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明けの明星が輝く空に 第184回 音楽が語るもの

たとえば皆さんが映画監督だったとしたら、人類の脅威である怪獣が倒される場面で、どんな音楽を劇伴(BGM)として使うだろうか。力強く勇壮なものか、勝利を予感させる晴れやかなものか。興味深いことに、『ゴジラ』(1954年)で使われたのは、そのどちらでもない。「海底下のゴジラ」と名付けられたその曲は、悲哀に満ちた鎮魂歌と呼べるようなものだった。

ゴジラは、ある科学者(芹沢博士)が、偶然作り出していた薬剤によって倒される。それは酸素を破壊し、物体を溶解させてしまうという恐ろしいもので、破壊兵器などに利用されてはならない。そんな思いから、芹沢博士は全ての研究資料を火の中に投じ、唯一製造方法を知る自分自身も、この世から消し去ることを決意する。潜水服に身を包み、海底で息を潜めるゴジラに近づく芹沢博士。この段階では、彼の意図は登場人物たちだけでなく、映画を観る者にも明かされていない。そして、ここで流れる曲が「海底下のゴジラ」だ。

芹沢博士はゴジラに十分近づくと、恐るべき薬剤の入った装置を起動し、命綱とともに空気供給ホースを切断。それが最後の姿となった。一方、ゴジラは海面に浮上し、苦しげな雄叫びをあげる。このカットでは「海底下のゴジラ」はほとんど聞こえないが、ゴジラが海中に没していくところで、再び聞こえてくる。ゴジラが忌むべき存在でしかなかったら、この演出は余計だろう。

ゴジラは核の犠牲者である。水爆実験による放射能を浴びて怪物化した、哀しい存在だ。東京を焼け野原にするのは、人間に対する復讐に違いない。しかし、それが許されるわけもなく、再び人間の手によって苦しみを与えられてしまう。なんと理不尽なことか。本多猪四郎監督は「海底下のゴジラ」を使うことで、ゴジラがどんな存在なのかを示しているのかもしれない。

残念なことに、2作目以降のゴジラは悲劇性が薄れ、作品は娯楽性を高めていく。それでも、ゴジラ登場場面で使われた楽曲の中には、どこか哀しげな調べを持つものもあった。それは、シリーズ4作目『モスラ対ゴジラ』(1964年)での、「ゴジラ進撃す」という一曲だ。管楽器などが重厚で不穏な響きを持つメロディーを奏でた後、主役をヴァイオリンに譲ったところで転調。なんとも叙情的な雰囲気を醸し出す。どこか哀しげな主旋律の裏では、低音のピアノの連打が心をざわつかせるような音を響かせてはいるが、それがなければ、まるで葬送曲のようだ。『ゴジラ』でも音楽を担当した伊福部明氏は、シリーズがエンターテイメント色を強めていく中、ゴジラの悲劇性を忘れないでほしいというメッセージを込めたのかもしれない。

ところで劇場映画とは違い、テレビ番組にはいわゆる主題歌があるが、作品のイメージ形成に大きな役割を果たすという意味では、劇判以上に重要だろう。その点、同じ1971年に放送が始まった『仮面ライダー』と『帰ってきたウルトラマン』は対照的だった。

奇しくも、両番組ともに主題歌を歌ったのは主演俳優だ。仮面ライダー役の藤岡弘(現在の表記は「藤岡弘、」)氏は、眉毛が太く、タフガイといったタイプ。声も低音で、野太かった。担当したのは第1~13話だけだが、藤岡さんの歌う「レッツゴー!!ライダーキック」は、ヒーローものの主題歌にふさわしく、トランペットの音色が印象的な力強い曲調だ。藤岡氏はプロの歌手ではないため、いい意味で無骨であり粗野。低音のパートになると、力を込めて声を出そうとしている様子が感じ取れるのだが、それが逆に歌唱に力強さをもたらしている。

ウルトラマンを演じたのは、残念ながら2023年に鬼籍に入られた団次郎(のち「団時朗」に改名)氏。英国系の血が入っていた団さんは、細身で背が高く、どちらかと言えば繊細そうな表情が印象的な俳優だった。主題歌「帰ってきたウルトラマン」は、『レッツゴー!!ライダーキック』に比べてキーが高く、児童合唱団と一緒に歌う団さんの、力みのない優しい歌声が、明るい曲調に合っていてなんとも爽やかだ。また控えめな伴奏の中には、ハープだろうか、ときおり澄んだ音が響いて、テレビの前の子どもたちを夢の世界に誘っているようでもあった。

これら2曲の主題歌には、両作品の方向性の違いが投影されていたと言っていい。アクション志向の強い『仮面ライダー』は、主人公が変身する前から敵との戦いが繰り広げられる。基本的には変身後も素手での戦いで、どちらかと言えば華麗ではなく泥臭い。それに比べると、ウルトラマンの戦いはスマートだった。もちろん、怪獣と取っ組み合って地面に転がりもするが、最終的には煌びやかな光線技で決着。ライダーキックに比べて虚構性の高いこの決め技は、(怪獣という虚構の象徴とあいまって)より現実から遠い世界に僕らを連れて行ってくれた。

ところで、特撮とは関係ないのだが、現在NHKで放送中の朝ドラ『あんぱん』の主題歌は、ドラマの世界観やテイストと合っているのだろうか?批判的な声がある一方、誰よりも作品を理解している主演の今田美桜さんが「ぴったりだと感じました」と言っているのだから、とやかく言うことではないかもしれない。しかし僕は個人的に、朝ドラを観てほっこりした気分を味わいたい。少なくともそういった意味からいうと、ちょっと違うなあというのが、正直な感想である。

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】アーティストと曲名を最近になって知った歌が、YOASOBIの「舞台に立って」。最初に聞いたのはパリ五輪のときで、アスリートたちが奮闘するハイライト映像とマッチしていてシビれました。多分、曲だけ聴いても感動しなかったでしょう。音楽と映像の相乗効果ってスゴイ。

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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 

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2025年4月期がスタート! 英日・日英 映像翻訳科クラス担当者からのメッセージ

2025年4月期がスタート。映像翻訳という新たな学習を始める新入生の皆さんや、進級してさらにスキルアップを目指す皆さんは、期待と不安でいっぱいのことと思います。JVTAでは「映像翻訳スクール部門」を設置し、専任のスタッフが受講生・修了生の皆さんをしっかりとサポート。今回は英日・日英の映像翻訳科の担当スタッフからのメッセージを紹介します!

◆英日映像翻訳

この春から新たに英日映像翻訳の学びを始める皆さま、そして進級して更なるスキルアップを目指す皆さま、いよいよ4月期がスタートしましたね!各種スキルをバランスよく身につけて プロへの道のりを歩んでいきましょう。充実した時間をお過ごしいただけるよう、皆さまの学びを全力で応援し、サポートしてまいります。クラス運営に携わるスタッフは全員JVTAの修了生です。ご不安なことやお困りごとがございましたら、私たちスタッフにいつでもお気軽にご相談ください。半年間どうぞよろしくお願いいたします!(山名)

◆日英映像翻訳

Welcome to JVTA! Our J-E Media Translation course is where you will learn all of the skills that you need in order to get started as a J-E media translator. Together we’ll work with a wide range of fascinating and fun Japanese media content (including films, documentaries, TV dramas, manga, and more!) and discuss the most effective approaches for translating it into English for a global audience. We hope you enjoy this very interactive and international class that brings together students from all over the world. Join us in making Japanese media content accessible to English-speaking audiences around the globe! (Jessi)

★コマ単位での受講も可能です!

JVTAではこれまでに英日映像翻訳、日英映像翻訳、映像翻訳Web講座を受講された方を対象に、現在の授業を1コマから受講することができる「コマ単位受講制度」を設けています。受講生、修了生の方でご興味のある方はぜひ、そちらもご活用ください。現在は全面リモート受講なので遠方からの参加も可能です。かつて通学で受講中に地方都市や海外への引っ越しで進級をあきらめた方も受講できますので、ぜひ学び直しにご利用くださいね。

◆コマ単位受講制度 の詳細はこちら

◆「コマ単位受講制度」タイプ別におすすめの講座を紹介

(英日映像翻訳編)はこちら

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今年も字幕翻訳でサポート!ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2025の見どころを紹介

米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭 「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2025」(SSFF & ASIA 2025)が5月28日(水)より開幕する。本映画祭は米国俳優協会(SAG )の会員でもある俳優の別所哲也氏が創立した映画祭。今年で27年目となり、年々その開催規模は大きくなっている。今年の映画祭のテーマは「creative active generative」。世界中のフィルムメイカーたちの ”creative” が集結する映画祭で、作品とオーディエンス、クリエイターと企業が出あい、新たな化学反応が生まれる場を”active” に創出し、さらに「生成AI」にも通じる新たなテクノロジーで新時代のクリエイティブを生み出していきたい(”generative”)という思いが込められたテーマである。

JVTAでは20年以上にわたり、本映画祭を字幕翻訳でサポート。今年も上映作品のほとんどを、100名以上のJVTA修了生が翻訳している。

本映画祭は映画上映だけでなく、豪華ゲストが登場するイベントや体験型ワークショップなども実施される。今回は、そんなSSFF & ASIA 2025の注目ポイントを紹介する。

TAKANAWA GATEWAY CITYで初開催【オープニングセレモニー】
今年の映画祭オープニングセレモニーは、2025年3月27日にまちびらきとなったTAKANAWA GATEWAY CITYで初開催。映画祭代表の別所哲也氏に加え、SSFF & ASIA 2025の審査員を務める映画監督の岩井俊二氏や、ドラマ『愛の不時着』に出演している韓流スターのオ・マンソク氏など、豪華ゲストが来場予定である。

同会場では「オープニングイベント」として、「JAPAN-KOREA Friendly Concert」も開催。こちらは別所哲也氏、オ・マンソク氏に加え、韓国で国民の夫と呼ばれるユ・ジュンサン氏、元宝塚歌劇団宙組トップスターの朝夏まなと氏、そして『ファントム』など数多くのミュージカルに出演する俳優の加藤和樹氏が出演する、一夜限りのライブコンサートだ。

この他、岩井俊二氏とノミネート作の監督が登場するトークイベントや、ハリウッド式の脚本術を学べるセミナーなども用意されている。

今年から新スタート【ホラー&サスペンス カテゴリー】
新カテゴリーとなる「ホラー&サスペンス」では、11人の日本人監督によるスリリングなホラー作品を上映。背筋の凍るような作品や不気味な雰囲気の作品を、30分以下で楽しむことができる。5月30日(水)には、表参道ヒルズ スペースオーにて一挙上映も実施。特別ゲストとして、ホラー好きで知られる乃木坂46の元メンバー生駒里奈氏と、人気YouTuber都市ボーイズのはやせやすひろ氏も登場し、“恐怖の夜”を盛り上げる。

韓流スターやK-POPシンガーが出演する【K-SHORT】
2025年は日韓国交正常化60周年ということで、韓国ショートフィルムの特別上映も開催。前述のユ・ジュンサン氏が監督したモキュメンタリー(ドキュメンタリー風のフィクション)である作品や、韓国のトロット(演歌歌謡)歌手として活躍し絶大な人気を誇るイム・ヨンウン主演のミュージックドラマなどが上映される。さらにユ・ジュンサン氏によるトークも実施予定だ。

今回紹介したイベントやプログラムは、SSFF & ASIA 2025のラインナップのほんの一部である。このほかにも様々な上映作品やイベントが用意されているので、詳細はぜひ公式サイトでチェックしてほしい。

また、一部の上映プログラムはすでにオンラインで視聴可能となっている。1本30分前後のショートフィルムは、勉強や仕事、家事の息抜きに見るのにもぴったり。開催期間中に1本でも多くの作品を見て、ショートフィルムの魅力を存分に楽しもう。


【開催概要】
ショートショートフィルムフェスティバル & アジア 2025
東京会場開催:2025年5月28日(水)~6月11日(水)
公式サイトは▶こちら

オンライングランドシアターでの上映
2025年4月24日(木)~6月30日(月)
視聴については▶こちら
※期間により配信プログラムが異なります

JVTAがサポートしている映画祭については▶こちら

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【2025年5月】日英OJT修了生を紹介します

JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。映像翻訳の仕事は映画やドラマだけではありません。特に日英映像翻訳ではマンガやゲーム、企業のPR動画など幅広いジャンルがあり、翻訳者が体験してきた職歴や趣味などを生かして活躍しています。今回はOJTを終え、日英の映像翻訳者としてデビューする修了生を紹介します。

◆蔦谷光香子さん(日英映像翻訳実践コース修了)

職歴:法律事務所にて翻訳を含むパラリーガル業務

【今後どんな作品を手がけたい?】

元々英語のコンテンツを見ることが多かったため、日本のコンテンツに詳しいと言えない反面、海外の映画やドラマを多く鑑賞することで身についた英語の自然な会話やセリフの流れを日英映像翻訳に活かせていると思っています。そのため、ヒューマンドラマなど、人間の何気ない様子を描いた映画やドラマを翻訳するのが夢です。

【日英翻訳の魅力】

必ずしも難しい単語をたくさん知らなくても、良い英語の字幕や吹き替えの原稿が作れるところが日英映像翻訳の魅力だと思います。例えば動詞を一つ差し替えるだけで伝わり方を大きく変えることができたり、語順を入れ替えることでニュアンスを調整できたりするところが英語でアウトプットすることの面白さだと感じています。

◆Gabor Sacharovskyさん(日英映像翻訳実践コース修了)

職歴:イベントスタッフ

【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】

After finishing my degree in Japanese Studies I decided to start looking for a job in translation. I went to live in Japan for a year after graduation and decided to do a course at JVTA during that time since it seemed a perfect fit for my goals of becoming a translator. I really enjoyed the course and how flexible it was due it being online. The high emphasis on practical knowledge was really beneficial as it made me feel ready for tackling actual jobs now that I finished the course. I have been hugely invested in Japanese media since I was a child. JVTA granted me the opportunity to see the type of work that goes into my favorite shows in the background when they bring them to a foreign audience.

【今後どんな作品を手がけたい?】

Since I am just starting out, I would like to translate videos from many different genres to hone my skills. In the long term though, I would like to focus on fictional stories, especially fantasy and sci-fi ones. Given the chance, I would also like to contribute to bringing yet-to-be-translated retro anime to the English-speaking world. I enjoyed the manga translation classes as well so I would like to try my hands at that too in the future. In recent years, I became interested in video games so translating them is another challenge I would like to tackle in the course of my career. Lastly, I would be very happy to take on projects that involve my native language, Hungarian.

★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!

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普段見ないジャンルにチャレンジするも良し!ゴールデンウイークは映像作品を楽しもう

JVTAの映像翻訳科では、JVTAの受発注部門で活躍する映像翻訳ディレクターをはじめ、フリーの映像翻訳者、映像以外にも幅広い分野を手掛ける翻訳者、さらに脚本家や日本語ライティングのプロフェッショナルなど、映像翻訳に必要とされる様々なスキルを指導できる講師陣が教鞭をとっています。

今回は2024年10月から加わった新講師の4名に、連休中に見たい映像作品やおすすめの映像作品についてリサーチ。映像翻訳のプロはどんな作品を見ているのか?映像翻訳者として“つい見てしまう”ポイントは?などを聞きました。「連休中に映像作品を何か見たいな」と思っている人は、ぜひ参考にしてみてください!



英日映像翻訳科 講師

伊原実希
英日映像翻訳科 総合コース・Ⅰ
「字幕翻訳の基礎①」担当

Q1.このゴールデンウイークに見たい映像作品は?
今さらながら数年前に大ブームになったドラマ『silent』(2022)を一気見したいです。
主題歌の「Subtitle」は、私自身が案件やプライベートを問わず、伝えたい思いが空回ってうまくいかない時によく聴いていたので、本作も自ずと見たいリストに入っていました。最近、吹き替え台本をもとにバリアフリー字幕を作る案件に携わるようになり、本作を思い出しました。作品内では手話に字幕がつくシーンも多いので、ながら見ではなく集中して見られそうなこのゴールデンウイークにどっぷり作品に浸かりたいと思います。

Q2.子どもの頃や若い頃に影響を受けた映像作品は?
ディズニーの『ムーラン』(1998)。型に囚われず、なりふり構わず、知恵とユーモアで道を切り開くムーランに憧れ… 学生時代はビン底メガネにお下げ髪、色違いのムーミンのトレーナー2枚を着まわして、27時間ぶっ通しで受験勉強に明け暮れる生活を送りました。全力だからこそ見える景色があると信じさせてくれた人です(JVTAではそんなムーランの実写版みたいな人にたくさん出会いました)。くじけそうになったら40:18~のシーンを見つつ、学生時代を思い出して、「私もムーラン!」と自分を奮い立たせています!

Q3. 映像作品を見るとき、「職業病」でついつい見てしまうポイントは?
休憩しようと思って見始めたドラマや映画でも、改行位置、表記揺れ、3枚字幕などがついつい気になってしまうことはあるのですが、JVTAのYouTube番組「JVTA+」で聞いたとある発言をきっかけに「いいところ探し」をする習慣をつけるようになりました。誰よりも作品と言葉に向き合ってきた人が紡いだ字幕を大切にできる人でありたいです。

田中葵
英日映像翻訳科 実践コース
「スポッティングの演習」担当

Q1.このゴールデンウイークに見たい映像作品は?
『アマチュア』(2025):アカデミー賞で主演男優賞を受賞したラミ・マレック主演作品。妻を殺された殺し屋の “アマチュア”が、持ち前の頭脳を武器に復讐をしていく新感覚のスパイ映画。アクションが大好きなので、予告映像を見て絶対に劇場で見たい!と思いました。また、『マトリックス』シリーズでおなじみのローレンス・フィッシュバーンも出演しているので、アクションファンは必見かと思います!
『52ヘルツのクジラたち』(2024):原作は町田そのこさんの小説です。映画化されたとは知らずに、原作を今ちょうど読んでいる最中です。“ヤングケアラー”“児童虐待”“ジェンダー”など日本で今問題になっていることがリアルに描かれている様子がテキストから伝わってきて、ぜひ映像でも確認したいと思いました。

Q2.子どもの頃や若い頃に影響を受けた映像作品は?
『トイ・ストーリー』シリーズは全部大好きですが、中でも『トイ・ストーリー3』(2010)は別格です。
「おもちゃって動けるし、話せるんだ!」と、当時人形が大好きだった私は、人形が生きていると信じていました(笑)。この作品のクライマックスで大学生になったアンディがウッディやバズなど、おもちゃを手放す様子が描かれています。人形たちを捨てるのではなく、小さい頃のアンディと同じようにずっと一緒にいてくれる新しい持ち主を見つけて引き継ぐというアンディの人形を思う気持ちに心を打たれました。人形だけではなく、モノを大切に扱うということをアンディから教わったと思います。

Q3. 映像作品を見るとき、「職業病」でついつい見てしまうポイントは?
「あんた」「あなた」などある人物に対する呼び方が揺れていたり、「全て」「すべて」など用語の表記が揺れていたりしないかは見てしまうかもしれません。あとは、3枚字幕になっていないか(たまに4枚字幕とかも見ますが…)も見てしまいますね。

片柳伊佐
英日映像翻訳科 実践コース
「模擬発注 ボイスオーバー②」担当

Q1.このゴールデンウイークに見たい映像作品は?
気になっていたのに見られていなかった作品を見たいです。日本語作品では、新たにドラマ化された『阿修羅のごとく』(2025)。原作、ひいては向田邦子ファンなので!見始めたら止まらないと思って避けていましたが、全7話を一気見したいです。海外作品ならドラマシリーズ『メディア王~華麗なる一族~』(2018~2023)。(理由は次の質問への回答をご覧ください。)実在のメディア王マードックがモデルと言われており、その内幕をのぞき見る気持ちになりそうです。

Q2.子どもの頃や若い頃に影響を受けた映像作品は?
NHK教育テレビの『海外ドキュメンタリー』(1982~1999)(現在の『ドキュランドへようこそ』の前身の番組)の一作品です。今回調べたところ、「メディアと権力」という3回シリーズの「(2)テレビがアメリカ政界を変える」の回だったようです(1993年5月放送)。メディアが社会に与える影響に衝撃を受け、のちに大学でメディア論を専攻するに至りました。今でもメディアやジャーナリズムがテーマの作品に強く惹かれます。(古くは『大統領の陰謀』(1976)、最近だと『セプテンバー5』(2024)。)

Q3. 映像作品を見るとき、「職業病」でついつい見てしまうポイントは?
日本のドキュメンタリーで、海外の有識者や専門家へのインタビューに日本語字幕が付いている場合、1行文字数を数えてしまいます。「結構文字数多いけど、意外と読み切れる」なんて思うことも。一方、吹き替え作品で気になるのは、セリフの言い回しやスピード、間の取り方などです。ちょっとした変化でニュアンスが出たり、キャラクター間の違いが際立ったりするのが、魔法を見ている(聞いている?)ようです。

日英映像翻訳科 講師

麻野祥子
日英映像翻訳科 総合コース
「スポッティング実習」担当

Q1. What visual media content do you want to watch over the Golden Week?
I have been meaning to watch Adolescence, a British series that has been streaming on Netflix since March this year. It is a four-part mini-series about a 13-year-old boy who is arrested for the murder of his classmate, and the show has received rave reviews – it is said to be a major contender for this year’s Emmys. I have also recently been trying to watch award-winning films that I hadn’t yet watched, including Everything Everywhere All at Once (2022) and Spider-Man: Across the Spider-Verse (2023). Both are, at the time of writing, available on Netflix in Japan, so I’d like to tick them off my to-watch list.

Q2. What visual media content were you influenced by in your childhood or youth?
Shindler’s List (1993), because it was one of the films that I had to study for English class at college (high school). These film study classes were the first time I learned to look closely at a film and think about what the intention behind each scene or dialogue or camera angle etc. was, so I think it left a lasting impact on me. On a more personal level, I remember watching Frances Ha (2012) as a uni student, and it becoming one of my favourite films. I think it’s a film that a lot of young people can relate to.

Q3. How does your work influence what points you tend to focus on when watching visual media content?
This isn’t a specific “point” that I tend to notice, but I like to watch German shows or films from time to time, and whenever I do, I usually put English subtitles on. Sometimes, when there is a particular phrase in the original dialogue, such as a joke or something that would be difficult to translate, I go back to the beginning of the scene, switch the subtitles to Japanese, and play the scene again to see how they translated it in the Japanese version. Then I switch back to the English subtitles and resume watching the show. It’s interesting to compare the English and Japanese translations, so I can’t help but go back and check, even if it takes longer for me to finish watching the episode.

皆さんが「見てみたい」と思う作品はありましたか?

好きなジャンルの映像作品はもちろん、普段あまり見ないタイプの作品を見ることも、映像翻訳の学習に大いに役立ちます。連休中も楽しみながら、映像翻訳のセンスを磨いていきましょう!

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【英日映像翻訳&日英映像翻訳科 次期開講は2025年10月を予定】映像翻訳に興味があれば、リモート個別相談会へ!

2025年1月12日(日)より、英日映像翻訳 総合コース・Ⅰの日曜集中クラスを開講中!
最終の受付締切は1/16(木)

字幕、吹き替え、多様なジャンルを学べるJVTAで
映像翻訳のプロを目指す!

日本映像翻訳アカデミー(JVTA)は、字幕・吹き替えの翻訳者として活躍するために必要なスキルを学ぶ職業訓練校です。英語から日本語へ翻訳する英日映像翻訳と日本語から英語へ翻訳する日英映像翻訳があり、目的に合わせたコースを選んでいただくことができます。コース修了後、当校独自のトライアル(プロ化試験)に合格すれば、併設する翻訳受発注部門よりお仕事を紹介させていただくので、学んだスキルを実践で生かしていただくことができます。

通常の、JVTAの開講月は例年4月と10月ですが、「10月の入学に間に合わなかった」「4月より早く学習をスタートしたい」という声にお応えして、2025年1月に「英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ」の日曜集中クラスを開講します!
ご興味をお待ちの方は、「リモート個別相談」にご参加ください。映像翻訳の世界やJVTAでの学びについて、深く知っていただくことができます。
※1月入学に向けた体験レッスンが含まれる「リモート・オープンスクール」は、終了しました。4月入学を対象にした開催は1月下旬以降を予定しています。

【こんな方はぜひご参加ください】
・映像翻訳に興味がある
・語学力を生かせる仕事に就きたい
・好きな映画や海外ドラマに関わる仕事に就きたい
・プロの映像翻訳者を目指したい
・フリーランスとして活躍したい
・手に職をつけたい
・映像翻訳の需要に関して知りたい
・字幕翻訳にチャレンジしてみたい


英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ コースの詳細は▶こちら
その他、コースや入学に関するよくあるご質問は▶こちら
会社概要▶こちら

2025年1月 英日映像翻訳科 日曜集中クラスご検討者向け

リモート個別相談

1月開講 日曜集中クラスをご検討の方は、「リモート個別相談」へお申し込みください。お申し込み後、ご入力いただいたメールアドレス宛にご案内をお送りします。
尚、このページで入力いただいた内容はSSLで暗号化されて送信されます。

リモート個別相談では、ご希望の日時で当校スタッフが入学に関するご案内のほか、コース選択や映像翻訳学習・修了後の進路などの不安や疑問にマンツーマンでお答えします。
※リモート個別相談では字幕翻訳の体験レッスンはございません。
※2025年1月の英日映像翻訳科 日曜集中クラスは1月16日(木)まで入学可能です。

※映像翻訳のプロとして仕事をする際の目安となる英語力については▶こちら

※入学には「リモート個別相談」の参加が必須です。


【参加条件】
英語力・翻訳経験不問
※パソコンやタブレットなどで安定して動画配信サービスなどを視聴できる環境が整っていれば、どなたでも無料でご参加いただけます。
 

【参加形式】
リモートのみ(Zoom )
※音声を聞き取りやすくするために、イヤホン・ヘッドホンの使用をお勧めします。また質疑応答のタイミングもありますので、マイクをお持ちでしたらご用意ください。
 


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皆さんは映画祭に参加したことがあるだろうか?

映画祭といえば、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)が日本でも大きく報道されるが、日本国内でも毎年多くの映画祭が開催されている。米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」やLGBTQに関する作品を集めた「レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」、世界の難民問題にフォーカスした「難民映画祭」など、そのラインナップは多彩だ。

短期間で世界の映画が一斉に上映される映画祭では字幕が必須となる。JVTAも上記の映画祭をはじめ、毎年いくつもの映画祭を字幕制作でサポートしており、JVTAで学んだ多くの映像翻訳者が活躍している。

◆2024年 JVTAの映画祭サポートはこちら

映像翻訳者として豊富な経験を重ね、JVTAで講師も務める屋鋪桂子さんは、映画祭は映像翻訳者としての原点や初心を思い出せる貴重な場だと話す。屋鋪さんは今年も4月開催のダマー国際映画祭の上映作品10作のチェックを担当し、会場に足を運んだばかりだ。

「私がデビューしたての頃、『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』で短編映画を担当させていただく機会がありました。友達を大勢引き連れて会場入りし、誇らしげに自慢したりして…。振り返れば小っ恥ずかしい行動ですが、今も鮮明に残る楽しい思い出です。自分が作った字幕をスクリーン上で観るのは、他と比べようのないステキな体験です。映画祭のお仕事を担当された方は、ぜひ会場まで足を運んでみてください。一生の思い出になることは間違いありませんから。」(屋鋪桂子さん)

2025年のダマー国際映画祭の上映作品『A Summer’s End Poem』の日本語字幕を担当した修了生の河井敦さんは今年、初めて映画祭に参加した。自分の作った字幕がどのように、どんな人に届いているのか。それを改めて知ることができた貴重な体験となった。

河井敦さん ダマー国際映画祭の会場にて

「自分の作った字幕が大きなスクリーンに映っていて、それを他の観客が暗い劇場の中で観ている…。映画好き・映画館好き・字幕好きにとっては忘れられない体験となりました。

上映中は、あの表現で伝わった?あの字数で読み切れた?あのフォントのほうが合うのになあ…。あの人、今あくびした?と気が気じゃなかったです。でもストーリーの要所要所で笑いやどよめきが起こると、そんな心配は、『よかった、伝わってた~』という安堵と達成感に変わりました。」(河井敦さん)

◆関連記事はこちら

河井敦さん ダマー国際映画祭の関係者の皆さんとの集合写真に参加

映像翻訳者が映画やドラマの制作者と会える機会は極めて稀だ。映画祭には監督や出演者、プロデューサーなど多くの映画関係者が集う。作品上映後にトークショーがあったり、なかにはロビーで関係者と話したりできることもある。

2024年の難民映画祭のオープニングでは、JVTAが字幕を手がけた『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~』が上映された。会場にはこの作品の字幕チームでリーダーを務めた翻訳者の児山亜美さんが駆け付け、トークショーに登壇したタマラ・コテフスカ監督 とジャン・ダカール撮影監督と対面する機会に恵まれた。

児山亜美さん 難民映画祭の会場にて

「お話できたのは少しの時間でしたが、目を見て感謝の言葉を述べていただき、翻訳者として身に余る光栄でした。トークイベントでは、力強い言葉で『希望はある』とおっしゃられた姿が印象に残っています。映画の力を心の底から信じる監督の思いを生で聞き、翻訳者である私もとても刺激を受けました。」(児山亜美さん)

自分が字幕を担当した作品の受賞シーンに立ち会えた人もいる。2017年の「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」では、修了生の磯貝さおりさんが英語字幕を担当した『カランコエの花』(中川駿監督)が見事グランプリを獲得。この作品は、現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』で主役を務める今田美桜さんがヒロインを演じた名作だ。翻訳者の磯貝さんは会場で受賞の瞬間を同作の関係者の皆さんと共にわかちあい、記念撮影にも参加することができた。

「お写真の撮影に私も入れていただき、監督が『翻訳をしてくださった方で、スタッフです』 と出演者の皆さんにご紹介くださったときは、本当に嬉しかったです。私が『(優勝されて)少し、ほっとしました。訳させていただいて、有難うございました』と申し上げたところ、「いやいや、“少し”ではないですよ!」とのお言葉。翻訳者としてこうした場に立ち会えて本当に光栄です。』(磯貝さおりさん)

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これから映画祭が目白押しの季節がやってくる。今まさに映画祭の上映作品の字幕を作っている人もいるかもしれない。映像翻訳者ならぜひ映画祭の会場に足を運び、スクリーンで映画を味わってほしい。そこには新たな世界が広がり、思いもしなかった出会いが待っているに違いない。

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~コマ単位受講のススメ④~需要が高まる「ゲーム翻訳」の知識を身につける

~コマ単位受講のススメ④~
映像のジャンルに合わせた英語字幕をつくる
おすすめ講座:日英映像翻訳科 総合「ゲーム翻訳」

【JVTAの「コマ単位受講制度」】
JVTAでは2024年10月期から、修了したコースの授業をスポットで受講できる「コマ単位受講制度」がスタート。これにより、復習したい授業を改めて受けたり、自身が受講していた時にはなかった新しい授業を受けることが可能になりました。映像翻訳者としてさらにステップアップしたい方やトライアル合格を目指して弱点を克服したい方などにおすすめです!

日本のマンガやアニメの海外人気が高いことは、今では広く知られている。しかし海外で注目を集める日本のコンテンツ産業は他にもある。その1つが「ゲーム」である。2024年9月に開催された東京ゲームショウは、出展者数とブース数が共に過去最大規模となった。海外からの出展が年々増加していることからも、日本のゲーム産業に対する注目度の高さがうかがえる。

海外進出に向け、必要になるのは翻訳である。ゲームの翻訳は、実は映像翻訳との親和性が高い。そこでJVTAはゲーム翻訳の今後の必要性を鑑み、2024年10月期より日英映像翻訳科の総合コースに新しいゲーム翻訳の授業を導入した。

授業を担当するのは、ゲームおよびアニメ翻訳を専門とする日英翻訳者であるデビン・ニール講師だ。これまでに多くのゲーム・アニメの翻訳実績があり、『スターオーシャン 6 THE DIVINE FORCE』、『ポッ拳』などのゲームや、『未来少年コナン』、『ツルネ ―風舞高校弓道部―』、『宝石の国』などのアニメ翻訳を手掛けている。過去にJVTAのサマースクールにて、ゲーム翻訳を題材にしたセミナーに登壇した経験もある講師だ。

授業は前半でゲームのローカライズに関する裏側をニール講師が解説し、後半で受講生が事前に取り組んだ課題に対してフィードバックを行うという形式で進む。ゲーム翻訳にはナレーションやキャラクターの会話だけでなく、登場するアイテムの名前やその詳細、エラーメッセージやコマンドなどシステムに関わるテキスト、時にはゲームの販売に関わる資料翻訳などもあり、多岐にわたる作業となる。受講生は前課題としてそれらの一部を翻訳する。

ストーリーラインやキャラクターの性格を考慮して言葉を選ぶ点、また字数に制限がある点は映像翻訳と同様である。しかしゲームではプラットフォームやテキストを表示させる場所によって枠の大きさが様々であり、どの位置にどのように文字が入るのかを常に考えて翻訳することが必要だとニール講師は解説する。またゲームならではの「タグ」(キャラクターやアイテムの名前など、ゲームのテキスト内で状況によって変化する要素を指定するためのコード)が入ったテキストの注意点など、一人一人の原稿を見せながら、細かい点までフィードバックをしていく。

「ゲームに詳しくないと翻訳は難しいのでは」と思う人もいるかもしれないが、本授業で使われる題材は日本の国民的アニメをテーマにしたゲームのため、ゲーム初心者でも取り組みやすくなっている。実際に受講生からは、「ゲームにはあまり触れてこなかったけど、作品自体を知っていたので楽しく課題に取り組めた」という声があった。

近年はJVTAの受講生からも、「ゲーム翻訳に興味がある」という言葉を聞くことが多くなった。日英の翻訳業界において、ゲーム翻訳のニーズは今後もますます増えていくはず。すでに日英映像翻訳者として活躍している人が仕事の幅を広げるためにも、ゲームの翻訳の知識を身につけることはおすすめである。

英日映像翻訳科のコースディレクターであるジェシー・ナス講師より、メッセージをもらいました!


コマ単位受講制度の受講条件やカリキュラムは▶こちらからご確認ください

【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】「読解力は漠然とした能力ではなく、テクニックだと実感しました」

JVTAの英日映像翻訳の総合コース・Ⅰのカリキュラムには、英文解釈力を高めることに特化した授業がある。指導するのは、ロジカルリーディング力 強化コース主任の山根克之講師。この授業では、字数制限などに囚われず、まずは原文を正しく理解した上で翻訳原稿をよりブラッシュアップしていくことにフォーカスしている。英語解釈力に苦手意識があった修了生のJ.N.さんは、この授業で山根講師の丁寧で論理的な説明に魅かれ、さらに深く学びたいと映像翻訳の本科修了後にロジカルリーディング強化コースを受講。翻訳への取り組み方が変わったという。

◆なんとなく分かったつもりで訳して誤訳を指摘された

ロジカルリーディング力 強化コースの修了生の多くが、「これまではなんとなく分かったつもりで訳していたことに気づいた」と話す。J.N.さんも授業の中でそれを実感する。

「英文をざっと読んで全体の意味をつかんだと思い、勢いですらすら訳した時ほど、思い込みによる誤訳を指摘されることが多かったです。逆に、意味が取れず悩んで絞り出した訳の方が実は訳としては正しかったこともありました。正しく解釈した後で、よりこなれた日本語訳にするために講師が一緒に考えてくださったことも印象に残っています。」(J.N.さん)

◆少人数で丁寧な講評がもらえる

映像翻訳のコースに比べると比較的小人数でアットホームな雰囲気もこのコースの特徴だ。映像翻訳のコースで、英文の解釈のついて細かく質問することは憚れると遠慮してしまう人もいるが、このコースではそこにフォーカスしているため、どんな質問もできる。

「少人数であったこともあり、講師から一人ひとりの訳に対してじっくり講評をいただけたことがとてもありがたかったです。受講生は真面目な方ばかりでしたが、比較的おっとりした和やかな雰囲気でした。また、振替として他の曜日のクラスに参加した時は、普段のクラスと雰囲気がかなり違い、よい意味で刺激をもらいました。」(J.N.さん)

◆読解力は漠然とした能力ではなくテクニック

原文を正しく理解し、翻訳においてなぜその言葉を選んだのかという根拠を自らの言葉で説明する。このコースではそのトレーニングを徹底的に行っていく。J.N.さんは受講する中で実践的なプロのスキルを学んだ。

「読解力は漠然とした能力ではなく、時制などの文法事項、指示語、対比表現と言った具体的なことに注意することで、テーマや文脈が見えてくる、いわばテクニックでもあるということを実践として学びました。苦手意識の強かった読解力や英文解釈力について、どこに問題があり、どう対策をすればよいかが見える化されたことは、今後の学習のための大きな助けとなりました。英文の細部にまで細心の注意を払うことと、テーマや全体の流れをつかむことは別々ではなく、相互補完的な作業であると自分なりに理解し、トライアルでも意識して取り組むようにしています。また講師は日本語を含め 文章を読むことと、日本語(表現)力の大切さを強調されていましたので、新聞やいろいろなジャンルの本を読むように心がけています。」(J.N.さん)

ロジカルリーディング力を身につけることで、苦手だった英文解釈力を克服したJ.N.さん。今後の翻訳原稿には自信を持って取り組めるはずだ。プロデビュー前に確かなスキルを身につけたい人にぜひ受講をおすすめしたい。

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【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】一人ひとりの翻訳の傾向を把握した的確なフィードバックで自分の弱点に気づけました

ロジカルリーディング力強化コースを受講する皆さんは多くがトライアル合格を目指している。しかし、修了生の川瀬綾乃さんが受講した時は、すでにトライアルに合格し、OJTを終えたタイミングだった。それでもさらに学びたいと思ったきっかけは、映像翻訳の本科で受講した山根克之講師(同コース主任)の授業だったという。とても分かりやすく、英文の解釈や伝わりやすい日本語を書くという点において、翻訳原稿のさらなるブラッシュアップにつながると確信したと話す。ロジカルリーディングを集中的に学んでどのように翻訳に取り組む意識や原稿が変わったのか、話を聞いた。

◆自分の訳文について論理的に考え、その根拠を伝える力がついた

ロジカルリーディングは文字通り、英文の文法および構成を理解した上で論理的に読み解いていくというスキルだ。映像翻訳者は常に映像に合わせた尺や字数制限に向き合いながら情報の取捨選択をする必要があるが、原文を読む段階で正しい解釈ができず、深く考えることができていないと、的確な訳文は作れない。

「授業では何かを頭ごなしに否定したり指摘したりすることはありません。受講生は自分の訳について、どうしてそうしたのかを説明する機会をもらえるため、論理的に考える力や、他人に自分の訳の根拠を伝える力を養えます。実際クラスで幾度か講師と受講生とで意見を交わし、新たな解釈を見つけるという場面もありました。」(川瀬綾乃さん)

◆一人ひとりの翻訳の傾向を把握した的確なフィードバック

受講生は事前に前課題に取り組み、クラス内では山根講師がそれを基により良い訳文にするためのフィードバックを行う。最後の授業で、クラス全員のそれぞれに贈ったこれまでの総評とも言える言葉があまりにも的確で驚いたと川瀬さん。

「常に的確にそして子細に、解釈の道筋を示していただけるので“指摘”や“フィードバック”こそが大きな糧になると感じました。山根講師はその人がもつクセや訳の傾向、ウィークポイントなどを細かく把握してくださっていたのです。私が頂いたアドバイスで特に印象に残っているのが、『原文のワードチョイスや表現に疑問を持って調べてみないと、自分の知識の外にある情報を見落としますよ』という言葉です。確かに私は文字通りの意味だけを見て訳し、その裏にある別の意味や背景、意図に気づけていないことが多くあり、調べ物の大切さが身に染みました。」(川瀬綾乃さん)

◆真剣だが和やかな雰囲気のクラス

このコースの修了生の多くが「とても質問しやすいクラスだった」と話す。川瀬さんも毎週、授業の時間が楽しみでならなかったという。

「受講生も講師も真剣で、発言を求められることも多いのですが、クラスには、みんなが思わず微笑んでしまうような温かさと和やかな雰囲気がありました。」(川瀬綾乃さん)

◆解釈に自信が持てたら「がんじがらめ」だった訳が自由になった

ロジカルリーディングを受講する前は、「情報を一字一句正確に、誤訳をせず、意訳を避け、“ちゃんと”訳さなければ!」という気持ちが強く、良くも悪くも「がんじがらめ」だった。受講を経て、それはそもそも解釈に自信がなかったからだということに気づいたという。

「きちんと解釈ができて、訳に根拠を持てると、情報の取捨選択が正しくできるようになります。その文章が伝えたいことは何で、段落の中、または全体の流れの中でどういった役割を果たしているものなのかが理解できるからです。そうすれば、『意訳』も『意訳』ではなくなり、原文の意図が訳文で伝わりやすくなります。この授業を通して英文解釈の大切さに気づけたことは、「がんじがらめ」だった私自身の訳を少し自由にしてくれたように思います。プロとして翻訳に取り組むうえで大きな指針になりました。」(川瀬綾乃さん)

トライアルに挑戦中の人はもちろん、すでにプロデビューしているがさらなるスキルアップを目指したい人にもおすすめのコースだ。

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