【修了生 加々美ヘナタさん】 映像翻訳者、字幕ガイドライターとして幅広く活躍中
修了生の加々美ヘナタさんは、英日映像翻訳科を修了後、字幕ガイド講座を受講、現在は、翻訳の日本語字幕と字幕ガイド(SDH、CC、バリアフリー字幕)の両方の分野で活躍している。

◆乳児の育児中に字幕ガイドに助けられた
加々美さんは出産後、乳児がそばにいて、ドラマや映画を観るときに大きな音を出せない環境で邦画や日本のドラマを観る際に、字幕ガイドをよく利用していた。字幕ガイドでは、セリフだけでなく、話者名や音の情報も字幕にする。さらに「雨音」「ノック」などに加え、必要に応じて音楽の情報も入れることがある。加々美さんは、静かな部屋で映像の音が聞こえづらくても画面と字幕で作品を堪能できて育児の息抜きになっていたと振り返る。
「字幕ガイドは本来、聴覚障害当事者のために始まったものかと思いますが、私のように音を小さくして、もしくは無音で作品を見るしかない状況の人でも楽しめるのが魅力的だと感じました。翻訳字幕を一度習った私ならより習得しやすいのでは?と思い受講を決めました。」(加々美ヘナタさん)
◆聞こえる音すべてを字幕にすればいいというわけではない
映像翻訳や字幕ガイドの制作には、作品解釈のための念入りなリサーチと情報の取捨選択が欠かせない。字幕ガイドならではの難しさについて、加々美さんは音情報を挙げる。
「字幕ガイドだからといって聞こえる音すべてを字幕にすればいいというわけではなく、制作者はこのシーンで何を視聴者に伝えたいのか?という視点を常に持ちながら音情報の取捨選択をしています。また、字幕ガイドにおいては基本的に擬音語を使わないため、表現に悩むことが多々あります。例えば、ドアをドンドンと叩く音は(ノック)、ピンポーンは(チャイム)などと置き換えますが、どう言語化すればいいのか悩む時はインターネットで検索して適切な表現を探ったりします。」(加々美ヘナタさん)
◆字幕ガイド4割、翻訳字幕6割という割合で活躍中
字幕ガイドは、翻訳字幕とも親和性が高い。作品の魅力を余すところなく、視聴者に伝えるという役割は、映像翻訳も字幕ガイドも同じだ。加々美さんは現在、4割が字幕ガイド、6割が翻訳字幕という割合で、動画配信サイトのアニメ、ヒューマンドラマ、ロマンス、スリラー、アクション、お笑い、吹き替え作品のSDHなどさまざまな作品に携わっている。両方を手がけることで相互に役立つこともあるという。
「物語の展開をきちんと理解することが大事なのは両方に共通しています。翻訳ではここぞというシーンの訳文を練りに練って考えたりしますが、字幕ガイドではここぞという場面での、音情報を出すタイミングや表現に頭を悩ませます。どちらも、映像の隅々まで注意深く観察し、セリフ以外の情報や俳優さんの表情、演技からも制作者側の意図を汲み取って字幕に落とし込むようにしています。また、翻訳ではセリフがないシーンの映像は飛ばしながら作業しがちですが、字幕ガイドでは全編を注意深く見ながらどのタイミングで音情報を出すかという判断を下さなければならないので、翻訳の作業時も、セリフがない場面の映像の中に字幕に反映すべき情報がないか、以前よりも注意深く見るようになりました。」(加々美ヘナタさん)
◆海外作品の吹き替え版の字幕ガイドも手がける
さまざまなポイントを熟考しながら、作品本来の魅力をそのまま伝えられるように、効果的かつ自然な字幕作りを心がけているという加々美さん。字幕ガイドは、主に日本語の作品に日本語の字幕をつけるニーズが高いが、昨今は海外の作品の吹き替え版に日本語の字幕ガイドをあわせて制作するケースもある。映像翻訳と字幕ガイドの両方のスキルがある加々美さんは、こうしたニーズにも対応できる人材として着実に活躍の場を拡げてきた。
「海外作品の吹き替えにつける字幕ガイドでは世界中に注目されるような人気作品を任されることもあり、やりがいを感じます。注目度の高い作品であれば洋画や海外ドラマの吹き替え版にも日本語の字幕ガイドが付くことがまれにありますが、吹き替えがない翻訳字幕作品にも字幕ガイドがついたら、もっとたくさんの人が多種多様な映像作品を楽しめるようになるのになあ、と思う時があります。」(加々美ヘナタさん)
加々美さんのように、映像翻訳者のキャリアに加えて字幕ガイドライターとしてのスキルを身につければ、受注できる仕事は確実に広がる。言葉のプロとしてフリーランスを目指す人はぜひ、挑戦してみてほしい。
◆メディア・アクセシビリティ科 字幕ガイドコース
次期は2026年9月2日に開講







