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【国連UNHCR協会 中村恵さんに聞く】 緒方貞子さんのバトンを引き継ぐ 今私たちにできる難民支援とは?

【国連UNHCR協会 中村恵さんに聞く】 緒方貞子さんのバトンを引き継ぐ 今私たちにできる難民支援とは?
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ウクライナやシリア、アフガニスタンなど世界の人道危機により、故郷を追われた人は現在、1億人を超えている。これは、1951年にUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が支援活動を始めてから最大の数字だ。 JVTAが行ったセミナーで国連UNHCR協会の中村恵さんを迎え、今私たちができる支援についてお話を伺った。
 

中村さんは1989年からUNHCRに勤務し、ジュネーブ本部、駐日事務所勤務を経て1997年ミャンマーに赴任。難民キャンプから帰還したロヒンギャの人々の実態を把握し、自立を助ける支援に携わった。この時期は、日本人初の国連難民高等弁務官として、緒方貞子さんが活動された時期と重なる。その後、2000年にNPO法人 国連UNHCR協会の設立に参画し、現在も難民支援活動を続けている。中村さんは、緒方さんの退任後、2年半にわたりパーソナル・アシスタントとして緒方さんをサポート。今年2月には、緒方さんからのバトンを受け継ぎたいという気持ちから、書籍『難民に希望の光を 真の国際人 緒方貞子という生き方』(平凡社)を上梓したばかりだ。
 

画像108
「写真提供:中村恵」
ミャンマーのラカイン州に赴任中の中村さん、1997年
 

国際政治学者で大学教授だった緒方さんが、日本人かつ女性で初めて国連難民高等弁務官に就任したのは1991年。63歳の時だ。
 

「若いスタッフにも緒方さんについていくのは大変だと言わしめるほどの並外れた体力と持久力、歴史や相手との交流から常に学び、目の前の困難に立ち向かう姿勢、命や希望に焦点をあてて、根本がぶれない信念…。真の国際人として10年にわたり難民支援に全力を注いだ緒方さんの生き方から私も多くを学びました。若い世代にも知ってほしいという想いを込めて書籍を執筆しました」(中村さん)。
 

カバー写真_帯あり
 

日本では難民と和訳されているが、英語ではRefugee。Refugeeは本来、「避難」や「避難所」を表すRefugeから派生した言葉であり、「難を避けてきた人々」と理解してほしいと中村さんは話す。現在、国境を越えた難民の他に、国境を越えることができずに国内に留まりながら過酷な環境に置かれている『国内避難民』の数も、5300万人以上と圧倒的に多い。
 

「この国内避難民も支援の対象にするという決断をしたのが緒方さんでした。90年代始め、イラクのクルド人抑圧により、トルコに逃れようしたクルド人が受け入れを拒否され、国境付近の山岳地帯で140万人もの人々が立ち往生していた時のことです。“国境に何の意味があるのか? 命を守ることが最優先”と前例にとらわれることなく、すぐに実行に移した緒方さんの行動力が今の支援活動にも引き継がれています。」(中村さん)
 

Democratic Republic of Congo. UN High Commissioner for Refugees' visit
© UNHCR/Panos Moumtzis
旧ザイールでルワンダ難民の子どもたちと握手する緒方貞子第8代国連難民高等弁務官、1995年
 

中村さんは1991年2月、ジュネーブにあるUNHCR本部で行われた緒方さん就任直後のスタッフ集会に参加、その初スピーチが、今も強く印象に残っているという。
 

「緒方さんが話す英語は格調高く、とても言葉を大切に選んでいました。常に相手をよく見て、相手によってそれぞれに合う言葉を考えていたのです。抽象的ではなく、とても分かりやすくシンプルで、聞き手にとってキャッチしやすい言葉をつかいます。敵意を持たれないよう、英語も日本語においてもしっかりと気を配れるだけの言語力を養っていらしたと思います。執筆した書籍には、このスタッフに向けた就任のスピーチと退任のスピーチの全英文と私の日本語訳を収めました。翻訳者の皆さんや若い世代の方にもぜひじっくり読んでいただきたいと思います。」(中村さん)
 

中村さんがUNHCRの視点から翻訳原稿を確認する上で、意識しているワードチョイスがあるという。例えば、「Asylum seeker」は「亡命」(日本語では政治的な理由で逃れた人を指す)ではなく、「庇護申請者」。また、日本で「doner」は、臓器提供者というイメージが強いが、UNHCRでは「支援者」「寄付者」という意味で使われる。言葉の選択には、その裏にさまざまな配慮や背景がある。例えば、United Nationsは「国際連合」という和訳で知られているが、そのまま訳すと「連合国」。戦後の日本人の感情に配慮して和訳されたのかもしれない。
 

JVTAはUNHCRの活動に賛同し、難民映画祭(2006年開始)を2008年から字幕制作でサポート。これまで多くの修了生が映画を通じて難民の現状を伝える支援を続けてきた。今年も12月にオンライン開催が予定され、翻訳作業が進行中。翻訳者も難民の作品に向き合う時、同じように試行錯誤を重ねている。
 

UNHCRは現在、ウクライナの国内外でも支援を続けている。ハンガリーやモルドバ、ポーランド、ルーマニア、スロバキアなど周辺国での受け入れに関してはUNHCRが全体を調整する責任を持って活動する。ここ数年では支援物資の提供に加え、多目的な現金支給が増えているのも特徴だという。周辺国に逃れているのは9割以上が女性と子どもだ。彼らを守るために、ユニセフと連携した子ども保護施設「ブルードット」が新たに生み出された。すでに40カ所以上設置されて、誰もが気軽に立ち寄れる場所としてそれぞれのニーズに対応している。
 

Sofia, Bulgaria. UNHCR in cooperation with UNICEF during the opening of Center for support of refugees “Blue Dot” at the HQ of the Bulgarian Red Cross
ブルガリアの首都ソフィアに設けられたBlue Dot、2022年
 

最後に中村さんから翻訳者の皆さんへメッセージを頂いた。
「今年も字幕制作にご協力いただき、どうもありがとうございます。毎年、難民映画祭との親和性が高そうな数十作品を取り寄せて鑑賞し、選りすぐりの作品数点を選んでいます。皆さまの翻訳作業を経て、日本語の字幕付きで公開できることを楽しみにしています。」
 

UNHCRのロゴには「人を守る人の手」という意味がある。私たちにできる支援は「知る」「広める」「参加する」「寄り添う」ということ。支援の第一歩はまず知ることだ。そこから今私たちができる支援を考えていきたい。
 

カバー写真_帯あり

◆『難民に希望の光を 真の国際人 緒方貞子という生き方』
著者・中村恵 発行・平凡社
※印税の全額が国連UNHCR協会を通じてUNHCRに寄付されます。
https://www.heibonsha.co.jp/book/b598255.html
 

【関連記事】
◆JVTA代表 新楽直樹 連載コラム
Tipping Point Returns Vol.10 追悼 緒方貞子さん ~難民支援と映像翻訳~
※緒方貞子さんからJVTAに頂いたメッセージを収録
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns10/
 

◆日本のアニメのウクライナ語字幕をつけて世界に上映するイベント「J-Anime Stream for Ukraine」を2022年11月に開催
http://stream.jvtacademy.com/
 

◆【字幕・吹き替えでサポート】UNHCRのアニメーション動画で難民問題を学ぶ
https://www.jvta.net/tyo/unhcr-animation-movie/
 

◆国連UNHCR協会×JVTA 翻訳者だからできる難民支援のカタチ「UNHCR WILL2LIVE Cinema 2021 募金つきオンラインシアター
https://www.jvta.net/tyo/unhcr-will2live-2021/
 

◆【『戦火のランナー』が劇場公開】翻訳者だからできる社会貢献のカタチ
https://www.jvta.net/tyo/runner/
 

◆故郷を追われた人を守り続けて70年 UNHCRの活動をJVTAはサポートしています
https://www.jvta.net/mtc/who-we-are-unhcr70/
 

◆アフガニスタンから逃れた家族の旅路『ミッドナイト・トラベラー』が劇場公開
https://www.jvta.net/tyo/%EF%BD%8Didnight-traveler/
 

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