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~ヒット映画・ドラマから考える~ コメディの翻訳はやっぱり難しい⁉

~ヒット映画・ドラマから考える~ コメディの翻訳はやっぱり難しい⁉
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海外のコメディ映画やドラマは、レンタルビデオ店や動画配信サイトなどでも人気ジャンル。それだけに翻訳の依頼も数多くあります。ただ、プロの映像翻訳者からすると、「コメディは翻訳が難しい」というのが共通の認識。あの戸田奈津子さんも「映画館でコメディを観ると、外国のお客さまはワーッと笑っているのに、日本人はシーンとしていることがありますよね。どんなに字幕で頑張っても、やはりお手上げというときがあって、こういうときは本当に悲しいです。こんなときは必ず、『字幕が悪い!』と、字幕のせいにされるのですが、そもそもユーモアの感覚が違うので、どうしても説明しなければ笑えないものが多いのです。でも、説明をつけても面白くないのがジョークというものです」(※)とコメディの翻訳の難しさを語っています。
 

※academyhills イベント
戸田奈津子氏が語る「映画の魅力を表現する字幕翻訳」~1秒4文字、10文字×2行の世界~ より
 

しかし、「難しい」とばかり言っていては、せっかくの仕事のチャンスをふいにしたり、スキルアップの機会を逃すことにもつながります。そこで今回は、人気のコメディ作品から翻訳の難しさ、日本語訳のポイントを探ってみましょう。

 

① 映画『テッド』(2012年 アメリカ)

ted

まずは翻訳業界では有名な『テッド』の1シーン。この台詞は「知っている!」という人も多いでしょう。主人公のジョン(マーク・ウォールバーグ)が、ぬいぐるみのクマであるテッドに「本当は別のクマのぬいぐるみが欲しかった」とぼやくシーンです。
 

John: I think back to that Christmas morning and I wish I’d just gotten a Teddy Ruxpin.
Ted: Say that again.

 

ジョンのセリフは「お前よりくまモンのほうがいい!」という字幕になっていますが、くまモンに当たる部分の原文は「Teddy Ruxpin」です。Teddy Ruxpinは1980年代にアメリカで流行ったクマのおもちゃで、アニメにもなり、当時は大人気だったそうです。しかし、当然のことながら「Teddy Ruxpin」と言われても、日本人には何のことか分かりません。日本人なら誰もが知っているようなクマがあれば簡単だったのでしょうが、残念ながら“黄色い、はちみつ大好きなクマ”は使えません(笑)。同じディズニーでも、ディズニーランドやディズニーシーで大人気の「ダッフィー」も一般的な知名度にはまだ欠けていると言っていいでしょう。翻訳者や配給会社が「くまモン」としては苦肉の策だったでしょうし、チャレンジだったはずです。
 

【翻訳のポイント】こうした日本人には全く知識や知名度がないものは、他に代わりとなるものや言葉を当てはめるしかないでしょう。こう聞くと身もフタもないように聞こえるかもしれませんが、でもここにこそプロのワザが隠されているとも言えます。世の中の動きに敏感で、様々な分野に幅広く興味を持っていれば、きっと観客や視聴者が「なるほど!」と笑ってくれるようなアイデアが出てくるはずです。ちなみに『テッド』の日本語字幕を監修した映画評論家の町山智浩さんによると、くまモンの代わりにタレントの熊田曜子さんの名前を使い、「お前より熊田曜子のほうがいい!」としたかったそうですが、配給会社から「頼むからやめてください」と言われたとか。
 

②  ドラマ『フレンズ』(1994年~2004年 アメリカ)
friends

プロの映像翻訳者を目指す人ならば、一度はハマったことがあるという人が多いのがこの『フレンズ』。世界中で大ヒットし、レイチェル役のジェニファー・アニストンもこの作品で大ブレイク。アメリカでは大勢の女の子たちがアニストンの髪型を真似ていました。このシーンは、これからの生き方に悩んだモニカが、風変わりでひょうきんなフィービーに人生について尋ねてみたら、その答えに思わず笑ってしまったという場面です。
 

Friends Season 1 episode 4
Monica: Phoebe?
Phoebe: What?
Monica: Do you have a plan?
Phoebe: I don’t even have a ‘pl’.
 
モニカ:フィービー
フィービー:何?
モニカ:人生設計は?
フィービー:モニカ 人生ある?

 

「planはある?」という問いに「『pl』さえない」。つまり「プランのプの字もない」というのがオチですが、字幕だけを読むと何が面白いのか分かりません。限られた文字数の中で、ジョークをある程度解説をしないと分からないというパターンです。
 

【翻訳のポイント】最初に戸田さんの話で書いている通り、説明してしまうと面白くないのがジョークです。ただ、分からない人に何の説明もないままだと、全く理解してもらえないのもジョークだと言えます。このシーンの字幕では、文字数制限の関係もあるのでしょうが、ジョークの解説は一切行わず、違うセリフにしています。もちろん、これで笑えるならばいいですが、『フレンズ』のように観客の笑い声が入ったシットコム(シチュエーション・コメディ)だと、笑い声が聞こえているのに、そのおかしさがわからないと視聴者に違和感が残ってしまいます。作品やシーンによっての違いはありますし、文字数によっても変わってくると思いますが、こうした場合は解説してしまったほうがかえって英語のセリフの意図が観客に伝わることもあります。例え笑えずとも、少なくともジョークの中身(意味)は分かるわけですから、視聴者としては腑には落ちるはずです。「言葉作り」は本当に「難しい」と感じる瞬間ですが、やはりこうした場合でも、「やりがいがある」と感じられる人ならばきっといい字幕が思いつくはずです。
 

今週はこれで終了ですが、来週は『フレンズ』からもう1シーンを抜き出し、皆さんにご紹介したいと思っています。また、こうしたコメディを翻訳する場合に大きなヒントになる課外講座が12/7(水)に開催されます。映画コメンテーターであり、現在はアメリカでスタンダップコメディアンとしても活躍するこはたあつこさんの講座です。この解説のように、コメディを日本語訳から考えると、「煮詰まってしまう」ことが多いですが、こはたさんの講座では、コメディの訳を原文から考えてみます。つまり、このセリフは「アメリカ人にとってなにがおかしいのか?」という点にフィーチャーして、訳のヒントを探そうという試みです。もちろん、映画コメンテーターとしてのこはたさんおすすめのコメディ映画の紹介といったコーナーもあります。ぜひ、興味のある方はお申し込みください。

 

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