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Vol.15  精霊が生き続けるチェンマイ

Vol.15  精霊が生き続けるチェンマイ
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先日、友人が「夫が体調をくずしたので霊媒師の所に行ってお供えをしてきた」と話してくれました。チェンマイの郊外では今でもよくある話で、みんな霊媒師や精霊(ピー)の話をよくします。

 
私もふとチェンマイの精霊にまつわる出来事を思い出しました。

 
⚫️お医者さんよりも霊媒師のお告げがよく効く!?

 
ちょうど7年前のこと。当時の仕事場に山岳民族モン族出身の女の子がいました。18歳くらいだったでしょうか、彼女はそれまで電気のない暮らしをしていました。ある時、私がプリンターで印刷をしていたら、彼女はプリンターの前に立ち、ジーコージーコー動くプリンターをじーっと見ていました。
そして、私に向かって真面目に聞いてきたのです。

 
「この中で小さい人たちが仕事をしているの?」

 
そんなピュアな彼女が、ある日体調を崩して仕事場でゴロンと寝転がっていました。すぐに病院行くように勧めても、「病院に行ったことがないから怖い」と動こうとしません。そして案の定、次の日仕事を休みました。

 
心配になった私がタイ人スタッフに様子を聞くと、「今日は霊媒師の所に行っているよ」とケロリと言うのです。お医者さんでなく霊媒師!? 当時、まだこの地の慣習を知らなかった私はびっくり仰天。。。

 
翌々日、彼女は元気に仕事場に戻ってきたのです。顔色も見違えるように良くなった彼女の腕には白い綿の紐が巻かれていました。それは、お坊さんや村の長老、霊媒師さんなどによって巻いてもらう、いわゆる‘縁起もの’。「昨日、霊媒師さんに見てもらったら、体調が悪いのはピー(精霊)の仕業なので、タバコとお酒とご飯をその霊に捧げなさいと言われました。さっそくお供えをしに行ったら、すっかり元気になりました!」と、ほっぺたを赤らめながら話してくれたのです。

 
そんな彼女を見て、私は「本当に大丈夫?」と何度も聞き返しながら、「精霊がタバコとお酒をほしがるなんて!」と驚いたものです。チェンマイにはそういう風習が残っているんだと実感したのでした。

 

チェンマイに根強く残る自然を崇める風習

チェンマイに根強く残る自然を崇める風習



 
⚫️踊る精霊たち

 
そしてこれまた同じ時期のこと。家の隣の空き地にカラフルで独特の衣装に身を包んだ人々が集まり、トランス状態で踊っている不思議な光景を目にしました。これは、霊媒師にピーたちが降りてくる儀式だそう。

 
踊る人々の姿に見入る私に一人の霊媒師が近づいてきました。すると、手をぶらぶらさせたり体をくねらせたりしながら、妙に甲高い声で何やら語り始めたのです。あっけにとられている私に、隣のおばさんが耳元でささやきました。「彼女には子どもの霊が降りてきたんだよ。だから子どもになっちゃったんだ」。

 
こんな非現実的な儀式の最中でも、降霊した霊媒師にちゃっかり宝くじの当選番号を聞いたりする現実的な人もいるようです。こうした儀式を、年に一度、チェンマイの郊外で見かけることができます。

 
⚫️身近な存在、ピー

 
チェンマイの地元に残る精霊信仰は、祖先などの魂を大切にする心や、自然に対する感謝や畏敬の念を表したりするものです。これは、日本人にも比較的理解しやすく、馴染みやすい風習かもしれません。チェンマイの人々にとって、ピーは良い精霊だったり、お化けのように悪い精霊だったり、時には祖先の魂であったりと多様な存在のようです。

 
家を立てる前に霊媒師に土地の運気を見てもらったり、ピーのいたずらで体調不良になったり、突然子どものピーが表れたり・・・。ちょっと胡散臭いと思われがちですが、日常生活の様々なシーンでピーの声を聞こうとするチェンマイの人々。

 
“プリンターの中で小さな人々が仕事をしている”と感じ取り、信じる心があるからこそ、ピーも応えてくれるのかな? この地では、ピーは身近な存在として今も生き続けているのです。

 
ピー(精霊)の声が聞こえてきそうな・・・

ピー(精霊)の声が聞こえてきそうな・・・



 
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。

 
【最近の私】幸運を呼ぶトッケーの鳴き声を聞いてから、約一ヶ月。なんと、私の人生で、とても印象に残るような良い出来事が起きました。プライベートな事なのでお話は控えますが、これは偶然!? もしくはトッケーのおかげ!? どちらにしろ、もし東南アジアでトッケーの鳴き声を聞いたら、ぜひ試しに数えてみてくださいね。チョークディー! (幸運を!)
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
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