。ドラックマンは『ラスアス』のクリエーターだ。
プレー時間の長さを考えれば、ビデオゲームは映画より遥かにテレビドラマとの親和性が高い(『ラスアス』の映画化は2016年に中止)。メイジンとドラックマンは原作の世界観とストーリーをそのままに、ホラーの枠を遥かに超えた渾身のヒューマンドラマを作り上げた。
 

よく練られた脚本、繊細で無駄のない会話、選り抜きのBGMが時間を忘れさせる。醜くも美しい映像は鮮烈で容赦ない。絶え間ない緊迫感の中で、シーンのひとつひとつが濃密で忘れ難く、各話の完成度の高さは他に類を見ない。「このエピソードが永遠に続けばいいのに…」と思え、まるで珠玉の短編集を読んでいるように感じる。
 

その中でも第3話は番外編的な、胸の張り裂けそうなラブストーリーとなっている。 要塞化した自宅で暮らす陰謀論者のビルと、彼の仕掛けた罠にかかった善良な男フランク。この奇妙な出会いは、孤独な2人の人生を劇的に変える。2人を演じるニック・オファーマンとマレー・バートレットの演技が絶品で、ラストシーンに流れるリンダ・ロンシュタットの“Long Long Time”が深い余韻を残す(<今月のおまけ-2>参照)。

傷心の父親と、親の顔を知らない孤児は、本能的に互いを拒絶する。ジョエルの目に映るのは、実の娘サラとは正反対の、粗野で狡賢い不良少女。エリーの前にいる男は、想像上の父親とはかけ離れた、強面で非情な密輸業者。だが極限の状況は彼らに選択の余地を与えない。
—信頼し合うしか、生き延びるすべはない。

ジョエルとエリーはかすかな希望に賭けて、今日1日を生き抜く。暴力は避けて通れない。だからこそ、2人が初めて一緒に笑うシーンが胸に突き刺さる。 このドラマが怖いのは、ゾンビまがいのモンスターが押し寄せるからではない。ジョエルとエリーの脳裏をよぎる「お互いを失う恐怖」が、観る者に伝染するからなのだ。

自慢のクオリティに娯楽性がマッチしたときのHBOは最強で、本作はまさに「ドラマ界のレクサス」の面目躍如。 『ラスアス』ファンである必要は全くない。シーズン2の制作も決まった。

“The Last of Us”は今年度のベストワン間違いなし、9月にはエミー賞を席巻しているはず。看板に偽りなし、必見中の必見、殿堂入り確実、喪失と希望が交錯する、戦慄と感動のディストピア・ドラマなのだ!
 

原題:The Last of Us
配信:U-NEXTほか
配信日:2023年1月16日~
話数:(1話 43-80分)
 

<今月のおまけ-1> “THE LAST OF US x MARIO KART” SNL(“Saturday Night Live”)による、“Mario Kart”の“The Last of Us”風パロディ。実はペドロ・パスカルの素顔は、「おもろいフツーの親父」だった!
 

<今月のおまけ-2> “Long Long Time” by Linda Ronstadt

曲もエピソードも、“heartwarming”で“heartbreaking”だ。

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



 

※※特報
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海外ドラママスターとしてJVTAブログを担当する土橋秀一郎さんが、今見るべき作品を紹介!レア情報も満載です。

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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第100回 “THE RECRUIT” +『100回記念特別付録』!

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
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Written by Shuichiro Dobashi 

第100回 “THE RECRUIT” +『100回記念特別付録』!
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

熱血CIA弁護士のスパイアクション!
Netflixオリジナルの“The Recruit”は、筆者好みの軽快でノリのいい一作。
自分勝手でやんちゃで無鉄砲、だが頭脳明晰で楽天的で正義感が強くて根は優しいアドレナリン・ジャンキーの熱血CIA弁護士が大活躍する、愉快痛快なスパイアクション・ドラマなのだ!

※本稿末尾の『100回記念特別付録』も読んでね。
 

“I’m not a spy, I’m a lawyer!”
—ワシントンD.C.
オーウェン・ヘンドリックス(ノア・センティネオ)は24歳、2日前からCIA(米国中央情報局)で働き始めた。と言っても、オーウェンはスパイでも暗殺者でも分析官でもない。専門知識もなく、初歩の諜報訓練さえ受けていない法務部の弁護士だ。
彼は元カノの弁護士ハンナ(ファイヴェル・スチュワート)、財務省勤務の親友テレンス(ダニエル・クインシー・アノー)と、アパートの一室を共有している。

オーウェンの父親はアフガニスタンで戦死し、母親はそのショックで精神的に参ってしまった。オーウェンは弁護士資格を取ると、CIAに入局した。何か強い刺激が欲しかったのだ。

CIAには毎年何百通もの脅迫状(”graymail”)が届く。勘のいいオーウェンは、信憑性の高そうな一通に目を付けた。フェニックスの刑務所で服役中のマックス・メラッゼ(ローラ・ハドック)が、極秘の符丁や暗号名を使っていたからだ。


オーウェンはマックスと面会する。 マックスはベラルーシ生まれの妖艶な殺人犯だった。そして、自分を即時釈放しないと所有している機密文書をメディアにバラまくという。彼女はかつてCIAの凄腕工作員で、汚れた極秘作戦にかかわっていた。 その内容が表ざたになれば、CIAは壊滅的な被害を受ける。 上層部は渋々マックスを釈放した。さらに、彼女を工作員として復帰させようと画策する。
 

ところがオーウェンは何故かマックスに気に入られてしまい、引き続きオペレーションの主要メンバーとして残る羽目になった。
 

オーウェンは、やがて迷路のようなエスピオナージの世界に翻弄されていく。美貌のサイコパス系元工作員をパートナーにして、ヨーロッパを股にかけた人生最大の冒険が始まった!
 

“Peter Pan with a license to kill”
オーウェン役のノア・センティネオは、キュートなラブコメ『好きだった君へのラブレター』(2018)でブレーク。劇中“Peter Pan with a license to kill”と揶揄される、罪のなさそうな顔をして大胆な行動に出る本役に打ってつけだ。また昨年公開された『ブラックアダム』(DCコミックス)では、スーパーヒーローのアトム・スマッシャーを演じた。
 

英国出身のローラ・ハドックは、マーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで主人公スター・ロードの母親を演じた。ハドックはエキゾチックなマックス役にピタリとはまり、センティネオとの間にはヒリヒリするようなケミストリーが働く。
 

オーウェンの私生活を支える2人、ハンナを演じた”Atypical”(本ブログ第86回参照)のファイヴェル・スチュワート、ゲイの親友テレンス役のダニエル・クインシー・アノーが、ドラマに優しさを与えている。
 


一方、強面だが意外と頼りない法務部長ナイランド役のヴォンディ・カーティス=ホール、オーウェンのセフレとなる変人局員アメリア役のケイラ・ザンダー、底意地が悪いが抜けている同僚ヴァイオレット&レスターを演じたアーティ・マン(”The Big Bang Theory”)とコルトン・ダンは、ドラマに笑いを持ち込む。
 

新米弁護士vs.ファム・ファタールの攻防!

ショーランナー(兼共同脚本)のアレクシ・ホーリーはエンタメの名手だ。ケヴィン・ベーコンが戦慄のカルト教団と戦う傑作スリラー”The Following”、大ヒットしたロマコメ・ミステリードラマ”Castle”、最近ではポリス・ドラメディの”The Rookie”などを手掛けている。
本作はジャック・ライアン(”Tom Clancy’s Jack Ryan”の主人公、(本ブログ第55回参照))のチャラ男版をイメージさせる、軽快な「巻き込まれ型」スパイアクションに仕上がった。
 

本作最大の魅力は、CIAの新米弁護士とファム・ファタール(男を騙す悪女)の組み合わせの妙だ。オーウェンを誘惑し手練手管で操ろうとするマックスと、持ち前のカンと頭の切れで主導権を取ろうとするオーウェンとの、丁々発止の攻防は楽しくてスリリング。2人は次第に愛憎交えたパートナーとなっていく。
また、この2人に元カノのハンナを絡めた微妙な三角関係も新鮮だ。
 

スパイドラマやエスピオナージ小説は、ストーリーが複雑で時として冗長なのが難点だ(ジョン・ル・カレの小説は難解過ぎる)。その点本作はエンタメに徹していて分かりやすい。ユーモアも効いていて、組織内でだれも信用できず、互いに足を引っ張り合い、理解できない略語と暗号による会話が飛び交うCIA内の描写はとても笑える。
最終話はスパイドラマらしいツイストが思い切り炸裂し、手に汗握る展開。オーウェンがとんでもないトラブルを抱えこむエンディングは、ものの見事なクリフハンガーで文句なし。制作が決まったシーズン2を待ちきれない。
 

“The Recruit”は、自分勝手でやんちゃで無鉄砲だが、頭脳明晰で楽天的で正義感が強くて根は優しいアドレナリン・ジャンキーの熱血弁護士が大活躍する、愉快痛快なスパイアクション・ドラマなのだ!
 

原題:The Recruit
配信:Netflix
配信日:2022年12月16日
話数:8(1話 52-58分)
 

『100回記念特別付録』:Top 8 Most Overlooked / Underrated Dramas!

本ブログで紹介しきれなかった、日本で知られていない、あるいは不当に過小評価されているメチャクチャ面白い作品を紹介する。いずれもやめられない止まらない状態になる隠れた傑作揃いだ!
(”The Last Ship”、”Firefly”など、現在視聴不能な作品は泣く泣く外した。)
 

第1位 “Queen of the South”(Netflix、2016-2021、全5シーズン、62話)

恋人のコカイン取引に巻き込まれたメキシコ人女性テレサは、運び屋をやりながら麻薬ビジネスを学ぶ。そしてカリスマ的魅力で荒くれ男たちを配下に収め、西半球最大の麻薬カルテルのトップへと上り詰めていく。主演のブラジル人俳優アリシー・ブラガの華麗な変貌が見もの。このジャンルの鉄板”Narcos”をも凌ぐ面白さ!
 

第2位 “Banshee”(Amazon Prime、2013-2016、全4シーズン、38話)

田舎の小さな町バンシーにやってきた前科者の男(“The Boys”のホームランダーことアントニー・スター)は、強盗に殺された新任保安官に成りすます。男は仲間を集めて盗みを働く一方で、敏腕保安官として正義の側にも立つ。凄まじいバイオレンス・アクションが次々に炸裂する、最高にクールなクライムドラマ!
 

第3位 “GLOW”(Netflix、2017-2019、全3シーズン、30話)

“GLOW”とは”Gorgeous Ladies of Wrestling”の略。まともな職に就けないなど、様々な理由から地方のしがないプロレスラーになった女性たち。だが、彼女らは次第にプロレスの魅力にはまり、アイデンティティを確立し、真のプロへと成長していく。笑いの中に深い感動を散りばめたアンサンブル・ドラメディの傑作!
 

第4位 “Weeds”(Amazon Prime、2005-2012、全8シーズン、102話)

夫の突然死によって破産状態で取り残されたカリフォルニアのセレブママ、ナンシー。彼女は息子2人を養うため、知人にマリファナを売り始める。ビジネスは大評判となり、やがてメキシコの麻薬カルテルを巻き込む大騒動に発展する。メアリー=ルイーズ・パーカーの魅力が爆発する、極めつけのダークコメディ!
※現在S1-4&8が視聴可能。
 

第5位 “Shameless”(Netflix、2011-2021、全11シーズン、134話)

ウィリアム・H・メイシー演じるフランクはアル中で無職、5人の子を持つ史上最低のシングルファーザー。だが一家の危機には、長女のフィオナ(『オペラ座の怪人』の歌姫エミー・ロッサム!)を中心に問題児たちは助け合う。残酷なまでに正直、倫理観はないがハートはある機能不全家族の、お下劣で感動的な大爆笑コメディ!
※現在S1-5が視聴可能。
 

第6位 “Ray Donovan”(Hulu、2013-2019、全7シーズン、82話 +TV映画 2022)

リーヴ・シュレイバー演じるレイ・ドノヴァンは、政治家、企業家、セレブのあらゆるトラブルを解決するLA最高のフィクサー。レイは頭脳明晰で冷酷非情、そのやり方は合法・非合法を問わない。救いようのない犯罪者の父親ミッキーを怪演するジョン・ヴォイトも見もの。2000年以降で最もクールでハードボイルドなクライムドラマ!
 

第7位 “Schmigadoon!”(Apple+、2021-present、全1シーズン、6話)

ミュージカルの古典『ブリガドーン』(1954)の現代風パロディ。恋人同士のメリッサとジョッシュは突然‘40年代にタイムスリップするが、「真実の愛」を見つけるまでは現世に戻れない。登場人物が突然歌いだすミュージカルの不自然さ、古典ミュージカルの差別表現を逆手に取って笑い飛ばす、斬新なロマコメ・ミュージカル!
 

第8位 “Billions”(Netflix、2016-present、全6シーズン、72話)

手段を問わないヘッジファンドの帝王アックス(“Homeland”のダミアン・ルイス)と、彼の逮捕に病的な執念を燃やす連邦検事チャック(名優ポール・ジアマッティ)。生き馬の目を抜くウォール街で、2人の凄絶な頭脳ゲームが展開する。ルール無用の企業買収やインサイダー取引が活写される、必見の金融クライムドラマ!
※現在S1-5が視聴可能。
 

(番外編)“The Last Movie Stars”(U-NEXT、2022、リミテッドシリーズ、6話)

50年連れ添ったポール・ニューマンとジョアン・ウッドワードの人生を振り返るドキュメンタリー。制作はHBO/CNNで監督はイーサン・ホーク。音声記録を失った大量のインタビュー原稿をベースに、ジョージ・クルーニー、ローラ・リニーらが声を吹き込んで再構築した。映画スター、レーサー、慈善活動家、父親などポール・ニューマンの素顔とともに、ジョアンとの結婚生活、アルコール依存、息子の突然死など人生の浮き沈みが語られる。2人の主演作のクリップもふんだんにありファン必見。忙しい人は最終話(80分)だけでも観る価値がある。
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



 

※※特報
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「今が旬、これが一押しアメリカン・ドラマ」
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第99回 “MOTHERLAND: FORT SALEM”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第99回 “MOTHERLAND: FORT SALEM”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 


 

軍服を着た魔女たちが大活躍する壮大なホラ話!
新春第一弾はDisney傘下のFreeformが制作、Disney+が配信する壮大なホラ話。これが悶絶するほど面白い。
“Motherland: Fort Salem”は、軍服を着た魔女たちの終わりなき怒涛の戦いを描く、必見のSci-fiファンタジー・ミリタリーアクション・メロドラマなのだ!(これだけ形容詞のつくドラマは滅多にないぞ!)
 

“Rise of the Spree”
—アメリカ合衆国マサチューセッツ州フォート・セーラム、2019年
女性が支配し、一般人と魔女が共存共栄するパラレルワールド。
魔女によるテロリスト・グループ「スプリー」(“The Spree”)が、各地で暗躍している。変身能力を持つスプリーのメンバーは、一般人に化けて大量殺人を繰り返す。陸軍省所属の魔女軍団は守勢一方で、戦力の立て直しが急務だった。
 

戦いの発端は今から327年前。サラ・アルダー将軍(リン・レネー)率いる魔女軍団は、一般人を代表する植民地軍と「セーラム協定」(“Salem Accord”)を結んだ。植民地軍は、魔女裁判(“Salem witch trials”)を止める。その見返りに、魔女軍団は協定に反対する魔女グループと戦うという内容だった。
その戦争が、未だに続いている。スプリーは、レジスタンスの末裔なのだ。
 

今日は「徴兵日」。
全米各地の若い魔女たちが、陸軍基礎訓練学校に入隊した。この施設は、今も現役のアルダー将軍が統括している。新兵たちは一等兵(“private”)として士官学校(“War College”)入学を目指す。競争は過酷で、脱落すると消耗品として戦争の最前線へ送られる。
 

ラエル・コラー(テイラー・ヒックソン)は、ミシシッピ川沿いのチペワ割譲地出身。軍人の母親が戦死し、投げやりになって徴兵に応じた。ラエルは病人や怪我人を癒す不思議な力を持つ。
 

アビゲイル・ベルウェザー(アシュリー・ニコール・ウィリアムズ)は、NYのエリート軍人一家の出身だ。母親が現役の将軍であることから、親の七光りを何より嫌がる。彼女は高い戦闘能力を持ち、自分にも他人にも厳しい。
 

タリー・クレイブン(ジェシカ・サットン)は、カリフォルニア州サクラメントの母子居留地出身。タリーは母親の猛反対を押し切って入隊した志願兵だ。敵を察知する特殊な視覚能力を持つ。
 

ラエル、アビゲイル、タリーはルームメイトになるが、相性の悪いラエルとアビゲイルは激しく対立する。
 

厳しい基礎訓練が始まった。
魔女たちの主要な武器は、「シード」(“Seed”)と呼ばれる異なる音域の「声」だ。ボイストレーニングによって威力を高め、これに高度な武術を絡める。
 

3人組は心身ともに未熟なまま、スプリーとの凄絶な戦いに巻き込まれていく!
 

世界観にマッチした国際色豊かなアクターたち!
本作のメインキャラクターを演じたのは、アビゲイル役のアシュリー・ニコール・ウィリアムズを除き、ほとんどが非アメリカ人アクターだ。
 

テイラー・ヒックソンはカナダ出身。屈折していて影があるが、芯が強くて凛とした魅力のあるラエル役にピタリとはまった。
ラエルと恋に落ちる謎の先輩兵士シラ役のアマリア・ホルムは、ノルウェー出身。タリー役のジェシカ・サットンは南アフリカ、アルダー将軍役のリン・レネーはベルギー出身だ。
豊かな国際色は、ドラマの世界観に見事にマッチしている。
 

聞き慣れないアクターばかりだが、演技力は一級品でアクションも達者にこなす。3人組にはエピソードが進むに連れて強いケミストリーが働く。
 

世界を変えていく3人の魔女たち!
ショーランナー兼共同脚本のエリオット・ローレンスは、出版には至らなかったものの長大な原作を執筆した。おかげで本作は、確固たる世界観を持ち(これ、Sci-fiドラマで最も重要)、荒唐無稽半歩手前でストーリーが破綻せず、脚本は意外と緻密だ。
この手のホラ話はディテールで手を抜くと、単なるB級作品に成り下がる。ローレンスがパラレルワールドの小さなつくり話を丹念に積み重ねたことによって、臨場感や質感が生まれた。
 

蛇足だが、「スプリー」(“spree”)は犯罪ドラマの頻出単語。短期間での無差別殺人者が”spree killer”で、一定の期間をおく連続殺人者を意味する”serial killer”と区別される。(“Criminal Minds”のファンは知っているよね。)
 

本作の魅力は、まず主人公3人のカッコよさだ。ラエル、アビゲイル、タリーの軍人としての成長を通して、堅固なキャラクターアーク(人物の成長や変化の軌跡)が形成される。3人は数々の苦難と悲惨な戦闘を乗り越え、友情と絆を育みながら、人としても成熟していく。
次が、魔女と軍隊ドラマのマッチングの妙だ。魔術と軍隊式アクションを組み合わせた戦闘シーンは迫力満点。魔女であっても一般人同様に負傷するし戦死もする。恐怖を感じるし、PTSD(心的外傷後ストレス障害)も患うのだ。
3つ目がラエルとシラの苦く切ないラブストーリー。戦時下の閉塞感、常に死と向き合う不安感が、2人のロマンスを燃え上がらせる。これだけでメロドラマがひとつ作れるくらい感動的だ。
 

ストーリーは意外と奥が深い。
軍人の「尊厳」(“dignity”)「奉仕」(“service”)「義務」(“duty”)「名誉」(“honor”)「勇気」(“bravely”)の意味を問いながら、高揚感を盛り上げる。その一方で戦争の残酷さや虚しさまで踏み込み、反戦ドラマ的な要素も織り込む。例えば、重要な役割を担う平和主義者のタリム族は、途方もない力を生む「歌」の武器化を拒否し、それゆえに全滅寸前という設定だ。
さらに、国民が魔女と一般人とに分断される現象は、現実社会を投影している。
 

シーズン2では、3人組が晴れて士官候補生(“cadet”)に昇格。スプリーに加えて魔女の仇敵「カマリア」が登場し、三つ巴のストーリーが縦横無尽に展開する。シーズン3はSci-fiファンタジーらしく、3人の魔女が「死と憎悪の世界」を変えようと奮闘する。
 

“Motherland: Fort Salem”はサービス満点見どころ満載、悶絶する面白さのスーパーエンターテインメント。軍服を着た魔女たちの成長、友情、恋愛、そして終わりなき怒涛の戦いを描く、必見のSci-fiファンタジー・ミリタリーアクション・メロドラマなのだ!
 

本作は、昨年10月に配信が始まったシーズン3をもって完結した。
尚、本作によく似た作風のNetflixオリジナル“Warrior Nun”(邦題『シスター戦士』)もお勧めだ。
 

原題:Motherland: Fort Salem
配信:Disney+
配信日:2022年3月16日(S1-2)、2022年10月5日(S3)
話数:30(1話 41-52分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #74
Title: “Because You Loved Me”
Artist: Celine Dion
Movie: “Up Close & Personal” (1996)


映画の邦題は『アンカーウーマン』。
セリーヌ・ディオンの映画主題歌ベストは、『タイタニック』のテーマではなくこの曲だ。
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 


 

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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第98回 “Lost Ollie”(『オリー』)

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第98回 “Lost Ollie”(『オリー』)
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
     


     

    あなたのハートを貫く、パッチワークのウサギの物語!
    本年最後にとっておきの隠し玉を紹介する。
    それはパッチワークのウサギが主人公の実写/CGアニメーション。Netflixオリジナルのリミテッドシリーズで、わずか4話の小品だ。
     

    “Lost Ollie”は、美しくも哀しい愛と友情と勇気の物語。あなたのハートを貫き、深い感情を呼び起こす、最高のクリスマス・プレゼントなのだ!
     

    “How long we been friends?”
    —ケンタッキー州近郊
    リサイクルショップにある段ボールの箱の中で、オリーは目覚めた。オリーは長いたれ耳を持つ、体長約15センチのパッチワークのウサギだ。
    「ここはどこ?」
    「僕はどのくらい眠っていたのだろう?」
    「ビリーはどこ?」
     

    オリーは、ビリーのかすかな記憶以外は何も思い出せなかった。
    「ビリーの元へ帰らなきゃ」
     

    4歳のビリー(ウィリアム・カーソン)はワイルズ家の養子だ。彼はシャイで、唯一の友人オリーといつも海賊ごっこをしている。母親(ジーナ・ロドリゲス)はガンの末期だが、貧しくて治療が受けられない。それでも、ビリーにはいつも明るく優しく接している。父親(ジェイク・ジョンソン)は善良な人間だが、プレッシャーに押しつぶされそうだ。息子にもどう接していいか分からない。
     

    ある日、ビリーはオリーを失った。何が起きたんだ?
    ビリーはオリーを探すために家を抜け出した。
     

    オリーは、リサイクルショップに住むピエロの人形ゾゾと出会う。ゾゾにはニーナという操り人形の恋人がいたが、離れ離れになって久しい。オリーは、協力してビリーとニーナを探し出そうとゾゾに持ちかける。
    オリーとゾゾがショップから脱出すると、狂暴な飼い犬が襲いかかってきた。彼らを危機から救ったのは、テディベアの海賊剣士ロージーだった。どうやらロージーは、ゾゾの昔からの知り合いらしい。
     

    ロージーも旅に加わった。彼らはオリーの記憶の断片を頼りに、オハイオ川を南下する船に乗った。
    オリー、ゾゾ、ロージーの波乱万丈の旅が始まった!
     

    オリーに魂を吹き込んだジョナサン・グロフ!
    オリーの声を担当したのは、ブロードウェイ出身のジョナサン・グロフ。『アナと雪の女王』 『ハミルトン』 ”Glee”など、ミュージック系作品が代表作だ。また迫真のサイコスリラー”Mindhunter”で演じた、主役のFBI捜査官フォードも忘れ難い。
    子役ではなく37歳のグロフが、オリーに魂を吹き込んだのだ。
     

    ジーナ・ロドリゲスは、大ヒットコメディ”Jane the Virgin”(2014-2019)でタイトルロールを演じ、ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞している。女性版ルパン三世”Carmen Sandiego”(本ブログ第83回参照)では、カルメンの声を担当。本作では、優しさあふれるビリーの母親を好演した。
     

    ビリーの父親を演じたジェイク・ジョンソンは、”New Girl”(2011-2018)のルームメイト、”Stumptown”(本ブログ第89回参照 )のバーテンダーなど、主役女性の親友役でいい味を出す。
     

    また、ロージーの声を”The Umbrella Academy”(本ブログ第80回参照)の殺し屋チャチャことメアリ-・J・ブライジが、ゾゾの声を“Watchmen”のティム・ブレイク・ネルソンが担当している。
     

    「とても哀しいハッピーエンド」って何だ?
    原作は、ウィリアム・ジョイスの子供向け小説”Ollie’s Odyssey”。ショーランナーのシャノン・ティンドルは、ストーリーとキャラクターの奥深さを徹底的に追求した。その結果、本作は老若男女を問わず、圧倒的な感動を与えるアニメドラマに仕上がった。
    全エピソードを監督したピーター・ラムジーは、傑作アニメ『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)で、アカデミー賞&ゴールデングローブ賞アニメ部門の最優秀作品賞を受賞している。
     

    本作最大の魅力は、オリー、ゾゾ、ロージーのキャラクターの深さだ。ILM(”Industrial Light and Magic”)による特撮は、彼らを完全に実写に溶け込ませ、アクターとの境界線をなくしてしまった。
    サイドストーリーも魅力に富んでいて、オリーの出生秘話、ゾゾとニーナのラブストーリー、ゾゾとロージーの出会いには胸が熱くなる。
     

    「迷子のオモチャが持ち主の少年の元に帰る旅」—出だしは『トイ・ストーリー』の亜流かと思うが、そんなヤワな話ではない。(誤解のないように言っておくと、筆者は『トイ・ストーリー』のファンだ。)
    物語はシリーズ半ばで突如ダークサイドへと向かい、予測不能となる。このころには、観る者はオリーたちオモチャを実体のあるキャラとして捉えていて、いつのまにか感情移入させられている。やがて残酷な事実が明かされ、希望が打ち砕かれていく。いったいどんな結末が待っているのか、心配で居ても立っても居られなくなる。
     

    愛と友情と勇気の物語だが、苦い真実が胸に突き刺さる。「ほろ苦い」のではなく「苦い」のだ。喪失感は大きいが、全編心地よい優しさに包まれている。「冷酷さ」と「寛容さ」を兼ね揃えたストーリーは、高い満足感を与えてくれる。そして結末は、「とても哀しいハッピーエンド」だ。
    “Lost Ollie”はあなたのハートを貫き、深い感情を呼び起こす、最高のクリスマス・プレゼントなのだ!
     

    Netflix会員のあなた、騙されたと思って本作を覗いて欲しい。「とても哀しいハッピーエンド」に心を打たれるから。
     

    原題:Lost Ollie
    配信:Netflix
    配信日:2022年8月24日
    話数:4(1話 41-51分)
     

    尚、CGアニメと言えば、”Star Wars: Tales of the Jedi”(Disney+)はファン必見。タイトル通り、『スター・ウォーズ:エピソード1~3』に登場するジェダイたちが勢ぞろいする。全6話をイッキ観しても正味1.5時間以下のショートシリーズだが、今年配信された”The Book of Boba Fett”、”Obi-Wan Kenobi”、”Andor”より面白い。
     

    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #73
    Title: “It Had to be You”
    Artist: Frank Sinatra
    Movie: “When Harry Met Sally” (1989)

    『恋人たちの予感』も今やクリスマス・クラシック。年は取りたくない。

    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

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