今年も字幕翻訳でサポート!ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2025の見どころを紹介
米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭 「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2025」(SSFF & ASIA 2025)が5月28日(水)より開幕する。本映画祭は米国俳優協会(SAG )の会員でもある俳優の別所哲也氏が創立した映画祭。今年で27年目となり、年々その開催規模は大きくなっている。今年の映画祭のテーマは「creative active generative」。世界中のフィルムメイカーたちの ”creative” が集結する映画祭で、作品とオーディエンス、クリエイターと企業が出あい、新たな化学反応が生まれる場を”active” に創出し、さらに「生成AI」にも通じる新たなテクノロジーで新時代のクリエイティブを生み出していきたい(”generative”)という思いが込められたテーマである。 JVTAでは20年以上にわたり、本映画祭を字幕翻訳でサポート。今年も上映作品のほとんどを、100名以上のJVTA修了生が翻訳している。 本映画祭は映画上映だけでなく、豪華ゲストが登場するイベントや体験型ワークショップなども実施される。今回は、そんなSSFF & ASIA 2025の注目ポイントを紹介する。TAKANAWA GATEWAY CITYで初開催【オープニングセレモニー】 今年の映画祭オープニングセレモニーは、2025年3月27日にまちびらきとなったTAKANAWA GATEWAY CITYで初開催。映画祭代表の別所哲也氏に加え、SSFF & ASIA 2025の審査員を務める映画監督の岩井俊二氏や、ドラマ『愛の不時着』に出演している韓流スターのオ・マンソク氏など、豪華ゲストが来場予定である。 同会場では「オープニングイベント」として、「JAPAN-KOREA Friendly Concert」も開催。こちらは別所哲也氏、オ・マンソク氏に加え、韓国で国民の夫と呼ばれるユ・ジュンサン氏、元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなと氏、そして『ファントム』など数多くのミュージカルに出演する俳優の加藤和樹氏が出演する、一夜限りのライブコンサートだ。 この他、岩井俊二氏とノミネート作の監督が登場するトークイベントや、ハリウッド式の脚本術を学べるセミナーなども用意されている。今年から新スタート【ホラー&サスペンス カテゴリー】 新カテゴリーとなる「ホラー&サスペンス」では、11人の日本人監督によるスリリングなホラー作品を上映。背筋の凍るような作品や不気味な雰囲気の作品を、30分以下で楽しむことができる。5月30日(水)には、表参道ヒルズ スペースオーにて一挙上映も実施。特別ゲストとして、ホラー好きで知られる乃木坂46の元メンバー生駒里奈氏と、人気YouTuber都市ボーイズのはやせやすひろ氏も登場し、“恐怖の夜”を盛り上げる。韓流スターやK-POPシンガーが出演する【K-SHORT】 2025年は日韓国交正常化60周年ということで、韓国ショートフィルムの特別上映も開催。前述のユ・ジュンサン氏が監督したモキュメンタリー(ドキュメンタリー風のフィクション)である作品や、韓国のトロット(演歌歌謡)歌手として活躍し絶大な人気を誇るイム・ヨンウン主演のミュージックドラマなどが上映される。さらにユ・ジュンサン氏によるトークも実施予定だ。 今回紹介したイベントやプログラムは、SSFF & ASIA 2025のラインナップのほんの一部である。このほかにも様々な上映作品やイベントが用意されているので、詳細はぜひ公式サイトでチェックしてほしい。 また、一部の上映プログラムはすでにオンラインで視聴可能となっている。1本30分前後のショートフィルムは、勉強や仕事、家事の息抜きに見るのにもぴったり。開催期間中に1本でも多くの作品を見て、ショートフィルムの魅力を存分に楽しもう。【開催概要】 ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2025 東京会場開催:2025年5月28日(水)~6月11日(水) 公式サイトは▶こちら
オンライングランドシアターでの上映 2025年4月24日(木)~6月30日(月) 視聴については▶こちら ※期間により配信プログラムが異なります
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JVTAがサポートしている映画祭については▶こちら
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普段見ないジャンルにチャレンジするも良し!ゴールデンウイークは映像作品を楽しもう
JVTAの映像翻訳科では、JVTAの受発注部門で活躍する映像翻訳ディレクターをはじめ、フリーの映像翻訳者、映像以外にも幅広い分野を手掛ける翻訳者、さらに脚本家や日本語ライティングのプロフェッショナルなど、映像翻訳に必要とされる様々なスキルを指導できる講師陣が教鞭をとっています。 今回は2024年10月から加わった新講師の4名に、連休中に見たい映像作品やおすすめの映像作品についてリサーチ。映像翻訳のプロはどんな作品を見ているのか?映像翻訳者として“つい見てしまう”ポイントは?などを聞きました。「連休中に映像作品を何か見たいな」と思っている人は、ぜひ参考にしてみてください!
英日映像翻訳科 講師
伊原実希 英日映像翻訳科 総合コース・Ⅰ 「字幕翻訳の基礎①」担当 Q1.このゴールデンウイークに見たい映像作品は? 今さらながら数年前に大ブームになったドラマ『silent』(2022)を一気見したいです。 主題歌の「Subtitle」は、私自身が案件やプライベートを問わず、伝えたい思いが空回ってうまくいかない時によく聴いていたので、本作も自ずと見たいリストに入っていました。最近、吹き替え台本をもとにバリアフリー字幕を作る案件に携わるようになり、本作を思い出しました。作品内では手話に字幕がつくシーンも多いので、ながら見ではなく集中して見られそうなこのゴールデンウイークにどっぷり作品に浸かりたいと思います。Q2.子どもの頃や若い頃に影響を受けた映像作品は? ディズニーの『ムーラン』(1998)。型に囚われず、なりふり構わず、知恵とユーモアで道を切り開くムーランに憧れ… 学生時代はビン底メガネにお下げ髪、色違いのムーミンのトレーナー2枚を着まわして、27時間ぶっ通しで受験勉強に明け暮れる生活を送りました。全力だからこそ見える景色があると信じさせてくれた人です(JVTAではそんなムーランの実写版みたいな人にたくさん出会いました)。くじけそうになったら40:18~のシーンを見つつ、学生時代を思い出して、「私もムーラン!」と自分を奮い立たせています!Q3. 映像作品を見るとき、「職業病」でついつい見てしまうポイントは? 休憩しようと思って見始めたドラマや映画でも、改行位置、表記揺れ、3枚字幕などがついつい気になってしまうことはあるのですが、JVTAのYouTube番組「JVTA+」 で聞いたとある発言をきっかけに「いいところ探し」をする習慣をつけるようになりました。誰よりも作品と言葉に向き合ってきた人が紡いだ字幕を大切にできる人でありたいです。
田中葵 英日映像翻訳科 実践コース 「スポッティングの演習」担当 Q1.このゴールデンウイークに見たい映像作品は? 『アマチュア』(2025):アカデミー賞で主演男優賞を受賞したラミ・マレック主演作品。妻を殺された殺し屋の “アマチュア”が、持ち前の頭脳を武器に復讐をしていく新感覚のスパイ映画。アクションが大好きなので、予告映像を見て絶対に劇場で見たい!と思いました。また、『マトリックス』シリーズでおなじみのローレンス・フィッシュバーンも出演しているので、アクションファンは必見かと思います! 『52ヘルツのクジラたち』(2024):原作は町田そのこさんの小説です。映画化されたとは知らずに、原作を今ちょうど読んでいる最中です。“ヤングケアラー”“児童虐待”“ジェンダー”など日本で今問題になっていることがリアルに描かれている様子がテキストから伝わってきて、ぜひ映像でも確認したいと思いました。Q2.子どもの頃や若い頃に影響を受けた映像作品は? 『トイ・ストーリー』シリーズは全部大好きですが、中でも『トイ・ストーリー3』(2010)は別格です。 「おもちゃって動けるし、話せるんだ!」と、当時人形が大好きだった私は、人形が生きていると信じていました(笑)。この作品のクライマックスで大学生になったアンディがウッディやバズなど、おもちゃを手放す様子が描かれています。人形たちを捨てるのではなく、小さい頃のアンディと同じようにずっと一緒にいてくれる新しい持ち主を見つけて引き継ぐというアンディの人形を思う気持ちに心を打たれました。人形だけではなく、モノを大切に扱うということをアンディから教わったと思います。Q3. 映像作品を見るとき、「職業病」でついつい見てしまうポイントは? 「あんた」「あなた」などある人物に対する呼び方が揺れていたり、「全て」「すべて」など用語の表記が揺れていたりしないかは見てしまうかもしれません。あとは、3枚字幕になっていないか(たまに4枚字幕とかも見ますが…)も見てしまいますね。
片柳伊佐 英日映像翻訳科 実践コース 「模擬発注 ボイスオーバー②」担当 Q1.このゴールデンウイークに見たい映像作品は? 気になっていたのに見られていなかった作品を見たいです。日本語作品では、新たにドラマ化された『阿修羅のごとく』(2025)。原作、ひいては向田邦子ファンなので!見始めたら止まらないと思って避けていましたが、全7話を一気見したいです。海外作品ならドラマシリーズ『メディア王~華麗なる一族~』(2018~2023)。(理由は次の質問への回答をご覧ください。)実在のメディア王マードックがモデルと言われており、その内幕をのぞき見る気持ちになりそうです。Q2.子どもの頃や若い頃に影響を受けた映像作品は? NHK教育テレビの『海外ドキュメンタリー』(1982~1999)(現在の『ドキュランドへようこそ』の前身の番組)の一作品です。今回調べたところ、「メディアと権力」という3回シリーズの「(2)テレビがアメリカ政界を変える」の回だったようです(1993年5月放送)。メディアが社会に与える影響に衝撃を受け、のちに大学でメディア論を専攻するに至りました。今でもメディアやジャーナリズムがテーマの作品に強く惹かれます。(古くは『大統領の陰謀』(1976)、最近だと『セプテンバー5』(2024)。)Q3. 映像作品を見るとき、「職業病」でついつい見てしまうポイントは? 日本のドキュメンタリーで、海外の有識者や専門家へのインタビューに日本語字幕が付いている場合、1行文字数を数えてしまいます。「結構文字数多いけど、意外と読み切れる」なんて思うことも。一方、吹き替え作品で気になるのは、セリフの言い回しやスピード、間の取り方などです。ちょっとした変化でニュアンスが出たり、キャラクター間の違いが際立ったりするのが、魔法を見ている(聞いている?)ようです。
日英映像翻訳科 講師
麻野祥子 日英映像翻訳科 総合コース 「スポッティング実習」担当 Q1. What visual media content do you want to watch over the Golden Week? I have been meaning to watch Adolescence , a British series that has been streaming on Netflix since March this year. It is a four-part mini-series about a 13-year-old boy who is arrested for the murder of his classmate, and the show has received rave reviews – it is said to be a major contender for this year’s Emmys. I have also recently been trying to watch award-winning films that I hadn’t yet watched, including Everything Everywhere All at Once (2022) and Spider-Man: Across the Spider-Verse (2023). Both are, at the time of writing, available on Netflix in Japan, so I’d like to tick them off my to-watch list.Q2. What visual media content were you influenced by in your childhood or youth? Shindler’s List (1993), because it was one of the films that I had to study for English class at college (high school). These film study classes were the first time I learned to look closely at a film and think about what the intention behind each scene or dialogue or camera angle etc. was, so I think it left a lasting impact on me. On a more personal level, I remember watching Frances Ha (2012) as a uni student, and it becoming one of my favourite films. I think it’s a film that a lot of young people can relate to.Q3. How does your work influence what points you tend to focus on when watching visual media content? This isn’t a specific “point” that I tend to notice, but I like to watch German shows or films from time to time, and whenever I do, I usually put English subtitles on. Sometimes, when there is a particular phrase in the original dialogue, such as a joke or something that would be difficult to translate, I go back to the beginning of the scene, switch the subtitles to Japanese, and play the scene again to see how they translated it in the Japanese version. Then I switch back to the English subtitles and resume watching the show. It’s interesting to compare the English and Japanese translations, so I can’t help but go back and check, even if it takes longer for me to finish watching the episode.
皆さんが「見てみたい」と思う作品はありましたか?
好きなジャンルの映像作品はもちろん、普段あまり見ないタイプの作品を見ることも、映像翻訳の学習に大いに役立ちます。連休中も楽しみながら、映像翻訳のセンスを磨いていきましょう!
◆【映像翻訳にご興味をお持ちの方は今すぐ「リモート個別相談」へ!】 入学をご検討中の方を対象に、リモート個別相談でカリキュラムや入学手続きをご説明します。 ※詳細・お申し込みはこちら
【英日映像翻訳&日英映像翻訳科 次期開講は2025年10月を予定】映像翻訳に興味があれば、リモート個別相談会へ!
2025年1月12日(日)より、英日映像翻訳 総合コース・Ⅰの日曜集中クラスを開講中! 最終の受付締切は1/16(木)
字幕、吹き替え、多様なジャンルを学べるJVTAで 映像翻訳のプロを目指す!
日本映像翻訳アカデミー(JVTA)は、字幕・吹き替えの翻訳者として活躍するために必要なスキルを学ぶ職業訓練校です。英語から日本語へ翻訳する英日映像翻訳 と日本語から英語へ翻訳する日英映像翻訳 があり、目的に合わせたコースを選んでいただくことができます。コース修了後、当校独自のトライアル(プロ化試験)に合格すれば、併設する翻訳受発注部門よりお仕事を紹介させていただくので、学んだスキルを実践で生かしていただくことができます。 通常の、JVTAの開講月は例年4月と10月ですが、「10月の入学に間に合わなかった」「4月より早く学習をスタートしたい」という声にお応えして、2025年1月に「英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ」の日曜集中クラスを開講します! ご興味をお待ちの方は、「リモート個別相談」 にご参加ください。映像翻訳の世界やJVTAでの学びについて、深く知っていただくことができます。 ※1月入学に向けた体験レッスンが含まれる「リモート・オープンスクール」は、終了しました。4月入学を対象にした開催は1月下旬以降を予定しています。
【こんな方はぜひご参加ください】 ・映像翻訳に興味がある ・語学力を生かせる仕事に就きたい ・好きな映画や海外ドラマに関わる仕事に就きたい ・プロの映像翻訳者を目指したい ・フリーランスとして活躍したい ・手に職をつけたい ・映像翻訳の需要に関して知りたい ・字幕翻訳にチャレンジしてみたい
英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ コースの詳細は▶こちら その他、コースや入学に関するよくあるご質問は▶こちら 会社概要▶こちら
2025年1月 英日映像翻訳科 日曜集中クラスご検討者向け
リモート個別相談
1月開講 日曜集中クラスをご検討の方は、「リモート個別相談」へお申し込みください。お申し込み後、ご入力いただいたメールアドレス宛にご案内をお送りします。尚、このページで入力いただいた内容はSSLで暗号化されて送信されます。
リモート個別相談では、ご希望の日時で当校スタッフが入学に関するご案内のほか、コース選択や映像翻訳学習・修了後の進路などの不安や疑問にマンツーマンでお答えします。 ※リモート個別相談では字幕翻訳の体験レッスンはございません。 ※2025年1月の英日映像翻訳科 日曜集中クラスは1月16日(木)まで入学可能です。
※映像翻訳のプロとして仕事をする際の目安となる英語力については▶こちら
※入学には「リモート個別相談」の参加が必須です。
【参加条件】 英語力・翻訳経験不問 ※パソコンやタブレットなどで安定して動画配信サービスなどを視聴できる環境が整っていれば、どなたでも無料でご参加いただけます。
【参加形式】 リモートのみ(Zoom ) ※音声を聞き取りやすくするために、イヤホン・ヘッドホンの使用をお勧めします。また質疑応答のタイミングもありますので、マイクをお持ちでしたらご用意ください。
【動画で解説!】現役受講生が答える!受講にまつわる5つの質問
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~コマ単位受講のススメ④~需要が高まる「ゲーム翻訳」の知識を身につける
~コマ単位受講のススメ④~ 映像のジャンルに合わせた英語字幕をつくる おすすめ講座:日英映像翻訳科 総合「ゲーム翻訳」
【JVTAの「コマ単位受講制度」】 JVTAでは2024年10月期から、修了したコースの授業をスポットで受講できる「コマ単位受講制度」がスタート。これにより、復習したい授業を改めて受けたり、自身が受講していた時にはなかった新しい授業を受けることが可能になりました。映像翻訳者としてさらにステップアップしたい方やトライアル合格を目指して弱点を克服したい方などにおすすめです!
日本のマンガやアニメの海外人気が高いことは、今では広く知られている。しかし海外で注目を集める日本のコンテンツ産業は他にもある。その1つが「ゲーム」である。2024年9月に開催された東京ゲームショウは、出展者数とブース数が共に過去最大規模となった。海外からの出展が年々増加していることからも、日本のゲーム産業に対する注目度の高さがうかがえる。 海外進出に向け、必要になるのは翻訳である。ゲームの翻訳は、実は映像翻訳との親和性が高い。そこでJVTAはゲーム翻訳の今後の必要性を鑑み、2024年10月期より日英映像翻訳科の総合コースに新しいゲーム翻訳の授業を導入した。 授業を担当するのは、ゲームおよびアニメ翻訳を専門とする日英翻訳者であるデビン・ニール講師だ。これまでに多くのゲーム・アニメの翻訳実績があり、『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』、『ポッ拳』などのゲームや、『未来少年コナン』、『ツルネ ―風舞高校弓道部―』、『宝石の国』などのアニメ翻訳を手掛けている。過去にJVTAのサマースクールにて、ゲーム翻訳を題材にしたセミナー に登壇した経験もある講師だ。 授業は前半でゲームのローカライズに関する裏側をニール講師が解説し、後半で受講生が事前に取り組んだ課題に対してフィードバックを行うという形式で進む。ゲーム翻訳にはナレーションやキャラクターの会話だけでなく、登場するアイテムの名前やその詳細、エラーメッセージやコマンドなどシステムに関わるテキスト、時にはゲームの販売に関わる資料翻訳などもあり、多岐にわたる作業となる。受講生は前課題としてそれらの一部を翻訳する。 ストーリーラインやキャラクターの性格を考慮して言葉を選ぶ点、また字数に制限がある点は映像翻訳と同様である。しかしゲームではプラットフォームやテキストを表示させる場所によって枠の大きさが様々であり、どの位置にどのように文字が入るのかを常に考えて翻訳することが必要だとニール講師は解説する。またゲームならではの「タグ」(キャラクターやアイテムの名前など、ゲームのテキスト内で状況によって変化する要素を指定するためのコード)が入ったテキストの注意点など、一人一人の原稿を見せながら、細かい点までフィードバックをしていく。 「ゲームに詳しくないと翻訳は難しいのでは」と思う人もいるかもしれないが、本授業で使われる題材は日本の国民的アニメをテーマにしたゲームのため、ゲーム初心者でも取り組みやすくなっている。実際に受講生からは、「ゲームにはあまり触れてこなかったけど、作品自体を知っていたので楽しく課題に取り組めた」という声があった。 近年はJVTAの受講生からも、「ゲーム翻訳に興味がある」という言葉を聞くことが多くなった。日英の翻訳業界において、ゲーム翻訳のニーズは今後もますます増えていくはず。すでに日英映像翻訳者として活躍している人が仕事の幅を広げるためにも、ゲームの翻訳の知識を身につけることはおすすめである。
英日映像翻訳科のコースディレクターであるジェシー・ナス講師より、メッセージをもらいました!
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コマ単位受講制度の受講条件やカリキュラムは▶こちら からご確認ください
あなたの「学び直し」と「新たな学び」を全面サポート! コマ単位受講制度
東京校の本科で1コマ(授業)単位の受講が可能
JVTAでは2024年10月より、受講生・修了生の学びをさらにサポートするための「コマ単位受講制度 」を開始しました。本制度は東京校とロサンゼルス校の映像翻訳本科、また映像翻訳Web講座の受講生・修了生が、JVTAの最新カリキュラムを1コマから再度受講できるという制度です。 ✓トライアル合格に向けて苦手分野を復習したい ✓プロの映像翻訳者としてより活躍するために、スキルを磨きたい ✓しばらく映像翻訳から離れていたが、再度学びたい など、改めて映像翻訳を学び直したい方や、これまで受けたことのない授業を受けたみたいという方におすすめです。現在は全面リモートで授業を行っていますので、日本・海外を問わずどこからでも受講可能です。ぜひ本制度を活用し、映像翻訳者としての更なるステップアップにつなげてください。
現在は2025年4月期のコマ単位受講の申し込みを受付中です。受講に関する詳細は下記をご確認ください。
【対象者】
・東京校の英日・日英映像翻訳を学んでいる方(いずれのどちらか、または両方)
・東京校の英日・日英映像翻訳を修了した方
・LA校で映像翻訳を学んでいる方
・LA校で映像翻訳を修了した方
・映像翻訳Web講座で学んでいる方 、修了した方
※メディア・アクセシビリティ科(旧バリアフリー講座)、English Clock、日本語表現力強化コースのみを受けた方は対象外とさせていただきます。
【受講可能コース】 下記のうち、ご自身がすでに受講を修了した各コースから選択していただくことができます。 受講可能な授業については、こちら でご確認ください。<東京校> 英日映像翻訳(総合コースⅠ 、総合コースⅡ 、実践コース ) ※総合コース・Ⅰ→2013年以前の「入門」または「基礎Ⅰ」 総合コース・Ⅱ→「基礎」または「基礎Ⅱ」と同等。 日英映像翻訳(総合コース 、実践コース ) 【受講形式】 リモート(Zoom) リモート配信にはZoomを使用しています。ご自宅と教室をオンラインで繋ぎ、リアルタイムで授業を受けていただくことができます。・ご用意いただくもの PCまたはタブレット カメラ(PC内蔵のものでもOK) マイクロフォン(PC内蔵のものでもOK)※質問をしていただく際に必要です。 安定したネット接続の環境 ※よりクリアにお聴きいただくために、ヘッドホンかイヤホンのご使用をおすすめしています。【料金】 1コマ:6,050円(税込)
【制限受講数】 1コース最大5コマでの受講が可能です。 例)英日映像翻訳実践コースを修了した方 「総合コース・Ⅰ」最大5コマ、「総合コース・Ⅱ」最大5コマ、「実践コース」最大5コマ【ルール】
・すでに受けたことがあるコースの授業の取り直し、または受講当時にカリキュラムになかった授業を受けることができます。
・まだ受講していないコースの授業を受けることはできませんのでご注意ください。
例)英日映像翻訳を総合2 まで修了している方が、実践 コースの授業を受ける→NG
日英 映像翻訳を実践まで修了している方が、英日 映像翻訳総合コース・Ⅰの授業を受ける→NG
・受けられる授業が確かでない方は、メールにてお問い合わせください。
宛先:seminar(at)jvta.net ※ (at)は@に置き換えてください。
件名:「コマ単位受講制度について」
・ご希望のクラスが上限人数に達した場合は、曜日もしくは期の変更をご相談させていただきます。
・授業はリモートでの出席が必須です。録画受講は対応しておりませんのでご了承ください。
【申し込み締め切り】 各授業の2週間前【支払い方法】 クレジットカードまたは銀行振込 ※銀行振込をお支払い後にキャンセルを希望された場合は、手数料を引いた金額で返金させていただきます。
※クレジットカードの第三者による不正利用を防止するため、カード発行会社の本人認証サービス(3Dセキュア2.0)のご登録が必要となり、未登録のクレジットカードを支払方法に選択された際は決済できない場合がございます。 本人認証サービスの内容はご利用のカード発行会社によって異なりますので、登録方法につきましては、ご利用のカード発行会社へご確認ください。
【申し込み方法】 下記フォームよりお申し込みください。 お支払い情報やその他詳細は、別途メールにてご案内させていただきます。【問い合わせ先】 seminar(at)@jvta.net ※ (at)は@に置き換えてください。
<キャンセルポリシー> ■受講のキャンセルについて 授業当日の8日前(課題配布日の前日)をキャンセル期日とします。 ・期日までのご連絡の場合:以下「■返金額について」の規則に則って返金 ・授業当日から8日前から3日前:キャンセル料 50% ・授業当日から2日前以降:キャンセル料 100% ■返金額について 受講料のお支払い方法によって返金額が異なります。 ・クレジットカード決済でお支払いの方:全額返金 ・銀行振込でお支払いの方:振込手数料を引いた金額を返金 ■キャンセルに関するお願い 定員を設けておりますため、ご都合が悪くなった場合はできるだけ早めにご連絡いただくようお願いいたします。
自分にぴったりの授業があるかな?と思ったら…
おすすめの授業を紹介
※詳細は英日・日英各画像をクリック!
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英日映像翻訳者にも活躍のチャンスがある「非英語作品の翻訳」
近年、非英語圏の映像作品への注目度が高まっている。 Netflixは2024年下半期における同社全体の視聴時間について、約3分の1は非英語作品によるものだったと発表。ノルウェーやメキシコのドラマシリーズで人気の高い作品があり、フランスやドイツの作品もヒットしたという。また日本、韓国、さらにインドの作品でも高いビュー数を記録した作品があった。 JVTAロサンゼルスオフィスの鈴木絵莉香ディレクターは、自身が映像翻訳ディレクターを始めた約5年前と比べると、非英語作品の翻訳案件の増加を感じるという。特に韓国語作品の増加が顕著で、鈴木ディレクターも韓国語作品に数多く携わっている。その他にもノルウェー語やスペイン語、さらにアイスランド語やルクセンブルク語など、話者が比較的に少ないと言われる言語の作品も担当してきた。動画配信サービスの普及によって、これまで翻訳されることのなかった言語の作品が増えている。英日映像翻訳者でも非英語作品の翻訳はできる? 非英語作品の日本語字幕翻訳は、原語から直接翻訳する場合と、英語に翻訳されたスクリプトを基に日本語字幕をつくる場合の2パターンがある。鈴木ディレクターが手掛けている案件の場合、韓国語作品は主に韓国語から直接日本語に翻訳し、その他の作品は英語を介しての翻訳が多いという。 「他の言語に比べて韓日翻訳者の数が比較的多いため、韓国語の案件では『できるだけ韓国語から直接訳してほしい』というリクエストをクライアントから受けることがあります。韓国語以外の言語の場合はそのようなリクエストはあまりないので、英日の映像翻訳者に英語スクリプトを介しての翻訳を依頼しています」(鈴木) では英語スクリプトを介して非英語作品を翻訳する場合、英日映像翻訳者はどのようなことに気をつけるべきなのか? このような翻訳では、原語から英訳された段階でセリフのニュアンスが変わる可能性がある。そこで重要となるのが、JVTAが映像翻訳者に必要な6つの資質 のひとつとして定義しカリキュラムにも組み込んでいる「作品解釈(コンテンツ解釈)」のスキルである。 作品解釈とは、メディアコンテンツ(翻訳素材)のストーリー構成・背景を正しく理解し、作り手の意図を把握することである。映像翻訳は、セリフをそのまま翻訳すれば成立するものではない。作品の構成を把握し、全体の「流れ」を捉えて言葉を紡ぐことが必要だ。この「流れ」を捉えるスキルが、非英語作品を翻訳する際に特に役に立つ。 「たとえ原語の知識がなくても、作品の流れをしっかり読み取っていれば、『この流れでこのセリフはおかしい』のように、誤訳やニュアンスのズレに気づくことができます」(鈴木) 原語に対する知識があれば大きな強みになるが、そうでない場合でも作品解釈によってカバーが可能になる。実際に鈴木ディレクターが非英語作品の翻訳を依頼した英日映像翻訳者たちは、「英語スクリプトの通りでは流れに合わない」と感じた箇所の原語を機械翻訳などで確認。原語の意味を把握したうえでシーンの流れや作り手の意図を考えた翻訳をする。そしてその翻訳意図をクライアントにも伝え、最終的な訳を決定しているという。多言語スキル以上に大切な「作品に対する愛情」 「英語圏以外の映像作品も好きだが、言葉が分からないので翻訳には携われない」と考える人は多い。しかし英日映像翻訳者としてしっかりとスキルを身につけていれば、非英語作品を手掛けるチャンスは十分にある。 「多言語の知識があれば、翻訳者として仕事をするうえでもちろん役に立ちます。ですが、たとえ多言語のスキルがなくても、その国の文化や歴史、作品そのものに興味を持っているのであれば、翻訳のお仕事をお願いしたいと私は思います。なぜなら映像翻訳では、作品に対する愛情が大切だからです」(鈴木) 日本へ届く作品の幅が広がっていく中、これからの映像翻訳者は言語にとらわれず、様々な作品へ興味を持つといいだろう。ちなみに、鈴木ディレクターが最近面白いと感じたのはインドのドラマ作品だそう。ボリウッド映画で定番の歌や踊りが一切登場しない、綿密に練られたサスペンスで、「インドにこのような作品があるのか」と興味深く感じたそうだ。動画配信サービスによって世界中の映像作品を簡単に視聴できるようになった今、その利点を生かして様々な作品に触れてほしい。 参考:https://about.netflix.com/ja/news/what-we-watched-the-second-half-of-2024
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~コマ単位受講のススメ③~映像のジャンルに合わせた英語字幕をつくる
~コマ単位受講のススメ③~ 映像のジャンルに合わせた英語字幕をつくる おすすめ講座:日英映像翻訳科 総合「短編ドキュメンタリー」
【JVTAの「コマ単位受講制度」】 JVTAでは2024年10月期から、修了したコースの授業をスポットで受講できる「コマ単位受講制度」がスタート。これにより、復習したい授業を改めて受けたり、自身が受講していた時にはなかった新しい授業を受けることが可能になりました。映像翻訳者としてさらにステップアップしたい方やトライアル合格を目指して弱点を克服したい方などにおすすめです!
近年、日本が舞台の映画やドラマが国際的な注目を集め、それに伴い英語字幕の必要性がますます高まっている。しかし英語字幕が必要な日本の映像作品は、それだけではない。日英映像翻訳者が実際に仕事で手掛けるジャンルつとしてはアニメやバラエティ番組、そしてドキュメンタリー番組など多岐にわたる。 JVTAの日英映像翻訳科では、このような様々な仕事に対応できるよう、バラエティに富んだ映像素材を用いて授業を行っている。たとえば日英映像翻訳 総合コースでは、「短編ドキュメンタリー」を扱う授業がある。教えるのはサミハ・アンワー講師。濱口竜介監督による映画『悪は存在しない』(2023)の映画祭出品用字幕 をはじめ、様々な映像作品の翻訳経験がある現役の映像翻訳者だ。 本授業では、課題作品を2022年4月に一新。現在は東日本大震災に関連するドキュメンタリー映像を用いて、「ドキュメンタリー作品における字幕翻訳」のスキルを学ぶ。 授業は事前に受講生から提出された字幕をパート毎に見ながら、アンワー講師がフィードバックする形で進められる。それに加えて、映画・ドラマ作品とドキュメンタリー作品の違いや、それぞれの特徴を踏まえた翻訳のポイントなども解説。また「情報量が多く原文がとても長い場合、どのように字幕に落とし込めばいいのか」「セリフが決められていないインタビューの翻訳では、何に気をつけるべきなのか」「ドキュメンタリーに登場するテロップの翻訳ルール」など、課題を通して受講生が抱いた疑問点にも丁寧に回答する。 受講生への字幕に対するフィードバックでは、アンワー講師自身が実際の仕事で経験した例も含めてアドバイスが送られる。「実際に仕事をするようになったら」を想定したうえで、様々な判断基準を示してもらえるのは、現役の映像翻訳者による授業ならではだ。 ストリーミング配信の普及により、ドキュメンタリー作品の英語字幕需要も急増している。日英映像翻訳者が仕事をするうえで、ドキュメンタリーは重要なジャンルのひとつである。プロとしてスキルをより高めたい人、トライアル合格を目指して学習中の人、そして2022年4月期以前の修了生で新たな素材でドキュメンタリー翻訳を復習したい人に、本授業は特におすすめである。
英日映像翻訳科のコースディレクターであるジェシー・ナス講師より、メッセージをもらいました!
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【取り組み】ISMS社内勉強会を実施
2025年3月に、ISMS社内勉強会を実施しました。 当社では2019年にISMS認証を取得以来、社内ISMSの勉強会を毎年実施しています。これまではレクチャー形式で実施していましたが、参加者一人ひとりがより自分ごととしてISMSを捉えられるよう、本年は「参加型」の形式へと変更して実施。当社のスタッフ全員が参加必須の「共通編」と、部門・プロジェクトリーダーに特化した「リーダー編」の2部制で行いました。 「共通編」ではISMSの定義を改めて復習し、当社内で定めている基本ルール、最新の情報セキリティリスクについて、社内ISMS委員会の2024年の活動内容について伝えました。また実際に社会で発生しているセキュリティインシデントを例にあげ、情報セキュリティ事故による経済的損失と信頼失墜の具体的な被害についても紹介。「自分達の身に起きた場合」を想像し、より具体的にリスクの怖さと対策の重要性を学びました。さらに参加者を複数の班に分け、「身近に潜むヒヤリ・ハット」についてディスカッションを実施。メールの誤送信から個人情報取り扱いの危険性まで、各班で様々な意見があがり、日常業務内に潜むリスクを改めて認識しました。 勉強会の「リーダー編」では、部門やプロジェクトを取りまとめるリーダーが把握しておくべきセキュリティルールを改めて確認しました。また、監督者として考えなくてはならない「日々の業務効率」と「セキュリティ対策」のバランスのとり方を検討。監督者という立場の視点から、社内の情報セキュリティについて考える機会となりました。 今後は本勉強会の知識の定着を図るための社内テストを実施予定です。当社は引き続き、スタッフ一丸となってISMS知識定着と運用に取り組み、皆様に安心していただけるサービスを提供してまいります。
NHK朝ドラのノベライズを修了生が執筆!活かされた映像翻訳のスキルと経験
NHK朝の連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)と言えば、日本の朝を彩る国民的番組だ。1983年に放送された『おしん』は日本で一大ブームを巻き起こし、やがてシンガポールを皮切りに世界60以上の国と地域で放送。各国で字幕版や吹き替え版が放送され、大きな反響を呼んだ。これまでに放送された作品は111作。そして2025年春からは、アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと小松 暢(こまつ・のぶ)さん夫婦をモデルにした第112作『あんぱん』が放送となる。 この『あんぱん』のノベライズ版の上巻が2025年3月24日に発売。執筆したのは、JVTA修了生で字幕を中心に映像翻訳者として活躍している後藤美奈さんだ。後藤さんは大学院で映画の脚本コースを専攻。卒業後にJVTAに入学し、やがて映像翻訳者としてデビューした。今ではフリーランスの映像翻訳者として、映画やドラマの字幕翻訳を数多く手掛けている。 学生時代に脚本の勉強をし、ネットドラマなどでの脚本執筆も経験している後藤さん。しかし、ノベライズ執筆は今回が初挑戦だった。 「お話をいただいたときには『やりたいです!』とほぼ二つ返事だったのですが、冷静になってみると『とんでもないことを引き受けたな』という思いでした」(後藤さん) 初めてのノベライズ執筆がNHKの朝ドラ。世の中に経験豊富な作家がたくさんいる中、未経験の自分が担当することでどんな価値を生み出せるのかと、後藤さんは自問した。そこで思い至ったのは、「映像翻訳者としての経験を生かした執筆をすること」だった。スッと読んで、スッと分かる言葉にする 今回のノベライズ執筆は、順次届く脚本の決定稿を小説に起していく形式で進んだ。元の素材をベースに原稿を作成するという過程において、映像翻訳で求められる「分かりやすい文章を書く」というスキルが役に立ったという。 「朝ドラは登場人物が多いので、話者を明確にするという点で工夫が必要でした。家族が何人も出てきて会話をするようなシーンでは、誰が話しているのか分かりやすくしなくてはなりません。『誰にとっても分かりやすい文章を書く』という、映像翻訳のスキルが大いに活きたと感じます」(後藤さん) 数秒で消えてしまう字幕では、一瞬で意味が伝わる、端的で分かりやすい言葉を紡ぐスキルがとても重要になる。「スッと読んで、スッと分かる言葉にする」という点で、映像翻訳を通して鍛えられた日本語表現力がノベライズ執筆にも活かされた。「作品は自分のものではない」というJVTAの教え もう1つ、映像翻訳者としての経験が活きたことがある。それは「自分の文章に酔わない」ということだ。映像翻訳では、最初に必ず「映像作品」があり、翻訳者の役目はその作品の世界観を視聴者に伝える橋渡しである。どれほど良い言葉や表現を思いついたとしても、それが作品の世界観やシーンの流れに合っていないのであれば使うべきではない。 「JVTAの受講生だったころ、『翻訳している作品は、あなたの作品ではない』と何度も教えられました。字幕を作るときもノベライズを書く時も、つい自分が気持ちいい文章を書きたくなってしまうことがあります。でも一番大切なのは、自分の我を出さず、あくまで原文や原作に忠実に、作品のメッセージを伝えること。作品を正しく解釈し、全体を俯瞰で見るというJVTAでの学びを、執筆中に何度も思い返しました」(後藤さん)チャンスは思わぬところからやってくる 今回、ノベライズ執筆にまでキャリアの幅を広げた後藤さん。一貫しているのは、「言葉や物語が好き」という思いだ。映像翻訳者になってからは、「字幕翻訳こそが自分のやるべき仕事」と思っていた。しかし今は、脚本執筆・映像翻訳・ノベライズ執筆に違いはなく、どれも言葉と物語に関わる仕事として携わっていきたいと考えている。 「これまでの学びや経験を活かせる機会は、思わぬところからやってくると思いました。自分で自分の道を狭めてしまうのはもったいないので、『字幕翻訳が好き』という気持ちは大事にしながら、同時に自分の間口は広げておきたいですね」(後藤さん) テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』のオープニング主題歌である「アンパンマンのマーチ」の歌詞には、「なんのために 生まれて なにをして 生きるのか」という一節がある。これこそが、ドラマ『あんぱん』の大きなテーマだ。戦前から戦後という激動の時代の中、夢を忘れずに生き抜いた夫婦の物語には、やなせたかしさんの人生哲学が詰まっている。 「本作のテーマは普遍的で、誰もが自分に問いかけるものだと思います。私自身、執筆をしながら『もっと真剣に生きなくては』と思いました。映像翻訳者になりたいと考えている人たちは、夢を持っている人たちだと思います。夢を持つ人に必ず刺さるストーリーですので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです」(後藤さん) 『あんぱん』の放送は2025年3月31日(月)から始まる。ドラマとノベライズの両方で愛と勇気の物語を楽しみながら、自分の夢や生きる意味を一緒に考えてみてはいかがだろうか。 書籍情報:NHK連続テレビ小説 あんぱん 上 ドラマ情報:『あんぱん』公式サイト 後藤美奈さんプロフィール 映像翻訳者・ライター。JVTAの英日映像翻訳科を修了。映像翻訳家として海外ドラマ「地球に落ちてきた男」「ラブ&デス」、映画「グレース」などの字幕翻訳のほか、歌詞対訳などに携わる。またネットドラマ「向かい風の恋」などの脚本を手掛ける。 ★noteでも情報を発信中!https://note.com/minagoto6363
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・ニコラス・ケイジ主演『ドラッグ・チェイサー』の字幕と吹き替えを修了生が担当
・映像翻訳のスキルを生かして翻訳!ミュージカル『Without You』の舞台用字幕をJVTAが担当!
・E・クラプトンの「ハッピー・クリスマス」 歌詞聞き起こしと対訳を修了生が担当!
・YouTube動画「映像翻訳者たちのターニングポイントとは?#2」
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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #55 からあげになりたい●板垣七重(翻訳事業推進部)
ある休日の午後のことだった。駅に向かう大通りで信号待ちをしていたら、となりにいた親子の会話が聞こえてきた。4歳くらいの男の子と、そのお父さんだ。 お父さん:「○○は将来何になりたい?」 息子:「からあげ!」 お父さん:「そうか、人気者だもんな!」 息子:「うん!」 清々しい思いがした。からあげになりたいと声高らかに宣言する男の子の無邪気さに、さらには息子の夢をありのままに受け止めて応援するお父さんの懐の深さに。でも、無邪気なんて言葉で片づけるのは何か違う。幼い子どもには常識なんてない。この男の子にとって、からあげになることは現実の目標であり、真実なのだ。 子どもが見る世界ほど自由で想像力に富むものはない。一昨年に娘が生まれてから私は絵本をよく読むようになった。ストーリーテリングの媒体として絵本が魅力的である理由のひとつは、その非常識な設定にある。動物たちは人間の言葉を話し、森でパンケーキを焼いてお茶会を開く。裏庭の木にはチョコレートがなり、金魚は自由に空を飛ぶ。世の中の常識は絵本ではむしろ滑稽で、型破りなストーリーほど読み手の心に響く。だから男の子はからあげを食べない。からあげになるのだ。 映像翻訳というクリエイティブな翻訳の世界では、翻訳者にも想像力が求められる。作り手の思いや感性を共有できる思考の柔軟さが必要だからだ。「友だちは大切」というテーマひとつをとっても、ストーリーの設定は無限にあり、表現する言葉の選択肢も無限にある。翻訳する側は常に、作品の世界を理解して別の言語で語れるよう準備をしておきたい。絵本の自由な発想に触れていると、自分の思考の幅が少しずつ引き延ばされて、言葉の表現力が育っていくような刺激がある。 普段あまり絵本を読まないという方へ、参考までに、最近私が読んだ作品をいくつか紹介したい。図書館でも、本屋さんでも、表紙やタイトルが少しでも気になる絵本があったら、今度手に取って読んでみてほしい。
「お月さまってどんなあじ?」 作・絵:マイケル・グレイニエツ 訳:いずみ ちほこ 書籍情報:https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=1925 らんか社公式X:https://x.com/rankasha 夜空に浮かぶまんまるい月はどんなあじ? 好奇心旺盛な小さなカメがある晩、月をかじってみようと山に登る。一匹では背が足りないと知ったカメはゾウを呼ぶ。それでも届かないのでゾウはキリンを呼ぶ。そしてキリンはシマウマを呼ぶ。みんながみんなの背中に乗ってついに月をかじることができたとき、それはどんなあじがするのだろうか。原作は英語だが、オノマトペを随所に使った日本語訳の文章がとても美しく、リズミカルで心地よい。和紙で作ったような柔らかい凹凸のある絵は、触れたときの優しい手触りが感じられるほど丁寧に描かれている。
「もう ぬげない」 作・絵:ヨシタケシンスケ ブロンズ新社:https://www.bronze.co.jp/books/post-115/ 「りんごかもしれない」など、ユーモラスなストーリー展開で人気のヨシタケシンスケさんの作品。主人公は、シャツを自分でぬごうとしたものの途中で引っかかってしまった「ぼく」。両手を挙げてお腹を出した格好で前が見えなくなった「ぼく」は、この先ずっと服がぬげずに大きくなったらどうするか、ひたすらポジティブに想像していく。そのあまりの前向きさに、人生何があってもどうにかなるかなと思えてしまう。仕事や勉強などで悩んでいるときにもおすすめしたい。
「ぼくはぼくのえをかくよ」 作・絵:荒井 良二 Gakken:https://hon.gakken.jp/book/1020334400 一本の黒くて長い線を描くところから始まるお話。線は、想像力によって水平線となり、そこから空が現れ、海が生まれ、大地につながっていく。ページを開くたびに大胆な色使いや構図に驚かされ、次は何が起こるのか、どこへ行くのかとワクワクさせられる。子どもの目に映る世界がいかに自由で力強いかが伝わってくる。情報量の多い映像とは違い、絵は見る側が想像を膨らませる余白を残してくれる。
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Written by 板垣七重 いたがき・ななえ●日本映像翻訳アカデミー・映像翻訳ディレクター。実務翻訳者を経てJVTAに入学し、映像翻訳を学ぶ。英日映像翻訳科と日英映像翻訳科両コースを修了。英日、日英の映像翻訳者として活躍し、現在は吹き替え翻訳を数多く担当している。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
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