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【サマスク2023レポート】現代の“言葉のプロ”になるために意識すべきことは?

【サマスク2023レポート】現代の“言葉のプロ”になるために意識すべきことは?
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「差別をしてはならない」。これを理解し、細心の注意を払っていてもなお、不適切な表現を生み出してしまうことがある。それは、どこかに「無意識の先入観」が潜んでいるからだ。

無意識の先入観によって生まれた言葉から日本語表現について考えるセミナー「ジェンダー、人種、ルッキズム…メディアの炎上例から考える“いま私たちが気をつけるべき日本語表現”」が、7月28日(金)に行われた。登壇したのは、丸山雄一郎(JVTA 日本語表現力強化コース講師)と三上奈津美(JVTA 映像翻訳ディレクター)。2023年サマースクールの最初のセミナーで、参加者は200名を超えた。

近年、人種や性別の差別やアイデンティに対する意識は、海外だけでなく、日本国内でも急速に高まっている。メディアでもそれに注目した広告が増えているが、すべてが正しい伝えられ方をしているとは限らない。丸山講師は2020年2~3月に公開されたニュースの見出し「新型コロナに敏感でも、なぜアメリカ人はマスクをかけないのか」、「イタリアが新型コロナウイルスの“激震地”になった「2つの理由」と、見えてきた教訓」という表現が使われていることに注目。当時、毎日のようにメディアを賑わせていたフレーズなので、目にしたことがある人も多いだろう。これらは「無意識の偏見」であり、事実が明らかになっていないことに対して、「この地区は~」とか、「この国の人は~」とかタイプ分けしてしまうのは問題であることに言及した。

それを踏まえた上で、映像翻訳者として意識したいのが「役割語」だ。「役割語」とは特定の人物像やキャラクターと結びついた言葉使いを指す。映像作品にノンバイナリーのキャラクターが登場したときは表現に工夫が必要だ。ノンバイナリーとは、自身の性自認・性表現に「男性」、「女性」といった枠組みをあてはめようとしないセクシュアリティのことだ。翻訳時に役割語を用いる場合はとりわけ注意を払わなければならない。三上講師は映像翻訳者はキャラクターについてしっかりリサーチし、性自認を尊重することの大切さを伝えた。

セミナーの後半には、日本語字幕を考えるクイズも出題。些細な言動からゲイを疑われた男性が、同性愛者を敵視する人々からの攻撃を免れるため紛らわしいふるまいをしないよう決意するシーン。ここでの男性の発言に字幕を付ける、というものだ。男性のセリフは“I am planning on being more heterosexual.”で、直訳すれば「これからは異性愛者に見えるように意識してやっていくよ」という意味合いになる。
解答例として示されたのは、「同性愛者と疑われないようにする」という表現だ。候補には「男らしく振る舞う」という表現もあったが、「男らしさ」は「異性愛者」と必ずしもイコールではない。そのため上記の表現が採用されたという。参加者からは「ストレートらしく振る舞おう」や「もっとマッチョに振る舞うよ」などのユニークな答えが挙がった。

三上講師は「言葉に正解はない」と前置きしながら、参加者にこう伝える。

「表現に違和感を抱くことが大切です。そのためには、自分がアンテナを張り巡らせて情報を取り入れる必要があります」

それを実践するには、様々な立場の人に耳を傾けて、柔軟な心を持ち、自分自身も感覚をアップデートし続けていくことが大切だ。

映像翻訳者は、自身が持つ無意識の先入観を字幕や吹き替え翻訳に反映されてはならないことが分かる1時間となった。これから学習する方もすでにプロとして活躍している方も、しっかりリサーチし、根拠を持ってアウトプットすることで、よい表現を生み出すことができるだろう。

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