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【コラム】今週の1本 by JVTAスタッフ

JVTAスタッフコラム

 
写真今週の1本 by JVTAスタッフ
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。


 
vol.285 『恋人たちの予感』 小林由布子
vol.284 『風雲児たち』 筆谷信昭
vol.283 『ノッティングヒルの恋人』 池田明子
vol.282 『ザ・サークル』 ソーシャルメディアによるイリュージョン ゲイラー世羅
vol.281 『美少女戦士セーラームーンS』 吉原明日香
vol.280 『トワイライト〜初恋〜』 稲沢知亜紀
vol.279 『Carry on my Wayward Son…』 石川エディス
vol.278 『あん』 池田明子
vol.277 『太陽の帝国』 先崎 進
vol.276 『君の名前で僕を呼んで』 黒澤桂子
vol.275 『Fear of the Unknown in Shin Godzilla』 ジェシー・ナス
vol.274 『マトリックス』 富岡 修
vol.273 『シェイプ・オブ・ウォーター』 小笠原ヒトシ
vol.272 『文豪ストレイドッグス』 村西亜矢子
vol.271 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』 中塚真子
vol.270 『マッチスティック・メン』 池田明子
vol.269 『陽だまりの彼女』 丸山雄一郎
vol.268 『サン・ジュニペロ』(ブラック・ミラー シーズン3)板垣七重
vol.267 人は「変化を嫌う」傾向にある 塩崎邦宏
vol.266『列車に乗った男』秋山剛史
vol.265『ビッグ』小林由布子
vol.264『ダークナイト』小笠原尚軌
vol.263『最後の晩餐』李寧
vol.262『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』岩佐恵莉奈
vol.261『ウィズ』藤田奈緒
vol.260『山田孝之の東京都北区赤羽』相原拓
vol.259『ぼくの神さま』齋藤恵美子
 vol.258 カズオ・イシグロ原作 『日の名残り』『わたしを離さないで』黒澤桂子
 vol.257『コーチ・カーター』堤竜大
 vol.256『LOST』當麻さやか
 vol.255『シェフのテーブル』野口博美
 vol.254『サンドラの週末』桜井徹二
 vol.253 『デイジー』 池田明子
 vol.252 『名探偵ポアロ』 浅川奈美
 vol.251 『ポテチ』 日比野紅翠
 vol.250 『40周年を記念して』 塩崎邦宏
 vol.249 『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』 石井清猛
 vol.248 『LOGAN/ローガン』 酒井泉
 vol.247『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』 満仲由加
 vol.246『美女と野獣』 稲沢知亜紀
 vol.245『オールイン 運命の愛』 朴ソンジュン
 vol.244『ビヨンド・サイレンス』 小笠原尚軌
 vol.243『ロシアアニメの名作』 ナターリア・ユルカーノヴァ
 vol.242『ワイルド・スピード』 吉原明日香
 vol.241『チャーリーとチョコレート工場』 藤田庸司
 vol.240『Fed Up』 ジェシー・ナス
 vol.239『ラ・ラ・ランド』 黒澤桂子
 vol.238『インビクタス/負けざる者たち』 小笠原ヒトシ
 vol.237『真珠の耳飾りの少女』 星屋優美
 vol.236『フルハウス』 首藤法子
 vol.235『スクール・オブ・ロック』 斉藤良太
 vol.234『ラスト・オブ・モヒカン』 浅野一郎
 vol.233『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』 板垣 七重
 vol.232『RED/レッド』丸山 雄一郎
 vol.231『「スター・ウォーズ 世界の兵士たち大行進!」』塩崎 邦宏
 vol.230『あらしのよるに』秋山 剛史
 vol.229『バック・トゥ・ザ・フューチャー』小林 由布子
 vol.228『アクシデント』(中国語タイトル 意外)李寧
 vol.227夢 VS 映画 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』平石 真紀
 vol.227『The Office』相原 拓
 vol.226『エクス・マキナ』黒澤桂子
 vol.225『ひつじのショーン』野口博美
 vol.224『ルーム』當麻さやか
 vol.223『はじまりのうた』桜井徹二
 vol.222『インサイド・ヘッド』中塚真子
 vol.221『はいすくーる落書』浅川奈美
 vol.220『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』岡田真由子
 vol.219『花の詩女・ゴティックメード』塩崎邦宏
 vol.218『X-ミッション』(原題:『Point Break』)酒井泉
 vol.217『ジュリー&ジュリア』諸江美樹
 vol.216『ジョゼと虎と魚たち』小笠原尚軌
 vol.215『ファースト・クラス』稲沢知亜紀
 vol.214『流れ星が消えないうちに』池田明子
 vol.213『チョコレートドーナツ』池田明子
 vol.212コートニー・コックス監督作品『Just Before I Go』黒澤桂子
 vol.211『思い出の映画たち』野口博美
 vol.210『インターステラー』桜井徹二
 vol.209『アイスクリーム』浅野一郎
 vol.208『桐島、部活やめるってよ』丸山雄一郎
 vol.207『ジュラシック・ワールド』板垣七重
 vol.206『ガダカ』浅川奈美
 vol.205『ブルーベルベット』藤田庸司
 vol.204『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』藤田彩乃
 vol.203『かいじゅうたちのいるところ』中塚真子
 vol.202『Married At First Sight』藤田奈緒
 vol.201『憑神』行田梨紗
 vol.200『ビバリーヒルズ・ニンジャ』小笠原ヒトシ
 vol.199『カッコーの巣の上で』李寧
 vol.198『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』丸山雄一郎
 vol.198『恋の渦』石井清猛
 vol.197『奇跡のリンゴ』諸江美樹
 vol.196『アンコール!!』斉藤良太
 vol.195『ラストベガス』池田明子
 vol.194『きょうは会社休みます。』相原拓
 vol.193『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』藤田奈緒
 vol.192『100歳の華麗なる冒険』浅川奈美
 vol.191「A long time ago in a galaxy far, far away….」塩崎邦宏
 vol.190『ゾディアック』野口博美
 vol.189『マッチポイント』桜井徹二
 vol.188『やさしい嘘と贈り物』板垣七重
 vol.187『ニキータ』藤田庸司
 Vol.186『リアリティのダンス』石井清猛
 Vol.185までのコラムはこちら
http://www.jvtacademy.com/blog/1pon/2014/05/

 
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当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。
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今週の1本 『恋人たちの予感』

 
12月のテーマ:再会

 
初めて出会った男女が恋に落ちる。そんなストーリーの恋愛映画はどこにでもある。しかし、何年もの月日を経て、友情と愛情の間を行ったり来たりする映画はそれほど多くはない。その1つが『恋人たちの予感』だ。レンタルビデオ店が最盛期だった1990年代初めの頃、他の映画とは少し違うストーリーとメグ・ライアンの可愛らしさに引かれて何度も観た。恐らく店員は、「この人、また同じの借りてる」と思ったに違いない。

 
大学を卒業したサリー(メグ・ライアン)は、輝かしいキャリアを夢見て、車でシカゴからニューヨークへ。ニューヨークまでの道中を共に過ごすことになったのが友人のボーイフレンドのハリー(ビリー・クリスタル)だった。その日が初対面だった二人は、恋に落ちるどころか、意見が対立するばかり。その一方で、ふざけて口説こうとする場面も。友達という関係性を提案するサリーに対し、「男女の友情は成立しない」と言い切るハリー。恋に落ちる気配もないまま、ニューヨークに着き、それぞれの人生を歩み始める。それから5年後、空港でばったり会った二人だが、ここでも険悪な雰囲気に。さらに5年後、サリーは恋人と別れ、ハリーは離婚が間近という状況で再び出会いが訪れる。いろいろな経験を経て、お互いの気持ちを理解しあえるようになった二人は、心の穴を埋めるかのように何でも話し合える「友達」として過ごす時間が増えていく。果たして二人の関係は新たなステージへと向かうのか?

 
この映画は、監督のロブ・ライナーと脚本のノーラ・エフロンの友情がモデルになっているそうだ。二人の経験がベースになっているからか、ハリーとサリーの気持ちがバランスよく描かれている印象がある。どちらかの気持ちが軸になっているというより、同じくらいの強さで表されていている感じだ。原題は、”When Harry met Sally …”でハリーが主語になっているが、スタッフたちがコンテスト形式で決めたタイトルらしいので、内容との互換性は高くない。それに比べると、邦題は二人を意味する「恋人たち」という表現を使っているので、私が受けた印象にピッタリだ。そして、この映画でサリー役を演じたメグ・ライアンの魅力が全開となっている。この作品を皮切りに『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』(いずれもノーラが監督・脚本)など彼女のヒット作が続々と登場したと言える。彼女は、同年に公開された『マグノリアの花たち』の主演のオファーを蹴って、サリーを選んだそうだが、その選択はまさに人生の分かれ道となったのかもしれない。

 
また、作中でストーリーとは関係のない老夫婦たちが数組登場し、出会いの思い出を語る場面がある。彼らは役者ではなく実在する夫婦で、話している内容も実話だそうだ。出会い方はそれぞれで、ハリーとサリーの関係に1つの可能性が秘められていることを予感させる。

 
ちなみに私は「男女の友情」は成立すると信じている。先日、留学時代の「男友達」に数年ぶりに再会した。当時から男女の垣根を越えて、何でも話せる、気の置けない相手で、二人でよく出かけた。私の中では女友達と同じ枠の中にいる存在で、これからも変わらないだろう。皆さんは、「男女の友情」はあると思いますか?

 
『恋人たちの予感』
監督:ロブ・ライナー
脚本:ノーラ・エフロン
製作年:1989年
出演:ビリー・クリスタル、メグ・ライアンほか
製作国:アメリカ

 
Written by 小林由布子

 
〔JVTA発] 今週の1本☆ 12月のテーマ:再会
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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明けの明星が輝く空に 第107回 特撮俳優列伝15 橋本力

【最近の私】JVTAのブログ『今週の1本』に、“My pleasure”というセリフが紹介されていた。僕が思い出したのは、ラグビー、元イングランド代表のカーリング主将だ。敗戦後のインタビューで、悔しさを押し殺しながら真摯に質問に答え、最後に礼を言われたときに使った言葉だった。さすが「紳士のスポーツ」の本場で、主将を任された人物である。思わず、うならされた。

 
橋本力(りき 本名・ちから)さんの最大の特徴は、大きくギョロッとした目だ。それを買われて出演したのが大映の特撮映画『大魔神』(1966年)で、橋本さんが演じたのは“主役”の大魔神だった。大魔神が悪人を追い詰めるときの、恐ろしい憤怒の形相。顔は作り物だったが、あの人を射すくめるような目だけは違っていた。橋本さん本人のものだったのである。

 
映画の世界に身を投じる前の橋本さんは、夏の甲子園も経験したプロ野球選手だった。所属した大毎オリオンズ(現在の千葉ロッテマーリンズ)の親会社の一つが大映だった縁で、映画『一刀斎は背番号6』(1959年)に出演する。その後、怪我の影響もあって27歳で野球選手を引退。『一刀斎は~』の助監督に俳優業を勧められ、相談した俳優・上田吉二郎の「顔つきも性格も俳優に向いている」という言葉もあって、1960年に大映に入社した。

 
悪役などの端役が多かったという橋本さんは、ある時、京都(大映京都撮影所)へ行って主役をやるように言われた。半信半疑で行ってみると、それが大魔神だった。重い着ぐるみでの演技など、苦労が多かった撮影現場で、特に辛かったのは瞬きを許されなかったことだそうだ。「神様は瞬きしない」というのが理由だった。それも、ただ目を開けていればいいというものではない。怒れる大魔神の場合、目はカッと見開いた状態だ。その上、撮影現場では、「イモコ」と呼ばれる芋の粉を扇風機で飛ばしていたという。その方がいい味の映像になるらしいのだが、演じている役者はたまったものではないだろう。しかし橋本さんは、イモコが目に入っても我慢した。そのため、目が充血してしまったそうだ。

 
ただこれは、のちに「ケガの功名だね」とご本人も振り返っているように、思わぬ効果を生んだ。大魔神の目が血走り、迫力が増したのだ。悠然と歩いてくるだけの大魔神に、背筋がすくむような恐怖を感じるのは、あの目があればこそ。黒田義之特撮監督は撮影前日の晩、橋本さんの目に凄みを持たせるため酒を飲ませたというが、イモコの効果までは予想していなかったのではないだろうか。いわば偶然の産物であるが、橋本さんの撮影に対する覚悟がなければ、それもなかった。大いに評価されるべきである。

 
また、充血がなかったとしても、橋本さんの目が放つ光の強さは異彩を放つ。それは、『仮面ライダー』の怪人たちと比べてみると明らかだ。番組初期のころの怪人たちは、スーツアクターの目がマスクから覗いているものが多かったが、迫力という点で大魔神に遠く及ばない。橋本さんの目の演技にいかに凄みがあったか、そんなことからもよく分かる。

 
橋本さんは、『大魔神』の続編2作品(『大魔神怒る』、『大魔神逆襲』)でも、大魔神役を務め、さらに『妖怪大戦争』(1968)でもスーツアクターを務める。西洋から来た吸血妖怪ダイモンだ。この妖怪映画は、子どものころの僕にとってはトラウマ的な作品で、映画を観た後ひとりでトイレに行けなくなってしまったという思い出がある。

 
ダイモンの不気味で醜悪な顔は、大魔神と同じく作り物であるが、やはり目だけは橋本さん自身のものだった。ストレートに怒りを表現していた大魔神のときと比べると、目の演技にも違いが見て取れて興味深い。例えば、襲った人間の血を吸うシーン。その目はトロンとして、恍惚とも言える色を目に浮かべており、生理的に嫌悪感を覚える。また、終盤のクライマックス、日本中から集まった妖怪たちとの決戦シーンでは、目だけ極端に横や下に向け、異様に白目が多く見えて不気味だ。

 
ゴジラのスーツアクターで有名な中島春雄さん(当ブログ第92回『特撮俳優列伝6 中島春雄』https://www.jvta.net/co/akenomyojo92/参照)は、アクションによって、怪獣たちが本物の生物であるかのように見せることに成功した。それとは対照的に、橋本さんは目の演技によって、大魔神やダイモンに命を吹き込んだのである。これぞ、画竜点睛と言うべきか。

 
最後に、特撮以外に橋本さんが出演した、有名な作品を紹介しておこう。最後の出演作品でもあるそれは、あのブルース・リー主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972年)だ。演じたのは、悪役の日本人武道家。ヌンチャクを持ったブルース・リー相手に、日本刀で立ち回りを演じ、最後は蹴り飛ばされて、絶命する役だった。大魔神という特撮史に残るキャラクターを演じた橋本さんは、ブルース・リーと戦った数少ない日本人俳優でもあったのだ。

 
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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

 
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今週の1本 「風雲児たち」

12月のテーマ:再会

 
「風雲児たち」は、漫画好きで歴史好きな自分にとても思い入れの深い作品だ。

 
本作は1979年に連載開始、もともとは幕末の群像を五稜郭陥落まで短くまとめるとの企画だったそうだが「幕末の状況はそもそも江戸幕府成立時に根がある」との作者の強い意向により関ヶ原から話がスタートし、なんと40年近く経過した今もまだ連載中の超長期連載となっている。

 
今年の大河ドラマ『西郷どん』をはじめ、幕末が舞台の小説、映画などは数多く存在するが、本作はこの長い連載を生かし、それぞれの時期に活躍した人物像を、その前後の歴史のつながりや同時代の人たちや事件、出来事との関連を含めて立体的に生き生きと描いている。歴史を学ぶのにうってつけの作品であり、単純に読み物としても本当に面白い。

 
さらに特筆すべきは、鎖国政策下の江戸時代における海外との関わりを詳しく描いている点だ。ペリーの黒船来航までのオランダとの国交、蘭学の歴史、シーボルト事件、ロシアによる蝦夷地(北海道、千島、樺太)への接近、それらへの幕府や諸藩の対応なども詳しく描かれている。さらに民間人が遭難等で漂流してたまたま外国と関わりをもった事例などもいくつか出てきており、その一つがジョン万次郎らのハワイ、アメリカ行きと帰還である。

 
ジョン万次郎という名前は有名だが、“漁民で幕末の頃に漂流しアメリカの船に拾われて、アメリカでしばらく暮らして帰国した”くらいの理解の人が多いだろう。しかしこの人が両国で過ごした日々の詳細や歴史上果たした役割、一緒に漂流した仲間達とのドラマまで知っている人は少ない。本作にはそのあたりも克明につづられている。

 
万次郎とその仲間の4人の漁師は土佐の漁師で1841年に太平洋で遭難、漂流ののちに伊豆諸島南端の無人島の鳥島に流れ着く。そこで143日過ごしたのち、米国の捕鯨船が彼らを救出し、当時鎖国の日本に送る事はできずハワイに下ろす。ただ、その航海中に万次郎は他の仲間と比べ突出した英語力の向上と未知の文化への好奇心があったため、船長の誘いを受けてアメリカ本土に上陸。現地で学校にも通い、英語のみならず測量術、航海術、数学、造船術等を習得。捕鯨船に乗り込めるだけの知識を身につける。

 
その後望郷の念が 湧き、帰国に向けゴールドラッシュに湧く西部に行き資金を貯めてハワイに渡航。そこで漂流時の仲間と再会する。

 
完全に違う人生を歩んだかつての仲間との再会は、それ自体が奇跡的に実現したものであり、また言い尽くせない感慨があったことと思う。4人の仲間のうち一人は既に病没、一人は現地で妻子を持ちハワイに残留、2人が万次郎と共に3人で日本に帰国することとなり、1851年に10年ぶりの帰国、日本との再会を果たす。

 
その後もその知識と経験を様々な形で薩摩藩、土佐藩、幕府に伝え貢献するが、当時の日本では、彼の実力を十分に発揮させることができず、むしろスパイ扱いなどで不遇に追い込んでいた面が多々あったのは残念というほかない。

 
彼の物語は日本だけではなく、欧米の多くの人々の好奇心を掻き立て、大胆な脚色でミュージカル『太平洋序曲』にもなり、最近では2017年のブロードウェイでも上演されている。

 
今年はハワイ移民150周年 記念の年。最初にアメリカ大陸を体験した男、ジョン万次郎の人生をふりかえってみるのも感慨深い。

 

「風雲児たち」
著者:みなもと太郎
連載開始:1979年
現在、幕末編が連載中

 
Written by 筆谷信昭

 
〔JVTA発] 今週の1本☆ 12月のテーマ:再会
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今週の1本 『ノッティングヒルの恋人』

11月のテーマ:遠い
 

映画『ノッティングヒルの恋人』のサウンドトラックを聴くと、ニュージーランドを思い出す。
 

この映画が公開された1999年、私はワーキングホリデーでニュージーランドの南島にあるダニーデンという街に滞在していた。エルヴィス・コステロの「She」や、ローナン・キーティングの「When You Say Nothing At All」などが収録されたサントラを聴くと、いつの間にか遠くなってしまったあの時代の風景が浮かぶ。ラストのクレジットで流れる「You’ve got a way」を歌うシャナイア・トゥエインは当時、アルバム「カム・オン・オーヴァー」が大ヒットしていたし、私は街なかでこれらの曲をいつも耳にしていた。
 

あれから約20年。久しぶりにNetflixで『ノッティングヒルの恋人』を見た。
 

ヒュー・グラント演じるウィリアムは、イギリスのノッティングヒルで旅行本専門の書店を営んでいる。ある日、店内にアメリカの人気女優アナ・スコット(ジュリア・ロバーツ)がやってくる。短い会話の後、アナは1冊の本を買って立ち去るが、その後、ドリンクを買いに出かけたウィリアムと街頭で鉢合わせし、2人の服が汚れてしまう。とっさに店舗の近くにある自宅にアナを連れていくウィリアム。このハプニングをきっかけに思いがけない恋が始まるのだ。
 

この作品はラブストーリーの王道だが、随所にウィットに富んだ会話が組み込まれ、コメディの要素も強い。さらに魅力的なのはウィリアムの仲間たちだ。妹ハニー(エマ・チャンバース)も含め、何かあるごとに皆で集まり、ときにはきついアドバイスをしながらも、ウィリアムの恋を応援する。なかでもウィリアムの同居人スパイク(リス・エヴァンス)が私のお気に入り。奇妙な文字やイラストが描かれたTシャツ3枚を見せて「デートにはどれがいい?」と聞いてきたり、アナが自宅にいることをポロっと言って記者が押し寄せてしまったりと困った人なのだが憎めない。しかし、ラストの彼は格好いい。ウィリアムと仲間たちがアナの記者会見場へ車で急ぐ途中に渋滞にはまると、スパイクがすばやく道路に降りたち、身体を張って車の流れを止め、彼らを誘導するのだ。ハニーが“You are my hero! ”と叫びながら車の窓から手を振るこのシーンが大好きだ。
 

ウィリアムの“pleasure”“My pleasure”というセリフには思い出がある。それは私が初めて語学留学に訪れたロンドンで、学校の先生であるポールたちと一緒にハイキングに行った時のこと。あいにくの雨で私たちは雨合羽を着てずぶぬれになって歩いていた。そんな時、“This bag must be too heavy for you.”とポールが私のバッグを持ってくれた。そして“Thank you. You are so kind.”と言う私に彼は、“That’s my pleasure.”と答えたのだ。日本では、「どういたしまして」といえば、“You’re welcome.”しか知らなかった私にとって、それはとても印象的な響きで「なんてスマートで素敵な表現だろう!」と感動してしまった。「自分もこんな風にさらっと返してみたい!」と憧れた。帰国後に駅で案内の仕事をしていた時、私自身もよくこのフレーズを使っていたのを思い出す。
 

HG_081-2
※今年10月、ロサンゼルス校スタッフがイベントでヒュー・グラントに遭遇。
優しくスウィートで、難しい顔をして面白いジョークを言う、とても素敵な人だったそうです。
私も会いたかった…。
 

公開当時、映画館では英語の音声で字幕なしで観たが、今回はNetflixでさまざまなツールを利用しながら見た。英語のオリジナル音声に加え、英語の副音声、さらには英語字幕(CC)、日本語字幕などもあるので、あらゆるツールを切り替えながら、何度も巻き戻し、セリフだけでなく細かいしぐさまでじっくりと楽しむことができた。英語の音声ガイド(副音声)は特に興味深いので、皆さんもぜひお試しください。
 

記者会見のラストシーンは、まるで『ローマの休日』のようにドラマティックだ。2人の恋の行方を、皆さんも会場に駆け込んだウィリアムの仲間たちと一緒に見守ってください。
 

Notting Hill Poster-HG autograph
※ロサンゼルス校スタッフがヒュー・グラントからポスターにサインをもらいました!
 
『ノッティングヒルの恋人』
監督: ロジャー・ミッシェル
製作年:1999年
出演: ジュリア・ロバーツ、ヒュー・グラント、リス・エヴァンスほか
製作国:イギリス/アメリカ
 
Written by 池田明子
 

〔JVTA発] 今週の1本☆ 11月のテーマ:遠い
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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今週の1本 『ザ・サークル』 ソーシャルメディアによるイリュージョン

11月のテーマ:遠い

 
指一本で他者にアクセスできる時代です。

 
便利ですが、その分余計な情報も入ってきやすいのではないでしょうか? 「同じ中学だったあの子に先日2人目の子供が生まれたみたいね」「会社の後輩、夜ごはんはあそこのレストランだ!」「大学で同じ学部だったあいつ、今はタイに住んでいるのか」など、ソーシャルネットワークサイトを通して、画面の向こう側にいる人の近況をリアルタイムで知ることは日常茶飯事です。

 
ソーシャルメディアは“人間関係”や“友達の定義”、“個人のアイデンティティ”を変えたとも言われています。例えば、Twitterのフォロワー数に自分の価値を見出し、Facebookの「いいね!」の数が自分のステータスだと思い込んでいる人がいますよね? 他人の評価に気を取られてばかりで、なんだか奇妙です。

 
ソーシャルメディアの問題は若者の話だと思っている大人が多いようですが、実際は若い世代の方がSNSでの自分自身の見せ方、見られ方、他者との接し方を深く理解しています。実は大人の方が、急に現れたクールなツールのことをよくわからないまま利用している傾向にあります。SNSは早くて便利で希望に満ちています。しかし、後から修正や削除が可能なコトバでの他者とのやり取りは、本当につながっていると言えるのでしょうか? 画面の向こう側のあの人は近い関係と言えるのか、本当の友達の定義とは何か、単なる知り合いレベルとはもはや何なのかなど疑問だらけです。

 
今週の一本は、超情報化社会で問題視される現代人の道徳観や他者との距離感について描いた映画『ザ・サークル』です。同作は、ソーシャルネットワークサービスを提供する世界最大のIT企業「サークル」を舞台に、SNS社会の表裏を描くスリラー作品です。トム・ハンクス演じるサークルのCEOベイリーが掲げるミッションは、全てを透明化させた完璧な社会をつくりあげること。情報のシェアによって、事故や犯罪から人々を守る社会を目指します。エマ・ワトソン演じる新入社員のメイは、夢の大企業に採用され、斬新な企業方針やオープンで快適な社内環境の中で刺激的な毎日を送ります。やがてメイは、ある出来事がきっかけでサークルが打ち出す「シーチェンジ」と呼ばれる新サービスのモデルに抜擢されます。シーチェンジは、世界中に設置された小型カメラでメイの生活を24時間公開するというサービス。最先端のコンセプトに人々は夢中になり、田舎の地味な若者だったメイが一気にSNSアイドルになります。しかし、シーチェンジがアクティブになるにつれ、誰もが自分の取る行動を知っているというプライバシーのない世界に、違和感を抱き始めるメイ。まるで知らぬ間に毒を盛られてしまったかのように、メイはゆっくりと壊れ始めるのです。全てが透明化された社会は、どこかエキセントリックで、人々の倫理観や道徳観も捻じ曲げてしまう…。本当に大切な人は誰なのか、個人を可視化できる社会はユートピアと言えるのかなど考えさせられる作品です。エマ・ワトソンとトム・ハンクスの共演も見どころですよ!

 
臨床心理学者でマサチューセッツ工科大学(MIT)科学技術社会論の教授を務めるシェリー・タークルはTED Talk『つながっていても、孤独?』(原題:Connected, but alone?)で、「本来コミュニケーションは、豊かで複雑で骨の折れるものだが、デバイスを利用することで全てをクリーンにしてしまう」と述べています。さらにソーシャルメディアは、“つながり”だけを求めることができる都合のよいツールだと主張。人間関係やコミュニケーションのコントロールを可能にし、常に他者とつながっていたい、孤立したくないという欲求を満たしてくれるが、それは単なるイリュージョンであると。シェリーは、デバイスを利用してのコミュニケーションに潜む3つの幻想をあげています。

 
1. 自分の好きなところに意識を向けられる。
2. 常に話を聞いてもらえる。
3. 一人ぼっちになることがない。

 
3つの幻想でピックアップされているように、メイは、アイデンティティが拡散しすぎて自己を喪失してしまったのだと思います。映画『ザ・サークル』のキャッチコピーは、「『いいね!』のために、生きている。」。私は、自己顕示欲の満たし方がエキセントリックな現代人にこのメッセージを問題提起として拡散希望します(笑)。他者と簡単につながれる時代だからこそ、“人とのつながり”の定義を再確認し、“常に一人ぼっちにはならない”という習慣を断ち切って欲しいと思います。ネット上の関係だけでなく、シンプルに目の前の大切な人をぎゅっと近くに寄せてください。本当に大切な人がいる人には無理につながりを求める必要もないので、余裕があります。遠くにいるけどあなたのことを気にかけている人もいますよね? その人が遠くにいても心でつながっているから安心して距離を楽しむことができるのだと思います。私も、本当の意味で私の味方をしてくれる人を大切にしていきたいです。今夜は遠くにいる母に電話をしてみます。

 
『ザ・サークル』
監督:ジェームズ・ポンソルト
原作:デイヴ・エガーズ
製作年:2017年
出演:エマ・ワトソン、トム・ハンクス、ジョン・ボイエガほか
製作国:アメリカ

 
Written by ゲイラー世羅

 
〔JVTA発] 今週の1本☆ 11月のテーマ:遠い
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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今週の1本 『美少女戦士セーラームーンS』

10月のテーマ:月

 
“推し”とは自分の好きな人やモノを指す言葉。アニメや漫画で一番好きなキャラクター、音楽グループなどで一番好きなメンバーを“推し”と呼ぶ。今回は私の長年の“推し”について、語らせていただきたい。

 
『美少女戦士セーラームーン』の天王はるか。髪はベリーショートで服装もボーイッシュなので“美少年戦士”の方がしっくりきそうな風貌なのだが、「セーラーウラヌス」に変身する美少女戦士だ。私の“推し”である。かわいいキャラクターが多いなかで、かっこいいウラヌスに、幼い私はなんとなく惹かれたのだと思う。一番記憶に残っているのは、保育園の頃に友達と一緒に毎日セーラームーンごっこをして、自分がウラヌス役をやっていたことだ(好きなキャラクターをやっていたなんて今思うと恐れ多い…)。大人になるにつれて、小さい頃に好きだったキャラクターは懐かしいと思うだけで好きな気持ちは薄れていくことが多かった。しかし、大人になった今もウラヌスは変わらずに好きだ。

 
天王はるか(セーラーウラヌス)を初めて見た人は、まず性別に悩むだろう。原作者の武内直子先生は天王はるかというキャラクターをどうやって生み出したのか気になるところだ。はるかのときの服装は男性的で、制服も男性用だ。しかし、セーラーウラヌスに変身するとスカートを身につける。変身後は女性的になるかと思いきや、口調は普段と同じく男性的で一人称も「僕」だ(漫画では「俺」と「あたし」の両方を使っている)。男性的な面と女性的な面のはっきりとした境界線がないのだ。子どもの頃はセーラーウラヌスに変身した姿しか印象に残っていなかったので何も疑問に思わなかったが、今考えると少し複雑な設定のキャラクターだと思う。しかし、カテゴライズできないことが、はるかの大きな魅力である。

 
天王はるかを語る上で欠かせない存在についても話したいと思う。海王みちるという「セーラーネプチューン」に変身するセーラー戦士である。みちるは、はるかとは対照的だ。髪は長く、お嬢様のような丁寧な話し方をする。一見、大人しいタイプにも見えるのだが、実際はみちるの方が気が強く、はるかを圧倒しているようにも感じる。そんな2人の関係性は面白い。でも、興味深いのはそれだけではない。なぜみちるがはるかにとって欠かせない存在かというと、2人はパートナーなのだ。保育園児だった私はいつも一緒にいる2人見て、仲良しなんだなーぐらいにしか思っていなかったのだが、大人になってパートナーだという設定を知り、驚いた。今でこそLGBTに対する理解は深まっているが、原作の連載中やアニメ放送当時はLGBTを描いている作品はあまり多くなかったのではないかと思う。2人の関係が自然に描かれているのは、大きな意味を持つと思う。

 
子どもの頃はなんとなく好きだった「セーラームーン」は、大人になって印象が変わった。先にあげたようなジェンダーやLGBTについても触れている作品だとは思っていなかった。私がなぜ天王はるかを長年好きなのかは、一言で言ってしまえば「かっこいいから」に尽きる。もちろん「好き」には理由がないこともあるが、敢えて理由を探ってみるとさらに意外な発見があるのかもしれない。

 
アニメでは、はるかとみちるが出てくるシーンになるとあるBGMが流れ、バラが舞い散るという演出があるので、そこもぜひチェックしてほしい。

 
『美少女戦士セーラームーンS』
テレビ放映:1994年3月19日 – 1995年2月25日
原作:武内直子
製作:テレビ朝日、東映エージエンシー、東映動画
製作国:日本

 
Written by 吉原明日香

 

〔JVTA発] 今週の1本☆ 10月のテーマ:月
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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今週の1本 『トワイライト〜初恋〜』

10月のテーマ:月

 
大学生のとき、アメリカのシアトルに1カ月ほど留学していました。そのとき、スペイン人のプロレスラーの女の子と友達になりました。その子が薦めてくれたのが、『トワイライト〜初恋〜』という作品です。

 
原作はステファニー・メイヤーの世界的ベストセラー小説「Twilight」。彼女がいつも、何度も読み返してぼろぼろになった分厚いペーパーバックを持ち歩いていたことを今でも覚えています。

 
『トワイライト』のシリーズは全部で5作品あり、とても簡単に言えば、ヴァンパイアと人間との禁断の恋を描いたラブストーリーです。

 
もともと私は“ヴァンパイア系”と言われるような映画やドラマが好きで、『ヴァンパイア・ダイアリーズ』や『オリジナルズ』など、多くの作品を見てきました。美しいヴァンパイアの青年(歳は取りません)と人間の女の子が恋に落ち、障害を乗り越えながらやがて結ばれる、という物語は、おそらく“ヴァンパイア系”のラブストーリーの王道だと思います。

 
私が留学していた当時から、この物語はシアトルでもよく知られていました。なぜなら、原作の舞台となっているワシントン州のフォークスは、シアトルからフェリーと車で約4時間という親しみのある町だったからです。シアトルは雨が多いところで、早朝などは霧がかかっていることも多く、山のほうをみるととても神秘的でした。私が住んでいたところは自然が豊かで、夜になると月がきれいに見えました。『トワイライト〜初恋〜』は確かにファンタジー映画なのですが、もしかしたら本当に、ヴァンパイアのような超自然的な存在がいるのかもしれない、と信じてしまいそうな場所でした。フォークスはこの映画の影響で、世界中の「トワイライト」ファンが数多く訪れる観光地となっています。(映画の撮影はすべてオレゴン州で行われていたようです)

 
『トワイライト』シリーズの作品を見ていると、ふと、シアトルにいたときのことを思い出します。最近はしばらく見ていないので、また一から見直してみようかな…と思います。

 

『トワイライト~初恋~』
監督:キャサリン・ハードウィック
原作:ステファニー・メイヤー
製作年:2008年
出演:クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、ビリー・バークほか
製作国:アメリカ

 

Written by 稲沢 知亜紀

 
〔JVTA発] 今週の1本☆ 10月のテーマ:月
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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今週の1本 Carry on my Wayward Son…

9月のテーマ:光

 
Any Supernatural fan will squeal audibly within a ten-mile radius of hearing this verse by classic rock band Kansas. Of course, it literally marks the beginning of the end, the preview for their gut-wrenching season finales. But wait… just how many seasons does Supernatural (SPN) have?!
Well, October 11, 2018 will air its 14th Season!

 
Supernatural, created by Eric Kripke, premiered on September 13, 2005. It has, to this date, been nominated for 139 awards and won 44.

  
To the fans’ delight, there are no plans to end the series as long as the lead actors want to stay – and they’re still going strong!
So, pray, what is it about Supernatural that has captivated the hearts of hundreds of thousands of fans?

 “Dad’s on a hunting trip … and he hasn’t been home in a few days,” are the pivotal words of the whole series. When Dean Winchester breaks into his younger brother’s home, Sam, he drags him into solving a case… no, they’re not detectives. They’re hunters. They don’t arrest criminals, they kill monsters.
The beginning of their whole journey is finding their father, John Winchester, and chasing down the Yellow-Eyed demon who murdered their mother when they were children.

 
As dark as the premise sounds, this show offers a genius mix of horror, tragedy, and angst, with a brilliant dose of humor, family love, and the genuine goodness of people. Dean’s fierce love and protectiveness for Sam drive him forward in a career choice filled with tears and blood, and Sam’s talent and profound respect for Dean round up the feels right where they belong.
Sure, there are violent scenes with knives and creepy rituals, but the precious scenes of the Winchester brothers in their ’67 Chevy Impala are filled with enough joy to light up the deepest, darkest bowels of hell (and when it comes to SPN, I mean that quite literally).

 
On a more personal level, what I love the most about the series have to be the actors. Jensen Ackles, Jared Padalecki, and Misha Collins are adored in the fandom – not only because of their looks, but their inherent goodness. They’ve led several charity projects (some still ongoing!) and their social media is bursting with good causes. One of their biggest NPOs, whose Co-Founder and Board President is Misha Collins, is called “Random Acts.” Raising money for children in underdeveloped countries, creating spaces for endangered species, developing strategies to protect against cyber-bullying, launching campaigns to advocate for mental illness… you name it, they’ve probably done it.

 
This is why I recommend Supernatural – and beyond. Not only will you be entertained for months and your heart melt into a puddle of warmth and cuteness overload (when it’s not stopping at a jump-scare), you might actually be investing in something that transcends fiction and flourishes into this world by making it shine brighter than ever.

 
Written by 石川エディス

 

〔JVTA発] 今週の1本☆ 9月のテーマ:光
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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今週の1本 『あん』 

9月のテーマ:光

 
『あん』は、樹木希林さんの代表作の一つだ。ハンセン病元患者の女性、徳江を演じている。カンヌ国際映画祭などで高い評価を受けたこの作品の“追悼上映”が、9月21日から順次、全国で始まる。

 
どら焼き店の店長、千太郎(永瀬正敏)の店先にある日、徳江(樹木希林)が訪れて「アルバイトとして雇ってほしい」と頼み込む。「腰を悪くしますよ」と断る千太郎に、徳江は自家製のあんを置いていく。そのあんの絶妙な味にほれこんだ千太郎は、徳江を受け入れ、二人三脚の経営で行列ができる人気店に…。しかし、徳江がハンセン病元患者が暮らす療養所にいると分かり、次第に客足が遠のいていく…。

 
この作品で一番印象に残ったのは、「預かったカナリアを飼うと約束したのに、放してしまった」と謝る徳江のセリフだ。どら焼き店の常連客の少女が籠に入れて連れてきたカナリアは、光と自由を求めて大空に飛び立った。それは、長い間、療養所の中で暮らしてきた徳江自身の願いだったのだろう。

 
樹木希林さんは、私にとって子どもの頃から身近な存在で懐かしい女優さんだった。「私は40年来、沢田研二さん(ジュリー)と、郷ひろみさんのファンだから」と言えば、昭和世代の人なら誰もが納得してくれるだろう。

 
私が小学生の頃、希林さんが郷ひろみさんとデュエットした「お化けのロック」(1977年)と「林檎殺人事件」(1978年)が大ヒット。お揃いの衣装に身を包み、ひろみさんの周りをぐるぐる回ったり、ロボットのようなダンスをしたりしながら歌う希林さんが、かわいらしくて面白くて、「いいなあ~」と羨望のまなざしで見つめていた。

 
希林さんといえば、なんといっても『寺内貫太郎一家』(1974年)でのお約束、「ジュリー~」の身悶えポーズだろう。私がジュリーファンだと言うと、40年以上経った今でも、昭和世代はほぼ全ての人があのしぐさのまねをする。この浸透力は凄い! 私もジュリーファンの同志として勝手な仲間意識をずっと持っていた。JVTAのスタッフになってから、希林さんを間近で拝見したことがある。『わが母の記』の記者会見を取材した時、主演の役所広司さんと共に登壇したのだ。「わあ、希林さんだ!」と、とても嬉しかったのを覚えている。

 
30歳前後からお婆さん役が定番だった希林さん。60代、70代と実年齢が追いつくと、あまりにも自然で、どこまでが素でどこからが演技なのか分からない、唯一無二の存在となっていた。『悪人』『そして父になる』『海街diary』『万引き家族』など晩年も多くの話題作に出演し、精力的に活躍された。追悼番組を見るなかで、彼女の印象的な言葉があった。60代のはじめに突然左目の視力を失った時、「はじめは絶望したが、おかげでその人の本質が見えると思っている」といった話をしていたのだ。この言葉を聞いて、ハッとした。私はバリアフリー講座の担当として半年ごとに視覚障害者の方を講義にお招きし、お話を伺っている。バリアフリー上映会などの取材も多く、これまでさまざまな視覚障害者の皆さんにお世話になってきた。皆さんはどんな風に私の本質を見抜いていたのだろう。小手先の対応では全てお見通しに違いない。改めてきちんと誠意を尽くさなければならないと思った瞬間だった。

 
希林さん、たくさんの楽しい思い出をありがとうございました。

 
『あん』
監督:川瀬直美
原作:ドリアン助川
製作年:2015年
出演:樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅ほか
製作国:日本/フランス/ドイツ

 
追悼上映のスケジュールは公式サイトへ
http://an-movie.com/

 
Written by 池田明子

 
〔JVTA発] 今週の1本☆ 9月のテーマ:光
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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