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【第18回難民映画祭】翻訳者に聞く見どころ③『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』

【第18回難民映画祭】翻訳者に聞く見どころ③『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』
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「第18回難民映画祭」が11月6日(月)からオンライン配信と東京上映のハイブリッドで開催中だ。この映画祭は、世界で紛争や迫害によって家を追われた人々にフォーカスした作品を上映し、難民支援の理解を深めることを目的として、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)駐日事務所の主導で 2006年から開催(2017年からは国連UNHCR 協会が主催)。これまで260作品 を上映し、10 万人以上の人たちが参加してきた。JVTAは協賛企業であり、第3回目の2008年から字幕制作にボランティアで協力し、多くの受講生・修了生が翻訳者ならではのカタチでサポートを続けてきた。今年は日本初公開作品のうち、3作品の日本語字幕をJVTAの修了生23人がチームで担当、2作品はJVTAの指導により、明星大学と青山学院大学の学生が日本語字幕を手がけている。
 

今年の上映作品はすべてドキュメンタリー。さまざまな地域でそれぞれの困難に立ち向かう人々を追っている。今回は『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』の見どころと翻訳秘話について、翻訳チームリーダーの奥田智香子さんとサブリーダーの磯道風寧さんに話を聞いた。
 
翻訳チーム
秋庭 レイさん
磯道 風寧さん
奥田 智香子さん
重松 和美さん
髙橋 郷子さん
水木 美和子さん
山口 えみ子さん
吉岡 真理恵さん

 
※『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』 予告編

アフガニスタン出身で世界的に活躍している歌手、アリアナ・サイード。タリバン政権下の祖国では、女性の教育や職業選択、公共の場でのふるまいなどを厳しく制限されてきた歴史がある。そんな中で彼女はアフガニスタンの大ヒットオーディション番組『アフガン・スター』の審査員を務め、人気を集めていた。2019年、祖国を離れて難民としてパキスタンで暮らしていた2人の若い女性、ゼフラとサディカが『アフガン・スター』に出場する。番組初の女性優勝者は誕生するのか…。
 
「物語はゼフラとサディカの歌声から始まります。部屋の中で床に座り込み、楽器を弾きながら笑顔で歌う2人は、とても楽しそうです。しかし、その後に語られる彼女たちの状況は深刻です。2人は、見知らぬ男からの電話で脅されたり、道で罵倒されたりします。ゼフラとサディカ、そしてアリアナの運命を、どうぞ皆さんの眼で確かめてください。」(奥田智香子さん)
 

 

「この作品を通して、日本ではめったに聞く機会がないアフガニスタンの音楽を楽しむことができます。司会者も審査員もノリノリで出場者のパフォーマンスを応援する様子が、とても微笑ましく思いました。アフガニスタンの人びとの暮らしの中に、日本の私たちと共通する点を見つけることもできます。アフガニスタンでは日本と同様、室内では靴を脱ぐそうで、実際に部屋に入る前に靴を脱ぐ場面も出てきますよ。」(奥田智香子さん)
 

 

「アフガニスタンの音楽を通じて女性の権利や社会進出について考えることのできる作品です。異なる境遇を持つ3人の女性が、祖国への愛を胸に命を懸けて歌う姿が印象的です。
3人が出演するオーディション番組『アフガン・スター』で歌われる曲をはじめ、素晴らしい音楽にあふれた作品です。美しく力強い歌声と初めて耳にする楽器の音色に私も心を奪われました。ぜひ多くの人にアフガニスタンの音楽、そして彼女たちの『声』を聴いていただければと思います。」(磯道風寧さん)
 

 

奥田さんと磯道さんは共に、今回が難民映画祭の翻訳チームには初参加となった。「映画祭事務局の厳しい審査を経て選び抜かれた良質な作品に、自ら字幕をつけて、世に送り出すことができることにワクワクして応募した」と奥田さん。磯道さんも「映画の字幕という実践的な経験が積めることに魅力を感じた」という。
 
「まず映像が届くまでに時間があったので、作品自体やアフガニスタンについて調べて、チーム内で共有し合うことにしました。紛争の歴史についての本や、アフガン女性の現状に関する特集記事、映画の公式サイトなど、短期間でさまざまな情報がそろいました。
映像とスクリプト(英語の台本)が届いてからは、各自、担当箇所の字幕づくりに取り組みました。その間も、登場人物の一覧を作って内容を整理したり、固有名詞の訳語を話し合ったりと、情報交換をしました。一歩ずつ前に進んでいる実感があり、とても充実した時間でした。チームメンバーの8人は住んでいる場所がそれぞれ違うのですが、オンライン上でスムーズにコミュニケーションをとることができました。」(奥田智香子さん)
 

 
「例えばイスラム教の聖職者にあたるムッラーの言動について言及されるシーンがありますが、そういった詳細の確認がなかなか取れない部分に関しては、どのような方向性で訳すべきかチームで話し合いを重ねました。また”(women’s) rights”という言葉を「権利」と訳すのか「人権」と訳すのかといった点も悩んだポイントです。」(磯道風寧さん)
 
難民映画祭の上映作品では、特定の人物の目線を通じて、難民であることでどんな困難を強いられているのかを知ることができる。この作品は性別を理由に祖国で教育や職業、ふるまいなどの自由を奪われてきた女性たちの現実、それを覆そうと活動を続ける彼女たちの勇姿を追った貴重な記録だ。
 

 

「現代の私たちは、地球の裏側で起こった出来事も瞬時にニュース速報などで知ることができます。世界各地の天災や紛争など、暗いニュースを聞くと『私ひとりの力で何ができるだろう』と途方に暮れることばかりです。けれどそこには、幸せな日常を生きていた人々が、私たちと同じように確かにいたんだということを、この映画を観て実感しました。
この映画に出てくる18歳のゼフラと22歳のサディカも、歌手への夢を抱いてアフガニスタンで暮らしていました。一緒に歌を練習したり、ボウリングを楽しんだり、互いを励まし合ったり。そんな2人の祖国は、政権交代によって大きく変わります。アフガニスタンでの女性への抑圧は今も続いています。政治家でもないし外交官でもない私が、直接できることは何もないかもしれない。けれどまず、事実や歴史、そこに住む人々のことを知ることが大切だと思います。何が起きているか知ることから、すべては始まる。そう思います。」(奥田智香子さん)
 

「私にとって、自分と同年代のサディカさんやゼフラさんのような若者が自国のフォークソングを歌い、女性の権利のために命懸けで闘っていることが衝撃的でした。本作に携わり、私は自分の国が抱える課題や自国の将来について本気で考えたことがあっただろうかと、考えるきっかけをもらいました。」(磯道風寧さん)
 

 
アフガニスタンの女性の葛藤や苦悩を知るだけではなく、現地の音楽や人気番組も知ることができる作品。初めて難民映画祭に参加する人にもおすすめだ。JVTAはこれからも字幕制作を軸に難民支援のサポートを続けていく。

 

『私は歌う ~アフガン女性たちの闘い~』
詳細と視聴申し込みはこちら
https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff#movies
 

 

◆「第18回難民映画祭」
【オンライン開催】  2023年11月6日(月)~11月30日(木)
【劇場開催(東京)】 2023年11月6日(月)/11月23日(木・祝)/11月25日(土)
公式サイト
https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff
 
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