【カンヌ国際映画祭で4冠の話題作『シラート』の字幕を担当】多言語翻訳で活躍する杉田洋子講師インタビュー
2026年6月5日、カンヌ国際映画祭で4冠(審査員賞、サウンドトラック賞、AFCAE賞スペシャルメンション、パルムドッグ審査員賞)に輝いた話題作『シラート』が劇場公開される。字幕を手がけたのは、JVTA修了生で現在はJVTAで講師も務める杉田洋子さん。キューバに留学経験があり、ブラジル音楽にも親しんできた杉田さんは、英語とスペイン語、ポルトガル語のスキルを活かして多彩な仕事に取り組んでいる。

『シラート』は、砂漠で行われるレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探して車を走らせる父ルイスと息子エステバンの姿を追うロードムービー。各国の賞レースで49受賞124ノミネート(3/10時点)という驚異的な数字をたたき出し、世界で絶賛された注目作がいよいよ日本で公開される。杉田さんは、「2026年アカデミー賞で音響賞と国際長編映画賞にWノミネートされた最高の音を、ぜひ迫力ある映画館の音質でご覧いただきたいです」と話す。

© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS
「最小限の情報量と極上のサウンドの中で、この世の万物と向き合うような2時間です。前代未聞の鑑賞体験になることは間違いありません。翻訳者としては、全登場人物たちを愛しつつ、作品の持ち味を邪魔しないよう心がけました。また、最近の傾向かと思いますが、本作もスペイン語だけでなく、フランス語、アラビア語、英語と複数の言語が飛び交う作品です。スペイン語に訳されたスクリプトは支給していただきましたが、各言語の原意も確認しながら作業しました。」(杉田洋子さん)
現在は基本的にスペイン語やポルトガル語の作品に絞って受注しているという杉田さん。しかし、最近は1本の中で英語をはじめ複数の言語がミックスされている作品が年々増えていると感じているという。
例えば、2021年に杉田さんが字幕を手がけたティルダ・スウィントン主演の『MEMORIA メモリア』も作中に英語とスペイン語が入り混じる作品だ。同作はタイ出身のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の初のタイ国外での制作作品。基本的には英語とスペイン語だが、コロンビア、タイ、イギリス、メキシコ、フランス、ドイツ、カタールなど複数の国が制作にかかわる。舞台となったコロンビアにちなみ、アカデミー賞国際長編映画賞コロンビア代表に選出されている点も興味深い。
スペイン語を母国語とする話者は約5億人。スペインはもちろん、中南米など多くの国の公用語であるため、オリジナル言語がスペイン語の映画やドラマは少なくない。杉田さんは昨今、空港内の深層心理サスペンス『入国審査』や『ドン・キホーテ』の著者ミゲル・デ・セルバンテスの若き日を描いた歴史ドラマ『囚われ人』、画家サルバドール・ダリに憧れるシェフの物語『美食家ダリのレストラン』など幅広いジャンルの映画の字幕を手がけている。またスペイン語やラテンアメリカの作品を集めた「ラテンビート映画祭」にも携わってきた。当初翻訳者として参加したのをきっかけに運営コーディネートや上映作品の翻訳などを手がけた。
杉田さんには、通訳案内士としての顔もある。インバウンド需要が高まる中で、スペイン語での案内のニーズも多く、スペインやメキシコ、アルゼンチンなどからの旅行客をアテンドしているという。
JVTAが字幕制作をサポートする国内外の映画祭にも世界各国の上映作品がある。多言語のスキルを活かしたいと考えている翻訳者に杉田さんからメッセージを頂いた。
「昔から多言語(特に欧米系)の作品は英訳があるため、英語の翻訳者さんが字幕をつけるパターンも少なくありませんでした。さらにAIの台頭もあり、深く知らない言語でも訳しやすい時代がきました。それでも、オリジナル言語を知っている翻訳者には、細かなニュアンスや歴史・文化的背景の理解から、適切なスポッティング、固有名詞の表記、リサーチに至るまで、圧倒的な強みがあると思っています。映像翻訳者としての基本スキルを磨きつつ、胸を張って専門言語についてもアピールしていきましょう!」(杉田洋子さん)
コロナ禍以降、JVTAで映像翻訳を学ぶコースはすべて、国内外からリモートで学べるようになった。そのため、世界の各地に受講生、修了生が点在しており、現地の知識や言語のスキルを持つ人も多い。杉田さんのように多言語のスキルを持つ人は、映像翻訳という職能と掛け合わせて独自の得意分野を確立し、ぜひ仕事の幅を広げてほしい。
映画『シラート』は6月5日公開。『ワン・バトル・アフター・アナザー』でアカデミー賞を獲得したポール・トーマス・アンダーソン監督に「映画館で体験すべき真の映画」と言わしめる傑作を、どうぞお見逃しなく。

◆『シラート』
6月5日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにてロードショー
監督:オリベル・ラシェ『ファイアー・ウィル・カム』
製作総指揮:エステル・ガルシア
製作:ペドロ・アルモドバル 脚本:オリベル・ラシェ、サンティアゴ・フィジョル
撮影監督:マウロ・エルセ 編集:クリストバル・フェルナンデス 美術:ライア・アテカ
音楽:カンディング・レイ(デヴィッド・ルテリエ)
出演:セルジ・ロペス『パンズ・ラビリンス』、ブルーノ・ヌニェス・アルホナほか
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/sirat/
◆杉田洋子さん
キューバへの留学やブラジル音楽の演奏活動などでスペイン語、ポルトガル語、英語のスキルを身につけ、映像翻訳者、通訳案内士、映画祭運営など幅広く活躍。JVTAの英日映像翻訳科で講師も務める。昨今字幕を手がけた作品は『シラート』『入国審査』『囚われ人』『美食家ダリのレストラン』『MEMORIA メモリア』『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』『2月のために~マリア・ベターニアとマンゲイラ』など多数。
【関連記事】
◆多言語翻訳ルートマップ! ~JVTAから飛び立ったマルチリンガルたち~〈スペイン語の映像翻訳〉
◆杉田洋子講師が運営と翻訳に携わるラテンビート映画祭が開幕

◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】
映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。
※詳細・お申し込みはこちら







