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【サマスク2022】 あらゆる人に楽しみを提供する、“映像のバリアフリー化”

【サマスク2022】 あらゆる人に楽しみを提供する、“映像のバリアフリー化”
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“映像のバリアフリー化”とは、見えない、見えづらい人のための音声ガイド(副音声/AD=Audio Description)、聞こえない、聞こえにくい人のためのバリアフリー字幕(クローズドキャプション/SDH=Subtitles for the deaf and hard of hearing)を制作し、視覚・聴覚をこえてコンテンツを届けることだ。最近では字幕が入ったテレビCMや、音声ガイドつきで上映される映画も増えてきた。しかし、その字幕や音声ガイド制作の実態は、一般的にはまだよく知られていないのが現状だ。
 

この夏のイベントで、日本初のユニバーサルシアター『CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)』の代表、平塚千穂子さんに登壇いただいた。この映画館では、視覚や聴覚に障害がある人、車いすを使う人、さらには小さな子どもがいる子育て中のママやパパなどでも映画を楽しめることを目的に作られ、すべての上映作品がバリアフリー字幕と音声ガイドつきで楽しむことができる。自身も音声ガイド制作に携わる平塚千穂子さんは「音声ガイドの制作は『究極の思いやり』である」という。
 

「ガイド制作では、『聞く人にとって気の利いた音声ガイド』になるよう、意識することが大切です。制作に関わる人は経験したことがあると思うのですが、最初は『目の代わりになって見せてあげよう』というスタンスで、情報を詰め込んだ音声ガイドを作ってしまうんです。でも実際に見えづらい方々と関わっていくと、見える人とは映像の鑑賞の仕方が全く違うことが分かってきます。」(平塚さん)
 

見える人は映像を見ることができる分、内容を平面的に捉えている。しかし見えづらい人は、耳を中心にして映像の中に入り込み、登場人物の隣で同じ空気を吸うような感覚で作品を楽しんでいるという。そのため、音声ガイドがおかしなテンポで不必要な情報を与えてしまうと、映像世界の中に入り込んで鑑賞している人にはかえって邪魔になる。音声ガイド制作で重要なのは、「鑑賞の助けになる視覚情報」を差し出すことなのだ。
 

また、聞く人のことだけでなく、映像制作者のことを考えるのも重要だという。
「その映画を作るためにどれだけの人が関わり、どういった思いで作られたのか。その存在を意識して向き合うと、ひとつとして無意味なカットはないことが分かりますし、編集の意図も分かってきます。」(平塚さん)
 

映像と向き合うことの大切さは、バリアフリー字幕の制作現場でも同様だ。バリアフリー字幕では、たった一文字で世界観の伝わり方が変わってしまうこともある。「バリアフリー字幕を作る人は、『表記をひらがなにするか、漢字にするか?』で 1
時間以上悩むこともあると聞きます。字幕制作も音声ガイド制作も、本当に丁寧に作品に向き合える仕事だと思います。」(平塚さん)
 

2005年前後は、音声ガイドやバリアフリー字幕は「障害者が出ている映画」「福祉がテーマの作品」につけられることが多く、鑑賞できる作品は限られていたという。しかし近年は、ツールの開発や制度の改革などの後押しもあり、様々な作品に字幕やガイドがつくようになった。それにともない字幕や音声ガイドの利用方法も多岐に渡ってきている。
 

映像の情報が適度に入る音声ガイドは、家事をしつつの「ながら視聴」でちゃんと映像を見ることができなくても、状況を楽しむことができる。字幕がついていれば、公共の場や小さな子供がいて音を出しづらい環境でも作品の視聴が可能だ。さらに、日本語を勉強している外国人が音声ガイドやバリアフリー字幕を活用することもあるという。地上波では映画は吹き替え版が放送されることが多い。副音声、バリアフリー字幕対応していれば、副音声でオリジナルの音源を流し、バリアフリー字幕をONにして、役者の声やオリジナルの音を楽しむことができる。映画は字幕派という方には、このような利用をしている方もいるようだ。
 

今では、「障害者のため」ではなく、健常者の人にとっても便利なツールであり、需要が広がってきている。これも「鑑賞の助けになる情報」が何かを突き詰めた結果ではないだろうか。
 

今後、あらゆるニーズに向けた映像のバリアフリー化が必要となる場面は、もっと増えていくはずだ。
 

※平塚さんのコメントは、サマースクール2022「 映像のバリアフリー化 の今とこれ“ ”から」でのお話より抜粋しました。
 

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