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ガメラは
ゴジラの二番煎じにあらず

ガメラは<Br>ゴジラの二番煎じにあらず
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怪獣映画のスターといえば、誰しもが東宝のゴジラを思い浮かべるだろう。だけど“怪獣映画華やかし頃”に育った少年たちにとっては、大映のガメラも忘れることはできない。ガメラは当時、怪獣王ゴジラにも負けない人気を誇っていた。
 

ただ、ゴジラより低年齢層向けに作られたガメラシリーズは、当然のことながら子供っぽさが目立った。大人になってからの僕はその点が不満で、ついついゴジラシリーズより下に見てしまっていたけれど、これはフェアな見方ではない。当然のことながら、低年齢層向けであることと映像作品の質とは全く関係ないからだ。
 

ガメラはゴジラより11年遅れて銀幕に登場した。(それぞれのシリーズ1作目はゴジラが1954年、ガメラが1965年。)当時、ゴジラシリーズはすでに5作を数え、怪獣映画の世界で確固たる地位を築いていた。それに対抗しようというのだ。同じような路線で売り出しても、二番煎じとなるだけ。何か工夫が必要だった。
 

まずゴジラと異なっていたのは、主役のガメラが「子供の味方」だったことだ。シリーズ1作目の『大怪獣ガメラ』には、灯台から落下する少年を前足で救う場面がある。この場面は子供たちに好評だったらしい。そこで大映は、第3作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』で、少年を甲羅に乗せて空を飛ぶシーンを用意した。これも子供たちには大ウケだったようだ。怪獣に乗って空を飛ぶ。こんな夢のようなシチュエーションに、興奮しない子供が果たしているだろうか。僕はいまでも、自分がガメラに乗るところを想像しただけでワクワクしてしまう。
 

また、ガメラシリーズには主題歌があった。児童合唱団が歌う『ガメラの歌』(第3作)と『ガメラマーチ』(第4作以降)の歌詞には、「やっつけろ」とか「強いぞ」「ガンバレ」といった子供目線の言葉が並ぶ。僕らは学校へ行く途中でも、教室を掃除しているときでも、それを口ずさめば映画のシーンが頭の中に蘇ってきたし、見上げた空にガメラが飛んでくるような気にさえなった。歌を歌えば、いつでもどこでもガメラに会える。ガメラが子供たちに親しまれる上で、主題歌が果たした役割は大きいだろう。
 

そして最大の違いは、明るく楽しい雰囲気にあふれ、時折おふざけの要素も入っていたことだろう。たとえば、『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』のギャオスが、口から何でも切断する超音波メス(見た目は光線)を発し、自動車を真っ二つにしてしまう場面。半分になった自動車は、右側だけがそのまま走り続ける。中に乗っていた人たちの慌てぶりが見ていて楽しく、いかにも子供たちが好きそうな演出だ。またガメラもが、“怪獣離れした芸当”を見せたこともある。第5作『ガメラ対大悪獣ギロン』で鉄棒技の大車輪を披露したかと思えば、第7作『ガメラ対深海怪獣ジグラ』では、敵怪獣の背ビレを楽器に見立て、岩で叩いて主題歌のメロディーの一部を演奏してみせた。
 

最後にもう1点、ガメラシリーズの特徴を挙げておこう。それは、敵怪獣との戦闘における「攻撃vs.防御」の分かりやすい構図だ。上で挙げたギロンは、頭部が巨大な包丁のような形状で、その側面から十字手裏剣を発射する(何という発想!)。また、第4作『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』のバイラスは、槍のような頭頂部を向けて飛びかかってくる。ギャオスの超音波メスもそうだが、ガメラの敵は刃物系の武器が多い。それによる攻撃を、ガメラは硬い甲羅で受け流す。強力な武器と、それを跳ね返す絶対防御。こういった対比があると、子供たちも怪獣ごっこがしやすい。そうして怪獣ごっこをして、またガメラが見たくなる。制作側がそこまで意図していたかどうかは分からないが、結果としてガメラ人気につながっていたのではないだろうか。
 

僕はこれまで、このブログで特撮作品の中の、大人が面白いと感じるような側面にスポットを当ててきた。だけど怪獣映画は、基本的に子供たちのものだ。昭和のガメラシリーズほど、それが分かりやすい作品もない。そういった意味で、ゴジラシリーズとはまた違った価値がもっと認められるべきではないだろうか。
 

●明けの明星が輝く空に
 
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る
 

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【written by 田近裕志(たぢか・ひろし)】
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】
御嶽山のニュースに、普賢岳を思い出した。当時、山を駆け下る火砕流が怪獣のように見えた。火砕流は怪獣に似ているなどと言いたいのではない。怪獣の方が火砕流に似ているのだ。特撮作品には、自然災害を直接的に表現する怪獣もいる。子供たちに天災の恐ろしさ知ってもらうという点でも、特撮作品には意味があるだろう。
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 第56回 特撮vs.VFX
 第55回 『GODZILLA ゴジラ』
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