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【バリアフリー講座修了生・彩木香里さん】 音声ガイドを書いて読むということ

【バリアフリー講座修了生・彩木香里さん】 音声ガイドを書いて読むということ

皆さんは、音声ガイド付きで映画やドラマを観たことがありますか?
音声ガイドとは、映像が見えない人や見えにくい人も楽しめるように、映像の情景描写や場面転換、人物の動きや表情などを言葉で補うツールです。JVTAのバリアフリー講座・音声ガイドクラスでは、このガイドを作成するスキルを学びます。プロのナレーター、声優として活躍するほか、現在は自ら音声ガイドの原稿を書いて読む活動をしている彩木香里さんは同クラスの修了生です。

 
彩木香里さん

 

彩木さんが音声ガイドに出合ったのは、2012年。JVTAからナレーターとして依頼された30分のスポーツ情報番組『BOOMER』(J SPORTSで放送中)の収録現場でした。音声ガイド特有のエクセルの原稿を初めて見たときは戸惑ったといいます。左側の欄にセリフや人物の動き、音の情報などがあり、右側にはその合間に読み上げるガイドの文章が書かれています。ナレーターは、ルールに従い、タイミングをはかりながらガイドを読んでいきます。

 
「音声ガイド付き作品の特徴は、とにかく情報量が多いこと。まず疑問に思ったのは『これを全部聴いて瞬時に理解できるのかしら?』ということでした。視聴者は、元々入っているナレーションやセリフと私のガイドの両方を交互に聞いているからです。ナレーターの仕事の中でも初めての経験でした。元のセリフやナレーションの合間の限られた尺の中でガイドを読んでいくのは想像以上にハードで、自分のペースで読めずに戸惑いました。音声ガイドは語尾までしっかり発音しないと正しく情報が伝わりません。雰囲気だけで普通に読んでいては伝わらないのです。情報量も多いので、まず口が滑らかにまわせるよう、さらに日本語がちゃんと伝えられるように勉強をし直しました」(彩木さん)。

 
彩木さんは、元々映像に入っている音声と似たようなトーンやリズムで音声ガイドを読むと区別がつかないと考え、『BOOMER』では淡々と読むことを意識しているといいます。

 
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音声ガイドを読む仕事を続けるうちに、情報保障としてのツールではなく、視覚障害者の方にもっと楽しんでもらえる音声ガイドを作りたいとい思いが芽生えたという彩木さん。「読むだけなく、書くことも学びたい」と2013年6月からJVTAの音声ガイドクラスを受講しました。音声ガイドの原稿作成は、まずセリフやナレーションの聞き起こしからスタート。台本があっても、実際の映像とは違っていることもあるので、聞き起こしは必須です。その後、そのセリフやナレーションの合間の尺に入れるガイドの文章を作っていきます。

 
「ナレーターとして音声ガイドに関わってから、勉強のためにさまざまなガイドを聞く中で、『なぜこんなに言葉が多いのだろう? もっと短くできないのかな?』と思っていました。でも書く立場になると、あれもこれも伝えたいと多くの言葉を詰め込んでしまうものなのです。必要な情報を見極めて、一度聞いただけでも理解できる表現を考えていくのは難しく、受講中は寝る時間を削って学びました。モノの名前や言葉の使い方が正しいかどうか、調べる作業にも時間がかかります。読みやすい原稿を作ることは本当に大変な作業なのだと実感し、また、書式通りに作るスキルの高さも改めて分かりました。書いて読む両方を経験したからこそ、自分が書くときは、タイムコードに頼らず、原稿だけをみてきちんと映像に合って読みやすい原稿になることを心がけています」(彩木さん)。

 
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自分で言葉を紡ぎ、見たままをそのまま伝える日本語を作るのは、とても時間のかかる作業です。その苦労が分かるからこそ、後輩の皆さんにぜひ伝えたいアドバイスがあると彩木さん。

 
「読む立場から言うと、流れるように文字を目で追える原稿だとすごく読みやすいんです。逆に原稿を受け取った時、エクセル表の枠からテキストが大きくはみ出していたりすると、読みにくいだけでなく、『プロの姿勢としてこれはどうなのかな?』と思ってしまいます。講義で『書式をきちんと守れ』と繰り返しご指導いただいたことの重要さを今、現場で実感しています。書く側の大変さもよく分かるだけに、せっかく一生懸命言葉を考えたのに、書式を守れないことで自分の評価を下げてほしくない。本当にもったいないと歯がゆく感じます」(彩木さん)


 
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※イメージ

 
音声ガイドの収録はスケジュールが結構タイトで2~3日連続のこともあるなか、彩木さんが原稿を受け取るのは収録の前日が多いそうです。

 
「初めて見る原稿を読み込むには、私の場合、30分の尺なら自宅で約2時間のリハが必要です。それが一晩で3、4本あったらほとんど睡眠が取れないまま、スタジオ入りも珍しくありません。さらにその収録から帰宅後にまた翌日の原稿が到着し、またリハをして翌日に収録ということも…。こういう時に書式が整った読みやすい原稿だと短い時間で対応できるので、とてもありがたいのです。これは吹き替えの収録の時も同じです。そういう時は思わず、ライターさんや翻訳者さんの名前を見て、この人は安心だとインプットします。どんなに言葉を練っても読み切れなければ現場で書き直すことになるので、尺合わせもとても重要です。読みやすい原稿を作ることは確実に評価に繋がるので、皆さんもこうしたポイントをぜひ心がけてくださいね」(彩木さん)。


 
宮沢賢治の作品を上演する劇団、「ものがたりグループ☆ポランの会」を主宰し、舞台づくりにも関わるなど多彩に活躍する彩木さんは、自らの舞台公演に生で音声ガイドを付けるという活動を始めます。昨年は、東京芸術劇場で上演された寺山修司没後35年記念『書を捨てよ町へ出よう』の音声ガイドの作成を担当しました。

 
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※「ものがたりグループ☆ポランの会」2014年の公演『銀河鉄道の夜』より

 
次回は「舞台に音声ガイドを付ける」という試みについてさらに伺います。お楽しみに!
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◆音声ガイドについてもっと知りたい!という方は無料説明会へ!
https://www.jvta.net/tyo/6806/

 
◆彩木さんが受講した講座はこちら
MASC×JVTA バリアフリー視聴用 音声ガイド&字幕ライター養成講座
http://www.jvtacademy.com/chair/lesson3.php