6日間で9本の通訳を完走!映画祭のステージ通訳で見えた、映像翻訳と通訳の共通点
「映像翻訳の基礎が通訳に役立つ」。そう実感を込めて話すのは、JVTA修了生である内藤裕子さんだ。
内藤さんはドイツのベルリン在住。英日・日英の映像翻訳を学び、両方のトライアルに合格。現在は英日・日英の字幕翻訳や英日の文書翻訳、さらに英語でのコンテンツライティングなども手掛けている。加えて近年は、通訳者としてもキャリアの幅を広げている。
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6日間で9ステージを通訳!自らの売り込みでつかんだチャンス
内藤さんが通訳者として大きく活躍したのが、今年の6月にドイツのフランクフルトで開催された世界最大級の日本映画祭「ニッポン・コネクション」(以下、ニチコネ)だ。ニチコネでは日本で大ヒットした作品や話題作をはじめ、さまざまなジャンルの日本作品を6日間にわたって上映。日本から監督や俳優、プロデューサーなども多く駆け付け、日本のクリエイターとヨーロッパの観客が直接コミュニケーションをとれる機会が多く設けられていることも魅力のひとつだ。
内藤さんは今回のニチコネで、JVTAが主催する字幕翻訳ワークショップに講師の一人として参加。さらに上映会のQ&Aとアワード授賞式で、計9本のステージ通訳を担当した。この通訳としての活躍のきっかけは、「ゆるい売り込み」だったという。
「2月に開催されたベルリン国際映画祭にニチコネの関係者の方が来るという話を聞いたので、直接会いに行きました。そこで『字幕翻訳ワークショップを担当します』と名刺を渡しつつ、『通訳もできます』とお伝えしたんです。そうしたら、後日お声がかかりました」(内藤さん)
各国からの観客の質問を想定し、入念に事前準備
担当する上映会の作品情報が内藤さんに届いたのは、開催の10日ほど前だった。映画上映の通訳は8本担当するため、約10日でそのすべてを鑑賞し、さらに周辺情報をできる限り調べて準備。『いもうとの時間』(鎌田麗香監督/2024年)という上映作品では、周辺情報のリサーチを特に念入りに行ったという。
「この作品はテーマが『冤罪』だったので、裁判関係の用語や日本とドイツ、さらにヨーロッパの司法制度の違い、近年社会的に指摘されているポイントなどを調べておきました。実際に本番のQ&Aでそのような質問が出てきたので、準備をしておいて良かったと思います」(内藤さん)
映像翻訳においても、リサーチは重要な作業のひとつだ。映像翻訳者は翻訳の際、作品の内容だけでなく制作者の情報、出演者の情報、作品テーマに関する周辺情報等を調べ、翻訳の参考にすることが多い。映像翻訳者としてすでに活躍している内藤さんだからこそ、ポイントを絞って効率的なリサーチができたのだろう。

実際に経験して痛感した、字幕翻訳と通訳の類似性
映像翻訳、特に字幕翻訳では、文字数制限などの厳しいルールがあることから、一言一句をそのままを訳して文字にすることは難しい。そのため映像翻訳者は、「このセリフは何を一番言いたいのか?」「このシーンではどの情報がもっとも大切なのか?」を常に考え、言葉の取捨選択をする。このような情報の取捨選択が、通訳の現場でも役に立ったと内藤さんは言う。
「話者は何を一番強く伝えたいのか。それを汲み取るために、字幕制作で培った情報の取捨選択がとても役に立ったと思います。情報の優先順位を考えながら適切に伝えるという点では、字幕翻訳でも通訳でも同じだと思いました」(内藤さん)
言葉を訳すだけじゃない。ステージ通訳で必要なこと
通訳や翻訳というと、「言葉をひとつひとつ訳せばいい」というイメージがあるかもしれない。しかし前述のとおり、映像翻訳でも通訳でも、「情報のポイントを掴んで分かりやすく伝える」ための表現力が必要となる。加えて、「場の雰囲気を壊さないことも大事だった」と内藤さんは付け加える。
「監督や俳優が観客と直接話しているように感じられるよう、話のテンポやテンションを話者にあわせることを意識しました。話の中で分からない単語が出てくると、話し方に自信がなくなったり声が小さくなったりしそうになります。でも、そこはこらえて堂々と話す。自分が話者になったつもりで、しっかりとした声を出して通訳することが大事です。話者が自分に『憑依』する感覚で取り組みました」
元々、人とコミュニケーションをとることが大好きだといい、会話の仲介役のような通訳は自分に向いているとも感じている。今回のニチコネに共に参加し、ステージ通訳を見学したJVTAの映像翻訳ディレクターである麻野は、内藤さんの通訳について「ステージ上だけでなく、前後のコミュニケーションも素晴らしかった」という。
「登壇前後のコミュニケーションの取り方によっても、通訳する相手に安心してもらえる、心強いと思ってもらえるのだと内藤さんを見て感じました。特に今回は若い監督の方も多く、登壇前は非常に緊張している様子でした。内藤さん自身も通訳に緊張を感じていたそうですが、その様子を周りに伝えない姿はまさにプロフェッショナル。『信頼感』や『コミュニケーションの取りやすさ』も、内藤さんが通訳として頼られる要素だろうと感じました」(麻野)
語学人材が目指してほしい“コミュニケーションの仲介者”
今回内藤さんが務めた「ステージ通訳」は、まさしくJVTAが近年提唱している「新・通訳(バイリンガル・コミュニケーター)」の領域だ。JVTAでは「英語で伝える力」と、人と人をつなぐ「コミュニケーション力」を併せ持つ人材を「新・通訳」と定義している。高い英語力・日本語力を駆使し、持ち前のコミュニケーション力や異文化知識を活かして活躍する内藤さんは、まさに「新・通訳」だ。
今回の内藤さんの経験は、映像翻訳で培った「情報の伝え方」や「リサーチ力」が、形を変えて通訳の現場でも強力な武器になることを示している。JVTAで映像翻訳を学んだ人はもちろん、自身の語学力やコミュニケーション力を活かしてキャリアの可能性を広げたいと考えている人は、ぜひ「新・通訳(バイリンガル・コミュニケーター)」への一歩を踏み出してほしい。
JVTAのロサンゼルス校では現在、「新・通訳」を育成するための講座を各種開講。2026年10月からは、3ヵ月間で新・通訳を学ぶ「新・通訳(バイリンガル・コミュニケーター)養成講座 アドバンス」を開講する。アメリカ国外からのリモート受講も可能で、ロサンゼルスの第一線で活躍している通訳者の授業を世界中から受けることができる。
エンターテイメント系の教材を使用する水曜クラスでは、通訳トレーニング以外に「効率の良い事前準備」や「通訳に必要な発声法」も学べるようになっている。まさしく、内藤さんがステージ通訳を通して大切だと実感したポイントが網羅されたカリキュラムだ。
身近な医療系の教材を使用する土曜クラスでは、通訳トレーニングや医療関係の現場での事前準備方法に加え、専門用語や緊急時の対応についても学ぶ。
水曜クラス・土曜クラスを同時に受講することも可能。講座内容や受講について、少しでも気になる方は無料のリモート個別相談へ。
「新・通訳(バイリンガル・コミュニケーター)養成講座 アドバンス」を2026年10月開講!リモート個別相談を実施中。
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◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
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