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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第113回 “mr.&mrs.smith”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

 

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第113回“mr.&mrs.smith”

 

“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

 

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

 

予告編:『mr.&mrs.スミス』 本予告

 

スミス夫妻、ドラマになる!

本作の原作は、2005年にメガヒットしたスパイアクション映画『Mr.&Mrs.スミス』。この作品でブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー=’ブランジェリーナ’が生まれ、彼らの美しくも醜い黒歴史が始まった。

 

ドラマ版“Mr. & Mrs. Smith” はAmazon Primeオリジナル。フレッシュでスタイリッシュ、優しくて深みがある、ロマンスの効いたスパイアクション・コメディなのだ!

 

スミス夫妻、爆誕する!

アメリカのどこかの都市で、謎に包まれた組織“The Company”の採用面接が粛々と行われていた。

 

その女性(マヤ・アースキン)は無人の部屋で、モニターが示す質問に口頭で答えている。CIA志望だったが不採用となり、結局どこにも雇われなかった。彼女はハイリスクだが高収入の仕事を希望した。

 

その男性(ドナルド・グローヴァー)も同様の面接を受けた。海兵隊を不名誉除隊になったばかりで、経済的に困窮している。彼もハイリスクで高収入の仕事を希望した。

 

—ニューヨーク
例の2人は、多くの候補者の中からめでたく“The Company”に採用された。そして人間関係をすべて断ち切り、マンハッタンに転居してきた。偽装結婚し、今日からジョンとジェーンのスミス夫妻を名乗る。表向きの仕事は、同じ会社のソフトウェア・エンジニアだ。彼らには高給と豪邸に加えて、高級車、潤沢な資金、あらゆる武器、完璧な身分証一式が与えられた。

 

ジョンは社交的だが、感情的で負けず嫌い。海兵隊ではドローンの攻撃部隊として13人を殺害した経験がある。ジェーンは頭脳明晰だが攻撃的で非社交的。人殺しの経験はないが、ジョンよりドライで冷静だ。彼らはともに戦闘訓練を積んでいる。
2人は、結婚していてもセックスはしないで、別々の部屋で眠る協定を結んだ。

 

ジョンとジェーンが「ハイハイ」と呼ぶハンドラーとのやり取りは、テキストメッセージのみで行われる。

 

初めての任務は、マンハッタンで年配の女性からパッケージを奪い、指定場所に届けること。簡単な仕事だった。だが2人が郊外の平凡な家庭に奪ったパッケージを届けると、それは数十秒後に爆発した。

 

任務はより困難で、危険を伴うものになっていく。しかも失敗3回でゲームオーバーだ。
その時2人に何が起こるのかは、知らないほうが幸せだ…。

 

スミス夫妻、ケミストリーが働く!

ジョンを演じたドナルド・グローヴァーの代表作は、南部の黒人社会を舞台にした不条理コメディ“Atlanta”。同作ではショーランナー、主演、共同監督、共同脚本をこなして批評家から大絶賛された。’チャイルディッシュ・ガンビーノ’の名で知られるシンガー&ラッパーでもあり、ゴールデングローブ賞、エミー賞、グラミー賞を合わせて9回受賞している才人だ。

 

マヤ・アースキンは、ジェーン同様に日本人の母親とアメリカ人の父親を持つ。最近では、Netflixによる必見の時代劇アニメ“Blue Eye Samurai”で、主人公Mizuの声を担当した。またhuluのセックスコメディ“PEN15”では、ショーランナー、主演、脚本を共同で務めた。

 

グローヴァーとアースキンのキャスティングは、‘ブランジェリーナ’と比べると華がない。だがこのカップルはとてもチャーミングで、ケミストリーがゆっくりと醸成され、加速度的に高まっていく。

 

もう一組のスミス夫妻を怪演するのは、“Narcos”で実在の麻薬王パブロ・エスコバルを演じたワグネル・モウラと、インディー系ベテランアクターのパーカー・ポージー。

 

また、ゲスト出演のジョン・タトゥーロ(変態のターゲット)、ロン・パールマン(弱虫のターゲット)、サラ・ポールソン(オフビートのセラピスト)、ポール・ダノ(怪しい隣人)が、くせ者アクターぶりを発揮してゆがんだ笑いを提供してくれる。

 

スミス夫妻、シーズン2を期待される!

ショーランナーはドナルド・グローヴァーと、“Atlanta”で共同脚本を担当したフランチェスカ・スローン。2人は共同脚本も務め、グローヴァーはさらにファイナルエピソードを監督した。

 

スパイのカップルが偽装結婚する基本プロットは映画版とは異なる。本作はリブートというより、“The Americans”(本ブログ第6回参照 )のアクションコメディ版と言ったほうが近い。

 

ジョンとジェーンが新米スパイから辣腕スパイへ、偽装夫婦から本物の夫婦へ変貌する姿を、脚本が巧みにシンクロさせる。また、スミス夫妻が複数存在するアイディアが秀逸で、ストーリーの幅をぐっと広げている。

 

アクションシーンは多くはないが、メリハリが利いていて終盤に思い切りエスカレートする。カーチェイス、銃撃戦、素手による格闘、いずれも徹底的にやるので迫力満点だ。

 

ストーリーは1話1ミッションが基本。前半はスローペースで、2人に相互理解が生まれるプロセスが、ユーモアたっぷりに細やかに描かれる。危険な任務を通して思いやりが芽生え、生き延びることで愛情が育まれる。キャラクターアークは盤石だ。

 

“Mr. & Mrs. Smith” には説得力があり、しかもラブストーリーとしても十分成立している。オリジナルとの差別化に成功した、フレッシュでスタイリッシュ、優しくて深みがある、ロマンスの効いたスパイアクション・コメディなのだ!

 

エンディングはクリフハンガーで続きが気になる。Amazonにはシーズン2の制作を早く決めていただきたい。

 

原題:Mr. & Mrs. Smith
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2024年2月2日
話数:8(1話 42-63分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #85
Title: “Mondo Bongo”
Artist: Joe Strummer & The Mescaleros
Movie: “Mr. & Mrs. Smith” (2005)

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーは、冒頭出会いの一瞬でスパークした!
※ 「My Favorite Movie Songs」はこれで終わり。今後<今月のおまけ>は不定期で掲載します。

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #44 流行歌が教えてくれた●池田明子(広報)

子どもの頃から、歌番組が大好きだった。

令和の今、若い世代や海外で日本の昭和歌謡やシティ・ポップが人気だという。はたち(20歳)の手前まで昭和だった私は、多感な時代をその真っ只中で過ごしていたことになる。映像翻訳者を目指す皆さんには洋楽が好きで英語を学んだ人が多いが、私の場合は日本の流行歌が言葉の道標だったような気がする。まだボキャブラリーが少ない子どもにとって、大好きな歌手の歌には知らない言葉が数多くちりばめられていた。

「バーボン」「横須賀」「乃木坂」「津軽海峡」「ハリウッド」「ポルシェ」「心のこり」「サウスポー」「小春日和」「追憶」「摩天楼」「蜃気楼」「ジェラシー」「未練」「ストロベリーフィールズ」「ドン・ペリニヨン」「シャガール」「マティス」「カム・フラージュ」「ネオンテトラ」「ジョン・ル・カレ」「マンハッタン」「ノーサイド」「条件反射」「北ウイング」「スキャンダル」「カサブランカ」「カンパリ・ソーダ」「ジン」「Ray-ban」「カサノバ」「異邦人」「捜査一課」「鑑識課員」「イミテイション」「ウィドウ」「クリムゾン」「Femme Fatale」「ルビー」「アクアマリン」「鳶色」「ジャンヌ・ダーク」「タブー」「グッド・ラック」「オーデコロン」「エチュード」「カタストロフィ」「コンプレックス」「ブーメラン」「バルセロナ」…。それは外国語だったり、地名だったり、車やお酒の名前だったり、人名だったり、色の名前だったり、映画の題名だったりした。学生時代に使っていた辞書に蛍光ペンでハイライトしていたのは、ほとんどが歌のタイトルや歌詞の一部だったと言っても過言ではない。(※表記は当時聴いていた曲の歌詞より引用)

昭和の歌番組には、歌詞のテロップがないことが多かった。今のようにインターネットでパパっと歌詞を検索することもできず、耳で聴いたままを覚えて意味も分からずにいつも口ずさんでいたものだ。演歌もテレビ番組でよく聴いていたので、子どもなのに「北の宿から」や「長崎は今日も雨だった」、「あずさ2号」、「3年目の浮気」などを歌っているような時代だった。「しらふって何?」と親に聞いたり、「昔の名前で出ています」って何だろう?と、疑問に思ったりしていた。

「公衆電話」や「伝言板」「ダイヤル」「文通」「交換日記」などは、令和の若い世代にとってはある意味ファンタジーなのかもしれない。駅の構内や喫茶店で「〇〇からお越しの〇〇さま、〇〇さまからお電話です」などは、古い映画やドラマの中でしか見たことがないシーンなのだろう。インターネットも携帯電話も、ビデオデッキさえもなかった時代、待ち合わせてもすれ違って会えないことは珍しくなかった。そんなもどかしさが情緒に繋がって名曲が生まれていたのかもしれない。

私は令和の今でもメインに聴くのは、昭和から好きなアーティストの作品だ。ほとんどがファン歴40年以上。子どもの頃からずっと大好きな人のライブに50を超えた今でも行けるなんて、本当に幸せなことだとつくづく思う。CDラジカセも現役。いまだに配信で曲を購入したことはないし、音楽のサブスクも利用していない。歌詞カードやライナーノーツをじっくり読み、作詞、作曲、編曲、演奏者などチェックするのがまた醍醐味なのだ。タイムリーではない若い世代さえも夢中になる“エモい”音楽を物心がついたころから浴びて育ったのだから…。短編映画を観るような余韻に浸りながら、歌詞の世界を堪能する。大人になった今だからこそ、その深さにまたぐっとくる。そんな至福の時間をこれからも大切にしたい。

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Written by 池田明子
いけだ・あきこ●日本映像翻訳アカデミー・コーポレートコミュニケーション部門所属。English Clock、英日映像翻訳科を受講後、JVTAスタッフになる。“JVTA昭和歌謡部”のメンバーとして学校内で昭和の歌の魅力を密かに発信中。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
 
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第112回 “TOKYO VICE”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

 

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第112回“TOKYO VICE”

 

“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

 

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

 

予告編:『TOKYO VICE』 本予告

 

マイケル・マンによる硬派でスタイリッシュなクライムドラマ!

嬉しいことに、HBO Max(現Max)による2022年度作品で、WOWOWが国内独占放送していた本作が、現在Netflix、U-NEXT、hulu Japanでも視聴可能だ。

 

製作総指揮に名を連ねるのは、“Miami Vice”(1984-1989)や『ヒート』(1995)を生んだマイケル・マン。“Tokyo Vice”は、東京のアンダーワールドを舞台に、若きアメリカ人記者とベテラン刑事による執念の捜査を描く、硬派でスタイリッシュなクライムドラマなのだ!

 

闇社会に飲み込まれていく記者と刑事!

—1999年、東京
ジェイク・アデルスティーン(アンセル・エルゴート)は、野心家の若きジャーナリスト。上智大で日本文学を学び、卒業後に最難関の明調新聞社に合格した。ジェイクは同社初めての外国人社員で、新人への慣例により警視庁記者クラブ担当となった。

 

片桐(渡辺謙)は、家庭では良き夫で娘二人の良き父親。職場の警視庁組織犯罪対策部では、強面の敏腕刑事だ。愛車は赤の2代目フェアレディZ。

 

サマンサ・ポーター(レイチェル・ケラー)は、ユタ州出身の元モルモン教の宣教師。現在は歌舞伎町の高級クラブ「オニキス」の売れっ子ホステスだ。

 

佐藤(笠松将)は暴力団千原会の組員。若手のホープだが、非情になり切れない甘さもある。佐藤はサマンサに惹かれている。

 

ジェイク、サマンサ、佐藤は、オニキスで初めて出会う。

 

ジェイクは早くも明調新聞の保守的な社風に直面していた。外国人嫌いの上司からは「ガイジン」と呼ばれ、差別とパワハラに悩まされる毎日だ。
幸いジェイクのスーパーバイザー丸山詠美(菊地凛子)は厳しいがフェアで、彼を理解してくれる。だがこのまま何ら結果を出せなければ、クビになってしまう。ジェイクは焦っていた。

 

北新宿でジョギング中の中年男性が刺殺された。ほどなくして、歌舞伎町で初老の男が焼身自殺を遂げた。ジェイクは、この二人が同じ金融ローン会社から多額の借金を背負っていた事実をつかみ、独自に調査を始める。
一方片桐は、ジョギング男性刺殺事件の不自然な展開に疑問を持っていた。

 

2つの事件が結びつき、ジェイクと片桐の人生が交錯した。
そして東京の闇社会は、二人を翻弄しながら飲み込んでいく—

 

主役級のインパクトがある笠松将!

ジェイク役のアンセル・エルゴートは、ロマコメの佳作『きっと、星のせいじゃない』(2014)、ユニークなカーアクション&ラブストーリー『ベイビー・ドライバー』(2017)でブレーク。歌手でもあり、『ウェスト・サイド・ストーリー』(2021)では主役のトニーを演じた。
エルゴートは本役のために日本語の特訓をしていたが、新型コロナによる7か月間の撮影中断のおかげで格段に上達したという。

 

片桐役の渡辺謙はさすがの貫禄と迫力で、射貫くような眼光はどう見ても鬼刑事にしか見えない。
丸山役の菊地凛子は、高い演技力・英語力のおかげで、今ではハリウッドでも得難い日本人アクターとなった。

 

レイチェル・ケラーは、FX制作のスーパーヒーロー・ドラマ“Legion”が代表作。サマンサが部屋でWinkの『いつまでも好きでいたくて』を聞くシーンは、妙にフィットしていた。
ジェイクとサマンサのキャラにリアリティがあるのは、エルゴートとケラーのしっかりした日本語による演技に負うところが大きい。

 

筆者は邦画・国内ドラマを観ないので、わき役の日本人俳優をほとんど知らない。
その中で、群を抜く存在感で主役級のインパクトがあったのが、のし上がるヤクザ佐藤をクールに演じた笠松将だ。

 

さらに、型破りな刑事宮本役の伊藤英明、昔気質の千原会組長石井を演じた菅田俊、残虐非情の組長戸澤を演じた谷田歩、打算的な戸澤の愛人美咲を演じた伊藤歩らも忘れがたい。

 

日本が舞台の米国映画・ドラマ史上の最高傑作!

ショーランナー(兼共同脚本)のJ・T・ロジャースは、トニー賞受賞作“Oslo”で知られる劇作家。原作はジェイク・アデルスティーンによる同名の回顧録だ。ロジャースとアデルスティーンは長年の友人だという。

 

製作総指揮に加えてパイロット(第1話)の監督を務めたマイケル・マンは、東京の夜景を駆使して作品のトーンを決定づけた。
(蛇足だが、マンは昨年『ヒート』(1995)の続編となる小説“Heat 2”を共著で書きあげ、小説家としてデビューした。極上の犯罪小説で翻訳も出ているので、『ヒート』ファンにはお勧めだ。)

 

オール日本ロケを敢行した映像は美しくスタイリッシュ。日本の仁侠映画とアメリカのハードボイルド小説をブレンドしたような作風は珍しくはないが、違和感なくまとまった。

 

本作で扱われるのは派手な事件ではない。だが、ジェイクの目を通して描かれる東京のアンダーワールドは、新鮮でエキサイティングだ。

ストーリーは、高いテンションと緊迫感が途切れることなく進行する。アクションシーンは少ないが、どっしりと構えた拳と刃物による戦闘は見ごたえ十分。

 

各エピソードは、真相を追求するジェイクと妥協を許さない片桐との友情を縦糸に、ヤクザ間の熾烈な抗争を横糸に展開する。また、各登場人物の矜持、憎悪、悔恨、友情、恋愛などの心理描写が複雑に絡み合うが、緻密な脚本が絶妙にコントロールしている。

 

天性のジャーナリストゆえに危険を吸い寄せるジェイク、苦悩しながらもヤクザという生き方しかできない佐藤、祖国を捨てて日本で人生をやり直すサマンサ、—この3人をめぐるサイドストーリーも大きな見どころだ。

 

“Tokyo Vice”は、『ザ・ヤクザ』(1974)や『ブラック・レイン』(1989)を凌駕する、日本が舞台の米国映画・ドラマ史上の最高傑作。新聞記者、刑事、極道の生きざまを鮮烈に描く、硬派でスタイリッシュなクライムドラマなのだ!

 

米国では、Maxが2月8日からシーズン2を配信中で評判はいい。日本では4月6日からWOWOWで放送予定なので、今のうちに追いついておこう。

 

原題:Tokyo Vice
配信:Netflix、U-NEXT、WOWOWオンデマンド、hulu Japan
放送開始日:2022年4月24日(WOWOW)
話数:8(1話 54-64分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #84
Title: “I’ll Be Holding on”
Artist: Gregg Allman
Movie: “Black Rain” (1989)

松田優作の怪演は、高倉健+マイケル・ダグラス+アンディ・ガルシアを圧倒していた!

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

【スタッフコラム】Fizzy!!!!! JUICE #43 こだわりのカフェインレス・コーヒー●桜井徹二(学校教育部門)

以前、このコラムで受講生さんからよく聞かれる質問のひとつ、「自分の翻訳原稿を客観的に見直す方法」について書いた。その他によく聞かれる質問としては、「どんな人が映像翻訳者に向いているか?」というのがある。ほとんどの人にとって映像翻訳に取り組むのは初めてなので、「果たして自分は映像翻訳に向いているのだろうか?」と疑問に思ってしまうのはとてもよく理解できる。

この質問には僕はいつも「こだわりがないタイプの人、バランスが取れた人」と答えてきた。映像翻訳では扱う映像のジャンルやテーマもさまざまだし、1つのセリフを翻訳する時にも正しいインプット、アウトプットはもとより、背景情報やトーン、その他多くのルールや決まり事まで意識し、あらゆる点を差配しつつ(もちろん強弱はあるが)訳文にまとめなくてはならない。そういう意味では、1つのことにこだわって視野を狭くせず、いろんなことをバランスよく考えられるクールな視点が必要である――というのが一応の理由だ。

じゃあそういう自分はどうなんだ? と、もし問われたら「まあまあそうかもな」と思う。クールかどうかは別として、あまりこだわりはないほうだ。「大事な日の朝には必ずこれをやる」とか、「玄関の靴はきっちり並べておかないと気が済まない」みたいなこだわりは特に思いつかない。食事なんかでも多少の好き嫌いや好みはあるが、強いこだわりみたいなものはあまりない。

たとえば「こだわりのなさ」で思い出すのは、少し前に4~5人のスタッフと雑談していた時のことだ。何かの流れでコーヒーについての話になった。そこにいたスタッフはみんなコーヒー好きで、銘柄や淹れ方のこだわりについての話で盛り上がっていた。僕は無垢なうさぎのようにふんふんと話を聞いていたのだけど、そこでふと「桜井さんはコーヒーは好きですか?」と聞かれた。僕が「一日に何杯も飲む」と答えると「へえ~! じゃあこだわりはありますか?」と聞かれた。そこで僕は「たくさん飲むからカフェインレスのコーヒーにしてるくらいかな」と答えた。するとどうやら完全にノリが違ったようで、(カフェインレスか…)というあからさまに微妙な空気になった。

今もあの空気を思い出すと無垢なうさぎだった頃に戻りたい気分になるが、あの反応は当然といえば当然だとは思う。総じて言えば味わい深いとはいえないカフェインレス・コーヒーを常飲しているなんて、コーヒー談義を期待した側からすれば思わず呆れてしまうほどのこだわりのなさだと感じるのも無理はない。

ともかくそんなこともあって、自分は特にこだわりのない人間という認識でいた。だけど最近、その認識を覆されることがあった。これもコーヒーがらみの話だが、僕がある人に対して「どうしてもコーヒーを飲みたくなると、ミーティングの5分前でも大急ぎでコーヒーを淹れている」という話をしていた。するとその人から、「すごくこだわりがあるんですね」と言われたのだ。

確かに飲んでいるのはカフェインレス・コーヒーではあるけれど、別の視点で見れば「そうまでしてコーヒーを飲むことにこだわりがある人」と言えなくもない。または別の視点で見れば「カフェインレス・コーヒーを飲むことにこだわりがある人」と言うこともできるかもしれない。どれが正しいわけでもなく、どれも1つの見方に過ぎない。要するに、「自分がどんな人間であるか」という認識は、自分が思っているよりも不確かなものなのだ。

だから、「どんな人が映像翻訳者に向いているか?」という質問に対しての僕なり(他の誰かなり)の答えが、もし自分で認識しているつもりの自分とは違ったとしてもそれはただの一面的な捉え方に過ぎない。別の人から見たら、あなたという人間に対してきっとまた別の捉え方がある。もしかしたら真逆の捉え方かもしれない。だから「自分が向いているかどうかなんてことはあまり気にする必要はない」というのが最近の僕の考えだ。

ある視点から見れば「不向き」となるかもしれないが、少し視点が変われば全くそうではないかもしれない。そもそも「こんな人が映像翻訳者に向いている」なんていう意見自体も、やっぱりどうしたって一面的な見方でしかない。だから映像翻訳者を志している人は、向き不向きなんていうことはあまり考えずにいてくれたらと思うのだ。

ちなみに、僕が普段飲んでいるカフェインレス・コーヒーは実は3種類くらいを飲み比べて一番おいしいと思ったものを選んでいる。だけど(と言っていいかわからないけれど)、銘柄はセブン-イレブンだ。こだわりがあるのかないのか、やっぱり自分でもよくわからない。

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Written by 桜井徹二
日本映像翻訳アカデミー・学校教育部門
さくらい・てつじ●JVTAの映像翻訳ディレクターとして、MTVやBBCのドラマ、ドキュメンタリー、リアリティ番組やMOOC(大規模オンライン公開講座)用字幕などを手がける。本科のほか、明星大学、青山学院大学などの教育機関でも講師を務める。『字幕翻訳とは何か 1枚の字幕に込められた技能と理論』(小社刊)の執筆にも参加。
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「Fizzy!!!!! JUICE」は月に1回、SNSで発信される、“言葉のプロ”を目指す人のための読み物。JVTAスタッフによる、示唆に富んだ内容が魅力です。一つひとつの泡は小さいけど、たくさん集まったらパンチの効いた飲み物に。Fizzy! なJUICEを召し上がれ!
 
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第111回“Rabbit/Hole”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第111回“Rabbit/Hole”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『ラビット・ホール/指名手配のスパイ』 本予告

キーファー・サザーランド、新年を駆ける!

われわれが夢中になった“24”は、全9シーズン、204エピソードを積み上げた。あれからほぼ10年、キーファー・サザーランドがまたまたやってくれた。

 

“Rabbit/Hole”はParamount+が制作、hulu Japanが独占配信する筆者待望の一作。国家を揺るがす非情な産業スパイ戦の闇、陰謀、迷宮に捕らわれた男の絶望的な戦いを描く、怒涛のスーパー・エンターテインメントなのだ!

 

He calls it “Going down the hole”

—ニューヨーク
ジョン・ウィアー(キーファー・サザーランド)は、ウォール街で成功している自称コンサルタント。と言っても、実態は精鋭の部下4人を使い、顧客のために産業スパイ、株価操作、金融詐欺などをはたらくホワイトカラー犯罪者だ。
FBIは以前からジョンに目をつけているが、尻尾をつかむことができない。

 

ジョンは今日も高級ホテルで、ヘッジファンドの経営者をまんまと引っ掛けた。そのあと、バーで知り合った弁護士ヘイリー(メタ・ゴールディング)と意気投合する。2人は一晩限りの関係を楽しんだ。だが翌朝になるとジョンの態度は豹変し、ヘイリーをFBIの回し者だとなじり始めた。

 

実は、ジョンは幼少期に父親から受けた重いトラウマが原因で、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していた。断続的にパラノイアが起こり、自分も含めてだれも信用できなくなる。結婚生活もとっくに破綻していた。

 

ジョンは、幼なじみでかつて仲間だった大手IT企業のCEOマイルズ・ヴァランスから仕事の依頼を受ける。財務省の調査官エドワード・ホム(ロブ・ヤン)に、ちょっとしたトリックを仕掛ける簡単なものだった。

 

数日後、ホムが惨殺された。
ジョンは殺人容疑者として指名手配され、全国ニュースで彼の顔が大々的に流れ始めた。
さらに、ジョンのオフィスが爆破されてチームの3人が死亡。
ホンの件で問い詰められたマイルズは、ジョンの目の前で飛び降り自殺をした。

 

いったい何が起こっているのか?
ジョンの絶望的な逃亡生活が始まった。
何者かが、彼をスパイ世界の迷宮へ突き落としたのだ!

 

ジャック・バウアーからジョン・ウィアーへ!

キーファー・サザーランドが最後にジャック・バウアーを演じたのは2014年(“24: Live Another Day”、本ブログ第1回参照)。前後して主演した“Touch”と“Designated Survivor”は、“24”のファンには物足りなかった。今回満を持して臨んだ本作では、敢然と巨悪に立ち向かう一方で、精神に不安を抱えるジョン・ウィアーを見事に演じ分けた。

 

ヘイリー役のメタ・ゴールディングはインド生まれで、今回が初の準主役。複雑なキャラのヘイリーを魅力たっぷりに演じて、サザーランドとの間にはしっとりしたケミストリーが働いた。二人の微妙な関係は本作の見どころの一つだ。

 

エドワード・ホム役のロブ・ヤンは、“Succession”では嫌味な起業家、“The Resident” (本ブログ第58回参照)では傲慢な病院経営者を演じていい味を出していた。今回の情けない財務官僚役も特筆もので、彼のとぼけた味はドラマの絶妙なスパイスとなった。

 

ジョンに協力するベン・ウィルソン役のチャールズ・ダンスは、“Game of Thrones”のタイウィン・ラニスターで日本でも顔なじみだ。強面の悪役専門アクターで、敵か味方が最後まで分からないベンのキャラに見事にはまった。

 

以上のコア4人の演技と存在感は鉄板で死角がない。
また、ゲスト出演のピーター・ウェラーとランス・ヘンリクセンの使い方が贅沢で泣かせる。

 

迫真のスパイ/心理スリラー + スリックなコンゲーム・ドラマ!

ショーランナー(兼共同監督兼共同脚本)は、ヒューマンドラマの名作“This Is Us”(本ブログ第36回参照)を手掛けたグレン・フィカーラ&ジョン・レクア。

 

製作総指揮も兼ねるキーファー・サザーランドは、歯切れのいいセリフ回し、シャープな身のこなしでまったく衰えを見せない。本作は”24”との差別化に成功しているが、部分的にジャック・バウアーを髣髴させる今回のジョン・ウィアーのキャラは本作最高の見どころだ。
また、いったんは仲間を失ったジョンが、パラノイアに悩みながらも他人を信頼し始めた結果、新たなチームが形成されていくプロセスは痛快だ。

 

各エピソードには手掛かりが残されているものの、真相がすっきりと解明されているとは言い難い。突っ込みどころも少なくないが、突っ込まないこと。データ分析、行動心理学、情報操作を巧みに取り入れたプロットは、スピーディに二転三転する。「狩る者と狩られる者」、あるいは「善人と悪人」が、瞬時に入れ替わる構成も鮮やかだ。

 

本作は迫真のスパイ/心理スリラーと同時にスリックなコンゲーム・ドラマでもある。さらに、ツイストの連続技、ドライなユーモア、荒唐無稽寸止めの展開はサービス満点で子気味いい。
“24”同様にノリがよくて圧倒的に“bingeable”、オートパイロットで“roller-coaster ride”を楽しめばいい。

 

“Rabbit/Hole”は、国家を揺るがす非情な産業スパイ戦の闇、陰謀、迷宮に捕らわれた男の絶望的な戦いを描く、怒涛のスーパー・エンターテインメントなのだ!

 

【悲報】
キーファー・サザーランドは復活した。だがParamount+のコストダウンのために、シーズン2はキャンセルされた。せめてこのシーズン1で、彼の雄姿を目に焼き付けておこうではないか。

 

原題:Rabbit/Hole
配信:hulu Japan
配信開始日:2023年11月14日
話数:8(1話 41-55分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #83
Title: “Holiday Road”
Artist: Rindsay Buckingham
Movie: “National Lampoon’s Vacation” (1983)

邦題は『ホリデーロード4000キロ』、チェビー・チェイス絶頂期の一作。

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

Tipping Point Returns Vol.28 「先生」になろう ~学び取る力を伸ばす、意外な方法

2024年の目標にまだすき間があるなら「先生を目指し、先生になる」ことを加えてほしい。もちろん職業としての先生ではない。先生と呼ばれるような肩書を目指すことでもない。人間という生き物は、自分の中で育んでいる知識や気づきで心の器がいっぱいになると、誰かに伝えたいという思いが溢れ出す。そこに共有が生まれると自分の人生が少し豊かになった、成長できたという充実感に包まれる。それこそが「先生」になった瞬間だ。このコラムを読んでいる皆さんなら、強く意識すれば必ず叶う目標なのだ。

部下に指導したりプレゼンしたり、学校の後輩や子供にお説教したり勉強を教えたり、昨日観た映画の魅力を友人に説いたり……。日々人と接する場には、常にそのチャンスがある。しかし現実には、多くの人が「先生」にはなれていない。実際に教鞭をとる教師や講師であっても、やっていることは単なるタスクで「先生」とは呼びたくないケースが多々ある。

私には譲れない考え方がある。「良き先生は良き生徒である」ということだ。

「学びたいスイッチ」がいつもオンの状態の人がいる。誰もが認める立派な肩書と地位を手にしていても「学びたいスイッチ」が入りっぱなしで何かを学ぼうとしているのだ。そんな人に出会うと私はうれしくて、心の中で(先生!よろしくお願いします!)と叫んでいる。私自身も(この人から少しでも何かを学び取りたい)という欲求がこみ上げてくるのだ。

お互いが「良き先生」であり「良き生徒」であろうと努力する。私が理想とする人間関係だ。

「先生=生徒」なんて、矛盾しているように聞こえるかもしれない。自分の知識や経験は特別な高みにあるから、それを君らに教えてやるよという姿勢の人が先生で、そうでない人が生徒。それが常識のように感じているなら、今、改めよう。先生と呼ばれていばりくさっている人、目の前の生徒から自分が学ぶことなんてないとうそぶく人には何の魅力もない。この人から何か教わるのも、生成AIで知るのも同じだなと私は思う。つまり、そんな人はほんとうの「先生」ではない。

「自分はまだ生徒で道半ば」という自己評価であっても、その立ち位置だからこそ気づいたり学び取れたりすることがある。それらを整理して準備し、人に伝えようと踏み出せば、その人こそ立派な「先生」なのだ。

JVTAで講師を採用する際に、私が何よりも重視しているのはその点だ。優秀で評価の高いプロであっても「生徒」であろうと努力しているか。つまり「学びたいスイッチ」が常にオンの人であることが第一条件だ。「私にはこんな実績がある。本も書いている。教えたいことも決まっている」」という人は、丁寧にお断りする。それならあなたの本を読めば十分ですというのが私の本音だ。

一方、「講師なんて考えたこともなかった。自分がまだ知りたいことばかりなのに、人に教えることなんてできるのかな」と戸惑う人に対しては、(そんなあなただからこそ「先生」にふさわしいのですよ。受講生に多くのことを伝えながら、あなた自身も授業から多くのことを学び続けて成長してください。一緒に成長しましょう)と心でつぶやき、「ぜひやってみましょうよ!」と背中を押す。

先日、大学生に限定して映像翻訳を指導するコースがあり、3人のJVTAスタッフが講師デビューした。バリアフリー字幕を指導するコースでも、初めての講師にチャレンジしているスタッフがいる。最近まで本科で学んでいたスタッフは「まさか自分が講師になるなんて思わなかった」。

おそらく、慣れた講師の何倍、否、何十倍の時間をかけて準備をし、シミュレーションを重ねたことだろう。立派な講師だった。それでも自分自身は満足することなく、もっと調べればよかった、次はもっと練り上げたいという感想をもらしていた。「先生」を経験したことで、映像翻訳者、ディレクター、バリアフリー字幕ライターとしての自らの成長を実感できたはずだ。

実際に教壇に立つ機会がなくても「先生」になれる機会はたくさんある。会社や学校での発表、スピーチ、誰かに届ける1通のメールでも、考え方しだいで「先生」になれる。私自身そのように努めているし、逆に受講生や修了生から届いたメールから何かを学び、心の中で(ありがとう、先生!)とつぶやくこともある。

JVTAで出会った皆さんが「良き生徒」であることは間違いない。それだけでも得難い資質なのだが、だからこそさらなる成長を期待したい。来年はぜひ意識的に「良き先生」となる時間をつくってほしい。(了)

今回のコラムで思ったことや感想があれば、ぜひ気軽に教えてください。

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※アットマークを@に置き換えてください。
☞JVTAのslackアカウントを持っている方はチャンネルへの書き込みやniira宛てのDMでもOKです。

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Tipping Point Returns by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第110回 “GEN V”

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第110回“GEN V”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『ジェン・ブイ』 本予告

 

“The Boys”ファン感涙のスピンオフ!!!

お待たせしました!
本作は2023年を締めくくる、“The Boys”(本ブログ第63回参照)ファンへの一足早いお年玉。感涙のスピンオフ。これを観ないと年は越せない。
“Gen V”(Amazon Prime)は、シュールでお下劣、過激でエグいがちょっぴり感動的な、血みどろ青春学園スーパーヒーロー・ドラマなのだ!

 

ヴォート社の闇の奥へ…

—8年前
マリー・モロー(ジャズ・シンクレア)は、初潮を迎えた際に突然制御不能な超能力が発現し、両親を瞬殺してしまった。彼女の両親は、潜在的なスーパーパワーを引き出す劇薬「コンパウンドV」をマリーに飲ませていたのだった。

 

—現在
マリーはスーパーパワーのコントロールを学んできた。今では自分の血を鞭のようにしならせ、武器として戦うことができる。彼女は辛い過去を乗り越え、自分の力を人助けに使う覚悟だった。

 

そして、念願のゴドルキン大学に合格した。同大学はスーパーヒーローの養成所で、NYの巨大エンタメ&警備企業ヴォート社が運営する。
ただし、スーパーヒーローになるのはごく一部のエリートのみ。能力者の学生たちは校内ランキングを上げるために、過酷な競争とストレスにさらされている。

 

マリーの学園生活が始まり、友人もできた。
気のいいルームメイトのエマ(リゼ・ブロードウェイ)は戦闘能力こそ低いが、吐くことと食べることで体のサイズを自在に変えることができる。
ランキングトップの人気者ルーク(パトリック・シュワルツェネッガー)は発火能力を持つ。ルークの恋人ケイト(マディ・フィリップス)はマインドコントロールの使い手だ。
ルークの親友アンドレ(チャンス・パードモ)は、磁気を操って物質を移動させる。父親もスーパーヒーローで、ゴドルキン大学の理事でもある。
ランキング2位のジョーダン(ロンドン・ソア&デレク・リュ)はジェンダーシフター。男女の異なるキャラとスーパーパワーを瞬時に使い分ける。

 

ある日、ルークは狂乱状態に陥り、親しい教授を焼き殺してしまう。彼は居合わせたマリーにも襲い掛かると、最後は空中で派手に焼身自殺をした。

 

いったいルークに何が起きたのか?

 

残された仲間たちは事件の真相を探り始める。
どうやら、昔自殺したルークの弟サム(エイサ・ジャーマン)と関係があるらしい。
彼らはとてつもない危険を冒して、ゴドルキン大学とヴォート社の深い闇の奥へ入り込んでいく!

 

ビッグネームは一人もいないが…

ジャズ・シンクレアは、“The Boys”のシーズン3にマリーの「写真のみ」で出演した。本作では主役として、何が起きても飄々とやり過ごしてしまうキュートでクールなマリーを魅力たっぷりに演じる。

 

エマ役のリゼ・ブロードウェイは、Apple+のアクション大作『ゴーステッド』(2023)で、クリス・エヴァンスと共演した。子役のころから多くのドラマに出演し、これが初の大役だ。

 

ルーク役のパトリック・シュワルツェネッガーは、英国製スリラー“The Staircase”、“The Terminal List”(本ブログ第93回参照)に出演。父親のアーノルド・シュワルツェネッガーよりはるかにイケメンなのは、母親のマリア・シュライバーのおかげだろう。クリス・プラットの義弟でもある。

 

ケイト役のマディ・フィリップスは、見覚えがあると思ったら“Teenage Bounty Hunters”(本ブログ第73回参照)で主演していた。

 

さらにアンドレ役のチャンス・パードモ、ジョーダン役のロンドン・ソア&デレク・リュ、サム役のエイサ・ジャーマンが加わり、チームが完成する。ビッグネームは一人もいないが、強烈なケミストリーが働く鮮やかなアンサンブルキャストとなった。

 

“The Boys”のDNAを完璧に受け継いだ!

ショーランナーのミシェル・ファゼカスとタラ・バターズは、ドラマ制作会社“Fazekas and Butters”を共同経営している。“Law & Order: SVU”、“Agent Carter”、“Hawaii Five-O”などの制作・脚本を手掛けてきたヒットメーカーだ。

 

原作は“The Boys”のコミックブック。本作は、フランチャイズとしてはアニメの“The Boys Presents: Diabolical”(本ブログ第92回参照)に続く第3弾となる。時代設定はオリジナルシリーズ・シーズン3とシンクロしていて、Aトレイン、ディープ、ソルジャーボーイも顔を出す。

 

“The Boys”ユニバースのエッセンスは、残虐というより血みどろ、暴力というより乱暴、エロというよりエッチ、劇画調というより漫画的な描写。つまり、「親は顔をしかめるが、男の子が本質的に大好きなもの」だ。レシピは、これらを「フツーの人とスーパーヒーローが共存する世界」に放り込み、大人向けに味付けし、社会認識を加え、かき回して出来上がる。言うは易しで、絶妙のバランス感覚が要求される。

 

本作は、オリジナル特有の退廃的なブラックユーモア、キャラたちのアクの強さは控えめだ。だが強烈な中毒性、(意外と)緻密な脚本による謎解きの妙、オフビートな笑いの中に垣間見える鋭い社会性などは、“The Boys”のDNAを完璧に受け継いでいる。
さらにアンサンブルキャストによる、友情と恋愛を巧みに織り込んだ学園ドラマとしての面白さは、本家にはない本作最大の魅力だ。

 

ストーリーは加速度的に“bingeable”になり、シーズンフィナーレはカオス状態でもうグチョグチョ。サプライズあり、超絶バトルあり、当然ハッピーエンディングなど考えられない。ただただ圧倒的なノリの良さで、次シーズンへの禁断症状を覚えるのみ。
“Gen V”はシュールでお下劣、過激でエグいがちょっぴり感動的な、血みどろ青春学園スーパーヒーロー・ドラマなのだ!

 

シーズン2の制作も決定した。本作かオリジナルか、どちらから先に観ても楽しめるぞ。

 

原題:Gen V
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2023年9月29日~11月3日
話数:8(1話 39-59分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #82
Title: “When the Going Gets Tough, the Tough Get Going”
Artist: Billy Ocean
Movie: “The Jewel of the Nile” (1985)

邦題は『ナイルの宝石』、01:10あたりからに注目!

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第109回 “STAR TREK: STRANGE NEW WORLDS” 

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第109回“STAR TREK: STRANGE NEW WORLDS”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』 本予告

 

純粋な驚きと感動、初心に帰った“Star Trek”!

本作は、“Star Trek: The Next Generation”(1987-1994)以降で最良のスター・トレック・ドラマ。
オリジナルシリーズ(1966-1969)の10年前を描く前日譚で、“Star Trek: Discovery”(2017~、本ブログ第40回参照)、“Star Trek: Picard”(2020-2023)を凌ぐ面白さだ。

 

初心に帰った“Star Trek: Strange New Worlds”は、スター・トレック未経験でも存分に楽しめる健全娯楽作品。改めてSci-Fiドラマの可能性を確信させる、純粋な驚きと感動に満ちたシリーズ最新作なのだ!
(以下タイトル表記上”Star Trek:”部分は省略。)

 

“It’s five-year mission, to explore strange new worlds…”

—stardate: 1739.12(西暦2251年)
クリストファー・パイク(アンソン・マウント)が、深い雪に覆われたモンタナ州の自宅に引きこもって3カ月。疲労がにじむ髭面で、今日もお気に入りの古典SF映画『地球の静止する日』を観ている。同居しているガールフレンドは、彼の精神状態を憂慮していた。

 

パイクは、惑星連合下の宇宙艦隊に属するUSSエンタープライズ(USSは“United Space Ship”の略)の船長。同船は現在スペースドックで修理中だ。
最後の任務で、パイクは期せずして自分の未来を見てしまった。いつ、どのように死ぬのかを知ったのだ。このことは彼を悩まし、トラウマとなって任務に復帰する決意を揺るがしている。

 

そのころエンタープライズの科学士官スポック(イーサン・ペック)は、ヴァルカン人の恋人からのプロポーズを受け入れたところだった。スポックはヴァルカン人の父と地球人の母を持つ。

 

USSアーチャーが惑星Kiley279でファーストコンタクトの任務中に、3名のクルーが消息を絶った。パイクは即時復帰と、彼らの救出を命じられる。3人の一人ウナ(レベッカ・ローミン)は、エンタープライズの副長(通常“Number One”と呼ばれる)なのだ。
エンタープライズに、スポックを始めとする精鋭のクルーが再集結した。

 

Kiley279に近づくと、エンタープライズは奇襲攻撃を受けた。使用された武器は、ワープ技術を転用したものだった。地球から2世紀は遅れている星の住人が、こんなテクノロジーを持っているはずがない。

 

おりしもKiley279では2つの種族が紛争中で、この種の武器が使われれば、かつての地球のように自滅してしまう。パイクには、ウナたちを救出し、さらにこの星を破滅から救う手立てが必要だった。
だが、宇宙艦隊の規約“General Order 1”(後の“Prime Directive”:「艦隊の誓い」)は、異星人の生命や文明の進化に干渉することを一切禁じている。

 

ジレンマに陥ったパイクは一計を案じる—

 

The Magnificent Nine of USS Enterprise!

パイク役のアンソン・マウントは、硬派な西部ドラマ“Hell on Wheels”(2011-2016、筆者のお気に入り)で、主役の元南軍兵カレン・ボハナンを演じた。本作では、誠実で勇敢、器の大きい正統派の宇宙艦隊船長を悠然と演じる。ガンマンからスペースシップの船長へ、見事な変貌ぶりだ。

 

スポック役のイーサン・ペックはグレゴリー・ペックの孫(!)。ヴァルカン人と地球人の対立する感情に苦悩する、若きスポックを好演する。

 

ウナを演じたレベッカ・ローミンは、『ファム・ファタール』(2002)の悪女、『X-Men』シリーズのミスティークと、セクシーな役柄で日本でも顔なじみだ。本作では、パイクの頼れる副長を貫禄で演じる。

 

パイク、スポック、ウナはオリジナルシリーズと“Discovery”に登場し、前者ではそれぞれを異なるアクターが演じた(スポックを演じたのは、もちろんレナード・ニモイ)。

 

さらに、悲惨な過去の記憶に悩む警備主任ラアン(クリスティーナ・チョン)、多言語を操る士官候補生ウフーラ(セリア・ローズ・グッディング)、凄腕の操舵手オルテガス(メリッサ・ナヴィア)、難病の娘を抱える医療主任ムベンガ(バブス・オルサンモクン)、スポックに想いを寄せる看護師チャペル(ジェス・ブッシュ)、盲目の主任機関士ヘマー(ブルース・ホラック)を加えた9人が、エンタープライズの主要クルーだ。

 

「スター・トレックって、こういうドラマっだったよなあ」

ショーランナー(兼共同監督権共同脚本)の一人アキヴァ・ゴールズマンは、『ビューティフル・マインド』(2001)でアカデミー脚本賞を受賞、また“Discovery”と”Picard”を手掛けたベテランだ。

 

本作は“Discovery”のスピンオフでもあり時代設定が重なるが、作風はまったくちがう。“Discovery”はシリーズの新たな方向性を追求し、よりパワフルで洗練された複雑系ドラマ。
一方“Strange New Worlds”は、オリジナルシリーズや“The Orville”(本ブログ第54回参照)と同様に、1話完結型のオーソドックスなアプローチだ。彩りに富んだエピソードは、「防御能力を持つ無人の彗星」 「光で感染するウイルス」 「子供の犠牲によって生き延びる種族」など調査・探検ものが中心で、オリジナルシリーズへのリスペクトにあふれている。

 

また、残虐な原始種族ゴーンや、100年ぶりに姿を現すロミュラン人のエピソードは、戦闘シーン満載で迫力満点。中でも、絶体絶命の危機に陥ったエンタープライズを救うために、若き日のカーク船長(ポール・ウェズレイ)とパイクが共闘するシーンは感動的だ。

 

加えて、売れっ子ジェフ・ルッソによる雄大なオープニングテーマ、最新鋭の特撮ながらどこかレトロ調な映像、濃密で味わい深い脚本、躍動する個性豊かなキャラクターたちが、初心に帰ったスター・トレックを輝かせる。

本作を観て、「スター・トレックって、こういうドラマっだったよなあ」と、しみじみとした気持ちになった。“Strange New Worlds”は、改めてSci-Fiドラマの可能性を確信させる、純粋な驚きと感動に満ちたシリーズ最新作なのだ!

 

シーズン3の制作も決まっている。本作は、12月1日から日本で配信開始のParamount+の新作ラインナップの一本だ。

 

原題:Star Trek: Strange New Worlds
配信:Paramount+(WOWOWオンデマンド、J:COM経由)
配信開始日:2023年12月1日(S1)、2024年1月19日(S2)
話数:20(2シーズン、1話 46-62分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #82
Title: “The Last Dragon”
Artist: Dwight David
Movie: “The Last Dragon” (1985)

‘80年代青春カンフー映画の隠れた名作!

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第108回 “THE NEWSROOM”に学ぶ「ジャーナリズム」

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第108回“THE NEWSROOM”に学ぶ「ジャーナリズム」
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『ニュースルーム』 本予告

 

「名作探訪シリーズ」第3弾!!!

新作ドラマもいいが、U-NEXTのラインナップに本作を見つけた。
2012-2014年にHBOで放映された“The Newsroom”は、ジャーナリストの資質と矜持を問う必見の社会派ドラマ。10年以上たった今でもまったく色褪せず、新鮮でスリリングだ。

 

そこで今回は、「“Law & Order”に学ぶ『正義』」(本ブログ第30回参照)、「“The West Wing”に学ぶ『危機管理』」(同第33回参照)に続く第3弾として、この名作を取り上げる。
ジェフ・ダニエルズによる伝説のスピーチを含む第1話をテキストに、米国ジャーナリズムの世界を覗いてみよう!

 

シーズン1 パイロット・エピソード:“We Just Decided To”(72分)

(本エピソードは2012年6月24日に全米で放映された。)

 

—イリノイ州の名門ノースウェスタン大学のフォーラムにて
壇上では、学生代表の質問に対して、リベラルの女性と保守の男性が熱い議論を交わしている。だがもう一人の論客ウィル・マカヴォイ(ジェフ・ダニエルズ)は終始無言だ。司会者に振られても、ドライなジョークで観客を困惑させている。

 

キュートな女子大生によるその日最後の質問は、「アメリカが世界一偉大なのはなぜでしょう?」だった。
リベラルと保守のゲストは、それぞれ「多様性と機会」、「自由と自由」と即答した。

 

のらりくらりと質問をかわすウィルに業を煮やした司会者は、執拗に食い下がる。
遂に折れたウィルは、堰を切ったように話し始めた。
「アメリカは世界一じゃない。…世界一の根拠は何もない。読み書きは世界7位、数学27位、科学22位、平均寿命49位、乳児死亡率178位…。世界一は3つだけ。人口に対する囚人の割合、天使を信じる大人の数、それと断トツの国防費だ」

 

館内は静まり返った。
ウィルは続ける。
「昔は世界一だった。正義のために戦い、自分を犠牲にし、隣人を気にかけ、有言実行で自慢しなかった…。飛躍的な技術進歩を遂げ、宇宙を探検し、病気を治し、世界一の芸術家や経済を育てた。…支持政党で自分を分類せず、たやすく動じなかった。…アメリカはもはや世界一偉大な国ではない。—これでいいか?」

 

—2010年4月20日(3週間後)
ウィル・マカヴォイは、NYのニュース専門局ACN(“Atlantis Cable News Channel”)の看板番組「ニュースナイト」のアンカーだ。元検事のウィルは頭脳明晰で正義感が強く、かつては才気にあふれていた。だが今はエッジを失い、傲慢で気難しくなり、視聴率競争で疲弊している。

 

チャーリー・スキナー(サム・ウォーターストン)はACNの報道局長でウィルの上司だ。チャーリーはウィルが大学のフォーラムで炎上した後、彼に休暇を取らせ、その間に「ニュースナイト」のスタッフを刷新した。新しいEP(“Executive Producer”)は、マッケンジー(マック)・マクヘール(エミリー・モーティマー)。マックは業界最高のEPで、最近まで従軍記者としてアフガニスタン、イラク、パキスタンを飛び回っていた。
だが復帰したウィルは激怒し、彼女を拒否する。マックはウィルの元カノで、3年前に手ひどくウィルを裏切ったのだ。

 

そこへ緊急速報が飛び込んできた。ルイジアナ州沖80キロの海底で、BP社の油田が爆発した。水深5500メートルで掘削中だったリグから、桁外れの規模の原油が流出している。

 

ACNのスタッフは活気づく。チャーリーは、その日の「ニュースナイト」の持ち時間すべてを、この史上最悪の環境破壊に費やす決定を下した。

 

カリスマ的演技で圧倒するジェフ・ダニエルズ!

ウィル役のジェフ・ダニエルズと言えば、メガヒットしたカルト的コメディ『ジム・キャリーはMr.ダマー』(1994)で演じた、’おバカなハリー’役しか思い浮かばなかった。だが本作でそのイメージは一新された。ダニエルズはこの難役をカリスマ的演技でこなし、エミー賞主演男優賞を受賞した。

 

マック役のエミリー・モーティマーは英国出身。心温まるラブストーリー『Dearフランキー』(2004)の、優しいシングルマザー役が記憶に残る。従軍記者として事実を伝え、EPとして理想を追い、かつて裏切ったウィルを想い続けるタフで優しいマックは、忘れえぬキャラクターとなった。

 

チャーリー役のサム・ウォーターストンは、リーガルドラマの最高峰“Law & Order”で、不屈の次席検事ジャック・マッコイ役を16シーズン務めた。本作では、元海兵隊員で気骨ある報道局長を颯爽と演じる。

 

鋭敏だが落ち着きのないマックの部下マギーを演じたアリソン・ピルは、カナダ出身。最近では、“Star Trek: Picard”で演じた、人工生命の専門家ジュラティ博士が記憶に新しい。実に達者なアクターだ。

 

マックの右腕ジム役のジョン・ギャラガー・Jrはミュージシャンで、トニー賞に輝くミュージカル・アクターでもある才人。本作では、密かにマギーに想いを寄せる繊細なジャーナリストを好演した。

 

さらに、ACNの親会社の強面CEOレオナを演じたジェーン・フォンダが、作品に風格を与えている。

 

「かつてジャーナリズムは『使命』だった」

ショーランナー(兼共同脚本)のアーロン・ソーキンは、政治ドラマの金字塔“The West Wing”、 アカデミー脚色賞を受賞した『ソーシャル・ネットワーク』(2010)が代表作。鋭い政治感覚と強烈なマシンガントークが売りの「ソーキン節」は、本作でも炸裂する。

 

ソーキンはACNという架空のテレビ局を舞台に、「BP流出事故」以外にも、「エジプト革命」「福島原発事故」「ビンラディンの殺害」「ボストンマラソン爆弾テロ事件」など、現実の時事問題をタイムリーに扱う。実際のニュース映像を駆使して徹底的にリアリティーを追求する。中立性を尊ぶ硬派なニュース番組の制作プロセスが、スピード感・緊迫感たっぷりに描かれるのだ。

 

マックが理想とする「罵り、ゴシップ、覗き見主義と決別した良質な番組作り」が、少しずつ結実していく。「高潔な職業としてのジャーナリストの復活」が、夢物語ではなくなる。
ウィルとマックの長年の絆が試される。バラバラで頼りなかったチームが、高い志と倫理観を持つタフな戦闘集団に生まれ変わる。彼らの喜び、怒り、葛藤、恋愛、失敗、成長を通して骨太な全25のエピソードには血が通い、深い余韻が残る。

 

“The Newsroom”は、ジャーナリズムの観点から現代アメリカを俯瞰する。そこに巣食う病巣をえぐり、暴露し、議論を投げかける。観る者の良識と正義感に訴え、ジャーナリストの資質と矜持を問う、必見の社会派ドラマなのだ!

 

原題:The Newsroom
配信:U-NEXT、Amazon Prime
制作:HBO(2012-2014年)
話数:25(全3シーズン、1話 47-72分)

 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #80
Title: “Winner Takes It All”
Artist: Sammy Hagar
Movie: “Over the Top” (1987)

アームレスリングの世界を描いた、スタローンの隠れた名作!

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第107回 “ONE PIECE” 

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第107回“ONE PIECE”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

予告編:『ONE PIECE』 本予告

 

実写版『ONE PIECE』は凄かった!!!

配信直後から世界を席巻している実写版『ONE PIECE』。このNetflixによる日米英共同大作は、原作の再現性が驚くほど高い。お馴染みのヒーローたち、愛すべきヴィラン(悪役)たちが、完璧なキャストを得て、ライブアクションで躍動する。
もちろん、原作未経験でも何ら問題なし。

 

“ONE PIECE”は、今年最高のサプライズ。自由を求める若きアウトローたちの夢と冒険、希望と成長、決意と覚悟、挑戦と挫折、友情と絆が活写される、底抜けに楽しい、クールで熱いファンタジー・海洋冒険活劇なのだ!

 

“This is a world of pirates”

—ローグタウン、22年前
海賊王ゴールド・ロジャーがついに海軍に捕らえられ、処刑された。それ以降、世界中の海賊たちが、ロジャーが隠した「ひとつなぎの大秘宝」(“One Piece”)を血眼になって探し始めた。

 

—東の海(“East Blue”)、現在
モンキー・D・ルフィ(イニャキ・ゴドイ)は、いつも麦わら帽をかぶっている超楽観的な駆け出しの海賊だ。彼の夢は、敬愛する海賊‘赤髪のシャンクス’(ピーター・ガジオット)のように自分の船とクルーを持つこと。そして“One Piece”を発見し、海賊の王になるのだ。

 

ルフィは昔「ゴムゴムの実」を知らずに食べたことから、体全体がゴムのように伸びるスーパーパワーを持つ。

ある日ルフィは、海賊の雑用係だったコビー(モーガン・ディヴィス)を自由の身にしてやった。コビーの夢は海軍に入って弱い者を守ることだ。

 

ルフィは“One Piece”発見のカギとなる’偉大なる航路’(“Grand Line”)の海図を盗むために、コビーと共にシェルズタウンの海軍基地へ向かった。

 

ルフィは基地内で磔にされていたロロノア・ゾロ(新田真剣佑)を助け出す。ゾロは世界一の剣士を目指す‘海賊狩り’(賞金稼ぎ)だ。だが酒場で海兵とトラブルを起こし、基地を牛耳る海軍大佐‘斧手のモーガン’に捕らえられたのだった。

その頃、オレンジ髪の泥棒ナミ(エミリー・ラッド)も、同じ海図を求めて基地に潜んでいた。彼女は棒術の使い手で、優れた航行士でもある。

 

鉢合わせしたルフィとナミは協力し、まんまと海図を盗み出した。

 

ルフィ、ゾロ、ナミの3人は、団結して手ごわい‘斧手のモーガン’とその部隊を制圧し、船で脱出する。
だがコビーは残り、憧れの海兵となる道を選んだ。

 

こうして偶然出会った3人は、“One Piece”を求めて冒険の旅に出る。だが彼らの行く手には、海軍のみならず、破天荒な異形の海賊たちが立ちはだかる!

 

イニャキ・ゴドイはルフィそのもの!!

イニャキ・ゴドイはメキシコ出身の20歳で、これが初の主役。原作者の尾田栄一郎が一目見て惚れ込んだだけあって、明るくエネルギッシュなゴドイはルフィそのもの。麦わら帽もよく似合う。

 

ゾロを演じた新田真剣佑は千葉真一の息子。演技力はあるしLA生まれの自然な英語なので、お父さんと違って安心感がある。彼の三刀流の殺陣とマーシャルアーツは、本作の見せ場の一つだ。

 

ナミ役のエミリー・ラッドは原作のイメージとは異なるが、見事にフィットした。華がある押し出しと高い演技力は、“Mad Men”のクリスティーナ・ヘンドリックスを髣髴させる。日本のアニメ好きでもある。

 

モーガン・ディヴィスは、ルフィへの恩と職業倫理との間で悩むコビーをヴィヴィッドに演じた。オーストラリア出身で、私生活ではトランスジェンダーであることをカミングアウトしている。

 

‘赤髪のシャンクス’役のピーター・ガジオットは、“Queen of the South”で演じたヒットマンのジェームズが超カッコよかった。クールなシャンクスにぴったりだ。

 

他にも、後に‘麦わらの一味’となる2人、パチンコの名手ほら吹きウソップ(ジェイコブ・ロメロ・ギブソン)と、女好きの戦う料理人サンジ(タズ・スカイラー)が登場。

 

さらに「海賊の部」からは、体を分離して戦う‘道化のバギー’(ジェフ・ウォード)、魚人の総帥‘ノコギリのアーロン’(マッキンリー・ベルチャー三世)、史上最強の剣士‘鷹の目のミホーク’(スティーヴン・ウォード)らが参戦する。
いずれも適材適所のアクターたちが、原作キャラの雰囲気を存分に味わせてくれる。

 

Netflixの輝く星となるがいい!

ショーランナー(兼共同脚本)は、Marvelの“Luke Cage”、“Agents of S.H.I.E.L.D”等の脚本家マット・オーウェンズと、“CSI: Miami”、“Lost”などを手掛けたスティーヴン・マエダ。完成まで7年、尾田栄一郎は製作総指揮として深く関与し、撮り直しもさせたという。

 

『ONE PIECE』は‘97年の連載開始以来すでに単行本106巻が出版され、現在も継続中。漫画・アニメともに1000話を突破している。世界で累計5億部以上を売り上げた、日本が誇る冒険漫画の傑作だ。

 

本作(シーズン1)は、原作の1~11巻を圧縮してカバーする。エピソード当たりの製作費は約26億円で、“Game of Thrones”より高い!

 

原作の壮大なスケールと確固たる世界観、ユニバーサルで魅力的な登場人物たちが、忠実に再現された。特撮のさじ加減が絶妙で、やり過ぎ感なくリアリティを維持している。ストーリーとキャラは巧みに変更・省略され、ギャグは抑え目、セットは贅沢で斬新なアクションがふんだんにある。

 

ルフィは能天気に、しかし不退転の決意をもって最高の仲間を集めていく。‘麦わらの一味’は強い絆で結ばれているが、各自のコード(行動規範)は全く違う。フラッシュバックで語られる一人ひとりの過去は、いずれも味わい深く、切なく、忘れがたい。海賊といっても、彼らはピュアな義賊なのだ。

 

パイロットで一気に惹きつけ、各エピソードは加速度的に面白くなり、全8話が息つく暇なく終わる(各話ごとに代わるタイトルロゴも楽しい)。シーズンフィナーレのクライマックスは圧巻の迫力で、大団円のエンディングには胸が熱くなる。

 

“ONE PIECE”は、メイド・イン・ジャパンの漫画から初めて生まれた、空前の面白さの、世界で勝負できる実写ドラマ。自由を求める若きアウトローたちの夢と冒険、希望と成長、決意と覚悟、挑戦と挫折、友情と絆が活写される、底抜けに楽しい、クールで熱いファンタジー・海洋冒険活劇なのだ!

 

“ONE PIECE”よ、“Stranger Things”(本ブログ第32回参照)に代わるNetflixの輝く星となるがいい。

 

原題:ONE PIECE
配信:Netflix
配信開始日:2023年8月31日
話数:8(1話 49-64分)

 

<今月のおまけ> 「心に残るテレビドラマのテーマ」⑰
Title: “I’m Gonna Be King of the Pirates / We Are!”
Artist: Sonya Belousova and Giona Ostinelli
Drama: “ONE PIECE” (2023)

『ウィーアー!』(”We Are!”)はアニメ版の初代オープニングテーマ。

 

※この作品の日本語字幕をJVTAの修了生が手がけています。
翻訳者のインタビューはこちら

 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。