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【第20回難民映画祭】字幕翻訳と広報サポーターで修了生が活躍中!」

第20回難民映画祭が11月6日に開幕。JVTAは今年も上映作品の字幕制作で協力しています。さらに今年は映画祭が公募した広報サポーターに、JVTAの修了生7名(青井夕子さん、中島唱子さん、中原美香さん、梶原阿子さん、長谷川睦さん、丸山綾さん、松井敏さん)とJVTAの広報スタッフが参加し、チラシやポスターの設置の交渉や送付といったPR活動や記事コンテンツの制作などを手掛けています。JVTAが関連したものをこちらで紹介していきます。

また、こちらにはサポーターの皆さんによる作品のレビューも掲載されています。字幕を担当された翻訳者の皆さんも要チェックです!

◆第20回難民映画祭 公式サイト

◆第20回難民映画祭が11月6日に開幕 青いバラにこめた思いを字幕で伝える

※同映画祭担当の山崎玲子さん(国連UNHCR協会・渉外担当シニアオフィサー)から翻訳者の皆さんにメッセージを頂きました。

◆第20回難民映画祭・広報サポーターによる公式note 「みて考えよう!難民映画祭」

『バーバリアン協奏曲』

◆上映作品『バーバリアン狂騒曲』翻訳の裏話①

※字幕翻訳チームの青井夕子さんが執筆しています。

【東京国際映画祭が開催】映画祭ガイドと公式プログラムの英訳でも映像翻訳者が活躍

10月27日(月)、第38回東京国際映画祭(TIFF)が開幕する。TIFFは、1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生。才能溢れる新人監督から熟練の監督の作品まで、世界中から厳選された映画が集結し、毎年メディアでも大きく報道される人気のイベントだ。JVTAは今年も公式プログラムの英訳やデイリーペーパーの翻訳などを担当し、JVTAで映像翻訳を学んだ翻訳者が活躍している。公式プログラムと映画祭ガイドの英訳を手がけたキンチョ・コスタさんに話を聞いた。

東京国際映画祭 トレイラー

歴史ある国際映画祭とあって、公式プログラムと会場で配布される映画祭ガイドは2カ国語となっており、昨今JVTAがその英訳を担当している。映画祭ガイドでは、作品名、監督名、出演者、作品の解説などが英語と日本語で併記されているが、2つの言語は同じスペースに配置され、同じ字数制限に合わせることが必須だ。英訳には漢字が使えないうえ、題名や人名の場合は字数がすでに決まっている。キンチョ・コスタさんは、なるべく簡潔に情報を伝えようとしたが、結局、英訳には情報を省略することが必須だったと話す。

東京国際映画祭の映画祭ガイド

「最も難しかったのは、作品に関するネタを徹底的に調べながら、その情報を取捨選択し、文章のトーン、そして書き手が伝えたいことをきちんと守りつつ、情報を削ることでした」(キンチョ・コスタさん)

映画祭では、プレミア上映作品、初めて英語字幕付きで上映される作品、過去の古い名作などさまざまな作品が上映される。翻訳者はただ日本語のテキストを訳すだけではなく、各作品の背景やストーリーの詳細を詳しく調べたうえで英訳に反映していく。コスタさんは、JVTAの授業で学んだテキスト翻訳やストーリー分析などの知識を活かし、リサーチで得た情報をもとに作品とキャラクターを理解し、最も中心的な情報を抜き出した。

「日本語のガイドには載っていない情報をリサーチで得た場合、英語でそのニュアンスを伝えるべきか、それともネタバレになるのかという判断も難しかったです。」(キンチョ・コスタさん)

東京国際映画祭  公式プログラム

また、会場で販売される公式プログラムには、作品の概要だけでなく、映画祭関係者の挨拶や上映プログラムの解説なども記載されている。こうした英訳には、コスタさんが日頃手がけるビジネス系動画の字幕制作やアニメプロジェクトの経験も役立った。

「映画祭関係者の挨拶などを英訳する際には、英語の自然さを保ちながら、一人ひとりの個性的な文章の表現や口調を伝えることを大切にしました」(キンチョ・コスタさん)

◆東京国際映画祭 映画祭ガイド

※下記からダウンロードはこちら(映画祭公式サイトにリンクします)

東京国際映画祭では、国内外の映画祭の受賞作品も上映される。コスタさんは、今年の「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025」に出品され、コンペティション部門SKIPシティアワードを受賞した『長い夜』(草刈悠生監督)の英語字幕制作にも携わった。2年前に海に消えたカイと恋人の真理、親友の光一の複雑な心の動きを追った注目作。この作品についてコスタさんは、演出が繊細で、メインキャストの自然主義的な演技も素晴らしかったと振り返る。

◆『長い夜』(草刈悠生監督)
詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)

「長い夜」Yui Kusakari©

字幕を作るうえでチャレンジングだったのは、非常にゆっくりとした対話のペースだという。セリフの間に長いポーズが挟まれているがセリフ自体は短く簡潔で、日本語のニュアンスを英語でも簡潔に伝える必要があった。

「3人のチームで字幕を担当したのですが、私のパートでは真理と光一の喧嘩のシーンも含まれていました。そのシーンの対話やキャラクターの怒りが非常にリアルに感じられたので、そのクオリティを英語字幕でも保ちたいと思いました。しかし、このシーンではセリフがパパパと続くため、それまでのゆっくりしたペースで読める字幕のリズムを崩さないよう、さまざまな工夫を凝らしました」(キンチョ・コスタさん)

キャラクターの立場に立って、彼らの「声」を探す過程で、欠点も含めて各キャラクターに親しみを感じるようになったというコスタさん。最後の海のシーンで彼らを見て心が浄化されるような気持ちになったと話す。

今年の東京国際映画祭では、ほかにもJVTAで学んだ翻訳者が字幕を手掛けた作品が上映される。国内外の映画祭の受賞作品にも注目したい。

◆『空回りする直美』(中里ふく監督)
詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)

「空回りする直美」©『空回りする直美』製作委員会/東放学園映画専門学校

父親と発達障害のある兄、慎吾と暮らす直美の日常を描いた同作は、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)「PFFアワード2025」でグランプリを受賞。英語字幕は、リー・スタビングスさんが手掛けている。スタビングスさんは、クリエイティブなライティングに注力し、映画やドラマの字幕翻訳だけでなく、ビデオゲームの翻訳やプロジェクト・マネージャーなど幅広く活躍中だ。

「この映画は一緒に暮らすことに苦悩する兄妹の関係を描いていますので、翻訳では登場人物の感情をできるだけ汲み取り、英語でも忠実に表現することを心がけました。特に兄によるラップの部分は、兄の創造性とユーモアのセンスを示す重要な要素であり、時間をかけて翻訳しました。」(リー・スタビングスさん)

◆『Little Amélie or the Character of Rain(英題)』(メイリス・ヴァラード監督、リアン=チョー・ハン監督)
詳細はこちら(映画祭公式サイトにリンクします)

『Little Amélie or the Character of Rain(英題)』© 2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music

アヌシー国際アニメーション映画祭2025審査員賞受賞作品。日本語字幕を担当したのは、JVTAで学んだベテラン翻訳者、今井祥子さんだ。今井さんは東京国際映画祭のプログラミンググループのスタッフとして、運営に携わっている。今井さんによると、原作者のアメリー・ノートンはフランス語圏では大人気の作家で、原作は、ベルギーの外交官の娘として神戸で幼少期を過ごした彼女の自伝的小説だという。それをレミ・シャイエ(『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』『カラミティ』の監督)の下で経験を積んだフランス人アニメーターコンビが映画化したという注目作だ。

「アニメーションならではの色彩・光・サウンドで描かれる70年代の日本の風景が、なんとも郷愁を誘います。自分も子どもの頃はこんなふうに世界が見えていたのかもしれないなぁ、と思いながら翻訳しました。」(今井祥子さん)

東京国際映画祭に出かけたら、ぜひ映画祭ガイドも手に取って2カ国の解説も注視してほしい。

◆東京国際映画祭
2025年10月27日(月)~11月5日(水)

シネスイッチ銀座(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、ヒューリックホール東京、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、三菱ビル1F M+サクセス、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用

公式サイト:https://2025.tiff-jp.net/ja/

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年4月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか

小池陽子さんは英日映像翻訳 実践コース修了後、1年ほどトライアルを受験するがなかなか合格できず悩んでいた。クラスメートの勧めもあり、2024年4月期の「ロジカルリーディング力強化コース」を受講し修了後に見事トライアルに合格、2025年7月にプロとしてのキャリアをスタートした。現在は企業研修用映像の翻訳、配信映画の字幕などを手掛けている。「もっと良い翻訳をしたい。そのためには何をどう考え、どんな取り組みが必要なのか、そのヒントが欲しい」という切実な思いが、同コース受講の原動力だったという小池さんが、このコースで何を身につけたのか、話を聞いた。

◆先に合格したクラスメートの勧めが受講のきっかけ

小池さんは、トライアルの突破口が見つからないとき、先に合格したクラスメートの数人が「ロジカルリーディング強化コースを受講して、とても勉強になった」と話していたことを思い出す。メールマガジンで友人の同コースの体験談を読み、受講を具体的に検討するようになった。

さらに背中を押したのは、小池さんにJVTAを教えてくれた友人の存在だった。小池さんと同じようにトライアルに挑戦していた彼女が同コースを受講すると聞き、自身も受講を決めたという。

「不合格続きでどんよりとした気持ちでのスタートでしたが、毎回授業のテーマに沿って課題に取り組むうちに、『翻訳が好き』という気持ちを思い出すことができました。受講して本当に良かったです。」(小池陽子さん)

◆翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか

小池さんが授業で特に印象に残っているのが、「翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか」という山根克之講師の言葉だ。原文の構文や単語、表現がすでに知っているものであっても、安易に済ませてはいけない。特に、その単語で最初に覚えた訳語は危険だということを学んだ。

例えば、受講し始めて間もない授業には、「英語のクセや日本語との距離を考える」というテーマがあり、比喩表現やユーモアを含む文章の課題に取り組んだ。英語圏で暮らした経験のない小池さんには、この課題は特に難しく感じられたという。

ある問題に出てきた「In fact」の訳し方は印象に残っている出来事の一つだ。一般的には「実際に(は)」や「要するに」など、前文の内容を補足・強化する訳がまず思い浮かぶが、その課題文では「それどころか、むしろ」というように、前文を否定・訂正する意味で使われていた。

また、ある課題では、特定の単語が使われている意図を考えることの大切さを学んだ。野球チームの監督の業績を語る場面で出てきた「sail」という動詞を、文脈から「チームを監督する、指揮する」という意味合いで捉え、「指揮官」と訳したところ、山根講師から「それならなぜ ‘manage’ ではなく、野球と関係ないと思われる ‘sail’ が使われているのか?もっと全体を見て考えて、訳すように」という指摘を受けた。

「この課題文は大航海時代の話から始まって、この監督の話に行き着くユニークなものでした。それまでの話の流れと絡めて『sail』が使われている意図を汲み取り、それが伝わるように訳すことが大切だと教わりました。シンプルな単語でもどう訳すかは翻訳者の技術であり、それを磨いていくことが大切なのだと学びました。」(小池陽子さん)

和やかなクラスで疑問点をその場で解決

平日午後のクラスだったこともあり、ロジカルリーディング力強化コースでは4名、さらに進級したロジカルリーディング・アディショナル5では3名という少人数でのクラスで学んだ小池さん。質問の時間も十分にあり、疑問点をその場で解消しながら進めることができたという。

「毎回、授業の冒頭に山根先生がアイスブレイクとして面白い話をしてくださるので、自然と和やかな雰囲気になり、リラックスして学ぶことができました。また、クラスメートの訳と自分の訳を比較できるのはもちろん、他者の調べものに対する向き合い方や情報の探し方にも学ぶ点が多くありました。」(小池陽子さん)

原文の情報を正確に理解できるようになった

受講を通じて、原文に使われている単語や文法、表現といった細部はもちろん、作品全体の流れやシーンの役割といった構造にも目を向けるようになり、一つひとつの言葉を丁寧に受け取る意識が芽生えたと小池さんは話す。

「受講前より、原文の情報を正確に理解できるようになったと感じています。教えていただいたことがきちんとできているかを自分に問いかけながら、今後も一作品一作品に向き合い、丁寧に訳していきたいと思っています。」(小池陽子さん)

【関連記事】

・ロジカルリーディング力強化コース主任 山根克之講師のコラムはこちら
・ロジカルリーディング力強化コース 修了生のインタビュー アーカイブはこちら

ロジカルリーディング力強化コース 2025年11月4日から順次開講

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映像翻訳Web講座受講生がリモート受講でAI、日本語、英文解釈を学ぶ

コマ単位受講 体験談】石岡久美子さん
英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「AI翻訳 基礎」
英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「日本語表現力 基礎」
英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「映像翻訳者に求められる英語力」

JVTAでは、最新のニーズに合わせて授業内容を常に更新している。2023年には「AI翻訳」や「吹き替え翻訳」「ゲーム翻訳」などの授業が新たに追加された。こうした最新の授業を、過去の修了生も受けられる機会の創出として2024年秋から「コマ単位受講制度」を開始した。

◆映像翻訳Web講座の受講生もリモートの授業に参加できる
石岡久美子さんは、JVTAとアルクが共同運営する通信講座「映像翻訳Web講座」のアドバンスコースを修了。英語力の不足を感じる中で、この後どのように学習し、進級していくのかを検討しているときにJTVAのメールマガジンで「コマ単位受講制度」を知った。この制度を利用すれば、映像翻訳Web講座の受講生・修了生もJVTAのリモート授業に参加できる。さらに石岡さんは、Web講座のカリキュラムにはない授業があることにも興味を持つ。早速英日映像翻訳科の総合コース・Iのカリキュラムから「AI翻訳 基礎」「日本語表現力 基礎」「映像翻訳者に求められる英語力」の3コマを選び受講を申し込んだ。

◆リモート受講の一番のメリットは他の受講生の翻訳原稿が共有されること
映像翻訳Web講座では、自分の生活のペースで無理せずに課題に取り組める。質問すると講師が個別に書面で質問に丁寧に答えて添削してくれるというメリットもある。一方、リモート受講では他の受講生の提出物および、それに対する講師の添削内容がクラス全体に共有される。石岡さんはこれがとても新鮮で勉強になったと話す。

「リモート授業では、先生と他の受講生のやりとりや質疑応答を聴けるので、Web講座の課題に一人で向き合っていた時には気が付かなかった部分にも目を向けることができました。また、先生のお話に臨場感があるため、画面越しではありますが、先生と受講生の発する熱を感じることができ、勉強するモチベーションを保つ手助けになりました。」(石岡久美子さん)

◆AI翻訳の現状が理解できて安心した
AIの進化と今後の翻訳業界の変化について興味を持っていたという石岡さんが、まず選んだのは「AI翻訳の基礎」だ。これまでは映像翻訳を学ぶ中でAIの台頭を不安に感じていたが、授業を受けたことで「このまま、映像翻訳の勉強を続けても大丈夫」と安心したという。

「授業では、3種類の機械翻訳で訳した日本語を比較検討します。それぞれのツールで得手不得手の分野があり『なるほどね』と納得するものと『う~ん…』と疑問が残るものが混在していることが分かりました。現在勉強中の身としては親近感を覚えて安心するとともに、人間としてAIの仕事の良し悪しを判断できる側になることが大切だと実感しました。」(石岡久美子さん)

◆山根講師の授業で自分がいかにぼんやりと訳していたかを自覚
JVTAのリモート授業では英文解釈に特化した授業も行っている。指導にあたるのは、「ロジカルリーディング力強化コース」の主任で自らもベテランの映像翻訳者である山根克之講師だ。


Web講座の課題に取り組むなかで、自身の英語力の不足を感じた石岡さんは、JVTAのメールマガジンで山根講師のコラム「ロジカルリーディング力を鍛える」を読み、同講師の「映像翻訳者に求められる英語力」をコマで受講した。リモート授業で山根講師の指導を受け、今までいかに自身がぼんやりと訳していたのかを自覚したと石岡さんは話す。

「授業ではリスニング、読解、文法等様々な角度から『必要な英語力とは?』を話してくださいます。それは、翻訳する上での細かいコツやポイントから、翻訳者として常にご自身が実践されている準備や心構えの話まで多岐にわたりました。特に印象的だったのは、『誤訳を防ぐには引っかかりを大事にする』という言葉です。その引っかかる場所に気が付くことのできる英語力が必要なのだと理解することができました。」(石岡久美子さん)

◆英語だけでなく、日本語の表現を学ぶ機会が持てた
JVTAの英日映像翻訳のコースには日本語表現力強化にフォーカスした授業も組み込まれている。これは映像翻訳Web講座にはない授業だ。英日の映像翻訳の場合、視聴者が目にするのは日本語の字幕であり、翻訳者がどんなに英文を正しく解釈していても、日本語で正しい表現ができなければ、作品の意図を伝えることはできない。

「選ばれる翻訳者はどのような日本語表現をするのか、その特徴や注意すべきポイントなど具体的なお話が多く、日常生活のコミュニケーションでも日本語を意識しようと思いました。」(石岡久美子さん)

石岡さんは、翻訳の勉強をする中で、改めて諸々の基礎を学び直すことの大切さと楽しさを実感している。英語力に不安を抱えたまま進級せずに、コマ単位受講で3つの講座を受講したのは正解だった話す。今後はこの制度を利用して、「翻訳スキル 基礎」と「作品構成 基礎」を受講したいと考えている。映像翻訳Web講座は地方都市在住の受講生も多いが、コロナ禍後、全面リモートになったことで教室の授業にも参加しやすくなった。石岡さんも話しているように、コマ単位受講でリモート受講を利用し、他の受講生の翻訳原稿を見ることで映像翻訳は答えが一つではないことを実感できるはずだ。

JVTAのリモート授業にはWeb講座にはない内容のカリキュラムもあるので、映像翻訳Web講座の受講生・修了生の皆さんもぜひ積極的に活用してほしい。

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ロジカルリーディング力を鍛える⑱ 文字の表面ではなく、その裏に見える情景を訳す

ロジカルリーディング力 強化コースは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。

英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やコラム、政治家のインタビューなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。具体的にどんな講座なのか、山根克之講師が解説します。

<文字の表面ではなく、その裏に見える情景を訳す>
タイトルを見て難しい話と思われた方もいるかもしれませんが、複雑な話をするつもりはありません。むしろ極めて単純な話です。ナショナルジオグラフィックのサイトに双子のテレパシーはあるのかという問題を論じた記事が掲載されています。

冒頭にこう書かれていました。自分なりに頭の中で訳してみてください。

They finish each other’s sentences, show up wearing the same outfit without planning it, and sometimes even claim to feel each other’s pain.

JVTAの受講生・修了生、翻訳に興味のある方であれば、文頭のThey finish each other’s sentences「彼らは互いの文を終わらせる」と訳すことはないでしょう。日本語として意味の通じない文は訳文とは言えないからです。

「互いの文を終わらせる」とはどういうことでしょう?もちろんfinish each other’s sentencesをネットで検索すれば、解説しているサイトがいくつも見つかります。でも機械的に意味を調べるだけでは「文字(英語)」から「文字(日本語)」への単なる変換に終わってしまいます。もっと深くイメージをとらえるために、2人が会話をしている情景を思い浮かべてみましょう。

A「小学校時代にいろいろなハプニングがあったけど、忘れられないのが…」
B「学芸会のセリフ飛び事件ね。主役の子がいきなり震え出したんだよね。しかも…」
A「それを見て担任の先生も顔が真っ青になってた」
B「そうそう、あれで緊張が連鎖して、みんな声が出なくなったり、セリフをかんだりしてたよね」

Aの「忘れられないのが…」を受けてBが「セリフ飛び事件」、Bの「しかも…」を受けてAが「それを見て担任の先生も顔が真っ青になってた」というように、相手が言おうとしていることを先回りして言っています。これが「互いの文を終わらせる」のイメージです。この状況を想像できれば、「同時に同じことを思いつく」「言いたいことを先読みできる」「考えがシンクロする」など、いろいろな訳し方が出てくると思います。情景が思い浮かべば、辞書や解説サイトに出てくる定義に縛られることもなく、「こんなふうに訳してもいいかもしれない」と選択肢をいくつも持てるようになります。翻訳とは文字から文字への単なる変換ではなく、情景を訳すのだと考えてみましょう。

ロジカルリーディング力強化コースは、英語で読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉(日本語)で再構築して説明する力(=ロジカルリーディング力)を養う方法を毎回さまざまな角度から考えていきます。情景を丁寧に思い浮かべることは「英語で読んだ内容を頭の中で整理」するために大切な要素の1つです。

(Text by ロジカルリーディング力強化コース 主任講師 山根克之)

◆山根講師の連載コラム「ロジカルリーディング力を鍛える」のアーカイブはこちら

◆English Clock「ロジカルリーディング力 強化コース」
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【JVTA発!世界で活躍する人たち―翻訳者編】オーストラリア・アデレード在住 リシェル・ブリテンさん(フリーランスの翻訳者)

JVTAでは現在、全面リモートで授業を行っており、国内外のさまざまな国や地域で受講生が学んでいる。海外で暮らしながら日本の授業を受講、修了後のトライアルやOJTもオンラインで参加し、現地で映像翻訳者として活躍する修了生も少なくない。そこで、実際にどんな人がどのように海外で学び、仕事に取り組んでいるのか、紹介する。

オーストラリア・アデレード在住 リシェル・ブリテンさん(フリーランスの翻訳者)

◆コロナ禍をきっかけにオーストラリアからJVTAで学ぶ
リシェル・ブリテンさんは、大学生のころに一年間、関西外国語大学に留学。当時からエンタメ系の翻訳者に憧れていたものの、オーストラリアに帰国後は、医療受付や整形外科で管理スタッフ、法廷転写など翻訳ではない仕事に従事していたという。転機はコロナ禍。以前から気になっていたJVTAの授業が全面リモートになったことを知り、日英映像翻訳コースの受講を始める。

「当時は法廷転写の仕事をしていましたが、今後の仕事をどうすべきか悩んでいた時期でした。まずは副業で翻訳の仕事を始めようと考えたときにJVTAの日英映像翻訳のコースを見つけ、『憧れのエンタメ業界に入れるチャンスになるかも』と思い入学しました。総合コースと実践コースに分かれていてまずは半年から受講できるのも魅力でした。ずっとやりたかった字幕翻訳にやっと触れることができて受講中はとても楽しかったです。」

ブリテンさんはJVTAで学びながら、オンラインでいくつかのエージェンシーに登録してトライアルを受けるなど翻訳の仕事をしていく準備も進めていく。その中の1社にJVTAと縁のある人がいて仕事を依頼されるきっかけにもなった。そして、JVTAのコース修了後は法廷転写の仕事を退職して翻訳者としてフリーランスになり、それからは順調に進んでいるという。

◆フリーランスは自分のペースで働ける
オーストラリア在住だが、自国のクライアントはなく、日本をメインに世界各国の会社と一緒に仕事をしているというブリテンさん。メールやオンラインプラットフォームなどを使い、仕事はすべてオンラインで完結している。

「仕事は水曜~日曜、朝11時から夜まで、休憩も適宜取りながら働いています。会社勤めの時は朝早く起きるのが苦手でしたが、今は自分のペースで仕事の開始時間を決め、好きな曜日に働けます。フリーランスの仕事は、大半が時給ではなく、プロジェクト単位の報酬です。時給制の仕事で一定の時間オフィスにいなければならないという状況はありません。定時の勤務時間に縛られることなく、効率よく仕事をするほど稼働時間が短縮され、収入も上がるというのは、フリーランスならではの働き方だと思います。」

◆時差も納期の味方
アデレードと日本の時差は30分(サマータイムは1時間30分)なので、時差の問題はまったくないと言うブリテンさん。逆にアメリカの会社と一緒に仕事をする場合、時差があることが便利だアメリカの夜に依頼を受け、オーストラリアの昼間に作業をして、アメリカの翌日朝までに納品することができる。日本に住むか、海外に住むか、どちらにもそれぞれの長所があるという。

「日本在住であれば、クライアントとの関係を築きやすい、会議にも参加しやすいというメリットがあります。第二言語である日本語に慣れることもできます。一方、ターゲット言語である英語が主要言語である国に住む場合、ターゲット層に囲まれた環境にいるので、英語へのローカライズはしやすいと思います。英語は直接的な表現が主ですが、日本語は間接的な表現が多い言語です。英語ネイティブだとしても、日本に暮らすうちに『正しい文法だけど丁寧すぎる英語表現』になることがあると感じます。また、スラングや流行に常に気付けるのもメリットです。コロナ禍以降、オンラインで仕事をするのが当たり前になったので、以前よりずっと世界とのコミュニケーションが簡単になりました。」

◆過去の職歴も活かして幅広く活動
ブリテンさんは現在、日英映像翻訳者として字幕翻訳をメインに、テキスト翻訳(スクリプト、マーケティング関連、ビジネス、ツーリズム)なども手掛ける。かつて裁判所で英語文字起こしに従事しタイピングするのが早いことから、日本の会社が英日翻訳をするための英語文字起こし、英語のデータ入力、プルーフリーディング、ネイティブチェックなど多彩な仕事に携わっている。また、これまでの経験を活かして日本翻訳者協会(JAT)のエンタメ系分野別分科会(SIG)というJATENTの共同代表(ボランティア)を務める。

「JATENTは、字幕、文学、漫画、ゲームなど、エンターテインメント分野に関係する翻訳・通訳を専門とした分科会です。エンタメ業界は、若い参入者も多く、JATENTでは、スキルを磨いたり、経験や知識を共有したりできる場として、特にワークショップやネットワーキングに力を入れ、イベントを開催しています。日本のエンタメにかかわる翻訳者たちが集まって、アイデアや意見を共有したり、新しいことを学んだり、仲間とつながったりするコミュニティを作りたいと思っています。最近はスポッティング入門やゲームローカライゼーションについてのセミナーなどを行いました。」

自国のオーストラリアからJVTAのリモート授業に参加し、日英映像翻訳者のスキルを身につけたことで世界に活躍の場を広げたブリテンさん。今後もさらなる展開を期待したい。

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年4月予定】
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【2025年10月】日英OJT修了生を紹介します

JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。映像翻訳の仕事は映画やドラマだけではありません。特に日英映像翻訳ではマンガやゲーム、企業のPR動画など幅広いジャンルがあり、翻訳者が体験してきた職歴や趣味などを生かして活躍しています。今回はOJTを終え、日英の映像翻訳者としてデビューする修了生を紹介します。

◆井部亜貞奈さん(日英映像翻訳実践コース修了)

職歴:メーカーで海外営業、エネルギー関係のマーケティング、IR関連の日英翻訳など

【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】
映像翻訳者を目指す上で確かな実績があることから、JVTAを選びました。受講中、心が折れそうになった時に励まし支えて下さったスタッフの皆さま、そして授業や映画祭のゼミ、トライアルで丁寧なフィードバックをして下さった講師やディレクターの皆さまに心から感動しました。JVTAを選んで本当に良かったと思っています。また、外部のコンテストや通訳の現場で修了生の方々とお会いすることも多く、驚くとともに、とても誇らしい気持ちになります。

【今後どんな作品を手がけたい?】
日本のコンテンツは幅広く好きですが、特にアニメや漫画などのポップカルチャー、ミステリーやサスペンス、ハードボイルドな刑事ものや最近はやりのSFのテイストを取り入れたヒューマン・コメディなどのドラマに興味があるので、携われたら嬉しいです。また、麹や日本酒を中心とした「食」にまつわる分野にも強い関心があります。映像翻訳者の最終的な目標としては、吹き替えドラマの声優をしている友人と同じ作品で一緒に仕事をすることです。

★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!

◆翻訳の発注はこちら

◆OJT修了生 紹介記事のアーカイブはこちら

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第20回難民映画祭が11月6日に開幕 青いバラにこめた思いを字幕で伝える

第20回難民映画祭が11月6日(木)に開幕する。

この映画祭は、日本初の難民に焦点をあてた映画祭として2006年にスタートし、今年で20回目を迎える。これまで、270作品が上映され、10万人以上が参加した。JVTAは第3回(2008年)からプロボノ(職業の専門性に基づく知識や経験などを生かして行う無償の社会貢献活動)で字幕制作に協力し、映像翻訳者ならではの支援のカタチを続けてきた。今年も9作品のうち、7作品の字幕翻訳に携わっている。また、JVTAの広報スタッフと受講生・修了生7名が同映画祭の広報サポーターとして活動中だ。

◆映画祭予告編

現在、紛争や迫害により故郷を追われた人は1億2320万人(2024 年末時点)。これは世界人口の67人に1人という数字だ。シリア危機があった2011年の4000万人と比べ、約3倍に増加しており、避難生活は平均して17年にも及ぶという。

今年のポスターにデザインされている青いバラの花言葉は「奇跡」「夢が叶う」。20年にわたって映画祭を支えてきた人たちへの感謝と亡くなった人への哀悼の意がこめられている。

難民映画祭では毎年、困難な状況に置かれた人々、一人ひとりの背景や物語を捉えた作品を集めて上映してきた。難民映画祭担当の山崎玲子さん(国連UNHCR協会・渉外担当シニアオフィサー)は、毎年約100本の作品を観てリストアップし、映画祭の趣旨や作品の舞台となっている地域、作品のテーマなどを考慮しながら上映作品を選出するという。

難民映画祭担当の山崎玲子さん(国連UNHCR協会・渉外担当シニアオフィサー)

上映される作品は毎年、海外で制作されたものが多くを占めています。そのため、日本語字幕が、制作側の想いを鑑賞者に伝えるとても大切な手段となっています。毎年、JVTAの修了生の皆さんには、字幕制作開始前に開催されるキックオフミーティングで私共の想いも直接共有しています。映画製作者、映像翻訳者、映画祭の主催者が大きなチームとなって日本の鑑賞者に想いを届けようと取り組んでいるのだと感じ、このプロジェクトならではの熱意や気迫などを毎年ひしと感じています。これだけ多くの方が、膨大なエネルギーと時間を費やして協力してくださっていることが、私共も活動を続けていく、いつも大きな原動力になっています。
難民映画祭は、最後には「希望」を感じてもらえるイベントでありたいと思っています。絶望したくなる状況に追い込まれても、人間には、未来を変えていく力がきっとあるはず。見てくださった人に、そんなメッセージを感じていただきたいと思っています。
いま振り返ってみると、難民映画祭が始まった当初は、こんなにも長く続くことになるとは思ってもみませんでした。20周年 - それは「節目」で あると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあるのだなと感じています。紛争や迫害で故郷を追われた人の数は戦後最多となっているという現実を前に、難民映画祭が、一人ひとりにとって、「世界を想う。平和を問う。」機会となることを心から願っています。(山崎玲子さん)

今年は6月にJVTAの翻訳チームのキックオフミーティングが行われ、37名の修了生がチームを組んで6作品(1作品は予告編のみ)の字幕制作を開始した。また、JVTAの指導のもとで、青山学院大学と明星大学の学生たちもそれぞれ1作品ずつ字幕制作を行った。

難民映画祭の上映作品の舞台はさまざまな国や地域であり、オリジナル言語もさまざまだ。今年の上映作品は、スーダン、ウクライナ、シリア、ケニア、アフガニスタン、ヨーロッパなどが背景となっている。こうした多言語の作品にも基本、英語字幕があり、翻訳者はそれをもとに日本語字幕を制作する。ドキュメンタリーが多いのも特徴で、まずその作品の舞台となる国の背景のリサーチを行い、事実関係を把握することから作業が始まる。1つの作品を複数の翻訳者がチームを組んで担当し、各自で翻訳。その後それぞれが作成した字幕を照らし合わせてさらに話し合いを重ね、用語や口調、全体の流れを統一しながら1つの字幕に整えていく。映画に映し出された一人ひとりの物語を伝えるために翻訳者は言葉を選び、真摯に字幕づくりに取り組んできた。映画鑑賞の際はぜひ、そんな字幕にも注目してほしい。

◆今年、JVTAが字幕制作に携わった作品
『見えない空の下で』
『アナザー・プレイス』
『バーバリアン狂騒曲』
『ラジオ・ダダーブ』
『あの海を越えて』

カブール・ビューティー(予告編のみ)
『ハルツーム』(青山学院大学の学生の指導)
『希望と不安のはざまで』(明星大学の学生の指導)

第20回難民映画祭2025
2025年11月6日(木)~ 12月7日(日)

【オンライン開催】
2025年1月6日(木)~12月7日(日)

【劇場開催】
2025年11月6日 (木) TOHOシネマズ 六本木ヒルズ(東京)   【上映作品】『ハルツーム』
2025年11月13日 (木) TOHOシネマズ なんば(大阪) 【上映作品】『ハルツーム』
2025年12月2日 (火) イタリア文化会館(東京) 【上映作品】『あの海を越えて』
2025年12月3日 (水) イタリア文化会館(東京) 【上映作品】『ぼくの名前はラワン』

公式サイト:https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff
※オンライン鑑賞、劇場鑑賞ともに、(A)寄付つき鑑賞、または、(B)無料鑑賞、から選択してお申込みください。

【関連記事】
◆国連UNHCR協会の公式サイトでJVTAの字幕支援の紹介記事が掲載
◆JVTAの修了生7名も参加する難民映画祭広報サポーターのnoteはこちら


◆【映像翻訳科 次期開講は2026年4月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら

【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】映像翻訳Web講座終了後、初のリモート受講でさらにスキルアップ

丸山美奈子さんは、映像翻訳Web講座を修了後にJVTA東京校のロジカルリーディング力強化コースを受講した。講師やクラスメートとリアルタイムで繋がるリモート授業を初めて体験し、何が変わったのか、話を聞いた。

◆きっかけは映像翻訳Web講座修了時の面談
映像翻訳Web講座は通信講座として自分のペースに合わせて学べるのが特徴だ。ベーシックコースからプロフェッショナルコースまでの4つのコースがあり、22カ月間で全コースが修了。その後はJVTAの修了生トライアルの受験資格を得て、合格すればOJTを経てプロデビューとなる。しかし、丸山さんはプロフェッショナルコース修了時に「自分にはまだ重要な何かが欠けている」と感じていた。そんなとき、コース修了時の面談で講師からロジカルリーディング力強化コースを勧められる。実はJVTAのメールマガジンでも同コースの紹介を目にしており、気になっていたところだった。

「リモート形式の授業は初めてだったので、まずは体験レッスンに参加しました。体験レッスンでマイクのオン・オフやカメラの見え方など実際の授業の様子が分かり、これならできそうだと思い、受講を決めました」(丸山さん)

◆質問したらその場で答えてもらえる臨場感を体験

映像翻訳Web講座は2週間に一度課題を提出し、個別に添削を受けながら学ぶスタイルとなっている。この添削はとても丁寧で大事なポイントは網羅されており、丸山さんは自分の訳と訳例を見比べながら学んできた。一方、ロジカルリーディング力強化コースはクラスメートとともにリアルタイムで授業に参加する形式。このリモート受講ではWeb講座とは異なる新鮮な学びがあったという。

「質問したらその場ですぐに答えていただけることはもちろんですが、教室全体の雰囲気や講師が答えを考えてくださっているときの“間”さえ参考になるような気がしました。クラスメートの質問を聞いたり訳文を読んだりするのも勉強になりましたし、ときどき先生がおっしゃるジョークも楽しかったですね。」

◆自分の訳文の根拠を説明する難しさを実感
自らも映像翻訳者として豊富な経験を重ねてきた山根克之講師は、ドキュメンタリー作品に携わることが多い。ある授業では、自身の経験を踏まえて宇宙関連の作品における調べものの大切さと大変さを解説。それを聞いた丸山さんは、訳例だけでなく、プロの翻訳者のリサーチ方法や申し送りの作り方も学べたのが有難かったと話す。

また、山根講師は、各受講生に「なぜその訳文にたどり着いたのか」という根拠についても細かく質問していく。同じ課題に取り組んだクラスメートの訳文と比べながら、自らの訳をロジカルに説明できるトレーニングを重ねるのがこのコースの醍醐味だ。

「山根講師の質問に対する答えを必死に絞りだしているうちに自分のいい加減さと直面し、どう考えればスッキリ訳せるのかが、見えてきました。授業中にとったメモは私にとって貴重なものばかりです。」

こうしたやり取りの中で丸山さんは、「スッキリしないままあきらめて雑な訳をつけてしまう」という自分の傾向と向き合う。根拠を持って訳を付けるというコンセプトのもとで、時に講師の深掘りに答えられず赤面したことも大きな学びとなった。

「前後のつながり、接続詞、対比関係にあるかなど、授業で学んだポイントを意識して、訳文を考えるようになりました。それにより、違和感がある箇所の翻訳もあきらめずに、しつこく取り組むようになりました。」

◆単語の意味に対する自分勝手な思い込みは危険
山根講師の励ましもあり、丸山さんは、応用編となる「ロジカルリーディング・アディショナル5」にも進級。各授業には「引継ぎと展開」「背景の理解」「思考の流れを読む」などのテーマがあるが、それを意識すると訳文が大きく変わることを実感したという。単語ひとつに対しても自分勝手な思い込みではなく注意深く訳すことの大切さを知る。

「素材や作品の流れをよく見極めないと、幅広い意味を持つ単語の解釈を取り違えてしまい、それが全体の流れにも影響してしまうことが分かりました。このコースを通してトライアル合格を目指してどのように学習すべきかが明確になった気がします。」

映像翻訳Web講座での学びを終え、リモート受講のロジカルリーディング力強化コースでさらに英文解釈力を磨いた丸山さん。今後はトライアル合格を目標にさらなるスキルアップを目指す。

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・ロジカルリーディング力強化コース主任 山根克之講師のコラムはこちら

・映像翻訳Web講座からロジカルリーディング力強化コースを受講

 高槻泰子さんの体験談はこちら

【JVTA発!世界で活躍する人たち―受講生編―】カナダ在住 クリーバー海老原章子さん(JVTA英日映像翻訳 受講生)

JVTAでは現在、リモートで授業を行っており、国内外のさまざまな国や地域で受講生が学んでいる。授業は日本時間で行われているが、時差がある中で、海外にいながらどのように学習に取り組んでいるのか、現在カナダから受講している方に話を聞いた。

カナダ・バンクーバー島在住 クリーバー海老原章子さん(JVTA英日映像翻訳科 受講生)

◆カナダのクリニックに勤務しながら映像翻訳のコースを受講
現在、英日映像翻訳を学ぶクリーバー海老原章子さんは、カナダのバンクーバー島に在住。フルタイムで内科クリニックに勤務し、ドクターのアシスタントをしている。2014年に、日本に在住していた際に翻訳学校で実務翻訳を学んでいた。

そこで得た知識とスキルを生かし、ウェブサイトや医療系、英日のHPの翻訳など実務翻訳の仕事で経験を重ねる中、新たに「映像翻訳」という分野を知り、JVTAに入学。全面リモートでカナダからも受講できること、受講中や修了後のバックアップがしっかりしていることが受講の決め手だった。

◆映像翻訳の難しさは情報の取捨選択
実務翻訳で経験を重ねてきたクリーバーさんだが、映像翻訳を学び始めて、その手法の違いには戸惑う。実務翻訳に比べて、字数制限やハコ切りなど細かなルールが多いのに驚いたという。

「実務翻訳は、原文をもれなく訳しますが、字幕は限られた制限文字数の中にどの情報を入れるのか、その『取捨選択』が難しいなと感じています。課題に取り組む際にどちらの情報を残すか迷った末、授業で先生が選ばれたものと私の選択は違った!ということがよくあります。」

◆調べものも大きなポイント
映像翻訳者が作った字幕や吹き替えがついた作品は、映画館の劇場公開や、映画祭、動画配信サービスなど公共の場で多くの視聴者が目にする。事実と違う情報や固有名詞の表記の間違いなどはあってはならない。そのため常に正しい情報かどうか調べるリサーチがつきもので翻訳作業の大きな時間を占める。フルタイムで勤務するクリーバーさんは、日本の土曜クラスの受講に備えて、土曜日曜で課題に取り組み、月曜火曜に見直すというペースで提出してきた。

「調べものに思いのほか時間がかかるのでこれを効率よくするのが鍵ですね。英英辞書を使うこともあります。また必要な情報をどのソースから拾うかを授業で聴くのも勉強になります。」

インターネットで調べることはできるが、日本の図書館を利用できないことに唯一不便さを感じるというクリーバーさん。現在暮らしているのは、バンクーバー島のナナイモという小さな町で、現地の図書館には日本語の書籍はほとんどなく、取り寄せも難しい。また、日本の書籍が買える書店もなく、辞書を買うにもオンラインで購入すると1600円ほどのものが送料込みで1万円になってしまうこともある。日本人が少ない地域に暮らす人にとってこれは悩ましい問題と言える。

◆今後の課題は日本語表現力
海外にいると日常生活で常に英語に触れているので、翻訳者にとってはメリットも多い。一方でクリーバーさんは日本語表現力の大切さも実感している。英日映像翻訳の場合、視聴者が触れるのは日本語の字幕や吹き替えだ。まず英文を正しく解釈し、作品の魅力をそのまま視聴者に伝えるためにはより効果的な日本語表現力を駆使した文章力が必須となる。クリーバーさんも今後はさらに日本語表現力を磨かなければと考えている。海外にいると、日本人と話す機会や日本語に触れる機会が限られるので、日本語で書かれた本を読んだり、様々な媒体に触れたりすることも意識していきたいという。

「JVTAの授業で日本語で講師の話を聴き、クラスメートと交流できるのは貴重な機会となっています。プライベートでも日本に住む友人とのコミュニケーションも積極的にしていきたいと思っています。」

海外にいると言葉だけでなく、今日本で何が流行っているのか、どんな人が有名かなどという感覚に疎くなりがちだ。実際、クリーバーさんの周辺には若い日本人が少ない。今回リモートで日本のクラスメートと交流した中で驚いたのは、アメリカの著名な水泳選手のマイケル・フェルプスが若い世代に知られていなかったこと。時代や世代によって“常識”と感じていた感覚も変わるので、情報更新も大切なポイントと気づいたそうだ。

◆映像翻訳は世界のどこにいてもできるのが魅力
映像翻訳の学習や仕事は基本、オンラインですべて完結できる。多くの映像翻訳者は自身の仕事や家族の帯同で海外に移住しながら、現地で仕事を続けている。クリーバーさんもこれまで、マレーシア ドバイ、トロント、バンクーバー島などに滞在してきた。現在はクリニックに勤務しているが、今後違う場所に移住しても、在宅でできる仕事をしたいと考えている。どこにいてもできるのが映像翻訳者という仕事の魅力だと語るクリーバーさん。今後もカナダで学習を続け、プロデビューを目指す。

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年4月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
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