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JVTA講師がホラー映画の英語字幕を制作! 「コックリさん」の英訳はどこから生まれたか?

JVTA講師がホラー映画の英語字幕を制作! 「コックリさん」の英訳はどこから生まれたか?
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JVTA修了生の河野知美さんが主演し、企画・エグゼクティブプロデューサーも務める映画『ザ・ミソジニー』が公開となった。監督は『女優霊』(1996)、『リング』(1998)の脚本を手掛けたJホラーブームの立役者である高橋洋氏。本作は英語字幕も制作しており、JVTAで日英映像翻訳の講師も務める横山治奈さんが担当した。
 

カリコレ用メイン「ザ・ミソジニー」 小

昔からオカルト好きだったという横山さん。もともと日本のホラー映画も好きだったとのことで、『リング』の脚本を手掛けた高橋監督の作品の英語字幕制作依頼にはワクワクしたそうだ。実際に映像を見てみると、いわゆるオカルト的な怖さに加え、女性の強さや恐ろしさも印象的だったという。
「『ザ・ミソジニー』では、もちろん霊や呪いなどの怖さはありますが、女性の強さや恐ろしさが際立って印象的に感じました。女同士の争い、母と娘の複雑な関係、さらに男尊女卑についても色々考えさせられました。」(横山さん)
 

映像作品では、ジャンルによって使われる用語や表現が大きく変わる。今回はホラー映画ということで、一般的には聞きなれないオカルト用語や、独特の言い回しが多く登場する。横山さんは聞いたことのない単語が出てきた場合はたくさん調べものをし、監督と相談しながら訳を作り上げた。

一方、横山さんの幼少期からの経験が活きたものもある。例えば「コックリさん」だ。この”コックリさん”というフレーズを海外の方にどう伝えるのか。プロデューサーの河野さんと横山さんが推敲をした結果 、「Oujia」という表現に決まった。
Oujia board(ウィジャボード)とは、降霊術を用いて占いをする文字盤のことで、アメリカのパーカー・ブラザーズという玩具メーカーから、占い用ゲーム用品としても発売されている。横山さんも子供のころに遊んだ経験があったそうで、その経験が翻訳に役立った。
 

その他に頭をひねったのが「言葉遣い」だ。本作ではメインの登場人物がそれぞれ何役も兼ねていて、セリフとしても「私」や「僕」が混在する。登場人物の主体がひとりに限らない点が作品の見どころでもある。そんな重要な「キャラクターの言葉遣い」を、英語字幕ではどのように表現したのか?
「英語では「私」も「僕」も“I”としか訳しようがないので、他の単語をそのキャラクターに合うよう選んだりしました。例えば、中原翔子さんが演じるナオミに母親の霊が降りてきて「私が誰だか分かってんの?」と怒りぎみに言うセリフは、”Don’t you f***ing know who I am?” と訳しました。通常は強すぎて使用を避けるF-wordをあえて使っています。」(横山さん)
 

幼い子供のように話している場面は英語でも子供っぽい言い回しを、気の強い女性が出てくると命令口調にするなど気をつけたという。
日本語と英語はまったく異なる言語なので、100%同じセリフを作ることは不可能だ。日英翻訳にしろ英日翻訳にしろ、言語の違いという制約の中で、いかにして作品の重要な要素を見ている人に伝えるか。映像翻訳の難しい部分でもあり、奥深く面白い部分でもある。
 

高橋監督からは、映像翻訳者や映像翻訳者を目指す人々へ次のようなメッセージをいただいた。
「海外作品はやはり最初に見た時の日本語字幕の印象が決定的で、その後、別の字幕で見たりすると調子が狂ってしまったりします。そういう時、僕たちはいかに日本語字幕を通して、与えられた言葉で思考しているかを思い知らされます。また、海外への作品紹介でも、いかに多くの若手監督が英語字幕のおかげでチャンスを掴んでいるか、言うまでもありません。応援というか、作り手側こそが翻訳者の皆さんにお世話になっていると実感しています。」(高橋監督)
 

作品の印象にも関わってくる映像翻訳。翻訳者に必要なのは言語の知識だけではない。横山さんが昔の経験を通して訳を思いついたように、普段の生活の中にも映像翻訳に役立つヒントがある。多様なジャンルの知識や人々の話し方など、あらゆる事柄にアンテナをはっておくことが大切だ。常日頃から映像翻訳者としての感性を磨いていくことで、作品の第一印象を正しく伝えられる字幕に繋がっていく。
 

『ザ・ミソジニー』公式サイトはこちら
 

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