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明けの明星が輝く空に 第200回:石ノ森章太郎:特撮ヒーローたちの父

明けの明星が輝く空に 第200回:石ノ森章太郎:特撮ヒーローたちの父

ついに、このブログ記事も連載200回に達した。年月にして16年と数ヶ月。僕という人間の中にある特撮ファンとしての岩盤は、相当硬いようだ。思うに、この岩盤は僕が小学生だった1970年代前半に形作られた。特撮ヒーロー番組が、毎日のようにブラウン管から流れていた時代だ。その当時、原作者として数々の特撮ヒーローを生んだ漫画家がいる。それが、石ノ森章太郎(当時の名義は石森章太郎)氏だ。

いかに石ノ森氏の手がけた作品が多かったか、例をあげてみよう。1971年に放送を開始した『仮面ライダー』に続き、1972年には『人造人間キカイダー』と『変身忍者嵐』。さらに1973年『仮面ライダーV3』、『キカイダー01』、『ロボット刑事』、『イナズマン』、1974年『仮面ライダーX』、『仮面ライダーアマゾン』、1975年『秘密戦隊ゴレンジャー』、『アクマイザー3』。まさに、枚挙にいとまがない。

たとえば『仮面ライダー』のように、これらの作品の多くは、石ノ森氏本人が描いた漫画版も存在する。これは、すでに立ち上がっていた番組の企画に石ノ森氏が参加し、キャラクターデザインを担当。並行して漫画版を雑誌に連載する、という流れだった。今で言うメディアミックスだ。

石ノ森氏は原作者であるが、テレビ番組の内容について、番組制作スタッフに一任していた。そんな中、氏本人が積極的に関わった貴重な作品がある。『仮面ライダー』で自らメガホンを取った、第84話「危うしライダー!イソギンジャガーの地獄罠」だ。これは映画好きだった石ノ森氏からの、自分で撮りたいというリクエストに応える形で実現したものだった。番組プロデューサーの立場としては、数カットだけ撮ってもらえばよかったようだが、石ノ森氏は台本の手直しから、ロケハン、カット割りの絵コンテまでこなし、番組を1本まるまる監督したそうだ。実にやる気満々、意気軒昂。結果、できあがった作品は本職の監督にも引けを取らないほどで、スタッフ全員が感心したという。

その、“石ノ森監督”による作品、『危うし~』を観ると、いつもの番組とは明らかにテイストが違う。ひとことで言えば、台詞ではなく映像が何かを語る、そんな演出が目立つ。特に異彩を放つのが、オートバイに乗って徐々に近づいてくる数人の敵の映像と、それに気づいたライダーのアップを、カットバックでつなげた場面。大胆にも、BGMも効果音もない、まったくの無音で見せるのだ。そのせいか、一瞬、時が止まったかのように錯覚させられるが、同時にそこで起きていることよりも、ライダーが何を感じているのかということに、観ている者の意識が向けられる。僕には、ライダーの緊張感が伝わってきた。そしてその直後、突然うなりをあげるエンジン音とともに、ジャンプするオートバイ。いわば、音による静から動への切り替え。これで、一気にアクションが加速する。

海岸でのライダーと怪人イソギンジャガーによる対決場面でも、音のON/OFFの使い分けが効果的だ。両者が空中に飛び上がったあと、ライダーのキックが決まる。そして華麗に身を翻すライダー。ここではキックが決まった時のズシンという音のほか、ライダーがジャンプしたり宙返りしたりする際の、番組お決まりの効果音が入っている。そして同じ映像が繰り返されるのだが、今度はキックが決まった直後から音が消えている。それに続くカットは、海岸に打ち寄せる波の映像。ワンテンポ遅れて、波の崩れる音がイン。観ていて一瞬戸惑うような編集だが、何か哀れみというか、虚しさのようなものが伝わってくる。これは怪人が倒された暗示に違いない。僕はそう直感し、次のカットではバタリと倒れる怪人の姿が映し出されるものとばかり思って観ていたが、実際は違っていた。代わりにカメラは、海岸に打ち上げられた、片足のない人形に寄っていく。(対決の結果は明示されないまま、話はそこからさらに展開する。)

この人形のカットの意味は、正直言ってよくわからない。もしかしたら、意味などないのかもしれない。ただし、それによって何かしらの情感を加えようとした、という推測は可能だろう。というのも、石ノ森氏の漫画作品を読み解く上で、「抒情性」がひとつのキーワードだからだ。その作家性の発露として、波打ち際の人形があったのかもしれない。

もうひとつ、抒情性が際立っていて印象的な映像がある。物語冒頭、怪人が砂浜を歩く姿を、空撮で捉えた場面だ。上からのカメラアングルなので、黒っぽい砂浜いっぱいに、波が白い泡の文様を描く様子がよくわかる。そしてカメラが引くに連れて、小さくなっていく怪人の姿。それに反して、砂浜の景色はどこまでも続くかのように広がっていく。これは、怪人に改造されてしまった男が、初めて人を殺めた後だった。まだ人の心が残っていたが、悪の指令には抗いきれず、その場に居合わせた釣り人を襲うのだ。だから、そのあと波打ち際を歩く怪人が、自分の犯した罪の深さに愕然としているかのようにも見えてくる。

実を言うと、怪人に殺されてしまった釣り人を演じたのは、石ノ森氏ご本人だった。監督自ら出演する。ヒッチコック監督を見習ったのかどうかは不明だ。ただ、映画好きなだけに、嬉々としてカメラの前 に立ったのではないだろうか。本業の漫画では「超」がつくほど売れっ子だったから、撮影中は多忙を極めたはずだ。だけど、自分でメガホンを取るのは、楽しくてしかたがなかったに違いない。

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】連載50回、100回、150回の節目同様、今回もそれに相応しい題材を選びました。詳しく調べてみると、興味深いテーマが多く、とても1本の記事では書き切れません。漫画作品の話が主体になりますが、次回も石ノ森章太郎氏を取り上げたいと思います。乞うご期待。
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改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

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