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子育てをしながら映像翻訳者としてプロデビュー 映画祭の会場で担当作品の監督と対面

<strong>子育てをしながら映像翻訳者としてプロデビュー 映画祭の会場で担当作品の監督と対面</strong>

JVTAの特徴は、映像翻訳を学ぶスクールに、翻訳の仕事を受発注するエージェント部門が併設されていることにある。字幕や吹き替えをつくる専門的な職能を身につけた修了生にはプロ化試験(トライアル)が用意されており、合格者には翻訳案件が発注される。修了生の宮城久美さんは、3人の子育てをしながら映像翻訳を学び、2024年12月にプロデビュー。子育てと両立できるよう、在宅作業が可能な翻訳を選択したという宮城さんがJVTAに入学した決め手は、OJTなどプロデビュー前のサポートに加え、仕事に直結するということだった。「この業界に全く未知であった私にはとても心強く、安心できる制度だった」と話す。プロデビュー後、宮城さんがどのような仕事に携わっているのか、具体的に話を聞いた。

◆プロデビュー後は多彩なジャンルや媒体で翻訳を担当
「映像作品はテーマもジャンルも様々なので、毎回大変ながらも、次にどんな作品が来るのかという楽しみが常にある」という宮城さん。プロデビュー後は、動画配信サイトの映画(戦争、ラブコメ、ドラマ)の字幕などを手がけてきた。チェッカー(翻訳原稿の誤訳や表記、事実確認などの校正作業)の仕事から始まり、国際機関のPR動画、ドキュメンタリー番組(グルメ、インテリアなど)の字幕や吹き替えなどなど手掛けるジャンルは多岐にわたる。

「以前、長く続くシリーズのドキュメンタリー番組でボイスオーバー台本の作成を担当させていただいたことがあります。また、アワードの受賞式などチームで分担する短納期の特急案件も何度か経験しました。私はまだ作業スピードがとても遅いので、時間内に納品できるのか…というものすごい緊張感がありますが、大勢の翻訳者さんやディレクターさんと一緒に駆け抜ける、お祭りのようで楽しい作業です。」(宮城久美さん)

◆多くの映画祭を翻訳者としてサポート
JVTAは毎年、多くの映画祭を翻訳でサポートしており、修了生の活躍の場となっている。宮城さんも、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」や「難民映画祭」「ヘルヴェティカ・スイス映画祭」など多くの映画祭の上映作品の字幕を担当。また、コース受講中は、個人的に東京国際映画祭で観客の誘導やチラシ配布などボランティアを経験し、映画関係者や舞台裏に触れるというという貴重な経験もした。

ダマー国際映画祭の会場の様子

「映画の規模に関わらず、映画の制作には多くの人が携わっており、制作している方々には、それぞれ世の中に伝えたい強い思いがあります。映画祭に参加すると、その思いを直に感じられるのが醍醐味だと思います。そして、それぞれの作品が持つ思いやメッセージを、最終的に日本の皆様にお伝えできるのは字幕しかないということに、改めて責任を感じ、毎回身が引き締まります。また、映画祭では、これまで全く未知だった国や地域、テーマの作品に出会うことも多く、その作品に触れなければ生涯知ることがなかったような世界を垣間見ることができるのも、大きな魅力だと思います。」(宮城久美さん)

◆難民映画祭ではチーム翻訳のリーダーという大役に抜擢
2025年の難民映画祭では、『アナザー・プレイス』というドキュメンタリー作品のチーム翻訳でリーダーを務め、数日間食事ものどを通らないほどのプレッシャーを経験。熱意と意欲満々の8名のメンバーとともに2カ月近くどっぷり翻訳に取り組むという、得難い経験をした。

「作品も本当に素晴らしく、1人でも多くの人に見てもらいたいと、チーム全員で心を一つにして取り組むことができました。個人的には、大学院で国際開発を学び、いつかこうしたテーマの映画を翻訳してみたいと考えていたので、それが叶ったのも嬉しかったです。実はその後、ヘルヴェティカ・スイス映画祭という別の映画祭で、同じく難民を扱った作品を、難民映画祭の同じチームでサブリーダーを務めて下さった方と2人で翻訳しました。これもご褒美をいただいたようで嬉しかったです。」(宮城久美さん)

◆ダマー国際映画祭では担当作品の監督と対面
映画祭の会場には主催者はもちろん、制作スタッフや出演者なども訪れる。宮城さんは2026年にはダマー国際映画祭の上映作品『Spooky Encounters of the Sad Kind』の字幕を担当し、上映会場で同作のJonathan Wilhelmsson監督と対面することができた。

字幕担当作品の監督と対面

「翻訳を担当した作品の関係者とお会いできたのは、初めての経験でした。制作時の話を直接聞いたり、自分が感じたことを直接話したりできたことに、とても感激しました。また、映画祭主催者の方ともお会いし、『映画祭にとって字幕は重要、やはりプロに任せるべき』という有難いお言葉をいただいたことも、強く心に残っています。」(宮城久美さん)

◆一番大切なのは、その作品を自分自身が楽しむこと
プロの映像翻訳者としてデビュー後、さまざまな作品に向きあってきた宮城さんに、自身が大切にしている教えや学習中の皆さんへのメッセージを聞いてみた。

「ある翻訳ディレクターさんのお言葉によると、“その時の自分の心の状態が字幕にも反映する”とのこと。私もへこみそうな時、いつも自分にこの言葉を言い聞かせています。翻訳者自身がその作品を楽しめなければ、字幕や吹き替えで視聴者にその魅力伝えることはできません。めげずにまず自分自身が楽しむことが一番だと常に思っています。受講中も、今まで興味がなかったジャンルやテーマの課題でも、無理だとか難しそうだと思わず、毎回楽しんで取り組むと、結果的に伝わる字幕になるはずです。また、デビュー後は新人であってもスポッティング(※)の正確さが求められ、私は未だに苦労しているので、今学習の方は、授業や課題以外でも機会を見つけて練習しておくことを、自戒も込めてお勧めします。」(宮城久美さん)

※スポッティング:字幕を表示する『始まり』と『終わり』の時間(タイミング)を決める作業

プロデビュー後の目標として「映画のエンドロールに自分の名前がクレジットされること」を掲げる人は多い。映像翻訳者にとって映画祭はその夢を叶え、制作者や観客の皆さんと作品を見られる貴重な場となっている。翻訳者の皆さんは、ぜひ宮城さんのように会場に足を運んで、その醍醐味を味わってほしい。JVTA は職業訓練校として、今後もスキルを身につけた皆さんにさまざまな活躍の場を提供していきます。

宮城久美さん

イギリスの大学院で国際開発を学び、卒業後、外務省で有給インターンとして勤務。結婚後は、開発援助に従事する夫に随伴し、東アフリカ(ケニア、タンザニア)に計5年以上滞在。3人の子育てをしながら映像翻訳を学び、2024年12月にプロデビュー。世界の現状や問題を伝えられるような作品や、滞在経験のあるアフリカ関連の作品、また、大好きなエンタメ系の作品など、幅広く手がけていきたいと考えている。

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