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【愛蔵版を翻訳】修了生の小松原宏子さんが語る“本当の『美女と野獣』”とは

<strong>【愛蔵版を翻訳】修了生の小松原宏子さんが語る“本当の『美女と野獣』”とは</strong>
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『美女と野獣』は何度も映画化や舞台化され、世界で最も愛される童話の一つとして知られている。しかし、実はその裏にあるさらに深い物語を皆さんはご存じだろうか?

静山社から2023年10月に「美女と野獣〈ミナリマ デザイン版〉」が出版された。翻訳を手がけたのは、JVTAの修了生、小松原宏子さん。原作は、1740年に出版されたガブリエル=シュザンヌ・バルボ・ド・ヴィルヌーヴ(ヴィルヌーヴ夫人)によるオリジナルストーリーだ。小松原さんは、これまでも「不思議の国のアリス&鏡の国のアリス〈ミナリマ・デザイン版〉」の翻訳のほか、自らも児童文学作家として多くの書籍を執筆している。

「実は、映画やアニメとして知られているのは、このオリジナルをジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン(ボーモン夫人)が子どもたちにも分かりやすいよう短く編集し、1756年に出版されたものです。お馴染みのお語は、野獣が王子に戻るハッピーエンドで終わります。でも実はオリジナルでは、ここはまだ物語の半分。この結末の後に、王子が野獣にされてしまった複雑な事情や、ベルの出生の秘密などが綴られています。『本当はこんな物語だったのか』と驚くかもしれません。」(小松原さん)

大人向けの名作を児童書にする場合、子どもたちも理解できるように、オリジナルのエッセンスを入れながら、要約して短くまとめるという手法が用いられる。例えば、シェイクスピアの名作を短くまとめた児童書「シェイクスピア物語」(ラム)もその一例だ。オリジナルは古い時代の言葉や複雑なセリフがある戯曲であり、大人が読んでも難解な部分もあるが、物語のエッセンスを残しつつ、分かりやすくまとめた児童書によってシェイクスピアを知った人も多いはずだ。オリジナルから約20年の時を経て発表されたボーモン夫人版「美女と野獣」はまさにその手法といえるだろう。同じような工夫は、日本で世界の名作の児童書を作る時にも用いられる。翻訳者が子ども向けに編集しながら翻訳する「編訳」という手法がそれだ。小松原さんはこれまで、『あしながおじさん』や『若草物語』などの名作の編訳を数多く手がけてきた。今回の愛蔵版は基本、原作をすべて訳す全訳だが、今回のオリジナルは約300年前に書かれたもので現代では分かりにくい箇所もあり、一部編訳の要素も取り入れたという。

「幸か不幸か、このミナリマ版は古い時代に書かれたヴィルヌーヴ夫人のオリジナル。さらに、野獣が王子にもどってからもまだまだ話は続きます。しかも、王子の母である女王、王子の育ての親となる仙女、さらに別の国の王様など登場人物が一気に増えて、原書どおりに訳すと『あのときの仙女がこのときの仙女とたたかって、また別の仙女がそれを助けて、あっちの女王がこっちの女王とこんな関係でまた別の仙女がほかの女王のふりをして…』という、何が何だかわからなくなりそうな展開なのです。大人でも混乱しそうなうえ、今回は小学校高学年以上対象ということだったので、それぞれの仙女やら女王やらに“あやかしの仙女”、“麗しの仙女”といった枕詞となる名前をつけて、わかりやすくする工夫をしてみました。」(小松原さん)

小松原さんが翻訳したのは、フランス語のオリジナルを英語に訳した〈ミナリマデザイン版〉。ハリー ポッター映画シリーズのグラフィックアートを手掛けたグラフィックデザイナーならではの楽しい仕掛けが満載の豪華本のデザインやページ数はそのままに、日本語訳版を制作した。厳しい字数制限に加え、フランス語から英語版にする段階にも工夫があったようだ、と小松原さんは話す。

「原作では野獣がベルに毎晩『俺と寝ようぜ』とせまるのですが、ミナリマ版の英語では『結婚しないか?』になっています。そしてヴィルヌーヴ版のクライマックス、ふたりの初夜の場面は省略されています。これは子どもの読者を想定しているからだと思われるので、私の訳でも『おれの嫁さんになるのはどうだい?』にしました。ちなみに、オリジナルには、野獣が先に寝てしまうと、それまで拒み続けていたベルが、『なーんだ、“俺と寝ようぜ”ってほんとに寝ることだったんだわ』とつぶやくユーモラスなシーンがあるのですが、英語版の段階でカットされており、ここは残してほしかったなと少し残念でした。」(小松原さん)

映画やアニメで知るファンにとっては、同作のまた別の側面に出会えるに違いない1冊。クリスマスや誕生日など特別なプレゼントにもおすすめの豪華な仕様となっている。

「じっくり読んでみると、これはただのお姫さま物語ではなく、階級社会を蹴散らし、身分も財産もしがらみもものともしないクールで真に力強い女性が、まわりを思いやると同時に自力で人生を切り開いていく、なかなかあっぱれなストーリーであることに気づきます。

ボーマン夫人版もディズニーもすっきりとわかりやすくていいのですが、この長い物語を読了したあとは、『野獣が王子でよかったで終わってはいけないのだ!』と叫びたくなることうけあいです。」(小松原さん)

ヴィルヌーヴ夫人の書いたオリジナルの完訳は白水社より2016年に発売されており(翻訳は藤原真実氏)、今回の小松原さんの翻訳本が日本では2作目となる。皆さんもぜひ、“本当の「美女と野獣」”の魅力に触れてみては?

◆美女と野獣〈ミナリマ デザイン版〉

ガブリエル=シュザンヌ・バルボ・ド・ヴィルヌーヴ 作

ミナリマ デザイン&イラスト

小松原 宏子 訳

https://www.sayzansha.com/book/b634607.html

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