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明けの明星が輝く空に 第196回:ウルトラ名作探訪25:宇宙から来た暴れん坊

明けの明星が輝く空に 第196回:ウルトラ名作探訪25:宇宙から来た暴れん坊

とにかく、楽しさが詰まった一作だ。『ウルトラマン』のユーモラスな作品には、このブログでも紹介した「恐怖の宇宙線」※Iや「怪獣墓場」※Ⅱがあるが、前者はシニカルな視点がベースにあったし、後者はしみじみとした哀愁を感じさせるものだった。ストレートに楽しさを追求しているという意味で、この「宇宙から来た暴れん坊」は抜きん出ている。

その理由の一つは、子どもなら誰もが夢に見るようなことを題材にしていることだ。物語に登場するのは、なんでも念じたものに姿を変える隕石。ある日、空き地で遊んでいた子どもたちがそれを見つけ、順番に欲しいものを思い描く。食い意地の張った男の子は大きなケーキ。ちょっとおませな女の子はピアノ。それらが目の前に現れるたびに、彼らは大はしゃぎだ。

昔、子どもたちの遊び場所と言えば空き地だった。そこには、いろんな物が落ちていた。それがたとえガラクタの類いであっても、見つけたときは嬉しかったものだ。もし仮に、それが“魔法の石”だったとしたら…。昭和の子どもたちには、夢のようなシチュエーションだ。

そんな石なら大人だって欲しい。子どもたちの様子を見ていた鬼田という男も、それは同じだった。ただし、彼には良からぬ企みがあり、研究機関で保管されていた隕石を、うまいこと盗み出してしまう。やっていることは犯罪なのだが、その方法がちょっと楽しい。記者会見を開いた研究所に小型スピーカーを仕掛け、人がいなくなった頃を見計らって、「ロケットになって俺の所に飛んでこい」と話しかけるのだ。

そうして隕石を手に入れた鬼田。普通の犯罪者なら、それを使って何をするだろうか。マシンガンに変えて銀行強盗?偽札に変えて麻薬の取引?彼は違う。人間サイズの怪獣(ギャンゴ)に変え、それを使ってイタズラするのだ。そう、ただのイタズラ。ホテルでケーキを運んでいるボーイさんを驚かせたり、プールでモデル撮影をしていたカメラマンを気絶させたりして大笑い。でも、それだけ。なんだか、大人のくせして、子どものようなやつなのだ。

楽しさ追求の二つめは、ギャンゴとウルトラマンの戦いだ。鬼田がもっと大きくなれと念じ、巨大化したギャンゴ。主人公のハヤタが乗った飛行機を海に叩き落とし、しゃがんで海の中をのぞき込む。その直後、ウルトラマンが水中から登場すると、ビックリして尻餅をつき、ひっくり返ってしまう。さらに、空に飛び上がったウルトラマンを、ぽかんと口を開けたまま見つめ、飛べもしないのにマネをしてジャンプ。また尻餅。脚を投げ出して座り、だだをこねる子どものように悔しがった。

一方、ウルトラマンも、本気で倒そうとしているようには見えない。それどころか、ピンチを脱するのに脇をコチョコチョとくすぐったり、キックをかわされて海に落ちた後、手で水をすくってバシャバシャとかけたり。こうなると、ウルトラマンまで遊んでいる子どものように見えてくる。

そして、「宇宙から来た暴れん坊」における楽しさの理由の三つめ。それは、ギャンゴのデザインや効果音だ。まず目立つのが、カラーリング。直立二足歩行のギャンゴの体は、首からお腹にかけ、何色にも塗り分けられている。これは満田かずほ(表記は「禾」に「斉」)監督のリクエストだったという。『ウルトラマン』はウルトラシリーズ初のカラー作品だったため、トーテムポールのようにカラフルな怪獣にしたいと考えたそうだ。青や赤、オレンジ色をした、まるで内臓をモチーフにしたかのような形の模様が体の前面を覆い、ギャンゴは怪獣として文字通り異彩を放っている。

さらに興味深いのが、頭の左右に突き出した、アンテナのような金属質の物体だ。メビウスの輪と同じ、ねじれた構造をしており、空洞の部分には“弦”が何本も張られている。それが、左右で反対方向にグルグルと回転。さらには、おそらくこのアンテナからだと思うのだが、途切れることなく、ゼンマイ仕掛けの機械のような「ジジジジ」という音と、「プゥン、プゥン」といった感じの、なんとも気の抜けた音が聞こえてくる。まるで、動くオモチャのようだ。そうか、鬼田が想像できたのは、せいぜいオモチャの怪獣だったに違いない。やはり、鬼田は子どもなのだ。鬼田というキャラクターは、子どもの邪気を象徴する存在として考案されたのだろう。「宇宙から来た暴れん坊」は、“じゃれ合い”のような戦いを見せるウルトラマンも含め、子どもたちが演じる夢物語だったのだ。

最後にトリビアを。この作品には、当時放送作家やタレントとして活躍し、その後東京都知事になった青島幸男氏が、記者役でゲスト出演している。実は、満田監督との個人的な繋がりがあったため、出演が実現したそうだ。まだ当時若手だった満田監督だが、初監督作品となった『ウルトラQ』の「燃えろ栄光」※IIIでは、当時の人気俳優、工藤堅太郎氏※IVも個人的な繋がりからゲスト出演している。いずれも、満田監督がADや助監督時代に培った人間関係だったようだ。仕事には人間関係が大事なんだと、あらためて考えさせる、そんなエピソードだ。

当ブログ過去の記事参照 (タイトルをクリック)

※I ウルトラ名作探訪16「恐怖の宇宙線」
※II ウルトラ名作探訪22「怪獣墓場」
※III ウルトラ名作探訪7「燃えろ栄光」
※IV 特撮俳優列伝26工藤堅太郎 

「宇宙から来た暴れん坊」(『ウルトラマン』第11話)
監督:満田かずほ(「禾」に「斉」)、脚本:宮田達男、特殊技術:高野宏一

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】太宰治が書いた『八十八夜』に、しもぶくれの女性の顔を評して「顔は天平時代のものである」という一説がありました。ヒドイ言い方だなあと思ったけれど、ふと疑問が。なぜ自分はヒドイと思ったのか。それって、もしやルッキズム?

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