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【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #13
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』●池田明子(広報/バリアフリー講座運営)

【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #13<br>『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』●池田明子(広報/バリアフリー講座運営)
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「コーダ」という言葉をご存じですか?

 
コーダとは、Children of Deaf Adultsの略称で、聞こえない親(ろう者)のもとに生まれた聞こえる子ども(聴者)のことだ。

 
小説「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(丸山正樹著、文春文庫)の主人公、荒井尚人は、ろう者の両親と兄の中で育ったコーダであり、幼いころから「家族と世間」との間で「通訳」をしてきた。その後、警察事務職員として勤務を経て40代の今、手話通訳士として活動している。ある日、ろう者の容疑者の手話通訳を担当したことで、ある事件に巻き込まれていく…。
 
「ろう者」「聴者」「Deaf」「聴覚口話法」「人工内耳」「インテグレーション(統合教育)」「サインネーム」…。この作品は、ミステリー小説でありながら、ろう者をとりまく言葉が数多く出てくる。例えば、手話は大きく分けて、2つあること。「日本手話」とは、日本語とは違う文法をもつ、ろう者独自の言語で、「日本語対応手話」は、日本語の語順に手話単語を1語1語合わせて置き換えていくものである。コーダである荒井は、聴者だが家庭内で自然に「日本手話」を身につけて家族と会話をしてきたのだ。
 
荒井は、ろう者と聴者を繋ぐことができる存在でありながら、どちらにも所属していないような孤独を感じている。自分の意志とは関係なく、通訳を担うことを余儀なくされてきた彼が一番つらかった経験、それはわずか11歳で末期ガンの父の告知を医師から母に伝えたことだという。全編を通して、荒井のろう者に寄り添う真摯な想いだけではなく、コーダであることの複雑な心情が丁寧に描かれており、考えさせられた。
 
JVTAは、NPOメディア・アクセス・サポートセンターと共に、2011年6月にバリアフリー講座を開講し、今年でちょうど10年を迎えた。これまでトータルで400人を超える修了生が、聞こえづらい人のためのバリアフリー字幕と、見えづらい人のための音声ガイドの制作スキルを学んできた。映画、ドラマ、バラエティ、スポーツ、情報番組、舞台などさまざまな現場で活躍している。
 
私たちがこの講座で大切にしたいのは、相手を慮る気持ちだ。ルールや規則だけにとらわれず、分かりやすさを最優先にして伝え、荒井のように架け橋になれること。それは映像翻訳にも通じることだと思う。「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」は受講生・修了生の皆さんにもぜひ、読んでほしい1冊です。
 
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Written by 池田明子

いけだ・あきこ●日本映像翻訳アカデミー・コーポレートコミュニケーション部門所属。English Clock、英日映像翻訳科を受講後、JVTAスタッフになる。“JVTA昭和歌謡部”のメンバーとして学校内で昭和の歌の魅力を密かに発信中。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
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