News
NEWS
voiceinTYO

【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】世界の映像が日本に、日本の映像が世界に降り注ぐ未来を見据え、映像翻訳の「職業訓練校」を創業

【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】世界の映像が日本に、日本の映像が世界に降り注ぐ未来を見据え、映像翻訳の「職業訓練校」を創業

JVTAは1996年に開校し、今年で創業30周年を迎える。映画の字幕や吹き替えを作るプロフェッショナルを育成する職業訓練校としてスタートし、これまで多くの映像翻訳者を輩出してきた。また、翻訳案件を受発注するエージェント部門を併設し、修了生がスクールで学んだスキルを活かして活躍するシステムを構築している。さらに長きにわたる指導経験から国内外の小学校から大学まで幅広い教育機関でも映像翻訳に関する授業を行うなど独自の事業展開が特長だ。

今回は代表の新楽直樹に30の質問を敢行。創業当時の想いや、これまでの変革の歴史、今後の展望などについて聞いた。

1.創業時に「唯一、これだけは譲れない」と決めていた理念は?
新楽:JVTAのミッションは、言葉が持つ「社会に伝える力」を最大限発揮し、文化や言語の壁を越え、日本と世界をつなぐお手伝いをすること。また、その担い手となる言葉のプロフェッショナルを育成することです。この理念は創業当時から変わりません。開校当時の1996年、「映像翻訳」という言葉は定着していませんでした。まだビデオテープも使っていた時代です。しかし、私には後に世界中の映像コンテンツがシャワーのように日本に降り注ぐ未来が見えていました。そしてその時、字幕や吹き替えを作る映像翻訳という技術は社会に不可欠な「職能」として認められるという確信があったのです。「本物の職業訓練校を作る」という想いが私たちの原点です。

2代目となる現在の校舎は日本橋エリアのオフィス街にあるが、初代の校舎は代々木八幡の古い木造3階建てで、スクールという雰囲気ではなかったと新楽はいう。まして「映像翻訳」という言葉も概念も浸透していない時代。学校を立ち上げても果たして受講を希望する人はいるのか、説明会をやっても参加者はいるのか、まったく手探りの状態だった。

初代校舎の外観

2.開校時を支えてくれた、一番印象に残るエピソードは?
新楽:30年前はインターネットも広くは普及しておらず、告知は新聞広告と雑誌のみでしたが、いざ開校してみると、英語力を活かして映像の世界で腕を振るいたいという志の高い方々が続々と集ってきました。それは驚きでもあり今でも強く印象に残っています。当時はすべての受講生に対して各コース修了時の面談を私が一人で行っていました。短期間に100人以上の方たちと向き合うので、控室に簡易酸素吸入マスクを用意したことも(笑)。今は著名な翻訳者になった方が当時はお子さんを連れて面談に訪れるなど、受講生たちの熱量に圧倒されたのを覚えています。あの時の出会いがあったからこそ、今のJVTAがある。当時の受講生たちが、今では翻訳実務やコラムの執筆などでJVTAを支えてくれているのが、何よりの財産です。

3.「これだけはブレてはいけない」とスタッフに伝え続けているメッセージは?
新楽:JVTAが最も大切にしているのは、受講生・修了生です。私たちの基本は言葉のプロを育成するスクールであり、ここで学び確かな職能を身につけた多くの映像翻訳者たちが日本と世界を繋ぐ役割を担っています。現在は劇場公開映画作品やアカデミー賞候補となる作品などを手がけるベテランも少なくありません。なかにはメディアや翻訳会社に所属して私たちのクライアントとなり、良い関係を築いている人もいます。同じ志を抱いた仲間として受講生、修了生を心から誇りに思っています。

4.「JVTAがこれは誰にも負けない」と思う、一番の強みは?
新楽私たちの強みは教育機関としての「職業訓練」と、実務の「受発注」が高度に一体化している点です。当初はスクールだけでしたが、仕事の依頼の増加に伴い、受発注を専門に行う部門を正式に立ち上げました。現在は修了生を対象にしたトライアル(プロ化のための試験)を定期的に開催し、合格者にはOJTでプロデビューをサポート。スクールで確かなスキルを身につけた修了生にさまざまな形で就業の場を提供しています。受講生・修了生を最も大切に想うからこそ、彼らが社会に貢献できるよう、仕事を創出し、マッチングさせる。この「職業訓練校としての誇り」こそが、私たちの存在意義です。

5.30年の中で、受け継がれている「独特な習慣」は?
新楽:フリーランスの自立支援を一貫して続けています。30年前は企業や組織に所属することが一般的で、フリーランスには否定的な見方が強かった。しかし、私は敢えて映像翻訳を学ぶすべてのコースで、「フリーランス」の心得を説く授業を行ってきました。つまり私は翻訳を学ぶすべての受講生と向き合ったことになります。時代は変わり、現在はインターネットやSNS、AIの普及、働き方改革などで、フリーランスという働き方は市民権を得て、企業も副業を認める時代になりました。翻訳者は、言葉のプロのフリーランサーとしての「自立」と「自律」の意識を持つことが必須です。授業では、就業を前提にクライアントから信頼を得るための仕事術や営業術、レジュメの書き方や確定申告、インボイス制度など、実践的な内容を伝えています。

受講生がJVTAで学ぶきっかけはさまざまだ。友人や職場の同僚、家族らの口コミでJVTAを知ったという声も多い。30周年を迎える今では、親子や姉妹でプロになり活躍している例もある。それは、アットホームな校風の効用とも言えるだろう。「実は受講期間はJVTAとの繋がりのほんの一部であり、修了後からの付き合いこそが本番だ」と新楽はいう。プロデビュー後に仕事を通してより深い関係を構築していくのがJVTAならではの特長なのだ。

6.30年の中で、事業の方向性を大きく変えた「決断」は?
新楽:振り返ると最も大きな決断は2008年だったかもしれません。この年にロサンゼルスに法人を立ち上げました。ロサンゼルス校は、米国カリフォルニア州教育局より正規の学校として認可を受け、留学生(M-1ビザ)を迎え入れることができる公認の職業訓練校です。通訳や実務翻訳などの授業も行うほか、現地での日本の映像作品の英語字幕付きの放送や映画祭などにも大きく貢献してきました。

難民映画祭の支援がスタートしたのも2008年でした。これは映画祭の上映作品にプロボノ(職業の専門性に基づく知識や経験などを生かして行う無償の社会貢献活動)で字幕制作を行うというものです。はじまりは当時、受講生募集のセミナーに参加していた女性(東京の国連難民高等弁務官事務所のインターン)が「映画祭を立ち上げたが字幕を付けられない。JVTAがボランティアで字幕制作を請け負ってくれないか」という嘆願からでした。字幕がないまま上映されることを嘆く彼女の想いに共感はしたものの、それまで無償のプロボノ協力の実例はなく、私は困惑したのです。はたして無償で協力してくれる修了生や受講生はいるのだろうか。しかし、実際に呼び掛けると、そんな懸念とはうらはらに多くの方々が協力したい!と手を挙げてくれました。プロとして忙しく働いている修了生も、収入は度外視して難民映画祭に貢献したい、と。「言葉の力で豊かな社会づくりに貢献する」という私たちの理念を具現化したこのコラボレーションは現在も続いています。また、青山学院大学や明星大学の学生たちもこの字幕制作に参加し、JVTAが指導を行っています。この映画祭への協力は受講生、修了生、スタッフ、私自身にも大きな学びがありました。このご縁を機に国連難民高等弁務官を務め、私にとって唯一無二の‛尊敬すべき偉人’だった緒方貞子さんから20周年にお祝いの言葉を頂けたことが、これからも私たちの支えであり、誇りです。

提供元:難民映画祭

◆Tipping Point Returns Vol.10 追悼 緒方貞子さん ~難民支援と映像翻訳~
◆JVTAの教育機関へのプログラム導入、講師派遣
◆【難民映画祭20周年】わたしと難民映画祭(字幕翻訳者編)

創立から30年、ロサンゼルス法人の立ち上げも含めて、JVTAは新たなチャレンジの連続だった。当初は英日の映像翻訳のコースのみで開講したが、その後は、英語力に重点を置いた「English Clock」、日本の作品に英語の字幕を付ける「日英映像翻訳科」、日本語の文章力に特化した「日本語表現力強化コース」、聞こえづらい人や見えづらい人にバリアフリー字幕や音声ガイドをつくる「メディア・アクセシビリティ科」(旧バリアフリー講座)などを開講。言葉に関する多様な分野の学びが可能になり、修了生の仕事の幅も無限に広がっている。

7.新しく挑戦してきた「未知の領域」はありますか?
新楽:コロナ禍をきっかけに2020年ごろから世界中でリモート学習やテレワークが一気に普及しました。JVTAはそれに先んじて遠方の地方都市や海外に在住の入学希望者の声に応え、すでに教室のリアル受講とオンライン受講のハイブリッド形式を導入していました。その経験があったからこそ、コロナ禍になってもいち早く全面リモート受講を実現することができたのです。その結果、現在は国内外のあらゆる国や地域に受講生、修了生が点在しています。さらに、リモート受講をより快適にするラーニング・マネージメント・システム「JVTA Online」を独自に開発するなど、常に時代のニーズに即した学習環境を提供しています。

コロナ禍前に教室にオンライン受講用のカメラを設置

8.次の10年(40周年)に向けて、描いているビジョンは?
新楽:今後10 年の課題は、「AIの普及と加速するグローバル化」の時代にぴたりと一致した職業訓練コースと受注体制を作っていくことですね。AIと共存する未来を見越して、私たちは2022年にAI字幕翻訳ツール「Subit!」(サビット)をリリースしました。これは、2019年12月から国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の情報科学研究科知能コミュニケーション研究室(中村哲教授、須藤克仁准教授)とAI字幕翻訳に関する共同研究を行い、誕生したものです。最大の特長は、AIが出力する日本語が映像や動画の視聴に最適化されていること。昨今は実務でも機械翻訳したものを人間が修正し整えていくポストエディット(PE)といわれる手法が定着しつつあり、私たちも積極的に取り組んでいます。さらに、映像翻訳のカリキュラムにもAI翻訳の活用法を学ぶ授業を取り入れるなど、社会の最新ニーズに沿った内容にアップデートしています。

9.翻訳者はAIの進化とどのように共存すべきか?
新楽:AIは翻訳者にとって競合するものではなく、活用するものです。「AIを活用して品質と生産性を上げる」。AIを怖がるのではなく、AIを研究し尽くして利用し尽くすことも、今後の翻訳者のスキルの一つと言えるでしょう。とはいえ、AIは作品を深く解釈しセリフを紡ぎだす映像翻訳者には敵わない。すでに実務でもAIの活用は始まっていますが、最終的なメディア表現を編むのはどこまで行っても言葉のプロ、つまり映像翻訳者です。決してAIだけで代用はできません。AIと言葉のプロが共存することが今後の翻訳の在り方になります。


10.自身にとって「仕事の喜び」とは?
新楽:修了生の皆さんの活躍がやはり一番の喜びですね。「プロデビューした」「話題作の字幕を手がけた」「書籍を執筆した」「コンテストで入賞した」「イベントで通訳を担当した」といった声はもちろん、「映像翻訳ではないが今の仕事に役立っている」「表現力が増して周囲からの評価が上がった」など、JVTAで学んだスキルを活かしてキャリアを重ねているという報告が何より嬉しい。

創業から30年。JVTAからは多くの映像翻訳者が巣立ち、世界でもそのスキルを遺憾なく発揮する姿は、まさに私たちが創業から一貫して目指してきた「未来」だ。

第2弾ではもっとカジュアルな質問で新楽代表の素顔に迫る。どうぞお楽しみに。

【関連記事】

【JVTA代表 新楽直樹コラム】Tipping Point Returns
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。

◆【2026年4月期の受講申込を受付中
学校説明会を随時開催!
映像翻訳業界の最新情報解説や字幕翻訳の体験ができる無料イベントを開催中。個別の相談も承っております。映像翻訳にご興味をお持ちの方はお気軽にご参加ください。