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明けの明星が輝く空に 第150回:夭逝した天才脚本家 金城哲夫

明けの明星が輝く空に 第150回:夭逝した天才脚本家 金城哲夫
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黎明期のウルトラシリーズに大きな足跡を残したのが、円谷特技プロダクション(現円谷プロダクション)企画文芸部を任された金城哲夫さんだ。企画や立案のほか、メインライターとしてシナリオを書きながら、脚本家たちとの連絡役・調整役とマルチな活躍ぶりで、シリーズ最大の功労者と評される。
 

金城哲夫
※『Pen+ 円谷プロの魅力を探る。ウルトラマン大研究』阪急コミュニケーションズより
 

金城さんは東京生まれの沖縄育ち。当時の沖縄は、まだアメリカの統治下だった。パスポートを持って東京の高校に進学すると、自分は沖縄と本土の架け橋になると周囲に語っていたそうだ。その後、東京の大学に通ううち、脚本家を目指すようになる。そして、相談した大学の恩師から特撮の神様・円谷英二を紹介され、ゴジラシリーズの脚本家・関沢新一に預けられた。
 

脚本家としてのデビューは1962年。翌年の1963年に円谷プロに入社し、企画文芸室の主任として、1966年スタートの『ウルトラQ』や、それに続く『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』の脚本を書いた。ウルトラシリーズの監督や脚本家仲間が、天才と呼んだ金城さんの作品には、ポジティブな娯楽指向、そして突き抜けるような明るさがあると言われる。また、師である関沢新一に天性と言わしめた発想力の持ち主で、内容はバラエティに富み、ウルトラシリーズにおける作劇パターンの大半が出揃ったという。
 

興味深いのは、脚本の書き方が通常とは違い、テーマやモチーフからではなく、怪獣や場所を想定してから物語を組み立てるスタイルだったことだ。次にストーリーを紹介する『ウルトラQ』第13話「ガラダマ」は、その後編にあたる第16話「ガラモンの逆襲」と2部作を構成し、どちらも隕石から怪獣ガラモン(https://www.jvta.net/co/akenomyojo129/)が出現する。怪獣のコンセプトから金城さんがどう世界を広げていったか、それを念頭に御一読願いたい。
 

ある山里で、不思議な隕石が発見された。直径50cmほどだが、子どもが簡単に持ち上げられるほど軽い。一の谷博士の物理学研究室で調べると、未知の合金、つまり人工物であることが判明。しかもそれは、怪電波を発していた。調査のため、主人公の万城目淳が一の谷博士らと現地へ赴く。すると、空から巨大な火の玉が降ってきてダム湖に落下。水がすっかり干上がってしまった湖底には、大きな隕石が姿を見せていた。やがてその隕石が割れ、ガラモンが現れる。
 

その頃、物理学研究室の隕石に変化が見られた。断続的だった怪電波が、連続して発信されるようになっていたのだ。ダム湖では、女性客二人が乗った遊覧船が取り残されており、ガラモンが迫りつつあったが、なんとか万城目らが救出に成功する。一の谷博士は、研究室の隕石の中には電子頭脳があり、怪電波は遊星人からガラモンへの指令だろうと推測。その直後、ガラモンがのたうち回り始めた。物理学研究室で隕石の分解が試みられ、電波に乱れが生じたのだ。
 

しかし、隕石はビクともしない。復活したガラモンが、ダムの堰堤を破壊し始めた。狙いはその先、電子頭脳のある東京だ。このままでは危ないと思われたそのとき、ガラモンが突如停止。物理学研究室の隕石に、電波遮蔽用の特殊な網がかぶせられたためだった。ひとまず、危険は去ったのだ。

 

金城さんは「隕石怪獣」から着想し、それが宇宙人による地球侵略の先兵で、それに先立ち電子頭脳が送り込まれる、というようにアイディアを広げている。平凡な脚本であれば、「隕石に乗ってやってきた怪獣が町を破壊、それを地球の科学力(最新の兵器など)で倒す」といった程度だろう。それでも、特撮シーンを見せ場にすればそれなりに楽しめる作品はできるが、物語として単純すぎる。手抜きと言われてもしかたがない。当時は“ジャリ番組”と揶揄されることもあった特撮テレビ番組だが、作り手たちがどれだけ作品に対し真摯に取り組んでいたか、こんな脚本の一例をとってみてもわかるだろう。
 

そしてもうひとつ、脚本の構成も注目ポイントだ。物語後半、ガラモンが出現したダム湖と、電子頭脳がある物理学研究室、2つの離れた場所でドラマが同時進行し、交互に語られる。これが緊張感を生み、観るものを引き付けるのだ。このカットバックの手法は第16話でも用いられ、保管されていた電子頭脳を盗み出して逃げる遊星人と、それを追う万城目たち、そして東京に飛来し暴れる数体のガラモン、という3つの話が同時進行し、よりダイナミックでスリリングな展開が味わえる。
 

このように、金城さんが中心となって魅力的な物語を紡ぎ、それを見事な特撮場面を含め映像化する。そうして、ウルトラシリーズは子どもたちの圧倒的な支持を得た。そして、当時熱狂した世代が作り手となって制作した新作映画『シン・ウルトラマン』が、いままた子どもたちを魅了している。残念ながら1976年に37歳という若さで夭逝した金城さんだが、天国からどんな思いでその光景を見ているだろうか。
 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】まさかの150回!これだけ続けていると、以前より多角的な見方ができるようになった・・・かな。それも発表の場があればこそで、JVTAには足を向けて寝られません!
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る
 
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