【イベントレポート】JVTA生は生涯にわたってJVTA生!2023年4月期ウェルカムパーティーをリモート開催!
AIの進化も楽しみながら、自らのスキルを高め学び合おう
日本映像翻訳アカデミー(JVTA)では毎期ごとに、新しく映像翻訳を学び始めた方を迎えたウェルカムパーティーを開催している。
2023年4月期のウェルカムパーティーも引き続きリモートで開催となった。「英日映像翻訳総合コース・Ⅰ」「日英映像翻訳総合コース」、バリアフリー字幕や音声ガイドの制作のスキルを学ぶ「バリアフリー講座」の「音声ガイドディスクライバー養成講座」、そして英文解釈力の向上を目指す「English Clock ロジカルリーディング力強化コース」 の受講生とスタッフ合わせて約60名が参加。日本各地だけでなくアメリカやイギリス、インドネシア、ドイツ、オーストラリア、オランダなど世界各国からの参加者がおり、日本語と英語が飛び交うグローバルなパーティーとなった。
パーティーはJVTA代表・新楽の挨拶からスタート。ここ最近で急速に社会的な話題となっている生成AIなどに対し、新楽は「『人かAIか?』と議論されているタイミングだが、AIがどれだけ進化しても、人が言葉を学び社会に還元していくことは揺るがないと思っている」と断言。テクノロジーの進化によって、むしろ時代がおもしろくなってきたとして、「AIを人が活用することで、よりおもしろいことができるとJVTAは考えている。皆さんにも楽しんでほしい」と語った。
今回の乾杯の音頭は、英日と日英映像翻訳で指導するほか、日本のコンテンツを世界に売り込むためのスキルを身につける「ブランド&マーケティングストラテジスト養成コース」も担当する浅川奈美講師が担当。「学校は教え合い、高め合い、真似し合い、作り合うことができる場所。JVTAで学びを最大限にし、高めあってほしい」と熱く語り、乾杯へと進んだ。乾杯の後は講師陣、受講生の皆さんの学習をサポートするクラス担当スタッフ、そしてJVTA各セクションの代表者の自己紹介が行われた。
毎回パーティーでは参加者同士の交流を深めるためのアクティビティを用意。今回は、一部が隠された映画ポスターを見て作品名を当てるクイズだ。問題が進むにつれて隠される範囲が増え、徐々に難易度が上がっていく。
参加者はグループごとにブレイクアウトルームに分かれ、話し合った。問題となっている作品は近年のヒット作からクラシック映画の名作まで幅広い。しかし映像作品が好きな受講生が多いため、作品の名前自体はすいすいと出てくるグループが多かった。一方で、意外に難しいのが作品名の「表記」。「『THE GREATEST SHOWMAN』の日本語タイトルは『グレーテスト』か『グレイテスト』か?」「サブタイトルも必要か?」「『すずめのとじまり』は『戸締り』?『戸締まり』?」「・(ナカグロ)を入れるかいれないか?」など、何の作品かは分かっても表記に悩み、なかなか回答がまとまらないというのも、日ごろから課題で熱心に調べものをしている受講生ならではの会話だ。ただ回答をまとめるだけでなく、その映画を見たかどうかや、自分なりの感想を語り合いながら進めるグループもあり、映画好きな仲間と出会えた楽しさを共有していた。
そしていよいよ正解発表へ。司会者から回答が提示されると、参加者は一喜一憂。「サブタイトルがないとダメですか?」「『アバター2』だけだと不正解?」などの質問も飛び交った。「この『レゴ(R)ムービー』の日本語吹き替え版は、8人の声優で150以上のキャラクターを吹き替えています」などと、題材となった映画に関する豆知識を司会者が披露する場面もあり、場はさらに盛り上がった。
最終的に優勝したのは、桜井講師が率いるグループ。回答を提出するのも一番早かったということで、大差の勝利となった。他のチームからは、「こんなに採点が厳しいとは」と悔しがるコメントも。
アクティビティの後は再度グループに分かれての歓談タイムとなった。最近見た映画や翻訳のコツの話で盛り上がる。バリアフリー講座の受講生が参加しているグループでは、音声ガイドや言葉選びの難しさについての意見交換も行われていた。その他、「仕事で好きなジャンルの映像を選んで受けることができるか」「修了後に自分の翻訳ペースが本当につかめるようになるのか」など、かなり具体的な質問を講師にしているグループも。そういった真剣な相談には、講師たちが自分の経験をもとにアドバイスする。クイズという共同作業の後だったので、参加者同士はとても打ち解けた雰囲気になっていた。終了後の参加者アンケートでも「なかなか機会と勇気がなく話せていなかったクラスメートの皆さんとやっと話せた」「悩みなどもこういう場だとざっくばらんに話すことができる」「普段会えない講師の方々にも会うことができて嬉しかった」という声が届いた。受講生同士に加えて、講師やスタッフとの距離も近づいたようだ。
最後の挨拶は、翻訳室チーフディレクターであり、英日・日英映像翻訳の両方で指導する石井清猛講師。新楽の開会あいさつと同様にテクノロジーに言及し、「AIと競う必要はないが、負けるはずもないと思って一緒に頑張ろう」と話した。また、「一度JVTAの受講生になったら、一生JVTAの修了生。私たちは一生のサポートを惜しまない」と熱く呼びかけると、参加者は笑顔になっていた。
★参加者みんなで記念撮影★
全てのアクティビティが終了した後は、希望者が残って歓談できる時間が再度設けられた。自由参加であったにもかかわらず、多くの参加者が最終終了の時間まで残っていた。授業以外での貴重な交流機会を最大限活用したいという気持ちを、参加者の誰もが抱いていたのだろう。今回深まった受講生同士の絆は、今後学習を続けていくにあたって大きな力になるはずだ。
JVTAは今後も皆さんの学習を全力でサポートしていきます。
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SSFF&ASIA2023がもうすぐ開幕!注目作の英日・日英翻訳を手掛けた修了生にインタビュー!
6月6日(火)より、世界最大級の短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2023(SSFF & ASIA 2023)」が開催される。2023年で25周年という祝年を迎える映画祭だ。今年のテーマは「UNLOCK」。「『解き放て!』 UNLOCK CINEMA / UNLOCK YOURSELF /UNLOCK THE WORLD」をキーワードに、既存概念から「UNLOCK(解放)」 する映画祭体験を提供する。 今年の映画祭では、スタンダップ・コメディアンであり俳優としても活動するクリス・ロックと、スペイン人俳優として初めてアカデミー賞を受賞したハビエル・バルデムが共演した『LOOK AT ME』(Sally Potter、2022)や、ベン・アフレックとマット・デイモンがプロデュースした『崩壊しつつある世界で』(Alex Lawthe、2022)などの作品が日本プレミアを迎える。また俳優の土屋太鳳や玉木宏が初めて監督を務めた作品や、映画『ちょっと思い出しただけ』(2022)で第34回東京国際映画祭の観客賞を受賞した松居大悟などの日本人フィルムメーカーによる作品にも注目だ。 JVTAは毎年、本映画祭を字幕でサポートしている。今年も上映される約200作品について、ほとんどの字幕を修了生が担当した。 今回は『LOOK AT ME』の日本語字幕を担当した茂貫牧子さんと『ネッパ』(松居大悟、2022)の英語字幕を担当したKevin Yuanさんに、字幕制作の舞台裏を聞いた。
■『LOOK AT ME』
監督:Sally Potter/イギリス・アメリカ/16:00/ドラマ/2022
チャリティイベントの会場で、支配人となり損ないのドラマーの男が対立する。自己表現と統制という二つの欲はぶつかり合いながらエスカレートし、絶え間なく続くリズミカルな背景を背に、二人の公私が爆発的に衝突する。(SSFF&ASIA2023 上映作品紹介より ) 本作の字幕を担当したのは茂貫牧子さん。茂貫さんは本作について、「短いセリフに実は意味がたくさん込められているセリフが多くて苦労した」という。 日本語字幕の制作では、「1秒につき4文字」という制限がある。そのため情報量が多いセリフは100%訳出することができない。シーンのつながりやセリフの意図を理解した上で、訳出する情報の取捨選択が必要となる。『LOOK AT ME』は、物語が進むにつれて様々な要素が明らかになる作品だ。前半のセリフが後半のシーンに影響を与えることもあり、セリフの裏に隠された真意をしっかりと読み取り、限られた字数内で適切な字幕にすることが重要である。 「物語前半で、『俺に触るな』というセリフに対して『他人のフリか?』と答えるやり取りがあります。この『他人のフリか?』は、原文では『俺のことを知らないとでもいうのか?』というセリフです。二人の関係性は、物語の後半ではっきり分かるようになります。そのため流れの中であまり唐突な感じにならないように、かつ、6文字でいかに表現するか、何度も書いては消してということを繰り返しました。」(茂貫牧子さん) 他のシーンでも、字数制限や情報の出し方に工夫を重ねた。作業過程で難しい取捨選択を迫られたこともあったそうだが、その一方で「一般の方よりも先に、繰り返しじっくりと作品を見ることができるというのは、まさにこのお仕事の役得だなと感じています」と、字幕翻訳ならではの楽しみも実感していた。 「本作は視聴者に委ねる終わり方なので、その点も気になる作品です」と茂貫さんは語る。短編作品であり、配信での視聴も可能な本作。ぜひ一つ一つのシーンやセリフに注目して、茂貫さんのようにじっくりと作品を見てほしい。
■『ネッパ』
監督:松居 大悟/日本/24:52/ドラマ/2022
お客さんには伝えずに迎えた、50年続いたサウナの最終営業日。熱波師でもあるトウジは最後の熱波(ネッパ)に向かう。何も知らない客は…「なんか今日、気合い入ってない?」。サウナ施設の小さな夜。(SSFF&ASIA2023 上映作品紹介より ) 本作はKevin Yuanさんが英語字幕を担当した。Kevinさんは本作について、サウナ施設の最終営業日の様子しか描かれていないにもかかわらず、50年間の長い歴史を感じられる点がとても魅力的だと言う。サウナに行った経験がほとんどなかったとKevinさんにもサウナの魅力が伝わり、実際に行ってみたくなるほどおもしろい作品だったそうだ。 「作品内に出てくるロウリュや熱波のサウナ文化は日本発祥のものではありませんが、日本文化の中で人気を集めてきたものです。映画祭での上映や配信を通して、『日本文化にはこんなものもあるよ!』というような紹介にもなってほしいと思います。」(Kevin Yuanさん) サウナ経験がほぼなかったというKevinさんは、当然サウナに関して詳しいわけでもなかった。そのため、「熱波」のシーンの翻訳には時間をかけたと言う。ロウリュと熱波の違いや、アロマ水の活用、熱波師の役割など、サウナに関して調べていくなかで少しずつ理解できるようになった。「予備知識がないときはいい字幕を作ることが難しい」と、翻訳者にとって調べものが非常に大切であることを改めて感じた。 その他、作中で登場人物が泣くシーンでは、泣いているときのセリフの途切れに字幕を合わせ、感謝の気持ちが伝わるような表現を使うようにした。「字幕には登場人物の性格や気持ちを表す役割もある」と、登場人物の気持ちがきちんと伝わるような字幕を心がけたそうだ。 「25分の作品ですが、個性あふれる登場人物の言動を通じて、サウナ施設に対する様々な思いがうまく描かれていくことに感心した」とKevinさんが語る本作。ぜひ英語字幕にも注目して見てもらいたい。 『LOOK AT ME』と『ネッパ』の上映スケジュールやオンライン配信予定は、SSFF2023の公式サイトでぜひチェックを。
■ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2023 公式サイトは▶こちら
■オンライン会場は▶こちら
配信期間:2023年4月27日~7月10日 さらに6月6日(火)には、LINE CUBE SHIBUYAにて映画祭オープニングセレモニーが開催される。会場での鑑賞チケットは現在発売中。オンラインでの同時配信も実施されるので、こちらも要チェックだ。
■オープニングセレモニー 詳細は▶こちら
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【JVTAの学校教育プログラム】神戸松蔭女子学院大学で、映像翻訳の解説と字幕体験レッスンを実施
JVTAでは社会人のためのスクールとは別に学校教育機関でも講義を行っている。講義は語学教育、映像を中心としたメディア教育、コミュニケーション教育などが一貫したテーマとなっており、“Language Communications and Media”の頭文字を取ってLMC教育プログラムとして、2010年から国内外の大学から小学校まで40校以上で指導を続けてきた。講演やゲストとしての招聘にとどまらず、大学、高校などの複数の学校で正規の科目や長期の講義として採用されているという実績がある。
4月26日(水)には、JVTAの映像翻訳本科で指導する桜井徹二講師が、神戸松蔭女子学院大学文学部英語学科の授業にゲスト講師として登壇した。対象となったのは「国際プロジェクト演習」(岩田英以子准教授)の授業で、履修する学生たちに映像翻訳に触れてもらう目的で行われた。ひとくちに映像翻訳と言ってもその手法やジャンルは多岐にわたる。JVTAでは、一般に馴染みのある映画やドラマの字幕や吹き替えに加え、観光や企業PRの多言語翻訳、ニュース映像などのリアルタイム字幕などさまざまなニーズに対応。実際にJVTAの修了生が手がけた案件を取り上げながら、それぞれの手法について解説した。そして後半は、字幕体験レッスンへ。3人ずつ3つのグループに分かれ、映画のワンシーンの日本語字幕作りに挑戦。限られた字数制限の中で、人物の心情やセリフに込められた微妙なニュアンスを伝えるために話し合いを重ねていく。完成後は出来上がった字幕の試写と講師のフィードバックも行った。
[JVTA講師・スタッフ]1名
[人数]約10名
[期間・時間]単発
【桜井徹二講師のコメント】
今回の授業「国際プロジェクト演習」は「神戸国際観光研究」をテーマに神戸の魅力を英語で発信することを目的にした授業で、今後、学生たちが地元で撮影・編集した動画に英語字幕をつけて発表することを目指しています。今回のゲスト講義はその導入編として、語学を生かせる仕事の1つでもある映像翻訳について知ってもらうこと、体験してもらうことを目的に実施されました。初めての字幕翻訳ということで苦戦した学生もいたようですが、授業後には「映像と訳のニュアンスを合わせるのは難しかったが、みんなで意見を出し合いながら翻訳していくのは楽しかった」「翻訳について興味を持てた。もっと翻訳したり、翻訳の仕事について知りたいと思った」といった感想が寄せられました。
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https://www.jvtacademy.com/aboutus/program/
【JVTAの学校教育プログラム】東京都中央区立常盤小学校 英語特別授業を今期も開講中
JVTAでは社会人のためのスクールとは別に学校教育機関でも講義を行っている。講義は語学教育、映像を中心としたメディア教育、コミュニケーション教育などが一貫したテーマとなっており、“Language Communications and Media”の頭文字を取ってLMC教育プログラムとして、2010年から国内外の大学から小学校まで40校以上で指導を続けてきた。講演やゲストとしての招聘にとどまらず、大学、高校などの複数の学校で正規の科目や長期の講義として採用されているという実績がある。
東京都中央区立常盤小学校での授業もこのプログラムの一つだ。カリキュラム選定から指導までをJVTA所属の講師・スタッフである英語ネイティブ(バイリンガル)が小学校と連携を取りながら担当。毎年度、3年生と4年生の各2クラス(週1回)の授業を通年で計30回行う。
教材に用いるのは、生徒たちが興味を持ちやすい映画やアニメなど。映像に出てくる会話やフレーズを通して「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能+α(翻訳、作品を読み解く力の技能)の学習を行う。1年の締めくくりとして、英語でのプレゼンテーションをするスピーチコンテストでその成果が披露される。
[JVTA講師・スタッフ]4名
[人数]各クラス約30名
[期間・時間]通年
【ビル・ライリー講師のコメント】
The students have started off wonderfully again this year with plenty of energy and very good passive skills. They are able to listen and understand most of the class directions easily with few comprehension issues. In the upcoming months, we’ll be focusing on increasing their output abilities as well as improving their confidence speaking English aloud in front of others, keeping in mind not the outdated goal of simply passing a test but the motivation of using English as a tool to live the life they want to lead.
◆東京都中央区立常盤小学校(中央区国際教育推進パイロット校)
国際小学校に向けての取り組みはこちら
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【JVTAの学校教育プログラム】明星大学 国際コミュニケーション学科で映像翻訳を指導
JVTAでは社会人のためのスクールとは別に学校教育機関でも講義を行っている。講義は語学教育、映像を中心としたメディア教育、コミュニケーション教育などが一貫したテーマとなっており、“Language Communications and Media”の頭文字を取ってLMC教育プログラムとして、2010年から国内外の大学から小学校まで40校以上で指導を続けてきた。講演やゲストとしての招聘にとどまらず、大学、高校などの複数の学校で正規の科目や長期の講義として採用されているという実績がある。
明星大学 国際コミュニケーション学科では、2015年から英日字幕翻訳を中心に学ぶ通年の正規授業の指導を受け持ち、JVTA所属の6人の非常勤講師が毎週講義を行っている。夏休み期間中に行われる夏期集中講義において恒例となっているのは、UNHCR難民映画祭で上映される長編ドキュメンタリー映画の日本語字幕を作成すること。さらにその成果を発表する学内での上映会の企画・運営・宣伝活動も講師陣の指導の下、学生が担うことも大きな特徴だ。学生たちにとっては映像翻訳の作業を通して難民問題を学び、深く考える機会となっている。
[JVTA講師]6名
[人数]約24名
[期間・時間]通年
◆2022年度 明星大学 特別上映会/難民映画祭パートナーズ 特設サイト
https://www.jvtacademy.com/lmc/meisei/2022/
【桜井徹二講師のコメント】
この授業は語学の学習を目標としたものとは異なり、作品やセリフに現れる文化的なギャップを理解し、それを字幕を通じていかに伝えるかという点にフォーカスしたものです。そのため、翻訳の指導では話者の意図や感情を深く掘り下げることを繰り返し強調しています。また、後期は上映会の準備・運営という、それまでとは全く異なる授業内容となります。学ぶことや発揮すべき能力が多岐にわたる授業ですが、学生たちにとってはそれぞれの得意な分野や好きな分野を見出すことにもつながり、他の授業では味わえない充実感・達成感を味わえるようです。
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「日本語はセンスではない」日本語表現力強化コース講師が教える日本語のブラッシュアップ方法
「英語を日本語に訳す翻訳者」と聞くと、多くの人は「高い英語力が必要」と考えるだろう。もちろん一定の英語力は必要だ。しかし、実際の翻訳では、英語力以上に「日本語力」が求められる。JVTAはプロの映像翻訳者を育成するなかで、この日本語力のスキルアップに力を入れている。「映像翻訳者=言葉のプロ」として、日本語表現力の大切さを一貫して説いてきた。 今回JVTAが開催した特別セミナー「コトバを仕事にする前に知っておきたい 日本語ライティング 5つの心得」は、「日本語のライティングを勉強してみたい」「これから翻訳者を目指したい」という日本語ライティングの初級者に向けたセミナーである。JVTAでは、英日映像翻訳者に求められるスキルの1つに「日本語表現力」を掲げ、カリキュラムに組み込んでいる。本セミナーは、実際に「日本語表現力強化コース」を教える丸山雄一郎講師が登壇し、様々な例文を用いながら読み手に伝わる日本語表現について解説した。◆知っトクポイント◆字幕にも通じる日本語表現のポイント「できるだけシンプルに表現する」
登壇者 丸山雄一郎:「情報を補足してシンプル」にとしています。例文ではこんな文章です。発電に利用可能な土地はほぼすべて国立・国定公園内にあるため、これを保護する自然公園法が障害となってきたのだ。 という文章です。これも分かりづらくはないかなという文章です。ですがこれを普通に読んだとき、文法がおかしいわけでもないのでスルっといきそうなのですが、「この中身が知りたい」、もしくは仕事で必要となったときに、「障害となってきた」の「障害とはどんな障害なのか?」と考えませんか?障害ってつまりどういうこと?どんな障害なの?何がダメなの?何ができないの?と「はてなマーク」が出てきます。それを埋めてあげたいのです。2文に分けてもいいのですが、1文の中で解決するとしたらと考えて、次の文章を見てみます。発電に利用可能な土地のほぼすべてが国立・国定公園内にあるため、自然公園法が障害となり、開発が進められないのだ。 最初で「?」のままになっている文章を補足して、その答え(下線部)を1文の中に入れてあげると、読み手にとって非常に分かりやすくなります。 映像翻訳の場合で言えば、原文があるのではてなマークのままということもあると思います。でもその場合はなるべく次の字幕や、次の次の字幕くらいにその答えを言ってあげてほしいです。もしかすると原文と多少順番が違ってきてしまう可能性もあります。ただ、文章を読んでいてはてなマークの答えが分からないまま先に進んでいくのは、非常につらい。そのためなるべく、答えがないものには補足をしてあげたいです。そうするだけで、読み手の理解が変わります。 丸山講師は、頭に「?」が浮かばないような日本語表現の工夫を意識する大切さを伝えた。特に字幕は、前に戻って読み返したり、自分のペースで読み進めたりすることができない。読み手が一読で意味を捉えられるように、時には原文の裏に隠されている情報を足すことも必要になるのだ。 セミナーでは上記のように例文を使ってより良い日本語表現を解説することに加え、日本語の文法に対する考え方、また誰でも簡単にできる「誤字脱字チェックの方法」などが紹介された。終了後のアンケートでは「日本語のリライトが参考になった」「自分の日本語がなぜ不自然になるのか理由が分かった」「翻訳の仕事を始めてから日本語力の重要性に気づいたため、大変勉強になった」などの感想が届き、日本語表現に対する参加者のモチベーションが上がったことが伺えた。 丸山講師はセミナー内で「日本語はセンスではない」と言い切った。日本語表現力は、努力次第で誰でも高められるものなのだ。これから映像翻訳を学ぶ、もしくは学習中の皆さんには、ぜひこの言葉を信じて日本語力を磨いていってほしい。 JVTAリモートセミナーシリーズ Winter 2023 ~ もっと知りたい!メディア翻訳の世界~の詳細は コチラ
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【2023年4月】日英・OJT修了生を紹介します②
JVTAではスクールに併設された受発注部門、メディア・トランスレーション・センター(MTC)が皆さんのデビューをサポートしています。映像翻訳の仕事は映画やドラマだけではありません。特に日英映像翻訳ではマンガやゲーム、企業のPR動画など幅広いジャンルがあり、翻訳者が体験してきた職歴や趣味などを生かして活躍しています。今回はOJTを終え、日英の映像翻訳者としてデビューする修了生を紹介します。
◆Simone Prioloさん(日英映像翻訳 実践コース修了)
職歴:繊維の商社で契約や資料を翻訳、英会話の新入社員の通訳や資料翻訳、ホテル運営での資料・お客様向けの情報を翻訳。フリーランスとしてスポーツ・ゲーム・プレスリリース等を翻訳。
【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】
フリーランスとして翻訳をやってきましたが、ずっと字幕にも興味がありました。ネットで「subtitling」を検索したら偶然にJVTAのホームページにたどり着きました。いろんなコースがあって、字幕だけでなくいろいろなメディアについて勉強できるのが興味深く入学しました。そこで講師の授業だけを受けるのではなく、先に宿題に挑戦してそのあと講師の授業とフィードバックがあるという形式がびっくりでしたが、チャレンジできる環境で面白かったと思います。
【OJTを終えて】【今後どんな作品を手がけたい?】
翻訳とは、国と国の架け橋だと思いますので、今後は日本の文化を海外に伝える作品をぜひ手掛けたいです。いろいろな作品を通じて「日本はこういった国です」と世界に伝えたいのです。ドキュメンタリーはもちろん、アニメや漫画、映画などは作品から日本の歴史など社会に何か伝えようとしていると感じています。それを世界に渡せるように頑張りたいと思います。
◆Adrian Godinezさん(日英映像翻訳 実践コース修了)
職歴:自動車関係企業の通訳・翻訳者(3年間)→国際NGOのコーディネーター(7年間)
【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】
仕事上様々な分野の通訳と翻訳を経験したことがありましたが、映像やゲーム等を手がけるきっかけに出会えず、自分の中で憧れていました。映像翻訳が翻訳の種類の中で一番人に感動を与えるジャンルからだです。コロナ禍をきっかけに、新しいことを学ぼうと思ったときに、JVTAの広告を見つけて、「これだ!」と思って、申し込みました。
【今後の目標】
日英西の翻訳者として、世界中のみなさんとたくさんの感動や人生をより豊かにするコンテンツをつなぐ架け橋になりたいと思います。
★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています! ◆翻訳の発注はこちらhttp://www.jvtacademy.com/translation-service/
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映像作品の「音」が持つ役割を探る バリアフリー字幕における音の表現方法
「映像作品の音」と聞くと、どんな音を思い浮かべるだろうか? 作中に流れる音楽、効果音、役者が発するセリフ…映像にはさまざまな音が存在している。では、その音を「聞こえない、聞こえづらい人」へ、効果的に伝えるためにはどうしたらいいのか? 「バリアフリー字幕」とは、音が聞こえない状況でも映像作品を楽しめるようにするための字幕である。映像翻訳の字幕制作では、外国語のセリフを翻訳した日本語を簡潔で分かりやすい字幕にする。対して、バリアフリー字幕は日本語のセリフをそのまま字幕にするだけでなく、映像作品の「音」も情報として伝える。JVTAが開催した特別セミナー「はじめて学ぶ『バリアフリー字幕の世界』<音編>~講師と考える音の表現方法~」では、バリアフリー講座の講師が登壇。「映像の音」に注目し、バリアフリー字幕制作における音の捉え方、表現の仕方を紹介した。◆知っトクポイント◆ 映像にはどんな音が存在するのか
セミナーではJVTAの「バリアフリー講座」で授業を担当している渡辺三奈講師が、クラシック映画の名作を題材に「音の役割」について解説した。
バリアフリー字幕の制作では字幕にする音を「音情報」、役割のある音を選択することを「音を拾う」と表現する。渡辺講師は、「今回紹介するのは、音がある役割を持っているシーンです」と切り出した。
セミナーで紹介されたそのシーンの中には、音を消して映像だけ見ると不自然に感じる部分がある。自分の部屋にいる登場人物の男性が、何かに気づいてハッと顔を上げる動きをするのだ。実は、そのシーンでは部屋の外で鳴るサイレンの音が入っている。
このシーンについて、渡辺講師は次のように説明した。
「バリアフリー字幕では、音が聞こえなくても男性が顔を上げた理由が分かるよう、文字でその音情報を入れます。そのため、ここには「(サイレンの音)」という音情報を文字で入れることが必要です。ただ、実はサイレンの音は男性が顔を上げる前から鳴っています。段々と音が大きくなって、男性はようやくその音に気づくのです。この音情報の字幕は音が鳴り始めたところではなく、男性が音に気づく瞬間に入れます。」
音が鳴り始めた時点で「(サイレンの音)」という情報を入れてしまうと、視聴者が字幕に注目してしまってシーンの細かいところに目が行かなくなる、と渡辺講師は言う。どうしても人間は字幕を見てしまうので、音情報を表示するタイミングを間違えると、そのシーンで視聴者に注目してもらいたいところから注意を逸らしてしまいかねない。そのため今回の例で言えば、男性が音に気づいたタイミングで字幕を入れるのが一番効果的になる。 セミナーではこうしたなんらかの「役割のある音」の他、「拾う(字幕にする)べき音と拾わなくてもいい音」「同じ音だが役割が異なる音」が、具体的なシーンと共に紹介された。渡辺講師は「音が流れているからといってすべてを字幕として入れればいいわけではなく、その音の役割を見極め、映像を理解するためにふさわしい場所で拾うことがバリアフリー字幕では大切」と語った。 セミナーの後半では日本映画のワンシーンを使い、実際にセミナー参加者が音を拾う体験をした。「海の近くで3人の学生が映画の撮影をしている」というシーンにおいて、どんな音が存在しているか? 渡辺講師が呼びかけると、チャット欄には参加者からさまざまな音情報が届いた。波の音、カモメの声、カバンを閉じるジッパーの音、手を叩く音…普段ならなんとなく聞き流してしまうような、かすかな音にまで注目する。渡辺講師はそれらの音について、シーンの中で持つ役割やどの音を字幕として拾うべきかを丁寧に解説した。 バリアフリー字幕に初めて触れた参加者も多かったのか、「通常の字幕とは違った視点で作品の解釈が必要な字幕作業であることを知ることができた」「視覚で(そのシーンの)場所が海だと分かっているから波や風の音は字幕に入れない、ということには、『なるほど!』と思った」など、映像翻訳とは異なる視点での字幕制作作業に大いに興味を持ったようだ。参加者にとって、映像作品の新たな見方を学ぶことにもつながるセミナーとなった。 バリアフリー字幕は、テレビ放送や動画配信でも気軽に観ることができる。ぜひ、日本の作品でも字幕をオンにして見てほしい。制作側の意図をより深く感じられるはずだ。 JVTAリモートセミナーシリーズ Winter 2023 ~ もっと知りたい!メディア翻訳の世界~の詳細はコチラ
MASC×JVTA バリアフリー講座 字幕ライター養成講座、音声ガイドディスクライバー養成講座の詳細は こちら
【JVTAが字幕を制作】気候変動に植林で立ち向かう『グレート・グリーン・ウォール』が劇場公開
アフリカのサヘル地域では、気温が世界平均の1.5倍の速さで上昇している。気候変動により、干ばつや砂漠化だけでなく、食料不足が引き起こす紛争が深刻化し、故郷を追われる人たちが増えていく。「グレート・グリーン・ウォール」(緑の長城)とは、荒廃したアフリカの土地に植林し8000キロに及ぶ“グリーンウォール”を作るという壮大な緑化プロジェクトだ。2007年にアフリカの国々の主導により開始され、ブルキナファソ、チャド、ジブチ、エリトリア、エチオピア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、スーダンの11 カ国で植林計画が進⾏している。
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現在劇場公開中の映画『グレート・グリーン・ウォール』は、マリ出身のミュージシャンのインナ・モジャが、この活動を追ってアフリカ大陸を横断する様子を追ったドキュメンタリー。インナは、緑化に挑む人々や紛争に巻き込まれた難民と出会い、各地域のミュージシャンと交流しながら音楽の力でこの問題を多くの人に知らしめる活動を続けている。この作品の字幕をJVTAの修了生7名が手がけた。
◆字幕翻訳チーム 石川 萌さん 我満 綾乃さん 川又 康平さん 原田 絵里さん 星加 菜保子さん 茂貫 牧子さん ※希望者のみ掲載
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同作は、2022年開催の難民映画祭で『グレート・グリーン・ウォール~アフリカの未来をつなぐ緑の長城~』のタイトルでオンライン先行上映され、注目を集めた。7人の翻訳チームはパートを分けて翻訳、相互チェックを繰り返し、約1カ月かけて字幕を仕上げた。その翻訳チームにこの作品の魅力と字幕づくりについて聞いた。JVTAは2008年の第3回から難民映画祭に字幕制作で協力し、多くの修了生が翻訳者ならではの支援を続けている。
※2022年難民映画祭の特別先行上映会には翻訳者も参加
◆作品を通してキーワードとなる言葉を大切に訳す 冒頭のパートの翻訳を担当したのは、我満綾乃さん。最初の字幕の訳出は印象に残るよう意識したという。
「作品が始まり最初に映し出されるのは、インナが影響を受けたブルキナファソの元大統領トーマス・サンカラの言葉です。これは作品を通して何度も出てくる大切なキーワードとなっています。冒頭ではサンカラの言葉が文字としてゆっくりと映されるので文字数に余裕がありましたが、作中そして後半で再度この言葉が出てくる時は冒頭のような尺の余裕がありませんでした。‟勇気を持って”という言葉を入れることで文字数を削っても冒頭部分のサンカラの言葉として印象が残り、作中と後半部分での字幕のすり合わせもうまくできたのではないかと思っています」(翻訳者 我満綾乃さん)
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◆歌詞の訳が字幕翻訳のキーポイント インナはこの旅の中で多くのミュージシャンとセッションを重ねており、全編にわたって歌詞の訳が重要となる。文字数が限られた字幕作りの中で歌詞は難しい要素の一つだ。翻訳チーム内でも試行錯誤しながら翻訳作業に取り組んだ。
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「本作は気候変動によってもたらされる様々な問題を追っていくドキュメンタリー作品であると同時に、ミュージシャンであるインナ・モジャのミュージカル・ジャーニーでもあり、音楽が大切な要素となっています。作中で歌われる曲には強いメッセージが込められており、歌詞に関してはチーム内で特に多くの意見を出し合って翻訳しました。チーム翻訳も初めての経験で、相互チェックで自分の翻訳への指摘で気づくことが多く、チームの方の翻訳をチェックすることで、『なるほど、こういう視点から訳しているのだな』『この視点での訳し方も良さそう』と言葉を多角的にとらえる視点をより具体的に理解できたと感じています。」(翻訳者 我満綾乃さん)。
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「この作品においては、やはり、劇中歌の歌詞の内容を詩的に訳すことが難しかったと思います。担当のパートにも、歌詞について語るシーンがあったので、単純ながらも、矛盾しないようにどのように表現すればいいのか悩みました。また、UNHCRの用語リストをもとに翻訳を進めるなかで、専門的な言葉を使うべきか、字幕として瞬時に理解できる平易で自然な日本語を使うべきなのかを考えすぎてしまうこともあり、皆さんから助言をいただきました。」(翻訳者 茂貫牧子さん)
「この映画は、環境破壊がもたらす影響について警鐘を鳴らすだけではなく、未来への希望も同時に描き出しています。アフリカ各地でインナが紡ぐ音楽もまた、観る人に強い印象を残すのではないでしょうか。今回のチーム翻訳では、歌詞にもこだわりぬきました。メッセージ性の強い曲が多いので、言葉の一つひとつに対して、納得がいくまでアイデアを出し合いました。メンバー全員のこだわりが凝縮された、インナのミュージカル・ジャーニーを、ぜひ多くの方に見届けていただきたいです。」(翻訳者 星加菜保子さん)
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「最後のパートを担当したので、他のパートにも何度か出てくる重要な言葉や、歌詞が多くありました。特にエンディングで流れる『インシャ・アッラー』という曲は最後の4ハコを除いた大部分が星加さんのパートでも歌われており、まずは被る部分のベース訳を作っていただきました。お互いのパートで尺が異なっており、それぞれの使える文字数の中で、伝えるべきメッセージは統一できるよう相談して訳を詰めていきました。他に『ライズ』の歌詞を訳したのですが、音楽が大切な要素の作品なので、“このシーンでこの曲が流れるのはなぜか”ということをまず考えました。音楽を聴きながら歌詞の意味にも集中してもらいたいと思ったので、曲のリズムを感じながら読みやすい字幕になるよう心がけました。」(翻訳者 石川 萌さん)
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「この作品はインナ・モジャさんと仲間の歌唱シーンが多く、私の担当箇所にも歌詞がいくつもありました。字幕を考える際、一般的にはハコに収めるために字数を気にしながら単語を取捨選択する機会が多いと思います。しかし、私が担当した歌詞は言葉数に比べて歌の尺が長かったせいか、字数に多少余裕があるように感じました。ですから歌詞によく登場するような詩的な言い回しや日常会話では使わないような単語を入れた訳作りに挑戦しました。正解がはっきりしない分、難しかったですが、考える時間は楽しかったです。クリエイティブな翻訳が好きな私にとって、貴重な体験となりました。」(翻訳者 川又康平さん)
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◆この作品に向き合い、翻訳者自身も難民問題に対する意識が変わった インナは旅の途中で出会う人々の壮絶な体験を聞き、絶句し涙を流す。気候変動による貧しさから国外に逃れるものの、難民としてさらに過酷な生活を強いられる人々…。しかし、同時に長きにわたって植樹を続けてきた成果も目にするなど、この作品には私たちがまだ知らない現状がリアルに映し出されている。翻訳者はまず自らが作品を理解するために多くのリサーチを重ねる。そして、正しい情報をより分かりやすく伝えるために、慎重に言葉を選んでいく。こうした作業の中で翻訳者自身も難民問題に対する意識が変わったという。
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「気候変動によってもたらされるアフリカの干ばつや資源不足、難民や紛争などの問題を取り上げるドキュメンタリー作品と聞くと重たい印象を持たれるかもしれません。実際、作中で言及される問題は深刻なものではあるのですが、決して重々しい作品ではなくより良い未来、社会をつくっていくための力強さにあふれた作品です。作中の曲はどれも印象に残るものばかりで、翻訳をしながらつい口ずさんでしまいたくなるようなリズミカルな曲もあり音楽を楽しむことができる作品でもあると感じています。
作中に‟音楽はあらゆるメッセージを伝えることができる”という言葉があるのですが『グレート・グリーン・ウォール』はまさにそれを体現した作品だと思います。私自身、本作を通して知らなかった多くの問題を知るきっかけとなりました。ぜひ皆さんも本作を見て、音楽を通してグレート・グリーン・ウォールの活動を知っていただけたらなと思います。」(翻訳者 我満綾乃さん)
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「テレビのCMなどで流れる寄付を募る映像を見ていると、どうしても『かわいそうな子供たち』という印象がぬぐえず、困難を前に途方に暮れるしかない(のようにしか見えてなかった)人々に対して、同情や憐憫の感情からしか寄付をできていませんでした。しかし、過去の難民映画祭のシリアのサッカー選手を題材にした作品からは『欲しいのは同情ではなく機会だ』、今回の作品からは『私たちは状況を変えるために、活動していることを知ってもらいたい』というメッセージに接する機会をいただき、困難に負けずに進もうとしている人々の存在を改めて知り、そのための支援と応援が必要だということを実感しました。字幕翻訳者としての経験のみならず、一個人としても知らなかったことを深く知る機会を与えていただき、感謝しています。」(翻訳者 茂貫牧子さん)
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「昨年行われた難民映画祭の先行上映会交流会では、上映会の司会進行をされた国連難民サポーターの武村貴世子さんとお話しすることができました。『映画を通して、気候変動や紛争、難民、すべて繋がっている問題だということが分かった』と仰っていたのですが、私も今回の作品を訳しながら同じことを感じていました。作品のメッセージが見る人にも伝わったのだなと実感できたのと同時に、この作品を通じて、より多くの人に『気候変動は自分たちにも繋がっている問題だ』と気づいてもらいたいと思いました。」(翻訳者 石川 萌さん)
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「昨年の先行上映会では、UNHCRの関係者の方から『素敵な字幕をつけてくださって、本当にありがとうございます。』というお言葉をいただき、胸がいっぱいになりました。作品の持つエネルギーやパワーを伝えることに少しでも貢献できたのなら、映像翻訳者としてこんなにも幸せなことはありません。」(翻訳者 星加菜保子さん)
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「難民問題もグレート・グリーン・ウォールの活動も、広く知ってもらうことに意味があるということで、この映画を日本でも大勢の人に見てもらうための手伝いが少しでもできたことを光栄に思います。」(翻訳者 原田絵里さん)
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製作総指揮は、アカデミー賞ノミネート『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス監督。サンパウロ国際映画祭やレインダンス映画祭で高い評価を受けたほか、2023年3月には文部科学省特別選定作品となっている。この作品を通して、まずはこの壮大な緑化計画への理解を深めてほしい。
『グレート・グリーン・ウォール』 2023年4月22日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー 監督・脚本:ジャレッド・P・スコット 製作総指揮:フェルナンド・メイレレス、サラ・マクドナルド、アレクサンダー・アセン、セア・ゲスト、シアン・ケヴィル、ファブリツィオ・ザーゴ、カミラ・ノルトハイム・ラーセン、クロード・グルニツキー 共同製作総指揮:インナ・モジャ、マルコ・コンティ・シキッツ、ジュリア・ブラガ 出演:インナ・モジャ、ディディエ・アワディ、ソンゴイ・ブルース、ワジェ、ベティ・G 他 提供:セビルインターナショナル 制作:メイクウェーブス 協力:砂漠化対処条約(UNCCD) 配給:ユナイテッドピープル 原題:The Great Green Wall 2019年/イギリス/92分/ドキュメンタリー ©GREAT GREEN WALL, LTD
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【2023年4月】日英・OJT修了生を紹介します①
JVTAではスクールに併設された受発注部門、メディア・トランスレーション・センター(MTC)が皆さんのデビューをサポートしています。映像翻訳の仕事は映画やドラマだけではありません。特に日英映像翻訳ではマンガやゲーム、企業のPR動画など幅広いジャンルがあり、翻訳者が体験してきた職歴や趣味などを生かして活躍しています。今回はOJTを終え、日英の映像翻訳者としてデビューする修了生を紹介します。
◆Jennifer Waldmanさん(日英映像翻訳 実践コース修了) 職歴:英語講師、英語指導助手
【今後どんな作品を手がけたい?】
好きなジャンルや分野はテレビゲーム、マンガ、ドキュメンタリー(特に動物のドキュメンタリー)、ドラマ、リアリティ番組、ホラー、ロマンス、ラブコメ、ファンタジー、料理、ミステリー、サスペンス…。列挙すればきりがありません。ジャンルや分野にも関わらず、チャンスを手に入れたら挑戦したいです!
【What I would like to work on in the future】
I love video games, anime, manga, documentaries (especially animal documentaries), dramas, reality TV, horror, romance, rom-coms, fantasy, cooking, mysteries, suspense… The list is endless! Regardless, I would love to work on anything I can get my hands on to learn as much as possible!
【今後の目標】
翻訳に興味を持っていた番組は『料理の鉄人』でした。見た時、料理、文化、創見に関して私にとって全く新しい可能性の世界を開いてくれました。今後の目標は観客が最も共感するジャンルを通して、同じように目を見開くような体験をしてもらうことです
【My future goals】
The TV show that made me interested in translating was Iron Chef. Watching it opened my world to a whole new world of possibilities for food, culture, and creation. My goal is to give audiences a similar eye-opening experience through whichever genre they identify with most!
◆Christina Lozadaさん(日英映像翻訳 実践コース修了)
職歴:アウトドアガイド、英語教師、ゲーム業界の英語LQA
【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】
While working in LQA at a game company, one of my coworkers mentioned she was one of the translators for a recent Pokemon game. Absolutely fascinated, I inquired about her translation experience and learned that she completed the J to E translation course at JVTA. I immediately checked the website and decided to take the course to begin my professional
Japanese-to-English translation journey. During the course, I was constantly inspired by other classmates’ clever translations and was challenged to not just write good translations, but outstanding ones. All of the tools I learned throughout the course are applicable to many types of translations.
【今後の目標】
As I continue to raise my wonderful daughter, I aim to build my translation portfolio through freelance and part-time work from the MTC and beyond. Japanese culture has influenced my life since I was a child with anime, manga, video games, and more. Therefore, I want to make Japanese culture and media accessible to the world with my translations. Perhaps one day I will translate a Pokemon game and inspire others to make the leap toward their professional goals!
★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています! ◆翻訳の発注はこちらhttp://www.jvtacademy.com/translation-service/