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字幕付きCM を知っていますか? 花王に聞く字幕づくりの難しさ

字幕付きCM  を知っていますか? 花王に聞く字幕づくりの難しさ

テレビ放送のデジタル化により、普及してきたテレビ番組のバリアフリー字幕。実はCMにも字幕が付いていることをご存じですか? 花王株式会社では現在、すべてのCMに字幕をつけてWebで公開しています。字幕付きCMを始めたきっかけは? 字幕作りの苦労は? 花王の字幕CMプロジェクトチームの皆さんとJVTAのバリアフリーチームが共に話し合う機会をいただきました。

 

◆お話を伺った皆さん
花王株式会社 
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字幕CMプロジェクトチーム
菊池雄介さん
林佳文さん
篠崎隆久さん
広報部
伊藤有希さん
 

左から篠崎さん、林さん、菊池さん

左から篠崎さん、林さん、菊池さん


 

JVTA 貴社が字幕付きCMの制作を始めたきっかけを教えてください。
 

菊池さん 弊社にはユニバーサルデザイン(UD)の勉強会があり、各部門から集まった約50名のメンバーが参加しています。例えば、シャンプーとリンスを区別できるように、シャンプーのボトルにギザギザ状の「きざみ」を付けたりする取り組みもその一環です。以前は容器やパッケージ、商品そのものに関わることがメインでしたが、最近は情報発信に関する議題も増えています。字幕付きCMのきっかけは、2011年、この勉強会に講師としてお招きした聴覚障害者でユニバーサルデザインコンサルタントの松森果林さん(※)から、「どうしてCMには字幕がないのですか?」と聞かれたことでした。
 

※松森果林さん 十代で聴力を失った中途失聴者。ユニバーサルデザインをテーマに執筆、講演、大学講師、企業の顧問など幅広く活躍。
Facebook
https://www.facebook.com/MatsumoriKarin
 

林さん CMはテレビ放送の約18パーセントを占めます。しかし、耳が不自由な人たちはこの間置いてきぼりなのだということに、この時初めて気づかされたのです。字幕付きCMのプロジェクトを起ち上げたのはその翌日でした。
 


※画面右下の字幕ボタン(一番左)で字幕の表示/非表示が切り替えられます。
 

篠崎さん 当時、私たちは日本の映画やドラマに付いている日本語字幕について何も知りませんでした。「字幕とは何か」を知ることから始まり、字幕を制作している現場などにも行ってリサーチを重ねました。
 

JVTA 実は私たちもバリアフリー講座を開講したのは同じ2011年でした。映像のバリアフリー化は、映像翻訳との親和性がとても高い分野だということで、NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター(MASC)から業界の現状や制作のノウハウを教えて頂きました。現在までに120人以上の修了生がおり、劇場公開映画やドラマ、DVDなどさまざまなジャンルの字幕や音声ガイドを制作しています。
 

ソフィーナ ボーテ
 

菊池さん 修了生の方の仕事はテレビ番組が多いのですか?
 

JVTA そうですね、テレビのクローズドキャプションが圧倒的に多いです。弊社では、多い時は月に約500時間のバリアフリー字幕を制作していますが、9割以上テレビの放送用字幕です。中には病院のロビーで流す映像などもあります。当事者のニーズに応えるために試行錯誤の繰り返しですが、字幕付きCMの制作にあたり、聴覚障害者の方の意見を聴き、初めて知ったことはありますか?
 

篠崎さん まず「漢字にはルビを打たなければならない」「英語表記やアルファベット表記もカタカナのルビが必要」ということが分かりました。意外だったのは「たとえセリフとテロップの内容がかぶっていても、音声で出ているものにはすべて字幕を付けてほしい」という声が多かったこと。現時点ではセリフをすべて字幕にするようにしていますが、弊社のCMは音声情報が多いので、どうしても字幕が長くなってしまい、そこが悩みどころです。
 

菊池さん 字幕の表示位置を動かさないことも重要で、弊社では画面下部の中央に統一しています。テレビ番組では字幕がいろいろな位置に表示されますが、これは非常に嫌がられますね。
 

字幕付きCM_ビオレ洗顔料
 

JVTA それは翻訳の字幕も同じです。テロップの位置がバラバラだと視点が定まらず、字幕と両方読むのが難しいといわれますね。CMの場合、効果音や音楽が多いので、それを字幕で伝えるのも難しいのではないでしょうか? 商品名を歌で覚えているというケースも多いと思いますが。
 

篠崎さん 「歌詞や曲名も字幕にしてほしい」という声は多いですね。ただ、商品の特性上、特長や使い方を伝えることを優先せざるを得ず、音楽の情報はあまり入れられないのが現状です。
 

林さん 情報をナレーションではなく、あえて歌にしているものについては、歌詞をきちんと字幕にしているものもあります。
 


※画面右下の字幕ボタン(一番左)で字幕の表示/非表示が切り替えられます。
 

JVTA 字幕付きCMを作り始めたことで、CMそのものの作り方を意識した部分はありますか?
 

林さん 映画の字幕は1秒間につき4文字ですよね。そのルールで尺から考えた場合、15秒や30秒のCMにはどのくらいのナレーションが入るのかを実験的に試したことがあります。高齢者が字幕で見る可能性が高いシニア向け製品のCMなどでは、かなり情報量が限られてしまい、通常流れているコマーシャルと比べて伝えられる情報が少ないと実感しました。やはり映画やドラマの字幕づくりは大変なんですね。


※画面右下の字幕ボタン(一番左)で字幕の表示/非表示が切り替えられます。
 

菊池さん 映画やドラマなどにバリアフリー字幕を付ける場合、すごくはやいセリフだと字幕が追いつかないことはないのですか?
  

JVTA あります。しかし、基本的に映画やドラマは演者のセリフを切らないというのが大前提なので、1秒間に4文字ルールを守れなくてもなんとか字幕を入れます。お笑いだと早口なのでさらに大変ですね。ちなみに先日、サンドウィッチマンのお笑いDVDにも字幕を付け、当事者の皆さんをお招きしたモニター鑑賞会を行ったのですが、字幕を読み切れなかったという人はほとんどいませんでした。(関連記事はこちら
 

菊池さん 制作側は「多すぎるかな」と感じても、必要な情報は入れるべきなんですね。
 

続きは後編で。お楽しみに!
字幕ならでの楽しみ方や、視聴者からの反響、映像のバリアフリー化の今後の課題などについてさらにお話を伺います。
 

後編はこちら
https://www.jvta.net/tyo/kao-cm2/
 

★花王の字幕付きCMはこちらでご覧になれます。
https://www.youtube.com/user/KaoJapan/
 

★花王株式会社 公式サイト
http://www.kao.com/jp/
 

◆JVTAのバリアフリー講座の詳細はこちらをご覧ください。
※開講は4月、10月
http://www.jvtacademy.com/chair/lesson3.php