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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第140回 “Off Campus”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第140回 “Off Campus”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第140回“Off Campus”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 
予告編:『オフキャンパス』 本予告

 
これが上半期のベストドラマ!
この一見退屈そうなタイトルの青春ドラマが、疑いなく本年度上半期のベストワン。
“Off Campus”は、Amazon Prime Video史上最大級のヒット作。真摯で優しく、可笑しくてハートウォーミング、新鮮で爽快、セクシーでスティーミー、悲痛で胸キュン、キュートでチャーミングな、カレッジロマンス・ミュージック&スポーツ・ドラメディなのだ!(形容詞多すぎか)
 
“I’m not your girl, Graham” (Hannah)
—ボストン近郊の町ヘイスティングス
ハンナ・ウェルズ(エラ・ブライト)は、奨学金を得てブライアー大学で音楽を専攻する新入生。母親が歌手だったこともあり、高校の頃はシンガーソング・ライターを目指していた。今は3つのアルバイトを掛け持ちして何とか生活している。ハンナは同大学のバンド・ヴォーカルのジャスティンに思いを抱いている。
彼女は、①パーティーではアルコールを飲まない、②『ダーティー・ダンシング』の大ファン、③アイスホッケーを嫌悪している。
そして誰にも言えない秘密があった。
 
ギャレット・グレアム(ベルモント・カメリ)はブライアー大の3年生で、アイスホッケーチームの新キャプテン。既にNHL(“National Hockey League”)のボストン・ブルーインズから指名を受けている。父親のフィルはNHLで活躍した伝説的プレイヤーで、ギャレットは幼いころからスパルタ的英才教育を受けてきた。
彼は、①試合前日はアルコールを1杯しか飲まない、②彼女は作らない、③父親を嫌悪している。
そして誰にも言えない秘密があった。
 
ギャレットは哲学の授業に苦労していた。単位を落とすと試合に出られない。
彼は成績優秀なハンナに助けを求めたが、秒殺される。
 
大学側の予算削減で、ハンナの奨学金が突然反故にされた。このままでは来期は在学できない。彼女は賞金目当てで、大学主催のポップス・コンテストに応募することにした。
 
ハンナがジャスティンに気があることを嗅ぎつけたギャレットは、取引を申し出る。彼女が哲学の家庭教師を引き受ければ月謝を払い、さらにジャスティンとの恋に協力するというのだ。
ハンナは渋々了承した。
 
ハンナとギャレットは、ジャスティンの気を引くために熱々のカップルを演じ始めた。
もちろんこの2人は恋に落ちる(ロマコメだからね)。
 
“You make me want to be better” (Garrett)
ハンナを演じたエラ・ブライトはまだ19歳。’40年代の英国を舞台にした学園ドラマ“Malory Towers”に13歳で主演し、全7シーズン演じた。本作では驚くほどの演技力で、過去のトラウマに縛られて才能を発揮できないハンナを瑞々しくかつ切々と演じきった。(ブライトは若いころのレイチェル・ワイズによく似ている。)
 
ギャレット役のベルモント・カメリはこれが初の主役で、しかもアイススケート未経験。(28歳とちょっと老けてるが)父親との確執に悩む将来のNHLプレイヤーを好演する。エラ・ブライトとの間には磁力のようなケミストリーが働き、とてもキュートなカップルが誕生した。(カメリは最近のマイルズ・テラーによく似ている。)
 
ハンナの奔放なルームメイトで役者志望のアリーと、ギャレットのチームメイトでスーパープレイボーイのディーン。2人のロマンスはシーズン後半でスパークする。アリー役のミカ・アブダラと、ディーン役のスティーヴン・カリンの間にも強烈なケミストリーが働く。
既に制作が決まっているシーズン2では、アリー&ディーンが主役になるようだ。
 
ギャレットの親友でチームメイトのローガンを演じたのはアントニオ・チプリアーノ。ミュージカルもこなす実力派で、ハンナに片想いをするナイスガイを繊細に演じた。
 
もう一人のチームメイト、気のいい料理人タッカー役がジェイレン・トーマス・ブルックス。医療ドラマの傑作“The Pitt”(本ブログ第127回参照)でもいい味を出していた。
 
上記わき役4人にも成長ドラマが用意されていて、アンサンブルドラマとしての厚みがグッと増している。
 
ロマコメ/青春ドラマの理想形!
ショーランナーはルイーザ・レヴィとジーナ・ファットーレ。クリエーター兼共同脚本も務めるレヴィは、“The Fright Attendant”(本ブログ第81回参照)、“Stumptown”(本ブログ第89回参照)に脚本スタッフとして参加している。ファットーレは、“Dawson’s Creek”、“Gilmore Girls”、“Californication”など2000年代にヒット作を連発したベテランプロデューサーだ。
 
原作は、全米ベストセラーとなったエル・ケネディによる“Off-Campus”シリーズの第1作“The Deal”(2015、未訳)。いわゆる“hockey romance”の代表作で、読んでみたらこれがメチャクチャ面白い。このシリーズは各巻ごとに主人公となるカップルを替えながら、これまで5冊が出版されている。
 
レヴィとファットーレは、原作をものの見事に映像化して見せた。
最大の魅力は、ハンナとギャレットの確かなキャラクターアークだ。「恋愛不器用な眠れる才媛」と「チャラ男に見えるキャンパスのスーパースター」が初めて自分をさらけ出し、お互いを気遣うようになる。そして支え合い、困難を克服しながら、深みのある大人のカップルへと変貌していく。
 
また‘偽装カップル’というロマコメのテンプレート上に、三種の神器:「すれ違い」「恋のライバル」「主役の頼れる親友」をしっかりと配置する。
 
「真摯な恋愛ドラマ」と「セクシーな恋愛ドラマ」の両立はかなりハードルが高い。だが、原作の巧みなストーリーテリングのおかげで難なくクリアされた。大胆なセックスシーンも、ありがちな‘露骨な視聴率稼ぎ’のあざとさがない。キャラクターの誠実さ、感情表現と矛盾していないのだ。
 
各エピソードは飛び切りのユーモアと粋なBGMに乗せて、加速度的に面白くなる。後半は白熱のホッケーシーンに加えて、ヒューマンドラマとしての奥行きを見せる。エンディングは説得力があり感動的で、次シーズンが待ちきれない。
 
本作はロマコメ/青春ドラマの正に理想形、断トツで上半期のベストドラマ。
“Off Campus”は真摯で優しく、可笑しくてハートウォーミング、新鮮で爽快、セクシーでスティーミー、悲痛で胸キュン、キュートでチャーミングなカレッジロマンス・ミュージック&スポーツ・ドラメディなのだ!
 
原題:Off Campus
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2026年5月13日
話数:8(1話 46-56分)
 
<今月のおまけ> 「これもお勧め、アメリカン・ドラマ!」(4月~6月)
※過去に本ブログ(<今月のおまけ>を含む)で紹介した作品の新シーズンは除きます。

 
●“The Beauty”(『ザ・ビューティー 美の代償』、Disney+)
“Glee”、“American Horror Story”、“Pose”(本ブログ第67回参照)を生んだライアン・マーフィーの最新作は、とんでもない副作用のある若返り薬を巡るグロキモいハイテクホラー!
 
●“The Boroughs”(『ザ・ボローズ』、Netflix)
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●“Star Wars: Maul – Shadow Lord”(『スター・ウォーズ:モール/シャドウ・ロード』、Disney+)
“The Mandalorian”(本ブログ第65回参照)以来の傑作はクローン戦争終焉後の世界が舞台、ダース・モールの復讐と2人のジェダイの活躍を描くダークなアクションアニメ!
 
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マーベルコミック原作、1930年代のNYを舞台に元スパイダーの私立探偵(ニコラス・ケイジ)の贖いと再生を描くノワールドラマ!(モノクロとカラーが選べるが絶対モノクロがお勧め)
 
●“R.J. Decker”(『探偵R・J・デッカー』、Disney+)
クセ者作家カール・ハイアセン原作、“Animal Kingdom”(本ブログ第138回参照)のスコット・スピードマン主演、南フロリダを舞台にしたチャーミングな私立探偵ドラマ!
 
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写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。