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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第105回 “SILO”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第105回 “SILO”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第105回“SILO”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

あのネット発ディストピア小説が遂にドラマ化!

原作は10年前に日本でも話題となった、ヒュー・ハウイーの小説『ウール』。当時筆者も夢中で読んだ。
元々は2011年に発表された短編で、その後ネットで評判となり、大幅に加筆されて世界的なベストセラーとなった。続編(前日譚)の『シフト』、完結編の『ダスト』とあわせて、「サイロ3部作」と呼ばれる。

 

“Silo”は原作の圧倒的な緊迫感と閉塞感が蘇る、Apple TV+のイチ押し。奇想天外な舞台で展開する、驚愕のSci-Fiディストピア(反ユートピア)・スリラーなのだ!
 

Don’t say “I want to go out”
—近未来の地球
地表は有毒ガスに覆われている。
約1万人の生存者が、地下144階建ての古くて武骨なサイロで暮らす。内部は吹き抜けで、フロア間の移動はすべて螺旋階段を使う。住民はそこで穀物や果物を収穫し、家畜を育てる。生活は質素だが、上層階、中層階、下層階によって、文字通りの階層社会が形成されている。

 

カフェテリアの巨大なスクリーンを通して、外部の荒廃した世界が見える。
何が起こったのか誰も知らない。いつ誰がこんな巨大な施設を建てたのかも分からない。140年前の反乱で、史実を示す書類、データ、書物はすべて破棄されてしまったからだ。

 

サイロを統治するのは司法部(“Judicial”)と呼ばれる特権階級だ。住民の思想や行動指針は協定(“Pact”)で詳細に規定され、食料・道具類は配給制、交際・出産は許可制だ。

 

決して「外に出たい」と言ってはいけない。言えば犯罪者と同様に強制的に放り出される。一旦サイロの外に出たら数分内に有毒ガスで死ぬ。

 

ホルストン・ベッカー(デビッド・オイエロウォ)は、サイロの保安官だ。3年前、妻のアリソン(ラシダ・ジョーンズ)は、突然自分の意思で地表に出て息絶えた。理由は分からない。

 

ホルストンは最近、コンピューターおたくのジョージの不審死を調べている。捜査に協力しているのは、ジョージの恋人だった最下層階の機械工ジュリエット・ニコルズ(レベッカ・ファーガソン)だ。ホルストンは、ジョージの死が妻アリソンの奇行と関連していることを突き止めた。

そして今度は、ホルストン自身が「外に出たい」と宣言し、同僚や市長を驚かせる。

 

ホルストンは希望通り外に出て命を絶った。誰も理由を知らない。
彼は後任の保安官として、なぜかジュリエットを指名していた。

 

レベッカ・ファーガソンの魅力全開!!
レベッカ・ファーガソンはスウェーデン出身。日本では、『ミッション:インポッシブル』シリーズのイルサ役で顔馴染みだ(現在公開中のシリーズ第7作でも活躍中!)。製作総指揮も務める本作では、粗野でタフな機械工から鋭敏な新米保安官に転身するジュリエットをシャープに演じ、魅力満開だ。

 

堅物の保安官ホルストン・ベッカー役のデビッド・オイエロウォは、マーティン・ルーサー・キングを演じた『グローリー/明日への行進』(2014)が代表作。妻アリソン役のラシダ・ジョーンズは、大ヒットコメディ“Parks and Recreation”で準主役のアンを7シーズン演じた。

 

強面の司法部保安部長シムズを演じたコモンは、3度のグラミー賞に輝くラッパーでもある。『グローリー/明日への行進』の主題歌“Glory”で、ジョン・レジェンドと共にアカデミー賞歌曲賞を受賞している(<今月のおまけ>参照)。

 

副保安官サム・マーンズ役のウィル・パットンは、『アルマゲドン』(1998)で遅咲きブレークした渋いバイプレーヤー。最近では、現代西部劇の快作“Yellowstone”でいい味を出していた。

サイロの市長ルース・ジャンズを演じたジェラルディン・ジェームズは英国の名優。本作におけるウィル・パットンとの心温まる老境ロマンスは忘れ難い。

 

『ショーシャンクの空に』(1994)『ミスティック・リバー』(2003)のティム・ロビンスは、敵か味方か分からないIT部長兼新市長のバーナード・ホランドを貫禄で演じた。

 

ウィル・パットン、ジェラルディン・ジェームズ、ティム・ロビンスのベテラン3人が、いぶし銀の演技で奇想天外なストーリーにリアリティを与えている。

 

“The truth will surface”

ショーランナー(兼共同脚本)のグレアム・ヨストは、『スピード』(1994)『ブロークン・アロー』(1996)と大ヒットしたアクション映画の脚本で頭角を現した。2000年代になるとドラマ制作に軸足を移し、“The Pacific”、“Justified”、“Falling Skies”、“The Americans”(本ブログ第6回参照)、“Sneaky Pete” (本ブログ第31回参照)、“Slow Horses”などの傑作を連発している。まさに「ドラマの鉄人」だ。

 

ストーリーはかなり原作に忠実で、世界観と舞台設定はシンプルで分かりやすい。SF的ガジェットは登場しないし、技術用語も使われない。同じApple TV+のSci-Fiドラマでも、難解で冗長な“Foundation”とは対極にあるエンタメドラマだ。

 

最大の魅力はジュリエットのキャラクターアーク。機械いじりが好きだった少女が最下層階で見習いとしてスタートし、やがて最も腕のいい機械工となる。未経験の保安官職に任命されると、持ち前の聡明さと行動力で権力者を相手にサイロの謎に挑み、秘密を暴き、真相に迫っていく。その姿は眩しく凛々しく美しく、神々しいオーラをまとう。

 

薄暗いサイロでの生活には、常に息苦しさがつきまとう。巨大な発電機は住民にとってのライフラインで、不安の象徴でもある。ジュリエットとそのチームが、爆発寸前の発電機を命懸けで修理するシーンは圧巻で、本作屈指のエピソードとなった。

 

ミステリータッチの巧みな脚本により、緊迫感と閉塞感が加速度的に盛り上がる。そしてシーズンフィナーレで明かされる真相は、新たな謎の幕開けとなる。
“Silo”は奇想天外な舞台で、登場人物の魅力と巧みなストーリーテリングが絶妙にブレンドされた、驚愕のSci-Fiディストピア・スリラーなのだ!

 

シーズン2の制作も決まった。配信日の関係で、今年のエミー賞対象外なのが残念だ。

 

原題:Silo
配信:Apple TV+
配信日:配信開始日:2023年5月5日~6月30日
話数:10(1話 43-62分)
 

<今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」 #78
Title: “Glory”
Artist: John Legend & Common
Movie: “Selma” (2014)

アカデミー賞授賞式(2015)での2人のライブは圧巻だった。
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 



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