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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第110回 “GEN V”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第110回 “GEN V”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第110回“GEN V”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『ジェン・ブイ』 本予告

 

“The Boys”ファン感涙のスピンオフ!!!

お待たせしました!
本作は2023年を締めくくる、“The Boys”(本ブログ第63回参照)ファンへの一足早いお年玉。感涙のスピンオフ。これを観ないと年は越せない。
“Gen V”(Amazon Prime)は、シュールでお下劣、過激でエグいがちょっぴり感動的な、血みどろ青春学園スーパーヒーロー・ドラマなのだ!

 

ヴォート社の闇の奥へ…

—8年前
マリー・モロー(ジャズ・シンクレア)は、初潮を迎えた際に突然制御不能な超能力が発現し、両親を瞬殺してしまった。彼女の両親は、潜在的なスーパーパワーを引き出す劇薬「コンパウンドV」をマリーに飲ませていたのだった。

 

—現在
マリーはスーパーパワーのコントロールを学んできた。今では自分の血を鞭のようにしならせ、武器として戦うことができる。彼女は辛い過去を乗り越え、自分の力を人助けに使う覚悟だった。

 

そして、念願のゴドルキン大学に合格した。同大学はスーパーヒーローの養成所で、NYの巨大エンタメ&警備企業ヴォート社が運営する。
ただし、スーパーヒーローになるのはごく一部のエリートのみ。能力者の学生たちは校内ランキングを上げるために、過酷な競争とストレスにさらされている。

 

マリーの学園生活が始まり、友人もできた。
気のいいルームメイトのエマ(リゼ・ブロードウェイ)は戦闘能力こそ低いが、吐くことと食べることで体のサイズを自在に変えることができる。
ランキングトップの人気者ルーク(パトリック・シュワルツェネッガー)は発火能力を持つ。ルークの恋人ケイト(マディ・フィリップス)はマインドコントロールの使い手だ。
ルークの親友アンドレ(チャンス・パードモ)は、磁気を操って物質を移動させる。父親もスーパーヒーローで、ゴドルキン大学の理事でもある。
ランキング2位のジョーダン(ロンドン・ソア&デレク・リュ)はジェンダーシフター。男女の異なるキャラとスーパーパワーを瞬時に使い分ける。

 

ある日、ルークは狂乱状態に陥り、親しい教授を焼き殺してしまう。彼は居合わせたマリーにも襲い掛かると、最後は空中で派手に焼身自殺をした。

 

いったいルークに何が起きたのか?

 

残された仲間たちは事件の真相を探り始める。
どうやら、昔自殺したルークの弟サム(エイサ・ジャーマン)と関係があるらしい。
彼らはとてつもない危険を冒して、ゴドルキン大学とヴォート社の深い闇の奥へ入り込んでいく!

 

ビッグネームは一人もいないが…

ジャズ・シンクレアは、“The Boys”のシーズン3にマリーの「写真のみ」で出演した。本作では主役として、何が起きても飄々とやり過ごしてしまうキュートでクールなマリーを魅力たっぷりに演じる。

 

エマ役のリゼ・ブロードウェイは、Apple+のアクション大作『ゴーステッド』(2023)で、クリス・エヴァンスと共演した。子役のころから多くのドラマに出演し、これが初の大役だ。

 

ルーク役のパトリック・シュワルツェネッガーは、英国製スリラー“The Staircase”、“The Terminal List”(本ブログ第93回参照)に出演。父親のアーノルド・シュワルツェネッガーよりはるかにイケメンなのは、母親のマリア・シュライバーのおかげだろう。クリス・プラットの義弟でもある。

 

ケイト役のマディ・フィリップスは、見覚えがあると思ったら“Teenage Bounty Hunters”(本ブログ第73回参照)で主演していた。

 

さらにアンドレ役のチャンス・パードモ、ジョーダン役のロンドン・ソア&デレク・リュ、サム役のエイサ・ジャーマンが加わり、チームが完成する。ビッグネームは一人もいないが、強烈なケミストリーが働く鮮やかなアンサンブルキャストとなった。

 

“The Boys”のDNAを完璧に受け継いだ!

ショーランナーのミシェル・ファゼカスとタラ・バターズは、ドラマ制作会社“Fazekas and Butters”を共同経営している。“Law & Order: SVU”、“Agent Carter”、“Hawaii Five-O”などの制作・脚本を手掛けてきたヒットメーカーだ。

 

原作は“The Boys”のコミックブック。本作は、フランチャイズとしてはアニメの“The Boys Presents: Diabolical”(本ブログ第92回参照)に続く第3弾となる。時代設定はオリジナルシリーズ・シーズン3とシンクロしていて、Aトレイン、ディープ、ソルジャーボーイも顔を出す。

 

“The Boys”ユニバースのエッセンスは、残虐というより血みどろ、暴力というより乱暴、エロというよりエッチ、劇画調というより漫画的な描写。つまり、「親は顔をしかめるが、男の子が本質的に大好きなもの」だ。レシピは、これらを「フツーの人とスーパーヒーローが共存する世界」に放り込み、大人向けに味付けし、社会認識を加え、かき回して出来上がる。言うは易しで、絶妙のバランス感覚が要求される。

 

本作は、オリジナル特有の退廃的なブラックユーモア、キャラたちのアクの強さは控えめだ。だが強烈な中毒性、(意外と)緻密な脚本による謎解きの妙、オフビートな笑いの中に垣間見える鋭い社会性などは、“The Boys”のDNAを完璧に受け継いでいる。
さらにアンサンブルキャストによる、友情と恋愛を巧みに織り込んだ学園ドラマとしての面白さは、本家にはない本作最大の魅力だ。

 

ストーリーは加速度的に“bingeable”になり、シーズンフィナーレはカオス状態でもうグチョグチョ。サプライズあり、超絶バトルあり、当然ハッピーエンディングなど考えられない。ただただ圧倒的なノリの良さで、次シーズンへの禁断症状を覚えるのみ。
“Gen V”はシュールでお下劣、過激でエグいがちょっぴり感動的な、血みどろ青春学園スーパーヒーロー・ドラマなのだ!

 

シーズン2の制作も決定した。本作かオリジナルか、どちらから先に観ても楽しめるぞ。

 

原題:Gen V
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2023年9月29日~11月3日
話数:8(1話 39-59分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #82
Title: “When the Going Gets Tough, the Tough Get Going”
Artist: Billy Ocean
Movie: “The Jewel of the Nile” (1985)

邦題は『ナイルの宝石』、01:10あたりからに注目!

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

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